龍驤がヤサグレるワンピース   作:HIRANOKORO

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格好つけてなんぼの花道

 ウソップの言うように、合流はするべきだ。しかし、遊んでいても、油断はしていない。島がジャングルに覆われていようと、敵は必ず、外から船で来たはずだ。

 それが見えない。とっくに隅々まで索敵しているのに。

 挙げ句、ブロギーさんは無事で、一味が船を空けた後の酒を飲んだドリーさんがやられた。

 人間と同等程度まで手加減はしても、基本的に艦娘と自分の巣を守る妖精さんが番をしていたのだ。ならば、人間には認識不可能な方法で侵入されたと考えるべきだった。

 悪魔の実を使った、明確な攻撃だ。だからこそ、慎重にならなければいけない。姿が見えないから、単純に透明になる能力だと思い込むことも危険だ。

 例えば擬態能力なら、クルーの誰かに化けるかも知れない。

 幻や催眠の類なら、一味は抵抗すら出来ないかも知れない。

 小さくなるかも知れないし、ワープかも知れないし、可能性は無限大だ。

 この瞬間、隣にいてもおかしくはない。

「ウソップが前を行け。ナミは背中から目を離すな。殿はウチ。コイツはウチが担ぐ」

「連れてくの?」

「ウチにも誇りがある。捕虜は見捨てんし、殺さん」

 そこまでは言ってない。ニコ・ロビンが長身だから、絵面がちょっと間抜けなだけだ。襟巻きのような担ぎ方である。

 というか、龍驤はどこだ。顔はおろか、上半身が見えない。敵なのに同情してしまいそうになるから、やめてほしい。ウソップが動揺する。

「俺が先頭か!?」

「艦戦は先行させるが、ウチらじゃわからん。お前が見抜け」

 ブルブルと震えて、ウソップは千鳥足のまま請負った。

「よし!! 任せろ!!」

「不安なんだけど」

「信じてやれ。あいつだけが自分を疑う。だからこそ、今は信じられる」

 追われているからと、常に緊張していては思うツボだ。それを油断だというなら、自分の瑕疵と考えてはいけない。隙を突くのも技術である。素直に、相手が上回ったと認めるのだ。

 戦いとは、常に備えるものだからだ。よって、どれだけ気を引き締めても、龍驤も他のクルーも、今この瞬間は役立たずなのだ。

 だが、ウソップは違う。

 島に上陸したくないとまで言いながら、今もこうして覚悟も定まらないまま、どうしていいかもわからないまま、ウソップは勇気だけで先頭に立つ。

 あの人外に踏み込んだ男たちが、揃って背中を預ける究極の凡人。

 練習しても腕が上がらないほどに完成された狙撃の冴えはある。しかし、こんな世界で天才だからなんだというのか。銃どころか、大砲さえ生身で防ぐのだ。そんなものは数ある手段の一つでしかない。ウソップの真価はそこではない。

 龍驤も含めて、バカどもが自信の塊なのは積み上げたものがあるからだ。準備やら、経験やら、鍛えた能力と身体がある。

 ウソップにはない。弱いと憚らない。

 それでどうにかしてしまう。無から有を作り出す。マイナスをプラスに変える。

 発想力の源。麦わらの一味の秘密兵器。最後に頼るべき男。それがウソップだ。

「じゃあ、行くぞッ。着いて来いよッ。行くからなッ!?」

「はよ行け」

 ジャングルに蹴り込んだ。急いでいるのだ。

 冷たい視線が二人分刺さるが、龍驤の面の皮はビクともしない。

「走るぞ。一気に駆け抜ける」

「ウィ」

 ヘタったまま返事して、ビクビクこそこそする。決闘の余波で、地面が揺れた。

「あ、恐竜」

「恐竜!?」

 ウソップは振り返らずに逃げ出した。あまりの速さに、誰もどうしようもない。

「ま、ええか。行くで」

「単に、私が危なくなっただけよね?」

「気のせい」

「せめておんぶには?」

「行っくでー」

 結果的に、龍驤がナミを先導した。

 

 

 途中でルフィやゾロに会ったが無視した。ナミとニコ・ロビンがいてかけ寄って来ないサンジとか、明らかに偽物である。

「絵? 彩色? 人形やよな?」

「私にわかるわけないじゃない」

「そう言わんと考えて。どうも、造形と色に違う思想を感じんねん」

「美術の素養も?」

「あるようでないからなぁ」

 監視されている空気はあったが、積極的に手を出して来ない。陸の戦いは素人の龍驤やナミにすら気取られるのに、艦載機を含めてまったく見えない。

「流石にジャングルを燃やすんは手間やな」

「物騒なことはやめなさい」

「不器用ですから」

 ジャングルには、アメリカすらなにも出来ずに負けた。龍驤一隻では、試すことすらおこがましい。妖精さんサイズなのと、この島のスケールが大きいからなんとかなっているが、本来、もっとも苦手な地形だ。

「やられたなぁ、ルフィ」

 視界が開けて、ドリーさんの住処に着いた。ウソップは地面に埋まり、ルフィは巨大な骨の下で黒焦げになっていた。カルガモのカルーは、傷だらけでボロボロだった。

「お姫様は?」

「連れてかれた」

「そうか」

 ここに来るまでに拘束がユルユルになったニコ・ロビンが、龍驤の肩から普通に立ち上がった。気を使ったのかどうなのか、少し離れた場所で一味を眺める。

 骨はビクともしなかった。艤装を廻して、龍驤が力を込めても、ピクリともしない。

「巨人は強いなぁ」

「ああ」

「ええ人らやったな」

「ああ」

「腹立つよなぁ」

「ああ!!」

 仕方がないと、しゃがみ込んで地面をかいた。巨人に踏み固められた地面は硬いが、そんな場所にも草は生えていた。龍驤の小さな手では、いつまでかかるかわからない。

「ちょっと!?」

 その隣に、カルーが来た。傷を見ていたナミが止めたが、それを振り払う。

「手伝ってくれるんか?」

 カルーは一声鳴いて、くちばしを地面に突き立てた。

 龍驤は観測手で、敵を見つけるのが役割だ。してやられたのはなによりも龍驤で、責任も龍驤にある。

 龍驤に見つけられない敵は、ルフィでも、ウソップでも、誰も見つけられない。

 そんなことはわかっている。だから、誰も責めない。龍驤になにも言わない。時間だけが過ぎていく。

 一生懸命に土をかく。熱帯のジャングルは暑いから、汗が出た。それを袖で拭うと、我慢が出来なかった。

「なんで、お前まで負けとるんや、ルフィ」

「ウオオォォ!!」

「アアァアア!!」

「クワァーッ!!」

「さっさと出て来なさいよ!! 戦士なんでしょ!?」

「面白い一味ね」

 ルフィが暴れ散らかし、腕を伸ばして巨木にしがみついた。

 ウソップが身体を揺すって両手を出し、それをナミが引っ張った。カルーはザックザックと土を耕している。

 二人は地面から飛び出して、ジャングルを睨みつけた。余波でカルーも吹き飛んだ。龍驤は逃げた。

「行くぞッ!! 三人で!! あいつらぶっ飛ばす!!」

「ガッテンだ!! 当たり前だ!! 絶対、許さねぇ!!」

「クェーッ!!」

 そのまま、文字通り、ジャングルさえ蹴散らして突撃していった。

 残された女三人に、空風が吹きつける。

「女の涙は便利やな」

「バカ」

 ナミに叩かれた。目尻の汗は、拭ったのにまた浮かんでいる。ニコ・ロビンはクスクスと笑っている。

 海賊だから、準備なんかしないのだ。

 全力を出すのは、やる気のあるときだけ。

 常に本気ではあるから、こうなったら120%。

 どこに向かっているのかもわからないが、きっとなんとかするのだろう。

 

 

「情けねえ」

「油断した」

 迷子と女好きがボヤいていた。海老反りに似た、少し凝った姿で拘束されていた。有り体に言って、プリマだった。ぴっちりな女性衣装に、花やら蔦やら絡んで、小鳥が飛んでいた。無駄に飾り付けられて、顔だけ本人だった。あらゆる意味で、どうしちゃったのか聞きたい出来だ。

 本物ソックリの蝋人形に助けを求めたり、無防備以前のハリケーンで近づいて捕まった。おそらく、避ける術はなかった。油断してようとなかろうと、こいつらは捕まった。自覚は一切ない。

 ダメな奴らなのだ。

「どうする?」

「どうするもこうするもねぇ。考えろ」

「わかってるよ」

 ちなみに、抵抗はした。なんか髪型が3の人が、過労その他で死にかけている。

 懸命な努力と工夫の結果だろう。鉄の強度の蝋で包むだけだと筋肉の盛り上がりで普通に砕くし、なんか気合で燃え始める。

 当たり前に両手、両足を繋ぐと、逆立ちで迫ってきたり、ウサギ跳びで狙って来たりする。

 だから、手と足を交差するように繋いで、力が入りにくいような姿勢を無理矢理取らせた。新しい芸術的発想が生まれたが、それは別の話であり、語りたくない。

 ただただ、情けなくて滑稽だ。

「見られるわけにはいかねぇぞ」

「ああ、あのバカに見つかってない、今だけがチャンスだ」

 なにを心配しているのか。でも、そうだ。ウソップとの共同開発により、龍驤はカメラを手に入れている。

 誰が撮影しているのかいまいち謎だが、というか妖精さんしかいないが、メリー号には思い出のアルバムがあって、不思議な力で世界が滅んでも、この世に残る仕様になっている。結んだ錨が浮かぶぐらい、海にも沈まない。

 龍驤が死のうとなにしようと、絶対に歴史に残って人目に触れる。

 つまり、龍驤を殺して、自分が死んでもダメだ。

 阻止しなければならない。

「Mr.3。またなにかたくらんでるわ」

「ま、またカネ!? いい加減にしてほしいものダガネ。過重労働にもほどがあるガネ」

 かつて、優雅なバカンスを楽しんでいた頃の姿はない。会社員としての悲哀を一身に背負っている。

 ちなみに、地位が上がるほど休みなどない。ソースはセンゴク。何事もほどほどがよい。ソースはガープ。

 3の人は、厄介ではあるがそれほど脅威でもない。問題はやる気のない女性の方である。

 彼女が絵の具でマークを書くと、どうしようもなく気を逸らされる。特にサンジは誘惑のピンクに、どう足掻いても逆らえない。

 そして、目の前で繰り広げられている決闘。敵に回したくないぐらい、最高級の戦士たちなのに、足元の一行に気づく気配がない。

 始まる前など、おそらく、敵に気づいた龍驤が周辺を爆撃で掃除したのに、ここまで範囲が広がらなかった。そもそもどうやって上陸したのかと思ったが、これならば納得だ。理屈はわからないが、一味の目が塞がれた。

 その援護を受けた二人組が、よりにもよってルフィの方に向かったとなれば、ますます事態は悪化する。

 なんなら、敵になることすら二人は覚悟している。

 暗示とか催眠とか、本当にダメなのだ。

 麦わらの一味は、なんだかんだとダメな奴らの集まりだ。

 船長を筆頭に、頼りにならないバカばかりだ。能天気に、迷子に、女好き。ウソつきと詐欺師は、仲間にだってそうする。

 だから、頼りにするのではなく、任せる。任せてダメでも、誰かがどうにかする。一味ならば、仲間といっしょならば乗り越えられる。そういう、信頼の仕方をする。

 ところが、あの知ったかぶりは便利過ぎて、一味の中に替えがいない。なにが出来てなにが出来ないのか、未だにわからないのだ。

 わかっているのは、龍驤に任せてしまったら、一味のやることがほとんどなくなってしまうことだけである。

 だから、任せない。ネタバレを禁止して、口出しをやめさせて、なんなら後ろに置いておこうとする。

 全員が矜持に生きる中で、知ったかぶりだけが矜持を封じて生きている。

 譲っているのだ。

 アーロンは確かに強かったが、一味が到着したときには死にかけていた。あのまま、続ければよかったのだ。

 クリークが来たのは、サンジとゼフの矜持を守ったからだ。

 龍驤に任せてしまえば、鷹の目だって来なかった。

 クロをハメ殺すと言った龍驤に、好みではないと言ったのは誰だったか。意地を通す力は、今に至っても示せているのか。

 バギー如きにしてやられている裏で、バギーの船から金品と海図をせしめて来たのは。

 二人の戦闘の様子すらつぶさに観察しつつ、そんなことが出来るのなら、いつでもどうにでも出来たのではないのか。

 ローグタウンを逃げ出すはめになったのは、そんな態度ややり方のツケが回ったからじゃないのか。

 そして、今日。この結果は。あの巨人は。

 それは、龍驤の責任だろうか。

 違うはずだ。

 ゾロの最強への想いも、サンジの騎士道も、そう告げている。

 艦娘のことも、異世界も前世も、なんにもわからない。

 だが、龍驤のことはわかる。

 アレはただ、楽しく旅がしたいだけだ。戦いも殺し合いも望んでいない。

 そのために生まれたくせに。自分を兵器だなんだと言うくせに。

 叶えてやりたい。仲間なのだ。

 やらかして、ヤサグレているとしても。水平線の向こうで傍観せず、わざわざ自分の間合いではない場所を、チョロチョロとついてくる。置いていかれないように。

 一人でなにもかもを熟して、一人で交渉して、一人で片付けることが出来るのに、まるでそうでないかのように、甘えてくる。

 ガキでいようとする。

 だったら、やらかしても大丈夫だと、なんのことはないんだと、お前の出る幕はないんだと、頼りにされる兄貴分でいてやりたい。

 自身の目的とは別に、そうやって男たちは日々研鑽している。

 よって、こんな体たらくは、まさに恥である。男が廃る。絶対に、記録とかされたくはない。

 だが、もはや四肢を千切っても、脱出出来そうにない。

「困るのダガネ。血の匂いでバレてもつまらんのダガネ? どうすれば大人しくしてくれるのカネ?」

「クソ食らえ」

「とりあえず、剣を返して貰えるか? あれがないと不安で夜も寝られねぇ」

「まったく、口の減らんバカどもダガネ」

 3の人の任務は、麦わらの一味を殺すことではない。黄金週間が、じっと指令書を眺めている間に、直接連絡が来た。

 可能な限り、優位に交渉出来る状況を作れと。

 なんの交渉をしたいのかはわからないし、社長自らが絶対に油断するなと警告してきたので、気をつけてはいるが、具体的になにに気をつけたらいいかは、社長もわからないようだった。

 ただ、社長の相棒である、ミス・オールサンデーが捕縛されたらしい。

 よって、油断はしなかった。社長の秘密を守りつつ、すべての業務を回しているように見える女傑が、有能でないはずがないからだ。

 3の人にどれだけ野心があっても、その地位を狙おうとは思わないぐらいに圧倒的な能力で、かつ面倒くさそう。ぜひ、無事であってもらいたいし、代わりがいるとも思えない。

 そうなると、交渉の中身はミス・オールサンデーの身柄かなと思って、優位になるならせめて頭数も減らしたいしで、考えた結果、殺さずに拘束しようということになった。

 適当である。敢えて言えば、犯罪組織としての優位な交渉しか頭にない。社長の目的も明解ではない。

 なにやら復讐の機会を狙ってワカメの人ペアも来ていたので、想定外の不安要素である、巨人の排除に利用した。

 ちょっと欲が出たとも言う。一人、一億の首なのだ。

 実際、あんなのがいたら、味方でない限り優位など作れそうもない。退場してもらうことにした。

 写実的に偽装して、足元に潜み、決闘を見守っている。

「こっちもこっちでしぶといガネ」

 防御に徹するドリーさんを、ブロギーさんは仕留めきれていない。本来なら、それは手斧の戦い方だからだ。

 盾で防いで、取り回しの良い手斧でカウンターを取る。剣にその器用さはないが、手斧には出来ない突きという手段がある。

 攻め気を見せ過ぎれば、ドリーさんの腕なら針の穴も通すだろう。ブロギーさん自身も、攻撃を仕掛けながら、実は防御にウェイトを置いた戦いをさせられている。

 得意ではないことを押し付けられたのだ。

 千日手に見えるが、百年を戦いに生きた男たちだ。一瞬の気の緩みが致命となるやり取りを、どこまでも耐えられるはずの男たちだ。

 耐えきれなくなるのは誰か、わかっていた。

「どうした? なにを泣く、ブロギー?」

「長かった。ただ、永かった。我ら、誇りに背いたことはない」

「そうだな」

「決着をつけるぞ、ドリー。エルバフに恥じぬ戦いを!!」

 神なるものの意図など読めはしない。だが、人である限り、それに願いを託し、祈ることもある。

 明らかに、明らかに弱い相棒を、それでも互角の状況を作った戦士を、悔いなく倒し、悔いなく逝かせてやりたい。

 百年をたかがと言える永い人生に、ずっとこびりつく穢れであってはならない。そんなものにはしない。

 打ち合いの中の、一瞬の空白。ブロギーさんが満身の力を込めた。それに合わせて、ドリーさんが踏み込む。打点をずらした。だが、対応された。手斧を弾くことは叶わず、地面に押し込まれるのを、盾の丸みで滑らせる。互いに身体が泳いだ。しかし、ドリーさんはブロギーさんの背後を取った。

「ブロギィーっ!!」

「取ったぞ、ドリー」

 渾身の突きだった。しかし、それはブロギーさんにしてみれば見るも無惨な、腕を懸命に伸ばしただけの悪あがきだった。その突きで貫けぬものなど、あんまりなかったはずなのに。

 余裕を持って躱すと、左手背後にいたはずのドリーさんは、ブロギーさんの正面で死に体を晒していた。突きの前を、横切って見せたのだ。絶技だった。

 ドリーさんの顔に悔恨が浮かんで、消えて、そして笑みが刻まれた。ブロギーさんも泣き顔を、笑みで塗りつぶした。

「百年ッ!!」

「永い戦いだった」

 高く、血飛沫が上がった。島のどこからでも、それは見えた。ドリーさんが崩れ落ちる。残心ではないが、ブロギーさんはそれを見送る。

 地面を蝋が走った。ブロギーさんの足が大地を砕く。

「貴様か。貴様らかぁッ!!」

 赤鬼がいた。怒りに全身を真っ赤に染めて、激情を噴火させた。見えた人影に、手斧を振りかぶる。

「カラーズトラップ。静謐の青」

「それは偽物ダガネ」

 感情があっという間に鎮められた。戸惑う間もなく、膝裏を突かれ、口元を覆われ、足元を捕らえられて、泳いだ腕が縛られた。

 心の動きに従ってすぐさま精神と肉体を張りつめたが、蝋はヒビが入っただけで修復され、厚塗りされた。転げるうちに姿勢を変えられ、気づけば抵抗も出来なくなっていた。

「フーっ。上手くいったガネ」

「ねぇ、もう休んでいい?」

「もう少し、緊張感を持ちたまえよ」

 3の人が冷や汗を拭っていた。睨みつけるブロギーさんに、ドヤ顔を向ける。

「猪など、囮を用意してやればこんなものダガネ。おや、悔しいのカネ? 泣き顔がお似合いじゃないか!!」

 大仕事の達成にテンションが高い。黄金週間は早速、ピクニックセットを広げて煎餅をかじっている。

「やったか」

「キャハハ。流石ね」

 ワカメの人ペアも姿を現した。捕らえていた王女様を、地面に放り出す。

「彼女だけカネ?」

「俺たちのせいじゃない。蝋人形がバレたんだ」

「ならば、招待はしてきたカネ?」

「ああ、丁寧にな」

 なんか嫌な予感がする。二人で悪い顔をしてやがる。目的は交渉だと言ったのだが。

「手荒な扱いを許してほしいものダガネ。しかし、王女が我が社になんの用があったのカネ?」

「おい、詮索は」

「わかっている。だが、どうもズレている気がするのダガネ」

 ああ、知らないんだなと、ビビは少し敵に同情した。そして、旅の同行者を確認する。

「なにを、しているの?」

「見ないでくれ。ビビちゃん」

「抵抗の跡だ」

 なんの前衛芸術だ。間抜けな格好で、美しくデコレーションされている辺りが、非常に滑稽である。こうまで人の尊厳を傷つけなければいけないのだろうか。

「いや、もういっそ笑えよ」

「お前らも見んな」

 ビビは悶えていた。首から下が可憐で美しいからこそ、凶悪な二人の面構えが浮く。新しく来たワカメペアも、つい真顔になった。

 なんか、見たことある。3の人の恨みの深さみたいなものを感じて、逆に怖い。ズズっと黄金週間が茶をすすった。

 遠くで爆煙が上がった。三つ。振り向いたバロックワークスの面々が、その意味を考える。

「見つけたな」

「なぁ、もう抵抗しないから、普通に座らせてくれねぇか?」

「まさか!?」

 そう言ったふつくしい彫像が、爆発した。ビビが地面を転がり、顔を上げると、立ち上がっていた。

 巨人が。

 ブロギーが。

 賞金額、一億ベリーの怪物が。

 炎を身にまといながら。

「おりゃぁぁぁ!!」

 その前をなんか通り過ぎた。それどころではないけれど、なんとなくみんなそれを視線で追った。

「やるぞ!! ウソップ!! 鳥ぃ!!」

「おお!!」

「クェー!!」

 ちょっと和んだ。

 それぐらい、絶望的だった。

「ご注文は交渉だったか?」

「謝れば、拳骨で許してくれるんじゃねぇか? 謝れば」

 3とワカメが肩を組まれた。

 黄金週間がそそくさと、ピクニックセットを畳んでいる。

 

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