龍驤がヤサグレるワンピース   作:HIRANOKORO

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天然でチートな裏切り

『そうだ。ダンスパウダーだ。政府の情報が漏れてる』

『わかってはいる。だが、塞げない穴なんだ』

『塞げないにしろ、把握してなきゃ始まらねえだろ?』

『してるさ。監視はしてる』

『なら、なんでクロコダイルに手が出せないんだ!! 俺はなにも出来なかった!!』

『いや、その状況でなんかするバカ、サカズキぐらいだわ』

 

『どうして私を置いて?』

『お前を信頼してさ。ミス・オールサンデー』

『歯が浮くようなお世辞ね』

『事実だ。認めざる得ない。アラバスタへ集中するため、バロックワークスは体制を変えた。なのに俺は、変わらず情報も仕事も、滞ることはないと思い込んでいた。お前がいたからだ』

『本当にどうしたの、あなた?』

『プライドは捨てたのさ。俺は、負けるところだったんだ』

『なるほど。でも、それだけじゃないでしょう?』

『嫌がらせだ、オハラの末裔。政府はいやでも注目する。俺は身を隠したいんだ』

『勝手ね。約束は?』

『守る気があったのか?』

 

『卑下するんじゃない。白ひげと赤髪が接触の兆しを見せてる。こっちは大騒ぎさ。だが、お前のおかげで裏が見えた』

『勝手にやってくれ。俺は、クロコダイルの金の流れを追う』

『そいつはCPの領域だな』

『また俺に、指を咥えてろってのか!?』

『情報収集ってのは、そういうもんさ。耐えることでしか、成果は得られない。むしろ、目に見える成果を求めて、何人も死んでんだ、スモーカー』

『潜入でもないんだ。望むところだ』

『どうしたもんかねぇ』

 

『こちらマリンコード15432。異常なし。引き続き、パトロールを行う』

 

『なに、裏切りを今さら責めるつもりもない。それに、てめえの望みも、そっちなら叶うだろう』

『あら? 親切のつもり?』

『掛け値なしにな。そもそも、リスクは折り込み済みだろう?』

『応援してくれるの?』

『ああ、確信した。古代兵器なんかじゃ、時代は変わらねえ』

『どういうこと?』

『学者なら、自分で解き明かすんだな。確証はねえ』

『矛盾ね』

 

『こちら本部。囚人どもも夢の中か?』

『安眠は出来んだろう。そもそも、中までは見えない』

『そりゃそうだ。エニエス・ロビーまで無事の航海を』

『なに、海流に流されるだけさ。通信を終わる』

 

『頼む。世界が激変するのはわかる。うねりが来てる。大事件だ。だが、あのワニ野郎はそれに紛れるつもりだ!!』

『わかってる。ヒナを送る。器用なやつだ。助けになるだろう』

『あんたならどうした? 全部まとめて捕まえたか?』

『落ち着けって。なにもしないで正解だから。白ひげと七武海まとめて、加盟国ん中で戦争始めちゃダメだから』

『どうすればよかった』

『あ、これ重症だな。俺も、いつもそれを考えてるよ』

 

『お頭、とりあえず無事、ナワバリには入れました。今、案内してもらってるところです』

『わりぃ、ロック・スター。お頭は酒の飲み過ぎで』

『また、ですかい!? まぁ、いいや。聞いて下さいよ。今、誰に案内してもらってると思います?』

『誰でもいいだろ。はしゃいでんじゃねえよ』

『だって、白ひげですよ!?』

 

『上手く立ち回れ。小娘を頼れ。悪いようにはしない。むしろ、お前を求めるだろう。いや、お前が求めることになる』

『確証はないんでしょう?』

『可能性の話さ。人間に意思があり、欲があるなら、そいつは収束する。望みは目の前に迫ってくる』

『ロマンのある話ね』

『残酷な話さ。身の丈に合わない望みなら、滅びるだけだ。問答無用でそれは来る。お前もよく知ってるだろう?』

『……ええ、そうね。ヒドい、話よね』

 

『ビビ王女がナノハナに現れた』

『マズいぞ』

 

『くぁwせdrftgyふじこlp』

 

 

 龍驤は拡声器から電伝虫の受話器を抜く。

「これが、ウチの情報源やけど?」

「なんでよ? なにがどうしてそうなったの?」

「ちょっと、今、すっごい気になる通信が!!」

「今のホンゴウか? 懐かしいな」

「オイオイ、レッドラインの向こうだぞ?」

「だから? 電伝虫のネットワークは、星を覆っとる」

 龍驤はむしろ、退屈そうである。

 だが、騙されてはいけない。態度とか雰囲気で場を誤魔化されたら、また操作されてしまう。

「常識はどうした?」

「常識やろが。通信傍受、増幅、解析、探知、侵入、構築。この広い海で、遠くまで情報を届けるエネルギー波形。利用せんわけないよな?」

「だからってお前」

「いやいや、常識じゃねぇって」

「龍驤って凄いんだな!!」

「そやろ〜」

 チョッパーとニコニコする。

「盗み聞きもやし、発信源を特定して、三角で場所を突き止めたり。まぁ、色々やっとるよ。空飛ぶだけじゃ、船なんか見つからんからな。電伝虫は通信以外でも自分らだけでおしゃべりするから、便利なんよね」

 発信は、電伝虫任せのこの世界。念波そのものの利用法は、今だ確立されていない。妨害も暗号化も、盗聴すら電伝虫がするのだ。

 翻って艦娘は前時代の兵器でありながら、初期艦がネットミームを駆使して、草、とかしてくる。あまりにも自然に活用している。前提も発想も、現代に則したものになる。

 結果、とんでもない勢いで念波を利用する。

 この世界と、龍驤の世界では常識が違う。龍驤にとってこの世界が非常識なように、龍驤はこの世界にとって非常識である。

「いやー、アルビダんとこでこいつ見つけてよかったわ」

 いつも通信に使っている海軍仕様のとは違う、改造されきってヤサグレた電伝虫。殻にケバいハートが、かろうじて残っている。

「ウチの世界やと、通常通信って妨害されてんのよね。おかげで電伝虫と似たような妖精さん通信が大活躍。助かるわぁ」

 深海棲艦が現れ、海と空が断絶した。飛行機や船だけでなく、海底ケーブルも電波も遮断された。人類は滅ぶところだった。

 戦力なら艦娘で代替出来たが、電波はどうしようもない。

 だから、妖精さんが提供した。インターネットにハマっちゃった。

 オモロいことには、ブレーキの効かない妖精さんである。そこにつけ込んだ艦娘というか、秘書艦たちは、鎮守府をDX化させた。

 一人の提督に、日本海軍プラス海外艦という戦力がぶら下がっている。艦隊じゃなくて、一軍である。それらが連携して、様々な軍事作戦とともに、遠征などの後方支援や輸送任務。漁業支援とかもやらなければいけない。

 また、艦娘は年頃の娘さんたちなので、単純に飯と酒だけ用意すれば満足してくれるわけではない。

 兵站というのは、休みの間に兵士がどう過ごすかまで考えるものだが、国は滅びかけている。

 そして、艦娘には龍驤のように、一定の経営能力がある。

 工作艦もいるし、料理や裁縫も出来る。アイドルはもちろん、絵を描ける奴とか、色々いる。

 軍の運営と復興。それが、提督に課せられる任務である。不思議生物を、余すことなく活用している。し過ぎて過労である。

 滅びかけている国に、戦争を遂行した経験込みの官僚集団とか垂涎の的だった。怪しげであろうと、手を借りた。

 もちろん、理性も働いた。というか、無理やり起こされた。

 提督は莫大な予算というか、物資を使えるわけだが、艦娘はとても真面目な優等生がいる一方、龍驤以上にブレーキが壊れているのもいる。

 暴走をどう防ぐか。

 それは書類の、量である。決裁の数。腱鞘の酷使。

 問題児というのは、面倒なことをしない。艦娘は基本、善性の生き物だし、そこまで悪事に勤勉ではない。

 ブレーキのないやつに、そこまではいいかなっと思って貰える程度の事務仕事。腐っても帝国軍参謀の系譜である。

 龍驤が作成した航海日誌は、現時点で百科事典となっている。

 DX化は不可避だった。妖精さんも流石に協力した。戦死者で鎮守府内が溢れてしまう。

 逆に言えば、艦娘はそれくらいやらかした。

 よって、現代レベルの情報処理技術は、艦娘のデフォである。鳳翔もスマホ使える。

 妖精さんは、オータムクラウド先生の新作が見たい。

 電伝虫のネットワークは、人間が把握して構築したものだけではない。野生の電伝虫を含めて、インターネットのように細かく島々を繋いでいるから、水平線の向こうどころか、星の反対側とも通信出来る。

 一応、回線という概念はあるようだが、無線なのだ。

 あとは自前の情報処理技術で、そのネットワークをどう利用するかだ。セキュリティフリーなので、盗聴などより、むしろ選別や特定の方が難しかったりする。

「実は覇気の解析も、電伝虫の念波研究が役に立っとんのよね。電磁波に準ずる力場やからさ。知っとる? 物質と物質って、厳密には決して触れ合わんのよ?」

「知るか」

 物質は原子と、その組み合わせである分子によって構成されている。

 原子核を公転する電子によって、物質は結合したり分離したりする。原子核そのものは、電子とも、また他の原子核とも接触することはない。

 また、原子というのは、そのほとんどが空洞である。描画のように点が寄り集まってというが、サッカー場にパチンコ玉が落ちているのをどれだけ連ねても、目に見えるのはサッカー場という空洞だけだ。

 それなのに、人だとか鉄だとかの密集した物体を人間が目に出来るのは、電子が持つ電磁場が光を反射するからだ。

 多分。

 量子力学なんて、お願いだから専門家だけで弄んでて欲しい。なんで龍驤が考察しなきゃいけないのだ。

 とにかく、パチンコ玉なんて見えないが、電子の公転範囲を含めた原子であれば、電磁気力を媒介する光子のおかげで、サッカー場が空洞ではなく、物質として見えるようになる。

 そうなのだ。世界は大部分を、空洞によって構成しているのである。なにか、物があるように見えることは物理現象であって、物理的にはそこになんにもないのである。

 わけがわからない。

 ある、と見えることも物理だし、ない、という事実も物理なのだ。

 サッカー場の中にパチンコ玉があるという事実は、ないと称して構わないほど些細な誤差だ。

 でも、物理現象はなにもない空洞のサッカー場をこそ、物体として認識させる。

 つまり、詐欺だ。

 そして、物質が直接触れ合うことがない以上、エネルギーの伝播、ベクトルの生成などの仲介をするのは、この電磁気力となる。作用、反作用もこれらが生む。

 世界が空洞でも殴れる理屈である。

 これに、念波なるものが追加されているのが、この世界である。この仮称、念子は、恐らく電子と違って常に原子核を中心に公転しているわけではない。電子によって、また分子間力によって結合した物質全体を共有しながら、より大きな公転周期を持っている。

 例えば、人間なら人間という一つの集合を基点に、周辺を回っているかなんかしている。覇気、という力場を形成している。

 この力場を利用すると、三刀流的不可思議現象が起こるようである。

 わからない。が、ある程度整合性のある仮説が組めたなら、技術利用は可能である。

 世の中、わからないことだらけでなんとでも回る。

 大丈夫、海賊だってそれがなんなのかはよくわからないけど、やれている。多分。

「まぁ、誰にでもあるもんやし、転生した以上、ウチにもあるやろ。あとは、練習練習。勝ったな、風呂入ってくる」

 分厚い航海日誌と内容の難解さに四苦八苦しながら、ついつい突っ込んだ結果明かされた新事実。

 麦わらの観測手は、本当にチート。ズルである。

 龍驤は風呂へ向かった。艦娘の嗜みである。

「待て待て待て」

「いや、本当に説明してくれ。わかんねえから!!」

「うっさいわ、この裏切り者!!」

 龍驤はウソップを怒鳴りつけた。

「え? なんだよ?」

「ナミの武器、完成したんやろ? 出してみぃ」

「おお、出来てるぞ!!」

 そそくさと嬉しそうに取りに行った。直前の理不尽な対応などなかったように。

 凄いなって、みんな思ってる。エースですら思う。ウソップに日頃の感謝をするとともに、龍驤へ厳しい視線を向ける。龍驤は目を合わせない。

「これが新兵器。クリマ・タクトだ!!」

 ネジ付きの棒である。組み立て式の棍。ねじ込む穴がいっぱいあって、ただの棒ではないのはわかる。でも、棒である。

「説明してみぃ」

「任せな!! 心して聞け!!」

 ウソップは自慢げに、身振り手振りを加えて機能を説明した。

「へぇ~」

「ナミさんにぴったりじゃねぇか」

「天候を操んのか」

「すげーな。実質、ロギアじゃん」

 楽しそうな一味。龍驤は冷たく補足する。

「それ、覇気の機械化やから」

 エースがむせた。覇気を苦手にしている四皇幹部様である。

「物質でなく、物体に重力と似たような形で力場を形成する以上、変化の結果、疎となるロギアは相対的に覇気が弱く発現する。ところが、全体の力場は維持される。だから、ロギアはその場の環境すら変えるし、変えてもまた、人間に戻る」

 自然になると簡単に言うが、肉体が変化したどころの話ではない。変化どころか、肉体がなくなっている。火も煙も、砂もだが、触れなくなるということは、電磁気力による結合すら失った、本物の空洞だってことだ。

 殴れないのはわかったが、それでどうやって人間を維持するのか。

 物質は、触れるぐらい近くないと、電磁気力が機能しない。物体として、結合出来ない。力は、かくも届かない。

 電磁気力を頼りにするなら、ロギアとして流動した肉体は、不可逆的にそのまま崩壊する。死ぬ。

 そうはならないように保護しているのが、覇気である。だから、覇気を利用すれば、ロギアも殴れる。

「能力じゃないのか?」

「ちゃうな。ほな、ロギアなら誰でも島一つ、能力で環境を書き換えられるか? せやないやろ? 覇気が強くなるごとに、規模が増すはずや。覇気のないロギアなんぞ、そういう素材のスライムや」

 エースなら、ファイアスライム。物理攻撃は無効かも知れないが、だからこそ攻撃手段は体当たりぐらいである。

「え、弱」

「いや、まぁ、みんな覇気あるから、もうちょいマシやと思うけど」

 ルフィよりも伸びないと言えばいいのか。エースなら熱いパンチを打てるが、クロコダイルはざりっとするだけだし、スモーカーはモクッとするだろう。覇気が弱ければ、せっかく疎となっても体積を増やせない。人間という形や大きさから脱却出来ない。

 覇気の保護を越えると、戻れなくなるからだ。

 しかし、保護し過ぎると、ルフィのような、ただなにかの特性を備えただけの人間になるか、3の人のように体からその特性を生み出すだけの人間にしかなれない。

 覇気か能力か。どちらを優先するかは、悩みどころだろう。覇気だけでも、島一つどうにか出来るのは、ドリーさん、ブロギーさんが証明している。

 鍛えて赤鬼、青鬼になるのか、悪魔か神か。

 結局、鍛えなきゃいけない以上、悪魔の実がある方が有利かも知れない。

 龍驤に任せて貰えれば、とりあえず鬼にはなれると思うが。

「ちょうど、そこに見本がある」

 サンジのことではない。龍驤に言われて、ナミがクリマ・タクトを使ってみた。

「モワッとした」

「ヒヤッとする」

「パチパチした!!」

 エースもルフィも、チョッパーさえも無事。なんの痛痒も与えていない。

 武器なのに。

 兄弟に至っては、期待外れなのか、ものすごい不満そうである。スーパーになっているチョッパーが羨ましい。

 グリンとナミの首が回る。

「アホかぁ!! これでどうしろってのよ!!」

「話せばわかる!!」

「うん。そんな感じ」

 説明書のほとんどが宴会芸な武器である。ボコボコにされるウソップを見て、あらゆる意味で武器の必要性が問われている。

「中身にもよるが、覇気弱いとあんなんや」

「待て。このシャボン玉、本当に覇気なのか?」

「エネルギーを封入出来るシャボン玉なんてあるわけないやろが。なんやと思っとんねん。夢みがちな乙女か、キミは」

 ゾロがキレた。サンジが笑いながら押さえる。

 ロギアが殴れたり、殴れなかったりする時点で、覇気の性質はある程度予測出来る。

 ベクトルの限定操作。エネルギーの移動、伝達の選択的行使。マクスウェルの悪魔である。

「いや、もう、なんちゅうめちゃくちゃなことをしとるとは思っとったけど、エースの話聞いて、もうウチ、どないしようかと」

 ギャグ時空とか、それっぽいことを言って誤魔化したが、これがあるせいで話が余計にややこしくなった。

 言ってる間に、なんか凄い身につまされたし。

 この一味には、身内以外に説明出来ないことが、いっぱいあるのだ。

 追い詰められた龍驤は、切り札を出すしかなかった。サンジが絶望した。

 一応、思春期も利用して、女であることを自然に思い出してもらう計画だった。こんなことになるはずではなかった。

 なにより、サンジのポリシーを曲げてまで、覇気という不可思議現象へ対応しようとしていたのだ。

 それがなんか、棒一本で解決された。

 料理でなら物理を越えられるサンジですら、戦いでは足を用いなければ間に合わないだろうと思っていたのに、シャボン玉を作る要領でどうにかなった。

 覇気は、想いの力でもある。

「一生懸命、考えんようにしてるんだけどね」

 龍驤が素を出した。サンジを申し訳なさそうに見る。

「もう、首を括るか、腹を切るしか」

「やめろ!!」

 一味は全力で止めた。

 その日はみんなで不貞寝した。




世界最強兵器、バブルガンを実戦に初めて投入したのはベガパンクではない
このキャプテン・ウソップだ!!
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