龍驤がヤサグレるワンピース   作:HIRANOKORO

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笑うしかないぜ

 妖精さんによる制裁でヒドいことになった龍驤は置いて、早速空島への行き方講座が始まる。

 ルフィが死にかけていたが、根性で起きた。冒険の話だからだ。

 クリケットさんのわかりやすい説明。

 ここに龍驤がいないのが悔やまれる。真似してほしい。

「要は、本来避けるべき大災害に自分から突っ込んで、そこに空島があるかもわからない積帝雲ってのまで吹き飛べばいいのね?」

「そうだ」

「なんだ。簡単だな」

「メリーに耐えられるか? 改造が必要だな」

 ルソップは空島に行けそうでほっとしている。

 だから、ナミに殴られた。ゾロは寝てる。サンジとロビンは一歩引いて、それを眺めている。

「なんだよ!? 空島に行けるんだぞ!?」

「そうだ!! なにが不満なんだ!?」

「死ぬからよ!!」

 ルフィとウソップの反論は一刀両断された。ウソップが冷静になった。

「そ、そうだな。普通、死ぬな。でも、待てよ? 相手はただの爆発じゃなくて、化け物とはいえ海流だ。流れに乗ることさえ出来れば、つまり最初の加速の衝撃さえ克服出来れば」

「考えるな!!」

 龍驤の気持ちがちょっとわかってしまったナミ。

 こいつ、怖い。

 ちなみに、海流なら航海出来るかもと考えた自分も怖い。

「ずいぶん、ポジティブね。あんたらしくもない」

「いや、俺はネガティブさ。ネガティブだから、臆病だからこそ、やれることがあるんだ。俺の花道は援護だからな」

 やっぱり、龍驤の気持ちとかわからない。

 あいつのせいじゃないか。

 先のことなど考えなかった麦わらの一味は、やりたいことのために次を考えるようになった。

「別に死なねえだろ。それより、いつ行けるんだ? 俺たち、急がなきゃならないんだ」

「あ、そうか。ログが溜まっちゃうものね」

「大災害と、夜? 積帝雲だっけ? そんなのが重なる偶然なんてそうあるわけ」

「明後日の昼だな」

「あったァッ!!」

 クリケットさんの家から、慟哭が聞こえる。あそこで転がってる龍驤が、さらなる絶望に落とされている。看護しているチョッパーがかわいそう。

「盗み聞きかよ、はしたねえな。ちょっと文句言ってくる」

「優しくね」

 サンジが離れた。もうちょっとこう、真剣に考えるべきではなかろうか。ロビンは口を挟まないが、あの二人と同じぐらいワクワクしている。

 ナミしかブレーキ役がいない。つまり、常識がない。いや、No.3だから実はあるのか。

「ログどうしよう?」

「ちょいと島から離れりゃいいだろう。半日ぐらいか。船の改造そのものは俺たちが総出で、一日で片づけてやる」

「なんでそこまで?」

 クリケットさんは笑う。

「なあに、俺はお前らに会えて嬉しいのさ。それだけだ」

 そして、船長の行く道を開くため、真剣に悩む男の肩に手を置いた。

 ウソップは一人、空への行き方を模索していた。それが仕事だと信じて。

「ダメだ。どうやったって流れに乗れねえ。海流には推進力があるが、メリーにはないんだ。重力と風と海流そのものがブレーキになって、置いて行かれる。そうなりゃ真っ逆さま。どうすりゃいい? どうやってメリーを飛ばせば」

 ポジティブな仲間たちが無視する危険を、ネガティブなウソップだけが認識出来る。だからこそ、対処する。

 頼れるのは自分だけしかいない。一味の頼りになりたい。なのに、アイデアが思いつかない。想像を膨らませれば膨らませるほど、恐怖に身がすくむ。冷や汗が出て、足が震える。

 それでも挑み続ける。

 ウソップはマジだった。男になろうとしていた。

 だが、限界はあった。龍驤が、十年と言った。ウソップがどれだけ努力しても、明後日には間に合わない。クリケットさんは、ウソップを自分にはしたくなかった。

「心配するな。俺たちがなんとかしてやる。だから、一緒にメシを食おう。同志よ」

 ウソップが顔を上げた。クリケットさんの笑顔と出会った。ふにゃりと、泣き笑いのような表情になった。そして、崩れ落ちた。肩の荷が、降りた気がした。ルフィが笑って、メシへ走った。クリケットさんを追う。

「情けないな、俺は」

「頼りないしね。あんた、船大工だっけ?」

「俺は狙撃手だ!!」

 ナミは肩をすくめて、家の中に向かった。ロビンも笑っている。

 空は青く、透き通っている。

 

 

「いい加減にしろよ、お前」

 サンジは転がっている龍驤に一声かけて、キッチンへ向かう。

 そろそろメシの時間だからだ。

「なあ、恨んどるか?」

「なんの話だよ?」

 サンジは冷蔵庫を勝手に開けて、材料を吟味する。猿山連合が、漁の成果を口に出す。そして、揃って取りに行った。

「全力で生きた。最善を選んだ。それでも負けた。愚かやった。結局、知ったつもりでなんも知らんと始めたことやった」

「龍驤?」

「前世の話かよ。くだらねえ」

「子のためやったんや」

 チョッパーが黙った。サンジは手を止めない。

「子の子のためやったはずや。でもな、アホな戦争やった」

 サンジが材料を刻んでいく。龍驤は床に転がったままである。

「恨んどるやろな。バカにしとるかも知れん。余計なことをしたと、心底憎まれとっておかしない」

「龍驤、そんなこと言うなよ」

「チョッパーは優しいな」

 サンジはケッとタバコを吐いて捨てる。大鍋に水を入れ、塩を溶かし、野菜を洗う。

「ウチは、後悔しかしとらん」

「黙れよ。陰気臭え」

「そんなこと……!」

 サンジを止めようとしたチョッパーを、龍驤が止めた。サンジはただ、作業を続けている。チョッパーはどうしていいかわからない。ただ、龍驤に蹄を伸ばした。

「龍驤は頑張ってるよ」

 龍驤は微笑む。気まずくなってしまった。無視して準備に集中しようとした。だがまあ、自分も吐き出したかった。クリケットさんの話は、他人事ではない。

 サンジはため息をついた。

「そうだな。正直に言や、恨んでるよ」

 チョッパーが怒りを向けようとしたが、龍驤は嬉しそうに笑う。それがあんまりにも幸せそうで、チョッパーにはなにも出来ないのだ。

「キミみたいに育っとればええな」

 チョッパーにはわからない。なんのことだか。なんの話だか。

 龍驤は立ち上がった。その腕には、チョッパーが抱かれていた。

 チョッパーには、なにが起こったかわからない。

「手伝ってええか、サンジ?」

 サンジはしばし手を止めて、振り返った。

「大根と生姜をおろせ。大量にだ」

「ラジャー。ほな、チョッパー。みんなを呼んできて」

 体よく、追い出された気がした。チョッパーは振り返り、振り返り、扉へ向かった。並んで作業する二人は、どこかもの悲しく見えた。

「サンジ!! メシ!!」

 クリケットさんを追い抜いた船長が、扉から飛び込んできた。

「今作ってるから、待て!!」

「早くしろよ!!」

「今日はサンマパーティーやで〜」

 チョッパーは安心した。

 そこにはいつもの光景があった。

 

 

 そのまま宴になったのだが、夜中にロビンが指摘した。

「ログは大丈夫?」

 大丈夫なわけなかった。こんなペースで飲んで騒いでいると、寝てしまったら手遅れだ。

 起きたら消えている。間違いなく、正午を越す。

 そんなわけで、夜中にも関わらず、海へ出た。大したお出かけではない。ぐるっと西側へ戻って、ジャヤの街を観光するだけだ。猿山連合は遠慮した。クリケットさんがイヤがったからだ。

 よって、物見遊山な一味だけで出航した。

「なんかお礼がしたいな。酸素ボンベでも作るか?」

「いいな。酸素は電気分解だな」

「人力か? 危なくないか?」

「そこは工夫やろ」

「ビールサーバーでもありゃ楽だな」

 余裕があるので、色々と相談する。一味の懐は温かい。ウソップファクトリーは、なかなかの規模である。

「マジで手狭になってきたな」

「存在感がな」

 龍驤の日誌。

 なんかもう、邪魔である。

「こんな夜中に店なんかやってんのか?」

「バカやから夜戦も厭わんのやろ。自分の庭になるぐらい、ここらで遊んどるんさ」

 帝国海軍のお家芸である。空母じゃ役立たずだ。龍驤は参加するが。

 龍驤の言う通り、港に海賊船が連なって、夜中にも関わらずわちゃわちゃと荷降ろしまでしていた。

 荒くれたちが陽気に笑い、だらしなく過ごしている。どこかヤケクソな明るさがある。ルフィたちは顔をしかめた。

 クリケットさんがイヤがる理由が透けて見えた。

 昼間と変わらないような喧騒の中に、一味は降り立った。

「ま、覚悟せい」

 その喧騒の先には、なにもなかった。本当に、なにもなかった。まるで切り取られたように夜の帳が下りていて、住人たちはそこから目を逸らすように酔っ払っていた。

 クリケットさんの家なんか目じゃないぐらい、バッサリと街が消えていた。

「なんだ、コレ?」

「エースと黒ひげの決闘跡」

 ルフィが振り返った。龍驤は歩き出した。

 一軒だけ、無事な酒場が残っていた。不思議に思うより、不気味だった。

 客はそれなりに入っていた。先ほど港にいた連中よりは、まだマシだと思えるメンツだった。

 それでも興味は欠片も湧かなかった。

 龍驤はカウンターに座り、ルフィを見た。

「なんか、聞きたいことは?」

「生きてるよな?」

「生きとるよ」

「じゃ、いいや」

 ルフィは頷いて、隣に座った。ナミがなにか言いかけたが、ロビンが止めた。

「おっさん!! 食い物!!」

「大したもんはねえぞ?」

「とりあえず、何本かくれ」

 龍驤が酒を持ってカウンターを離れると、ナミが突撃していった。ロビンが付き添う。龍驤はテーブルについた残りの一味のところに、それを置いた。

「聞きたいことは?」

「こいつは、エースがやったのか?」

「概ねな」

 暗かった。だから、よく見えなかった。

 見えないぐらい、ずっと先まで、どこまでも暗かったのだ。

 四皇幹部の力を、まざまざと見せつけられた。

「手加減してたのか?」

「まさか。キミらのおかげやよ。エースは次のステージに行った」

 なんか、異世界人がよく知り顔で話している。

「海は、広いやろ?」

 返事はなかった。龍驤だけが楽しそうだ。

 お通夜である。龍驤の笑いが止まらない。

「この野郎」

「悩め、悩め。無力を嘆け。いつか通る道、通った道や。いやいや、懐かし」

 まあ、真珠湾を成功に導いた女である。四皇幹部ぐらいで落ち込んでいる一味など、かわいいものだ。

 アメリカとか、マジで現実にチートだから。あの立地と軍事力で、核シェルターの普及率が八割とかだから。

 どんだけ生き残るつもりなんだ。核でも滅びる気のない国民が、世界一の軍事力なんて持ってるんじゃないよ。

 誰だよ、こんなんに勝とうとしたバカ。

 ワンピースへの挑戦が、現実的に思える不具合。

「え? 四日もかかるのか?」

 船長は全然気にせず、ログの話を主人としている。暖簾に腕押しで、ナミも諦めている。

「なんだ? 急ぐのか?」

「いや、だったら宴、続けたらよかったじゃねえか」

「バカね。前のログが消えるのはもっと早いわよ」

 空島に行く方が、よっぽどである。これが末期の酒かも知れない。落ち込んでいるように見えて、こいつらマジで図太い。

 火山性の爆発による打ち上げは、究極生物すら考えることをやめた手段だ。いかなワンピースと言えど、そこまでではあるまい。それに挑むことより、知り合いに先を行かれたことが悔しいらしい。

「よっしゃぁッ!! みんな一杯、奢ったるわ!! 好きに飲めや、野郎ども!!」

 龍驤だけがテンションを上げた。そりゃ規模でロギアに敵うわけがない。というか、能力者が比較になる時点でとんでもない。ゴムのルフィだって、信じられない規模の破壊をもたらすのだ。

 ロビンは常識を身につけ始めたと言ったが、実は常識を失いつつある麦わらの一味。

 こいつら、当たり前に生身でやる気である。この世のものではない。

 男たちは、女の企みに気づけない。

 酒場は最高潮である。

 

 

 で、ベラミーとか言う小物がケンカを売ってきた。止める理由は誰にもなかった。まあ、簡単に伸した。なんだったんだろうという気はしている。

「なんの能力だ?」

「バネ」

「へー」

 もう興味もない。龍驤がそいつの一味を真ん中に置いて、みんなで囲って飲もうとしたので止めた。

 性格が悪い。

 宴の再開だ。

「俺は、海賊王になる男だ!!」

 ルフィがいつものをやって、みんなやんややんやと囃し立てる。ゾロとナミに酔い潰された海賊たちが山と積み上がり、ウソップのホラ話に花が咲く。

 サンジは、なぜか、ベラミー一味のお姉さんを口説いてた。

 帰らせてやれ。

「へー、あのイカレジジイのところにいんのか!?」

「あの猿どもな!!」

 酔っ払いは声が大きい。感覚が鈍くなり、耳が遠くなるからだ。麦わらの一味が手を止めて、彼らを見ていることに気がつかなかった。

「なんでも黄金郷がジャヤにあるってよ!?」

「ハァッハッハッハ!! 夢を見るのもいい加減にしろってな!!」

 酒場がちょっと冷えてきたのだが、それをぶち壊したのはいつもの艦娘だった。

「あったで?」

 あっさり言われた言葉に、酒場は静まり返った。

「え? お、黄金がか?」

「どこに?」

「空」

 だから、一味は空島に行くという話をして、酒場は再び大爆発した。

「ぎゃっはっはっは!! 勘弁してくれよ!!」

「空島なんてあるわけねえだろ!!」

「毎日見とるやん」

 酒場は静まり返った。麦わらの一味も例外ではない。

 おかしい。

 空島であんなに発狂していたのに。

 いや、その前に毎日とは。

「どういうこと?」

 代表して、ロビンが聞いた。さしもの船長でさえも、踏み込むことは躊躇われた。

「今夜も見えとるやろ? 月や。あれ、空島やろ?」

「いやいやいやいや、月は月だろ?」

「だって、1000キロぐらいしか離れとらんで? こっからマリージョアより近い。世界一周の何分の一や。行けへんもんでもなかろ?」

 行けないと思う。わからない。常識が。

 龍驤もわからない。右から欠けたり、左から欠けたりする月が。

 ドラムまでは、地球と反対なんだなぐらいの感覚だった。なんかアラバスタからそれが反転した。

 月が光っているのは、そっちに太陽があるからである。右から欠けるなら、太陽は左にある。

 じゃあ、左から欠けたら太陽は右にあるのか。

 公転というのは、太陽を中心にしている。中心というのは、動かないから中心なのだ。そして、恒星が中心でないわけがないし、複数あるわけもない。

 だとするなら、月が複数あるか、この世界が惑星ではなく、衛星であるかのどちらかだろう。この世界も月と同じく、なにかの周りを回りながら、太陽の周りを回っているのである。

 この、周りながら回るというのが実に厄介で、軌道計算はコンピューターもないのにやるものではない。

 月が近いということで、実はワクワクしていた龍驤だ。なにせ、電伝虫の世界ネットワークに関わる話かも知れないのだ。人工衛星の主な用途、または機能は通信である。いわば、ある種の古代兵器にただ乗りしようとしたわけだ。

 しかし、なかったことにした。

 龍驤の世界と似た形で満ち欠けするのだから、少なくとも黄道面を垂直に回ったりとかまではしていないだろう。それだけで十分だ。

 この世界が太陽の周りをどのように回っていようとも、知ったことではない。暦はあるんだから似たようなもんだろう。ナミがいるから、自前で解明する必要なんて、一切認めない。

 それを個人で出来たら、ガリレオさんはあんな負け惜しみを言わずにすんだ。計算だけで、数ヶ月が飛ぶ。確かめるのは、年でかかる。

 なんなら一生。

「空さえ飛びゃええねん。どう思う? それ、商売にしたら儲かると思わんか?」

 儲かる気はする。かつて、空を飛ぶことは神への挑戦だった。宇宙への進出は、小説の出来事だった。

 しかし、龍驤の世界は、もの凄く速く投げれば落ちてこないというスーパーパワープレイで、いくつもの人工衛星を運用している。

 龍驤の世界では仮にも星と称されるが、たいがいは沖ノ鳥島より大きい。人が何ヶ月と生活することもある。

 ならば、空島と呼んでもいいはずだ。

「人間が抱く程度の夢や浪漫なんぞ、いつか実現可能な現実に過ぎん。出来ることをやるのも堅実でええがな。海賊なら不可能を可能にしてこそやろ」

 世界でも有数の海賊のたまり場なのだが、堅実な人間の集まりみたいに言われた。そりゃ、麦わらの一味や、有名な海の猛者たちや、悪魔の実の能力者と比べれば普通なのかも知れないが。

 大海賊時代だし、海賊は普通なのだろうか。普通のような気がしてきた。彼らは普通だ。

 どう言い返していいかわからない。感覚が違い過ぎる。

「あるってのか?」

「空島が?」

「ワンピースも?」

 海賊たちが、期待を込めて問いかける。

「ワンピースは知らんけど、今年のルーキーに空島出身のやつおるで?」

「手配書どこだ!?」

「そんなん見てわかるかよ!! 新聞だ!!」

「オヤジ!! 古新聞寄越せ!!」

「ねえよ、そんなもん」

 海賊たちは飛び出して行った。龍驤はご機嫌に言った。

「海賊はこうでなきゃな」

 ここで停滞していた流れが、再び動き出す。

 つまり、海軍の負担が増える。

 基本的にいい子で小規模な麦わらの一味は、目立たなくなる。

「策は成れり」

 一味は呆れた。

「なんか意味あんのかよ?」

「そうよ。だいたい、あの騒ぎはなんだったのよ?」

 龍驤の機嫌は急降下した。

「だからって、海が浮くのはおかしいやろが。あと、メリーをな。そろそろ、どっかで調達するかせんと」

「あー」

 龍驤の日誌のせいで、必要性を日々、実感する。名残り惜しいし、まだ行けると思う。

 別れたくはないが、だからと言って最後まで連れて行けるわけでもない。

 どれだけ強くなっても、例え白ひげや魚人であっても、船には頼るしかないのだ。死ぬとは決めたが、生きる目的はワンピースである。

 どれだけ愛着があっても、一緒に死ぬために旅をするわけではない。新世界まで待つわけにもいかない。

 すでに無謀なのだから。

「魂は連れて行けるんだろ?」

「そうや。船が死ぬのは、沈んだときだけや」

 閑散とした酒場で、一味は酒を酌み交わした。

 いずれ来る別れのときを思って。邪魔者は誰もいない。

「商売上がったりだぜ」

 龍驤が奢ったのは一杯だけ。

 食い逃げである。

 

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