リコリコの世界にモブキャラとして転生したら、全てのモビルスーツシリーズが造れる件 作:フェルトファン
東京・錦糸町─────喫茶店『リコリコ』
「ふぅ〜ん君か....最近入った新人....ねぇ君、名前は?」
「あ……あかつ…き……蒼…夜…です」
「歳は?」
「じ、十七……です」
「へ〜〜!じゃあたきなちゃんより一個上だから...千束ちゃんと同い歳だね!」
「は…はい……」
「ねぇねぇ、顔が良いって言われない?」
「え……えっと……」
客から呼ばれ注文かと思ったら、そこには常連客である方々にいつの間にかまんまと捕まってしまった蒼夜。そして流れるように座布団に座らされ、しかもなぜか老人やお姉さん方、そしてお子さん連れの女性までもが蒼夜に興味を持ったのか根掘り葉掘り聞いてくる。
そもそも、どうしてこうなったかというと………
〜時は少し時間を巻き戻し〜
暁月蒼夜が喫茶店リコリコの店員になってから一週間m客人用のテーブルや椅子を素早く綺麗にしたり、皿洗いなどの雑用業務の仕事をしているだけ。この一週間、ほとんど多くは雑用の仕事しかしてないが、それでも蒼夜にとってここで働かせてくれる事を恩を感じ、文句を言わず仕事をこなしている。もちろん、リコリコのメンバーも彼の働きに感謝している。
「(よし、皿洗いは終わったと……次は……)」
皿洗いを終えた蒼夜。次は何をすればいいんだと考えた時、畳に座るお客さん───女子校生二人が手を挙げているのに気付く。
「あの〜、すみません〜」
「は、はーい!たきな!」
「すみません千束!こっちも少しかかります!」
「分かった!ミズキ……はダメか………じゃ〜蒼夜君!」
「(……え、僕?)は……はい……」
「ちょっとお願い〜!あそこの畳に座っているお客さんの注文を取ってきて〜!」
「(………注文を取る……僕が………いや、む、無理無理無理!)」
客人の注文を取ってきてくれといきなり千束に頼まれた蒼夜。別にいやだ、という訳ではないが、ご存知の通り暁月蒼夜は大のコミュ障であり、人と喋るのが一番苦手である。
「おねが〜い!こっちも忙しくてさぁ〜それにあの小娘!また仕事サボったな!」
※ ちなみにクルミはいつも通り押し入れの中で巨大ロボについて、猛烈に調べているんで、完全にサボっている。
「こらこらミズキ……すまないが、注文取ってきてくれないか。」
「………は、はい…(はぁ、出来るだけやってみるか…)」
ミズキの次に店長であるミカにもお願いされたら、もはや断りずらくなった蒼夜。ここで仕事をくれた事に感謝と少しでもリコリコの皆の役に立とうと不安と共に勇気を出し、割と駆け足で座敷まで向かう。
「ふ〜〜〜はぁ〜〜〜」
自分にとって初めての接客だからかだろうか、緊張で若干鼓動が早くなった気を感じる蒼夜。靴を脱いで畳を踏み締めると、蒼夜の接近に近付いた女子校生二人が、目を丸くして此方を見上げた。
「ご……ご注文を……う…伺い……ま、ます…」
「「……」」
「(……あれ……なんかすげぇ見られてる。え、なんか顔に付いてるかな……それとも何か対応が違うかな…?)」
蒼夜が近づいてきた途端、何故か女子校生二人の顔の頬が少し赤くなり、蒼夜を見て呆然としてる。
「……あ…あの………」
「っは!……あ、えっと、えと……あ、この新作一つ!」
「わ、私も!」
と、頼まれた新作パフェの名前をメモに取る蒼夜。
「し……新作……二つ……の……飲み物……は…」
「……珈琲を、二つお願いします。」
「か、かしこまり……まs「あ、あのっ!」っ!?」
張りの良い声で呼び止められ、びっくりし思わず振り返る。変わらず赤い頬のまま、女子学生の一人が此方を見上げて口を開いた。
「こ、此処で、バイトしてるんですか!?」
「……は、はい………い、一週…間前……から……です……」
「え!?そ、そうなのですか!?」
「……は………はい……」
「そ……そうなんですね……」
「………そ、そそそれじゃ……ごゆ……くり……」
少し言葉が足りないが、何とか会釈を返し、今度は学生二人とももお辞儀で返してくれる。注文に間違いが無いか再度確認しながら、カウンターまで戻ると……
「(はぁ!はぁ!はぁ……な、何とか耐えたぞ〜)」
「お、おう……お疲れ……」
緊張感が晴れ、激しくなん度も息を吐く蒼夜。ついさっきの会話は人と話すのが苦手な蒼夜にとって、とても長かった。そんな彼に声をかけるミズキだが、何故か彼女は目を細め、蒼夜の事を見ている。
「ふ〜ん…なるほどね〜、JKにウケた訳だ……」
「………え?」
「言葉はともかく、顔面の偏差値はやたら高いな〜」
「(……顔?え、どう言う意味?)」
ミズキの言っている意味が分からない蒼夜。カウンター越しにミカさんが軽く顔を近付け……
「まぁ、ミズキが言っている意味は間違いじゃないんだがな。」
「え?」
「さっきのお客、
ミズキから聞いた蒼夜はチラリと後ろを振り返って見ると、先程の二人の女学生達がこぞって此方を伺うように自分の事を見つめていた。すると目線が合った瞬間、慌てるように二人同時に顔を逸らし、学校の本などを使って隠そうとする。しかしよく見ると、彼女達の頬はやや赤く見える。
「(惚れてる……いや、いやいや……まさか……ね……)」
確かに前世の世界、◯◯蒼夜は学校を辞める前、女子校生達とは会話もした事も無く好かれる事も無かった。
「と言うか、アンタが来てからリコリコが大きく変わったわよ〜特に女の客が増えたし!〜〜〜もう!これじゃいつまで経ってもいい男見つからないわよ〜〜」
「?」
と、ミズキからその言葉を聞き、蒼夜は一体何のことか、その時まだ理解できなかった。
実はこの一週間、リコリコのTwit◯erや口コミには、"黒の作務衣姿で働く若い男の店員"と、話題となっていた。そんなことがあったのかと、現在のリコリコは、週末ということもあってかこの日は一段と盛況であり、店内はまさに戦場、とも言えるような状況であった。
「は、はーい!ごめん蒼夜君!またお願い!」
「(え!?ま、またぁ!?)は、はい!!」
普段店主のミカしか男性店員はいないはずだったのに、突然の新しい店員が入った時に疑問に思った客や常連客も多くいたが、その少年の働き姿を見て気に入る人も多く上がった。
「えっ?君SNSにいなかったよね?新しく入ったバイトさんですかー?」
「は、はい………いっ…一週間……前から……です…」
「え!?もうそんな前からかい!?だめだよ〜君めっちゃくちゃイケているんだからさ〜〜もっと頑張りなさいよ!」
「あ………ありが…とう……ござい……ます……」
特に彼の黒髪とアメジストのような灰色の瞳が特徴的だった。容姿は女性を十人連れてくれば、まず間違いなく全員が彼を
そんな時、カウンター席に座っている一人の客の女子学生は、蒼夜を呼び止め……
「あ、あのっ!」
「っ!は、はい……」
「しゃ、写真撮っても……良いですか!?」
「(………え、なんで?)」
何故か、写真まで撮られると強請られる時もあった……
〜それから時間が経ち、現在に戻り〜
「え、そうなのかい!?」
「この子が千束ちゃんの……!」
「いやいや!たきなちゃんのじゃないの〜」
「ひゃ〜甘酸っぱ〜い!」
「(ひ、人多いぃぃぃ!な、なんで!?しかもなんか女性陣に滅茶苦茶見られてる。なんかウットリされてるし……しかもなんかこっちじっと見つめているしぃぃぃ!?)」
大人数相手に人と喋るのが苦手な蒼夜は苦戦し、内心で何をどう話せばいいのか困惑している。そんな状況を萎縮してると、向かいに座る伊藤と名乗る女性が、なぜか怖い形相で蒼夜を見据えていた。
「千束と出会ったのはいつ?何処で?」
「(め、目が怖っ!?)………こ、こう…えん……です……」
「ふむ……面白味に欠けるわね……」
「伊藤さん、ネタに詰まってるからって聞き過ぎですよ〜」
「ちょっと待って!もう少しだけ!ねぇ、千束とたきなちゃんの事をどう思ってる!?」
この伊藤という女性は漫画家であり、ネタ帳と漫画のページだといくつか思われる紙がテーブルの上と下に散らばっている。もしかして、僕を漫画のネタとして使えると思ってるのこの人?と思った蒼夜は、正直なんて答えればいいのか分からなくなった。
「(……てか、いつまでやるのやるのこれ!?もう30分近くやってない!?)」
終わりが見えない中、常連客達から近い視線を突き刺してくる。何故こうも興味を抱かれてるのか……と首を傾げている蒼夜は疑問を抱く。そんな中、常連の阿部さんがニヤニヤした表情で……
「千束ちゃんとたきなちゃん、そして君のやり取りをたくさん見る事ができるんだなぁ〜いやぁ〜青春だねぇ、楽しみが増えちゃったなぁ〜」
「せ……せい……春……?」
「多分、この子分かってないわよ〜鈍感ね〜」
「ど……どん………かん?」
「……なんか俗世にまみれてない純粋さを感じる」
「汚しちゃいけないと私のサイドエフェクトが言ってる気がする!」
「千束ちゃんもたきなちゃんも大変だね〜〜〜」
「(……や、ヤベェ………何言ってるか全然分からん……誰か〜助けて……)」
もう状況が追いつけない蒼夜は助けを求めようとカウンターの方を見るが、千束達は何やら微笑ましそうに此方を見るだけ。そして、蒼夜に向かって親指を出し…
『揉まれて来い』
ーーーと目が言っていたようにも見えた。つまり、彼らの助け無しである。
「あ……あの……そろそろ……もも戻り……ます……」
「あ、待って!最後に誕生日は?」
「(え、それも聞くの!?)……じゅ……11月……4日…です…」
「そっか!うん、ありがとう!またお話ししようね〜」
自身の誕生日を常連客達に教えた蒼夜は、ようやく解放された。
「はぁ〜〜〜〜(な、長かったあぁぁぁ……)」
カウンターの奥へ戻った蒼夜は、緊張感が晴れ、大きく息を吐いた。そんな時、彼の元にたきなが近づいてくると……
「……蒼夜さん。その……お疲れ様です……」
「……あ、ありが……とう……ござい…ます……井ノ上……さん……」
たきなも同じ気持ちであったため、なんとなく蒼夜に同情する。そしてこの時蒼夜は思った。もう今日はあんまり喋りたくないと………そう願ったはずだったが……
「では恒例の……閉店後のボドゲ大会開始しま〜〜す!!」
「「「いえ〜〜〜い!!!」」」
「(いや、なんでやねん)」
閉店後であるはずなのに騒がしい店内。何やらボードゲームとカードを囲っている。そこにはいつにも増してテンションの高い千束と、普段の物静かな彼女としては珍しくテンションの高いクルミ、そして彼女達と一緒にテーブルを囲む常連客の姿があった。
今日はリコリコの常連達も交えた閉店後のボードゲーム会(通称:ボドゲ会)が開かれる日である。当然だが、蒼夜は全く知らない。
「締切明日だって言ってたっすよね?」
「きょ、今日の私には関係ないし〜〜」
「まぁ〜よしましょう、仕事の話は」
「はは……実は自分も業務中でな……へへへ」
「ちょっと阿部さん、大丈夫なんですか〜?」
「まぁ〜まぁ〜そんなことより!早く始めましょうよ!」
「とうか……このメンツ問題児多すぎん?」
「そりゃ言っちゃダメでしょう!」
「じゃあ、順番決めるぞ〜」
「(……え、本当になんなのこれ?てかもう閉店時間だよね?それにボドゲってなに?流行ってんのかな………ていうか、今さっきチラッと聞いちゃったけど、
「早く始めましょうよー!」
「じゃあ順番決めるぞー」
既にカードの束を両手にゲーム開始の催促をするのは北村。それを皮切りに、クルミが音頭を取り始めた。最近此処へ来た割に、クルミがみんなと打ち解けるのが早くて素直に驚いていると、すぐ隣りに立っていた錦木が、カウンター向こうで片付けをしてる蒼夜に声を掛けた。
「ねぇ〜蒼夜君!一緒にやろうよ〜!」
「え……で、でも……やり方……わから……ない……」
「大丈夫大丈夫!私が教えてあげるから!もちろんたきなもね〜!」
「……千束、私はやるとは一言も言ってませんが……」
「まぁ〜まぁ〜そんな事気にしないの〜」
気にしますよ、と小さく息を吐くたきな。そして、他の常連達の声が……
「って事は、もう暇でしょ?」
「蒼夜くーん!ほらおいでよ。たきなちゃんもこっちこっち!」
「どうだ、蒼夜もやってみるか?」
伊藤、山寺、そしてクルミと次いだ再三の誘いを受けた二人。その時……
『ーーでは、次のニュースです。先日羽田空港にて突如として現れた新たな巨大ロボについて専門の方々はーーー』
「見てくださいよー!昨日、羽田空港にいた巨大ロボ!」
「うぁ〜やっぱりすごいね〜」
「あぁ、これかぁ。確かにすごいな。」
北村が指さすのはニュースを流している小型テレビ。それを見た伊藤と阿部が反応する。そのテレビでは、先日旅客機を救い、羽田空港にやってきたZガンダム、デルタプラス、そしてリゼルの三機の映像が映されていた。映像では、すでに羽田空港地域が映っており、アナウンサーが現場で話している。
「わぁ〜やっぱり何度も見ても凄いな〜」
「えぇ……ネタ集めには良い感じの資料になりそうでしたから、先日からちょっと調べてみましたよ。」
「最近では宇宙人説や、未来説も出てきましたよ〜」
「あ〜〜もう!飛行機にも変形できるならそれもそれでネタとして使うと思ったのに〜!」
「あははは、そういえば伊藤さんも新しい漫画のネタとして使っているんだっけ?」
朗らかに笑う米岡の横から、芳醇な香りと温かそうな湯気をくゆらせたコーヒーカップが静寂を縫って配膳されるも、巨大ロボットについて仮説や考察などを話し合っている。
「あぁ……確かにコイツは未知数だ……てかめっちゃ知りたいぜ!」
「おや、クルミちゃんもこういうロボットに興味あるのかな?女の子にしては、めずらしぃね〜」
クルミの目がキラキラしている様子を見て、今どきの女の子は特撮やアニメに登場するロボットにも興味を持つようになったのかと米岡がそう思い、時代の流れというものを感じてしまう。
しかし、現に巨大ロボが街や空にも目撃されている。それは
「そういえば阿部さん!何かこの巨大ロボットの裏付けとか、他にありそうな話ってないんですか!?」
そんな時、伊藤は巨大ロボットの詳細について、刑事である阿部に問いかける。もちろん他の常連客達も興味津々で、真剣な眼差しではある。 まぁ、伊藤に関して一番の理由は漫画の新たなネタ集めではあるが。
そんな、カウンターでコーヒーを楽しんでいた阿部刑事は、毅然とした態度を以て国家の治安を守る警察官らしく、職務と捜査で得た情報の漏洩など──
「いやいや、それらしい情報は出てないねぇ。まぁ…確かに俺もあの時……東京の街で見たぞ。しかも俺の近くいたのは、あの赤色の四体の巨大ロボだ。もちろん捜査会議やら特別対応室にも呼ばれ、何度も質問されられてさ……はぁ、あん時はマジで大変だったし、家に帰れなかったんだぞ。」
と、ため息を吐く阿部刑事はあっさりと口蓋を開き、口外してはいけない警察として得た情報を暴露した。とは言っても、明かしても別に問題はないので、結果として情報の漏洩には繋がっていない。
再び皆が難しい顔で考え事をしていると、伊藤さんがふとあることに気づいた。
「そういえば、蒼夜君は巨大ロボットについてどう思う?」
ーガッシャ!ー
伊藤が蒼夜に向けて発言した時、何か崩れた音が聞こえた。
「おぉ?大丈夫、蒼夜君?」
「だ、だだだだ大丈……夫です……」
千束の心配に返事をし、落としてしまった調理道具を慌てて拾い、元の場所に戻した。先程の伊藤の質問に答えるのだが、彼の内心では……
「か………かっこ……いい……と……お、思い……ます……(あっぶねぇ〜〜〜〜マジでバレたかと思った〜〜)」
突然名を呼ばれた事で、一瞬バレてしまったのではと勘違いしてしてしまった蒼夜。事実、今話題となっている巨大ロボを操縦している正体は、この少年である。
「だよね〜〜やっぱ男の子だよね〜蒼夜君は。ところでさ皆、あのロボットを操っている人って、誰だと思う?」
「あ〜〜そうだな………もしかしたら未来か、別の世界からやってきた!……とか?」
※ 正解
「いやいやそれもないんじゃないんですかな〜〜実はその正体って………まだ学生さんだったりして?」
※ 正解
「それとも〜〜〜結構私達の近くにいたりして!」
「ちょっと皆さ〜ん、漫画とかアニメ見過ぎですって〜」
色々と考察や想像を語る常連客達だが、ほぼ事実である。一応バレてはいない事が分かった蒼夜は、次は食器を棚の方へ戻す。すると「あ、待って!」と千束から声をかけられて振り返る。千束は、蒼夜に元へ近づき、座敷から降りてくる。
「食器、運ぶの手伝うよ。」
「え……で……でも……」
「なら、私も手伝います。その方が早いですし。」
そう言って、千束とたきなも食器を棚へ戻そうと蒼夜の仕事を手伝う。
「あ……ありが……とう……ござ……います……」
「いいっていいって!それに私達同い年なんだから、敬語はいらないと思うよ!あ、そうだ!明日、リコリコお休みだから!」
「(え、そうなん?)……な、何故……ですか?」
「あ……え、えっと〜ちょっと人助けの……お仕事だよ〜ね、たきな」
「え……あ、は、はい!」
すると、たきなの表情が千束と同様、一瞬で曇る。まるで
「(もしかして………
先日の廃工場で、傭兵達は千束達の事をリコリスと呼んでいた。しかも彼女達は、拳銃までも所持していた事も分かった。本当なら、今すぐにでも
「(………いや、今は……まだ調べなくていいかな……)」
正直、調べたくないという気持ちを持っている蒼夜。ここで働かせてくれた事に感謝している。それに、こんなにも自分を受け入れてくれたリコリコのメンバーが本当に怪しい組織なのかも疑う。
だからこそ、
「それでさ〜蒼夜君どうだった?」
「……え?」
「リコリコに入ってから一週間だし〜蒼夜君どうだったの?」
「………そ、その……」
「ふむふむ」
「す……凄く………た、たの……楽し…かった……で……す………」
「「……っ」」
食器を一度カウンターに置いて、再び千束とたきなの方に向き直る。すると、彼女も彼の言わんとしてる事を感じ取ってくれたのか、改めて彼女達も蒼夜に向き直る。
そうして、直視できない程に嬉しそうな笑顔で……
「うん………私も、一緒に働けて楽しかった!」
「私も……楽しかったです…」
「────」
千束、そして珍しくたきなも満面な笑顔を蒼夜に見せる。そんな彼女達の
「(〜〜〜あぁ、やっぱ無理だわ……彼女達の笑顔の破壊力……やっぱこっち見ないで。ただでさえ異性に耐性無いのに、これからほぼ毎日彼女と顔を合わせる事になるの〜〜〜)」
「ちょっと千束ちゃんまだ〜?もう始まってるけど〜」
「たきなちゃんと蒼夜君もおいでよ!」
「おーい!こっちはもう勝負見えるんだが〜」
常連客達やクルミにも呼ばれ、千束は、飛び上がりそうな程に高揚した気持ちを抑えて、蒼夜の右手を掴み取って、満面の笑みで彼に伝える。
「うっし!じゃ〜早速ボドゲ開始じゃ〜」
「あ、待ってください千束!ほら、蒼夜さんも…」
「え、は……はい……」
そうして、また軽く笑ってくれるたきな。そこから派生して、二人をボドゲ大会に参加してた常連客達やクルミの元へ連れて行く千束。
「(あぇ本当に……良いお店……)」
きっと何処を探しても見つからないだろう……と、蒼夜は純粋にそう思った…
今日もリコリコは平和である
★★★★★
「そういえば蒼夜君てさ〜な〜んか笑顔足りないんだよな〜」
「(………え?)」
店の開店前の時間、準備をしていた途中、千束が蒼夜の顔を覗き込んでくる。口数が少ない蒼夜は、あんまり人の前では笑顔見せた事がないし、逆にこの性格になったせいで笑顔が減ったのかもしれない。蒼夜自身は全く気にしてはいないのだが、それでも千束にとって少し不満顔だったらしい。
「まぁ……そうですね……確かに千束の言う通りかもしれません。」
「そうよね〜なんて言うだろう……もっと表情がほしいわよ〜」
たきなとミズキが顔を見合わせて言う。そしてミカも頷いて同意しているが、クルミに関しては、特になにも思っていないのか肯定も否定もしていない。むしろ、興味梨である。
「(ひ……表情……か……)」
蒼夜は鏡に映っていた自分の顔を思い出す。正直、自分でも何を考えているのか分からない顔だと思った。しかし、彼女達からそう思われたのなら、尚更するべきであろう。
「もっとほら…笑顔!笑顔!ほら!たきなも真似して!」
「えぇ!?わ、私もですか…」
千束は手本とばかりに満面の笑みをつくった。たきなも恥ずかしそうになりながら、同じように笑っている。彼女たちの笑顔を眺めて、蒼夜もできる限り笑顔をつくってみた。
「……こ、こう……ですか?」
彼の笑顔がどうだったのだろうか?それは、リコリコメンバーの表情を見れば分かった…
千束は引きつった笑みを浮かべ
たきなはポカン、と口を開いたまま
ミカは何も言えずに困り顔
ミズキも眼を見開いて驚愕している
クルミは口元をヒクヒクと引きつらせていた
「……ごめん………笑顔は、もう少し練習てことで……」
「………はい……」
こうして、彼にはもう一つの課題…“笑顔の練習“が追加したのであった……
★★★★★
そして翌日……
〜東京湾にほど近い、廃工場〜
DAよりリコリコに課された任務。その内容は、廃工場を拠点とする麻薬密売組織の制圧、及びに犯人グループの捕縛。
そんな、東京湾の海の中……
複数のMSが赤い瞳を光らせながら、水中移動をしている。
そしてその中には……
音楽……
次回……水中戦開始……
今回は、リコリコ内での日常会話について書きました!それでは、次回話もお楽しみに!
感想・評価もありがとうございます!