リコリコの世界にモブキャラとして転生したら、全てのモビルスーツシリーズが造れる件   作:フェルトファン

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 新作ビルドシリーズ、10月に放送開始『ガンダムビルドメタバース』、いよいよ残り、一ヶ月ですね!

 一応復習しようと、過去のビルドシリーズを見返ししました。

 個人的には、ビルドダイバーズリライズがお好みですね!皆さんはどのビルドシリーズがお好きですか?


 それでは本編へ!


Episode 21 観光や旅行に行く時は、迷子にならないように気をつけよう!

 

 

 

 

 

 

 

『これは予想外でしたねぇ……』

 

「墨田区周辺は何本も川に囲まれてて、都心を水上バスで色んなところに渋滞を気にせず移動できるんです!」

 

 リコリコから出発してから現在、蒼夜、千束、たきな、そして松下の四人が、東京の水辺ラインを跨ぐ船……()()()()の上に乗船している。

 

 そもそも、ミズキの車に乗っていたはずの蒼夜達は、何故水上バスに乗船しているのか。既に千束達は、ミズキの車から降りており、これも千束の観光プランの内一つであった。路上だけではなく水上での移動を利用しようと考えていた。

 

 ちなみに車の運転担当であるミズキは、万が一の為の逃走ルートを確保する為、車で別行動している。

 

 そんなこんなで、水上から眺められる浅草の下町の風景を楽しみつつ、橋げたを潜り抜けた時、とある崩壊してある塔が松下の目に入る。それは、平和の象徴として残されている塔……旧電波塔(きゅうでんぱとう)

 

 

『やはり……折れてしまってますねぇ……』

 

「折れてないのを見た事あるんですか?」

 

『いえ、東京に来るのは初めてで……娘と約束してたんです……“一緒に見上げよう、首が痛くなるまで”……と、これであの世で土産話ができる……』

 

「まだまだぁ〜!始まったばっかりですよぉ〜?」

 

 どこか寂しそうに語る松下に、顔を寄せて満面の笑みを見せる千束。

 

「あ、松下さん!もうそろそろ目的地に到着しますよ!たきな、蒼夜君!もう降りるy……てあれ?たきな、蒼夜君は?」

 

「………えっ?」

 

「………えぇ嘘!?た、たきな!蒼夜君を探さないと!」

 

 水上バスから降りる準備を進めようと千束が二人に声をかけようと振り返ったら、いつの間にか蒼夜がいなくなっていた。すぐに蒼夜を探そうと彼女達は、慌てて辺りを見渡すと……

 

「ど、どこに………あ!いました!」

 

「えぇ!?……あ、よかった〜」

 

 探してから数分後、すぐに蒼夜を発見した千束とたきな。ちなみに蒼夜は、少し離れた所で、興味津々な表情で旧電波塔を眺めていた。

 

「(おぉ〜、これが旧電波塔かぁ………改めて見るとなんであんな形をしているのに、残しているのかが不思議なんだよなぁ……う〜ん……気になるなぁ……後でヴェーダに調べてm…「蒼夜さん!何やっているのですか!?」…ふぇ!?」

 

「もうすぐ目的地に着きますから、降りる準備しますよ!」

 

「(やっべ、完全にぼーっとしてた……)す、すす……みま……せん!」

 

「いえ……あの、そこまで謝らなくても大丈夫ですので……急いで千束達の所へ戻りましょう。」

 

「は……はい!」

 

 たきなに呼ばれた蒼夜は、慌てて千束達の方へ戻る。

 

「もう蒼夜君!黙ってどっか行かないでよね!迷子になると危ないよ!」

 

「……す……すみま…せん……でし……た……」

 

「ちょ……そ、そこまで謝らなくていいよ〜蒼夜君……」

 

 

 

 

 

 

 

 それから数分くらいが経ち、場所は変わって、浅草の浅草寺……

 

 

 最初の目的地に到着した千束達。目の前には、“雷門”と書かれた巨大な提灯が多くの観光客を出迎えるかの如く、そこへ続く道も人混みであり、気を抜けば固まって歩いている自分達も逸れてしまいそうだった。しかしその巨大な門の周りには、『工事中』と書かれてある立て看板が置いてあった。よく見ると、所々に工事現場用のカバーシートが被せてあるのが目に入る。ハッキリ言って今の雷門を観光として向かうという雰囲気ではない。

 

『おやおや、どうやら修繕工事を行なっているみたいですね』

 

「あ、あはは……そ、そうですね〜〜〜」

 

「ちょっと千束……ここって、まだ修繕中じゃないですか!」コソコソ

 

「し、仕方がないよ!だってこれしか思いつかなかったんだもん!」コソコソ

 

『あの……どうかしましたか?』

 

「い、いえいえ!何でもありませんよ松下さん!」

 

 たきなにこっそりと話しかけられた千束は、慌てて視線を松下の方に戻す。気を取り直して、自身が浅草寺に関する知識を松下へと披露する。

 

「正式名称は“風雷神門”。創建年数は西暦942年!左に雷神、右には風神、浅草寺を災害や争いから守ってくれる神様……あ、つまりガードマンですね!私とたきなと同じ!私達は、松下さん専属〜♪」

 

『なるほど……可愛い神様ですねぇ……』

 

 ——と、松下からのそれを聞いて嬉しそうに笑う千束。何よりたきなが驚いたのは、彼女の持つ豊富な知識。恐らく事前に予習していたのだろうが、目を丸くしながらたきなは、話し掛けよう千束に近づく。

 

「ん?どうしたのたきな?」

 

「千束……本当に凄いですね……よく知っていますね…」

 

「……凄いか……ふ、ふっふ〜!そうでしょ〜」

 

 たきなに言われ、更に自慢しようと満面な笑顔で胸を張る千束。それから雷門を通り、商店街へ向かう千束達。

 

「す、凄い人……ですね……」

 

 商店街を目にしたたきなは、観光客が多い人混みに目を見開いてしまう。ネットニュースやテレビ番組などで何度か観た事はあるが、実際の目で見ると、下手すれば千束達とはぐれてしまう可能性も高い。

 

「あちゃ〜人多いねぇ……たきな、蒼夜君。迷子にならないで……

 

 

 

 

 

……って!蒼夜君がいない!?」

 

 

 

「────えっ!?」

 

 はぐれないよう千束が二人に注意を呼びかけた途端、いつの間にか蒼夜だけがいなくなってしまった。先程の水上バスと同じく、これで2度目である。千束とたきなは、急いで慌てて彼を探すよう辺りを見渡すと……

 

「ちょ!蒼夜君どこに………あ!いた!」

 

 

 

 

 

「(おぉ……これが浅草で最も古い商店街……前世の世界でもそうだけど……店も多いし……それにやっぱり、人が多いな…)」

 

 その頃、商店街の光景を眺める蒼夜は、人混みの多さに内心で驚愕してしまう。商店街での観光を巡る人々の中には、日本人だけでなく、多くの外国人も観光を楽しんでいるのも、視界に入る。

 

「(凄いな浅草………でもこういう場所って、()()()()()()()()()()()()()……)」

 

 

 

 

 

 

蒼夜さん!

 

 

「は、はい!?」

 

「何しているのですか!?はぐれたら危ないですよ!」

 

「す……すみ……ま、ません!(ヤベェ……またぼーっとしてたぁ……)」

 

「━━━━はぁ……」

 

 

 

 ーガシ

 

 

 

「…………え?」

 

「とりあえず、千束のところへ向かいますよ。」

 

「いの……井ノ上……さんっ!?」

 

「一応、またはぐれたら困りますので、絶対に離さないようにお願いします!」

 

「あ……あの……」

 

「確か、千束と松下さんがいるのは……浅草寺の前でしたね……少し人混みが多いですけど……頑張って行きますよ、蒼夜さん!」

 

「いや……そ、その……(て、手ェェェ〜〜〜)」

 

 今度こそはぐれさせないように、蒼夜の手を離さず、繋いだまま千束と松下のところに合流するたきな。ちなみに蒼夜は、千束に続き二人目の少女……たきなと初めて手を繋いだ時、驚愕の顔をしていた。

 

 その後、何とか浅草寺に合流する事ができた二人。その時蒼夜は、千束に「もう!迷子になったら危ないよ!」と、叱られてしまったようだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 次に千束達が浅草で行われている祭りに向かう中、リコリコで留守をしているミカとクルミは、ドローンから映されている映像を観ている。

 

 

「あれだけ運動して問題のない人工心臓があるとは……DA技術開発部のサーバーをのぞいてみたいな……」

 

 ───と呟くクルミに対して、ミカは……

 

「………覗いても無駄だよ。あれはDAの技術じゃない……」

 

「ん………ということは………()()()()()()~?」

 

 クルミは映されている映像をズームする。画面越しに映っているのは、千束が首にかけている()()()()()()()()()()

 

 

 

「ほっほ〜……噂のアラン機関。こいつが千束の心臓を提供している……ということか……」

 

「君に秘密は通じないか」

 

「つまり命と引き換えに、()()()()使()()を与えられたわけだ。ミカ、千束の使命はなんだ?」

 

「………それは、千束が決めることだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

★★★

 

 

 

『……あれが……“延空木(えんくうぼ)”ですか……』

 

「はい!なんと11月には完成らしいですよ!」

 

『そうなのですね……実は、知り合いが設計に関わってるんです。』

 

「ええっ!?凄っ!」

 

『そう、彼は未来に凄いものを残してる……』

 

 

 浅草寺でのガイドを終え、松下の車椅子を押す係を3人で交代しながら、途中で祭りが開催している場所に向かった蒼夜達。その時に行っている射的で大人げなく多くの景品を総どりした千束は、近くにいた子供達に景品を分けたり、屋台で売っている飴りんごやお面をなどを買ったり、もはや“護衛”の仕事を忘れているのではないかと、松下との観光を楽しんでいた。

 

 そしてその後、現在彼らは再び水上バスを乗船している。沖を走っていると、建設中の電波塔“延空木”が視界に入る。新しく平和の象徴となる予定の塔は、遠目から見ると、まるで空へと打ち上がるロケットのような形を表していた。

 

「じゃあ〜完成したら見に来て下さいね!またご案内しますよ!」

 

『……ええ、またお願いします……君は素晴らしいガイドだからね……』

 

 車椅子を動かし、千束へと向けて松下がそう告げる。そんな言葉を聞いた千束は、心底嬉しそうに小さく微笑んでいた。

 

『それにしても……今日は暑いですね……少し中で休ませて貰います…』

 

「あ!じゃあ到着前に迎えに行きますね!」

 

『えぇ……ありがとう……』

 

 千束にそう感謝を述べて、松下はそのままクーラーが効いている船内へと向かった。松下が船内へ向かったのを確認した千束は、目の前にあるベンチに座り込む。

 

「どうぞ。」

 

「お!ありがとぉ〜!」

 

 “どういたしまして”、と自動販売機で買ってきた缶ジュースを千束に差し出し、軽く微笑んでから千束の横に腰掛けるたきな。

 

「ねぇねぇ聞いた!?私、良いガイドだって♪才能あるかも〜」

 

「確かに、喜んで貰えているみたいですね。ですが千束、依頼者の警護が優先ですよ……それに、蒼夜さんも……」

 

「…っ……うん、そうだね……そうだった……」

 

 東京での観光を楽しんでしまったせいか、一瞬だけ仕事を忘れてしまうところだった。たきなのおかげですぐに思い出し、水上バスから東京の街を眺める姿の蒼夜を見つめる。

 

 

 

 

 

「……千束………さっきの話なんですけど………蒼夜さん、本当に“()()()()()()()()()()()()()()()()()”?」

 

「うん……本当らしいよ……」

 

 同じく蒼夜を見つめるたきながそう語ると、千束は、蒼夜との会話を思い出す。それは、水上バスに乗る前……祭りで行われていた盆踊りを松下に見せた時の頃だった……

 

 

 

 

 

 

 数分前……

 

 

 

「ねぇ、蒼夜君……どうしてあんな事を?」

 

「(………え?)」

 

「ほら、時々どっかに行っちゃったりさ……」

 

「あ……そ、その………本当に……す、すみま……せん……でした……」

 

「いやいやそこまで謝らなくていいよ!ただ……なんでそんな事をしたのかな……と不思議に思っちゃったからさ……」

 

 松下の車椅子を押す係をたきなと交代した千束は、先程不可解な行動をしている蒼夜に疑問を尋ねる。

 

「あ!もちろん言わなくt……」

 

 

 

 

「………ない……から……」

 

 

「……へぇ?」

 

「い……行った……こと……ない……から………」

 

「───えぇ!?そ、そうなの!?なんで………ぁ……」

 

 蒼夜の口から聞こえたその答えに一瞬理解ができなかった千束は、すぐに分かった。“彼には家族がいない”……その言葉が脳内に再び現れ、思わず申し訳なさそうな顔を浮かべる。

 

「ご、ごめん……その……」

 

「いえ……その……大丈……夫なの……で…(そういえば、前世の世界でも……おじいちゃんやおばあちゃんに言われたっけな……“一緒に観光や旅行でもへ行こう”……って…)」

 

 同じく蒼夜もある記憶を思い出す。それは前世の記憶であり、自分を育ててくれた祖父母の顔が浮かび上がる。“今度、どこかみんなで楽しく行こう”と、そう言われた記憶があったが、その後に祖父母は亡くなってしまい、結局観光どころか、旅行すらも行けなくなってしまった。

 

 だからこそ、旅行など行った事がない蒼夜にとって、自然にどこかへ見回ったりしていた。つまり、これが……暁月蒼夜にとって、初の観光である……

 

「(おじいちゃんとおばあちゃんが亡くなった後……観光どころか、旅行へ行く機会無かったんだっけ……そういえば、学校に修学旅行も行った事すらないんだよな……)」

 

 

「(ーーーーあ、あれ……なんかすっごい悲しい顔しているけど……もしかして私、蒼夜君に嫌な思いをさせちゃったのかな!?)」

 

 

 どこか悲しそうな表情をしている蒼夜を見て、内心で慌てる千束。何とか話題を変えて話そうとするが、話せる内容が一つも無かったのか、結局水上バスに乗るまで、お互いに一言も喋らなかった…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あんな事を言っちゃってからさ、お互い全然喋らなくなったんだよね………はぁ〜……もしかして私、嫌われちゃったのかな……」

 

「千束……そんな事ありませんよ。それに、蒼夜さんは千束の事を嫌いになったりしませんよ。」

 

「うぅ〜……だと良いけど……」

 

 たきなに励まされた千束は、手元に持っている缶ジュースを一気に飲み干す。その時、朝から気になっていた疑問を千束に問いかけるたきな。

 

「……千束……」

 

「……ん?」

 

()()()()………本当の話なんですか?」

 

「今朝……あぁ、胸の事?うん、本当だよ。鼓動無くてビックリしたけど、凄いのよぉ〜これ!」

 

 ——と、軽く話しながら、千束は自身の胸元を指先で突く。すると気になっていたのか、“本当に鼓動が無いのか確かめたい”、と内心で思ったたきなは、思わず自身の左腕を千束の胸元へと伸ばす。すると、それに気付いた千束が、頬を赤らめて胸元を両手で隠した。

 

 

「うぇっ!?ちょ、ちょいちょいちょい!!!」

 

 

 

「確かめようと思って……」

 

 

 

「良いけど、公衆の面前で乳を触るな!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「(はぁ…………)」

 

 一方、東京の街を眺めながら、バスに乗る前の千束とのやり取りを思い出しながら、ため息を吐く蒼夜。あれから千束と喋らなくなってしまい、自分は彼女に何かまずい事をしてしまったのだろうかと、内心で思い返す蒼夜。

 

「(もしかして………結構まずい事言っちゃったりして……それなら千束さん……たきなさんにも……本当に申し訳ない事したなぁ………ん?)」

 

 内心でそう思いつつ、東京の街を眺めている蒼夜は、何かに気づいた。

 

 

「(…………あれって?)」

 

「蒼夜君!もう行くよ!」

 

 

 

 

「は、はい!(気のせいかな………今、向こうの道路から誰かに見られたような……)」

 

 

 

 

 

 

 

★★★

 

 

 水上バスから降り、しおり通りに次の目的地を目指す千束達。

 

 一方、リコリコに残っているクルミとミカは、ドローンからの映像を眺めながら、彼女達を見守っている。だがその時、彼女達を遠くから追尾する黒い影の人物を捕捉した。

 

 ドローンの映像から確認すると、真夏にも関わらず全身黒の装束で覆われ、頭にはフルフェイスを被ってバイクで走行している。

 

 クルミは、急いでその人物を特定し、検索した情報を通信越しで千束とたきなに共有する。

 

「二人とも、ここで朗報だ。さっきからついて来てる奴………暗殺者・ジン。その静かな仕事振りから“サイレント・ジン”とか呼ばれてる、ベテランの殺し屋だとさ。」

 

「サイレント!」

 

「………ミカ、知り合いか?」

 

「………十五年前まで、警備会社で共に裏の仕事を担当していた。私がリコリスの訓練教官にスカウトされる前だ。」

 

「ほう………どんな奴だ?」

 

「“サイレント”……確かに声を一度も聞いた事が無いな……千束、たきな、気をつけろ……奴は間違いなく()()()()()()だ。」

 

『『……っ!』』

 

 “本物の暗殺者”……その言葉だけで、インカム越しで息を呑む千束とたきな。

 

『三十メートル先に確認。こっちは顔がバレてない、発信機付けに行くよ…』

 

 その時、別行動だったミズキから連絡が入る。クルミがドローンを操作しつつ、確認できたのは、遠くからジンを車で追跡するミズキの車。しかし、ジンの姿を確認できず、同じくドローンを操作しているミズキの方に訊ねる。

 

「……上から確認できない……ミズキの方からは?」

 

『えぇ、柱の横で止まっ…………あ』

 

 

 

 

 

 

バン!

 

 

 

 

 

 

 

 

ザ─────

 

 

 その時、ミズキが使用しているドローンのカメラに向かって銃を突き付けるジンの姿が映った。だがその直後、銃声音と共にカメラの視界が突如ブラックアウトしてしまう。

 

『クソッ!バレてる!』

 

「ジンはマズイな……」

 

「マジか……二人とも、予定変更だ。避難させて此方から一人打って出るべきだ。予備のドローンとミズキでジンを見付け次第……攻撃に出る。」

 

『そっちが美術館出たら車回すよ!』

 

『……うん分かった。ミズキ、気を付けて……』

 

 二人の指示を聞いた千束は、真剣な声で返事を返す。そしてクルミは、再びミズキへと通信を飛ばす。現在ミズキは、予備のドローンが置いてある場所に向かっている。クルミは“もしもの為”にすぐ使用できるようにと、車の停車位置の近くに置くように設置しておいた。

 

「ミズキ急げ、ドローンが無きゃ何もできないぞ〜」

 

『はぁ!はぁ!……あ、アンタも、現場に来てサポートしなさい……うぐっ!?

 

「……おいミズキ、どうした?」

 

『じ、ジンだ!ジンが────誰か!──い!──』

 

「ミズキ………おいミズキ、返事しろ!」

 

『──────』

 

 

 バキ!!!

 

 

 

 すると突如、通信越しからひび割れ音が響き、ミズキとの通信が完全に途絶えられてしまった。恐らくミズキは、ジンに見つかってしまい、向こうで何かあったに違いない。

 

 

「っ……クルミ、予備のドローンは!?」

 

「……電源が入ってない…………チッ!」

 

 舌打ちをしながらクルミは、その場から飛び降り、手元のドローンに電源を入れる。そしてそのまま店の客間へと駆け出し、窓からドローンを放り投げた。

 

 投げられたドローンは、そのままプログラミングされた方角へと浮上していく。それを見届けたクルミは、急いでモニターの方へ戻る。

 

「クルミ!チャンネルを変えて二人に連絡だ!」

 

「あぁ、分かってるよ!」

 

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

『……ミズキと連絡が途絶えた……ジンが仕掛けてくるぞ……』

 

「……っ」

 

 美術館に到着し、インカム越しから聞こえたミカからの報告で、千束とたきなは気を引き締める。本当は今すぐにでも探しに行きたいが、今はそんな事をしている場合ではないとすぐに思い出し、彼女達はミズキの無事を祈るしかなかった。任務はまだ続いており、暗殺者が今どこにいるのかも不明である。

 

「……あ、あの………どうか……し、しま…した?」

 

「っ……う、ううん、何でもないよ!」

 

「そ、そうです!」

 

 自分達の事を心配してくれたのか、千束とたきなは、誤魔化しながら慌てて返事を返す。彼女達にとって蒼夜を戦いに巻き込ませたくない。

 

 だが、いつジンがこっちにやってくるのかも分からない。それに、ミズキが車を持って来れない以上、護衛対象である松下を放って置く訳にもいかない。一体この状況をどうすればいいのか、と千束が内心で思案していた時………

 

「………千束、私に任せて下さい。」

 

「えっ?ちょ、ちょっとたきな!?」

 

 すると、何か思いついたたきながどこかへ飛び出す。その時、蒼夜と松下も気になったのだろう、千束に疑問の声を掛ける。

 

「……あ、あの……」

 

『……どうしました?』

 

「えっ……えっと……あ!と、トイレに行ってくるみたいです〜」

 

 

 

 

 

 

「クルミ、ジンは?」

 

『まだ見つかっていない……屋内の監視カメラの映像を顔認証にかける。野外は予備のドローンを向かわせたから、十分後には解析を始められる…』

 

「あの……ミズキさんは?」

 

『五百メートル離れた場所で連絡が途絶えたままだ。美術館の入口はデパートの通路側だから、館内のカメラで確認する。たきなは出口側に向かって目視で見張ってくれ。』

 

「目視で確認してますが、まだ何も…」

 

 千束達と離れたたきなは、クルミの指示を従いながら出口側の窓に到着する。窓からジンを探しているが、出てくる客が多いせいで、ジンらしき姿が確認できない。

 

 たきなは、鞄を盾の様に抱えながら待機していると、インカム越しかたら驚いたかの声で、再びクルミからの通信が入る。

 

 

 

『ちょっと待て……ミズキの奴、ジンに発信器をつけていたようだ!反応を拾えた、死んでもこっちに情報残したぞ!』

 

 

 

『まだ死んだと決まったわけではないんだが……』

 

「(このリス……人の心を持っていないのですか……)」

 

 ミズキに対して、あまりにもひどいクルミの言い草に、ミカと一緒に思わず内心でツッコミを入れるたきな。気を取り直し、クルミに状況を確認させる。

 

 

 

「それで……位置は?」

 

『もう美術館に来てる』

 

「っ……外ですか、中ですか」

 

 早過ぎる……流石、“サイレント・ジン”の異名通りの暗殺者。まさに殺しのプロと認めざるを得ない。

 

 額から汗が止まらない……いつでも鞄から拳銃を取り出せるように待機し、クルミの指示を待つと……

 

 

 

 

 

『────後ろだ、たきな』

 

 

 

「─────っ!?」

 

 

 

バン!

 

 

 

 その瞬間、たきなが咄嗟に頭を下げたのと同時に、銃声が響いた。

 

 先程まで自分の頭があった位置が銃弾で粉砕し、砂色の煙が舞うその隙に、回避しながら銃を構え、背後にいた存在……ジンに向けて躊躇無く引き金を引いた。

 

 

キン!キン!キン!

 

 

「……なっ!?」

 

 三発連射で、ジンの右腕に被弾した。だが、その全てがまるで金属に弾かれたかのように、火花を散らす。

 

「───っ!」

 

 ジンは舌打ちしつつ銃を向けながら、たきなと自身の間にある通路へと逃げ込む。

 

「コートが防弾です!」

 

『了解、そのまま千束達から引き離せ……今、扉を出て右に走って行ったぞ…』

 

「はい!」

 

 インカム越しでクルミの指示に従いながら、追いかけるように駆け出すたきな……

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

『千束、朗報だ。ミズキは無事だぞ…』 

 

「本当!?よ、よかったぁ〜」

 

『今ミズキはそっちに向かっている。千束、迎えがきたら、暁月君と松下さんと一緒に店に戻ってこい。』

 

「うん、分かった。」

 

 たきながジンを追っている頃、千束は電車を使って店に戻ろうと、二人を護衛しながら東京駅のホームに辿り着いた。

 

 その時、インカム越しから連絡不在だったミズキが無事であるとクルミ達からの報告を受けた千束は、一安心する。

 

「ち、千束……さん……も、もう……すぐ……電車……きま……す……」

 

「そっか……うん、ありがとう蒼夜君。」

 

 ミカ達と連絡をとっている間に、電車が来るのを確認してくれた蒼夜に礼を言う千束。“後はリコリコに戻るだけだ”、と思った彼女は、松下にも伝えようとしたら………

 

「松下さん、もうすぐ電車がきm……………あれ……松下さん……」

 

「…………え?」

 

 二人が振り返った瞬間、()()()()()()()()()()()()()()()()()。恐らく、二人が目を離していた隙に、松下はどこかに移動してしまったのかもしれない。

 

「松下さん………ど、どこに……」

 

「す、すみま………せ、せん……ぼ、僕……が……み、みて……な…い……」

 

「だ、大丈夫だよ蒼夜君!全然攻めないから!と、とにかく、一緒n………っ」

 

 

 “一緒に探そう”……そう言おうとした瞬間、その場で佇む千束。

 

「…………」

 

「ち、千束………さん?」

 

「…………ごめん蒼夜君………先に帰ってくれる……」

 

「…………え?」

 

「松下さんの事は、私に任せて………」

 

「で、でも………」

 

 

 

 

 

 

「お願い!!!」

 

 

「……っ!?」

 

 

「ありがとう……でも!本当に大丈夫だから!とにかく、先に帰って!」

 

 一般人である蒼夜を巻き込ませたくない……そう思考した千束は、自分でなんとか松下を探しに駆け出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

 

 

 

 

「(どこだ………どこに行った!?)」

 

 

 一方その頃、ジンを追っていたはずのたきなは、険しい表情で探し続けている。

 

 ついさっきまで、ジンをようやう追い付いたと思い、相手に気取られないよう隠れていた場所に向かって、すぐに銃を突きつけた。

 

 だが、そこには肝心のジンがおらず、来ていた防弾コートのみが残されていた。“まさか!”、とたきなは、慌ててそのコートを確認すると、襟元には小さく点滅する発信器。それが、ミズキが付けていた物だと、すぐに分かった。

 

 

 ────やられた!

 

 

 

 そう語ったたきなは、完全にジンを見失ってしまったのだ。

 

 

 

「(このままでは……千束達が危ない!)」

 

 クルミからの新たな連絡が無く、未だにジンを見つけていない。もしかしたら、既にジンは千束達に接触してしまったのかもしれない……考えるだけで、恐ろしく感じたたきなは、慌ててジンを必死に探し続けている。

 

 

「(一体、どこに………ぁ)」

 

 

 

 ーーとその時、たきなは“それ”を目撃する。

 

 東京駅の屋根の上。改修工事途中の足場の先に、巨大な時計の真上で、風で長髪を揺らしながら、サプレッサー付きの拳銃を下に向けて構えるジンの姿………

 

 

 

 

 

 その拳銃の先には………千束と松下の姿が見えた……

 

 

 

 

 

「───だめっ!!!」

 

 

 目を見開き、何も考えず足を動かすたきな。一気に走りだし、ジンの元に向かいながら、叫ぶように彼女を呼ぶ……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「千束、逃げて!!!!!」

 

 

「────っ!?」

 

 

 

 

 

 

 

バン!

 

 

 

 

キン!

 

 

 

 狙い撃とうとするジンの拳銃をたきなが一発で命中させ、同時に放ったジンの弾丸はズレてしまい、松下の車椅子の取っ手に直撃する。

 

 そして、そのまま体勢を崩さないままの勢いで、ジンに体当たりするたきな。だがその勢いを付けてしまったせいで、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

 

 

 

 

 

た、たきなああああぁぁぁぁああ!!

 

 

 

 その時、千束はたまらずたきなに叫んでいた……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ドォォォォン!!!

 

 

 

 

「うっ、………けっほ…!」

 

 ジンと共に工事現場へと落下したたきなは、背中の痛みによって、まともに声が出せず、むせてしまう。どうやらたきなは、工事でよく使われる土嚢を積み上げていた所に落ちたらしく、土嚢がクッション代わりのおかげで、幸いにも酷い外傷は見当たらない。

 

 何とか体勢を立て直そうと、体を起こそうとした時………右手に握っていたはずの拳銃が無いに気づく……

 

 

「しまっ…!」

 

 

 

 パシュッ!パシュッ!

 

 

「……っ!」

 

 

 

 

 拳銃を探そうとした瞬間、空気の抜けるような発砲音が数発聞こえた。

 

 

 

ーーーーー間違いない……ジンだ。

 

 

 

 そう思い、自身の拳銃を探すのを諦めたたきなは、必死に逃げる。急いでコンテナに紛れる様に駆け出し、坂を下ってその身を隠す。

 

「(恐らく……ジンは私を殺す気だ………なら!)……千束!松下さんを避難させてください!」

 

 インカムで千束にそう伝えると、その場から走り出すたきな。

 

 松下の暗殺を邪魔した自分を標的に変更し、殺しにかかるだろう……そう考えたたきなは、千束達がこの場から撤退する為の時間稼ぎとして、自ら囮として、ジンを引きつけようとしていた。

 

 ジンの銃撃を回避しながら、建築途中の改修部分の物陰に隠れ続けながら、再び移動するの繰り返し。だがそれでも、銃撃は止む事なく更に激しくなってきた。

 

 

 

「(よっし!このまま引きつれば……後はっ!)」

 

 

 

 今の所、順調…………と思ったその時………

 

 

 

 

 

 

 パシュッ!!!

 

 

 

 

 

 再び銃声を耳に聞こえた瞬間、弾丸の一つが、()()()()()()()()()()………

 

 

 

「────うぐっ!」

 

 

 急にやってきた痛みで足が縺れ、その場で体勢を崩してしまった。敵からの容赦の無い銃弾の雨は止まず、たきなの息の根を止めに来る。痛みを我慢しながら体勢を起こし、動かない足を引き摺りながら、なんとか近くのコンテナの物陰に隠れる事に成功した。

 

 

 

「(…………い、痛い……)」

 

 

 

 このままでは……殺されてしまう……

 

 

 その時、足の痛みを感じながら、たきなは思った。もしもここでジンを再び見失えば、今度こそ千束達が狙われる。それに、そこにミズキや蒼夜が近くにいたら、彼らも危ない……

 

 “それだけは絶対に阻止したい”っと、ジンを引きつける為たきなは、無理に立ちあがろうとした時………

 

 

 

 

 

カン!

 

 

 

 鉄骨を駆け抜く音が聞こえた………

 

 

 

 

 

「──────ぁ」

 

 

 

 

 その音に反応したたきなは、見上げた瞬間………そこには、ジンの姿が見えていた……

 

 

 

 ジンは、工事によって組み立てられた鉄骨によって敷き詰められた床を利用して上に登り、物陰に隠れたたきなを見つけた瞬間、銃口を向ける。

 

 逃げようにも隠れようにも、ジンの射程距離から推測すれば、もう間に合わない。

 

 その銃口が、ジンが、たきなの頭蓋を狙い撃とうとする。

 

 追い詰められたと思い込むたきなに、ジンは引き金を引こうと…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

………したその時………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

バン!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「───っ!?」

 

 

 

 

 

 

 銃声と共に、ジンの足元に火花が散らす。それに反応したジンは、素早くたきなから視線を変え、銃声が聞こえた方に目を向ける。

 

 

 

 その時、ジンが立っていた地面から……()()()が出てきた……

 

 

 

 

 

「(あの赤いのは………千束の!)」

 

 

 

 

 “千束が来てくれた!?”……そう思ったたきなは、ジンと同じ方向に目を向けると…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「───────え?」

 

 

 

 

 

 予想外な表情を出すたきな。なぜならそこには、“千束ではなかった”………

 

 

 

「(な、なんだこいつは……?)」

 

 

 

 同じく、全く予想外な事が起きた事で、内心で困惑するジン………

 

 

 

「(なんで………どうして“あの人”が……ここに!?)」

 

 

 

 

 状況が読み込めないたきなは、赤い煙が出てくる弾丸…非殺傷弾を使う人物を思い出す。

 

 

 

 一人は……リコリスで優秀(?)なファーストであり、たきなにとって今の相棒でもある、錦木千束。

 

 

 

 もう一人は………目の前にいる、全身黒いライダースーツに、ジンに向ける一丁の拳銃………

 

 

 

 

 

 

 

「(なんで……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……カボチャ頭がここに!?)」

 

 

 

 

 

 そして、未だに正体不明である、顔にカボチャを被っている謎の不審人物………

 

 

 

 

 

 その姿を見たたきなにとって、“10式改暴走事件”以来であった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「(ど、どうしょう………この後……どうすればいいの僕!?)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ちなみに、その正体が暁月蒼夜である事も、まだ知らない………

 

 

 

 

 

 

 

 

 






ジン「(なぜ頭に……カボチャを?)」

モブ主「(どないしよ!どないしよ!どないしよ!)」ガタガタ



次回もよろしくお願いします!
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