リコリコの世界にモブキャラとして転生したら、全てのモビルスーツシリーズが造れる件 作:フェルトファン
大変遅くなって申し訳ございません、ここで重要なお知らせがあります。
先月、歌手・さユりさんが亡くなりました。
リコリコED『花の塔』を初めて聴いて、ファンになりました。亡くなったとお知らせを知った私は、とてもショックを受けました。
数々の歌詞を作ってくれたさユリさん、本当にありがとうございました。
遅くなりましたが、ご冥福をお祈りします。
リコリス襲撃事件から数日、千束とたきなはDA本部に呼ばれていた。
部屋の中央にあるテーブルで向かい合うように座る二人は、ペンを使って紙に絵を描いていた。しかも二人が描いている絵は、DAにとって最も重要なものでもある。
四人のリコリスを襲撃した犯人である真島と接触したと、ミカから報告を聞いた楠木は、顔を目撃した千束とたきなを本部まで呼び出しだ。今まで防犯カメラに映っていなかったが、二人が目撃したのであれば、人物絵を描かせるしかなかった。
「せぇ〜のぉ!!」
そして、千束の掛け声と共にたきなも、それぞれ描き上げた似顔絵をリコリスの司令官である楠木に見せ付ける。二人が見せてきた似顔絵を目にした楠木は、彼女達に問いかけた。
「……それが真島か?」
「「はい!これが真島です!」」
━━と、自慢げに掛け声を上げる二人。
だが、ハッキリ言ってその似顔絵は
目にした楠木の表情は変えていないが、隣りに立っている秘書に関しては頭を抱えていた。
まず千束の似顔絵だが、服装こそ似てるが髪型や表情、何もかも違かった。
一方たきなの似顔絵に関しても、もはや真島とは似つかないどころか、完全に別人としか思えない。
正直、以前二人が描いたカボチャ頭の似顔絵の方がまだマシだった。
「ブッ!た、たきなw……なにそれぇ━━グフゥ〜w w w!!」
「なっ!……ち、千束こそ、それ漫画じゃないですか!」
たきなの絵の見てに思わず吹き出しう千束に、顔を赤くしながら千束の絵を指摘するたきな。お互いが描いた似顔絵に文句を言い合う中………
「全然、違うじゃねぇかぁ!!!!!」
━━と、期待していたのを裏切られたと思ったフキが痺れを切らし、プロジェクターからスクリーンに映し出された《《4枚の似顔絵(仮)》》を“バン!”と強く叩き、怒鳴り声を上げる。
ちなみに映し出されている似顔絵は、以前襲撃に遭ってしまった4人のリコリス達からの受け取った今の情報。重傷でありながらなんとか無事である彼女達が意識が戻ってからそれぞれが知る真島の素顔についていくつか話を聞かせてもらった。だが、どれも共通点が全く合わず、4枚とも全くの別人に見える。
そしてその四枚の絵を確認した二人は、どう感想するのかというと……
「いやだって……ねぇ〜」
「えぇ………なんというかその……」
「「似てない(です)し」」
「そういうから描かせてんだろぉが!!!!」
━━と、まるで自分達の方が上手いと主張する二人に、再び怒鳴り声を上げるフキ。対する千束もキレてしまい、迷わず言い返すのだった。
「ならフキが描けよ!ほら、この前描いたカボチャ頭みたいに!」
「あ、あれは見たから描けたんだし………そもそも!お前らしか真島を見てないんだから、描ける訳無いだろ!」
「……………あぁ〜そっか。」
「おまっ、ホントにアホだな!?」
ガヤガヤと騒ぐ千束とフキ。そんな光景を同じく眺めている少女……フキの相棒であるサクラは溜め息を吐き出しながら、呟いた。
「リコリスは絵も必修にするべきッスね〜」
「この前ゲームの絵しか描けない人が何を言っているんだか」ボソ
「ちょっとそこ、今の完全に聞こえましたスよ!それに言っておきますけど、この前フキ先輩が描いた超絶につまらなかったカボチャの似顔絵よりも、まだマシなんッスよ!」
「おいゴラァア、テメェそれどういう意味だぁ!?」
以前描いていた似顔絵をたきなにバカにされたと思い込むサクラも言い返すが、以前フキが描いたカボチャ頭の似顔絵をまるでバカにしたみたいな口調で思わず口に出してしまった。もちろんしれっと聞こえてしまったフキは彼女にも怒鳴り声を浴び、ヘッドロックを仕掛けた。
「もういい……真島についてはこちらで捜索する。問題なのは
━━と、痺れを切らした楠木はプロジェクターを操作し、先ほどの似顔絵とは別の映像を映し出した。
スクリーンに映し出されたのは、新たに現れた謎の巨大人型兵器……インパルスガンダムが武装するツナギの男達と相手をしていた時の映像だった。
残念な事にその映像には真島らしき姿は映っていないものの、その男の部下である男達が持っている武器よりも、圧倒的な武装を持つインパルスの方がまさに上だった。
そもそもDAがその映像を持っているのは、真島について報告したミカが送られていたのだった。当然その時の現場はクルミのドローンによって映したが、彼女の存在を隠す為にドローンを操作したのはミズキという事にしている。
「突然現れた4機の飛行物体が変形合体して、一つのロボットに変身………ってなんスかあれ。もはや完全に戦隊ロボじゃないっスか。一体いくつ持ってんすかあのカボチャ……」
「………おい千束………一応聞いておくが、これマジか?」
「うんマジって言うより、ガチだわ。なんなら私とたきなもめっちゃ目の前で見ていたんだよ。」
初めて映像を目にしたサクラに続き、フキは思わず千束に疑問の声をかける。実際二人は目撃していないのだが、映像から確認できるその迫力は、もはやSF映画でも観ているのかと思ってしまう程、信じられなかった。
二人だけでなく、先に映像を確認した楠木でさえも、表情は変えていないがそれでも驚きを隠せなかった。当然隣に立っている助手も驚いていた。インパルスが持つ圧倒的な武装力に驚くが、そもそも映像を出したのには別の疑問があった。
「ミカから送られた報告を目にしたんだが………つまりこういう事なのか?これまで襲撃された4人のリコリスを助けたのは、人型兵器を操れる謎の存在………カボチャ頭。」
そう言いながら楠木はスクリーン画面に新たな画像を写し出し、しかもそれは以前千束達が描いたカボチャ頭の似顔絵なのであった。
「はい、間違いありません。くr……私達の推測が正しければ、恐らくそうなのでないのかと……」
「はぁぁあ!?ちょ、ちょっと待ってくださいっス!いやそもそも、ロボットは百歩譲って、な〜んでリコリスを助ける必要があるんっスか!?」
間違いないと説明するたきなに、思わずツッコミを入れるサクラ。彼女の言う通り、そもそも4人のリコリスを助ける理由が分からない。しかも放置しないどころか、応急処置した彼女達をわざわざ病院まで運んでいた。
「(━━と、ミカからの報告を一通り読んでみたが……一体どういう事だ?そもそもコイツは何の目的で治療したんだ?リコリスからDAに関する情報を盗み出す為か………だとしたらおかしい。そもそも何故殺さずに、わざわざ病院送りしたんだ………だめだ、まだ何も分からん……)」
報告書を見通しただけで、頭が痛くなった楠木は内心でいくつかの疑問が思い浮かんでいた。これから襲撃犯だけでなく、未だに謎が深まるカボチャ頭に対する対策も考えないといけない。
「あの……司令。そろそろ上層部との会議が……」
その時、隣に立っている助手は逡巡した様子で楠木に声をかける。
「………分かった、すぐに行く。お前達はもう帰っていいぞ。」
━━と、千束とたきなにそう言い残した楠木は、助手と共に部屋から出て行った。そしてその場にはフキとサクラを合わせて四人だけ残される事になった。
「あぁあ!!そういえば楠木さん、私が描いた絵の感想を言ってない!!」
「なっ……私のもです!!」
「いや、お前らの絵は使えないだろが……」
自分達が描いた真島の似顔絵について何も語ってくれなかった事に少しショックを受ける二人に、哀れな目で見るフキはツッコミを入れる。
その言葉を聞いた二人は、フキに反撃するのだった。
「な〜に言ってんのさフキ!!」
「そうです!こんな事言うのもあれなんですけど……貴方だけに言われたくありません!」
「は、はぁ!?な、何でだよ……?」
「「だってフキ(さん)の絵━━━
なんか普通だし……」」
「悪かったなぁ普通で!!!つーか何で不満そうな目で見るんだ、別にいいだろ!?」
「おぉ〜やっぱそう思うっスよね〜!先輩の絵はなんか微妙でつまんなくt「お前はお前で一言余計なんだよぉ!!」…イダダダダ!ちょ、ギブギブギブ〜」
自身のカボチャ頭の似顔絵を不満そうな表情で感想を語る二人に怒鳴り声を上げるフキは、さっきよりも強めに力を入れ、再びサクラにヘッドロックを仕掛けた。
千束とたきながリコリコへ戻れるのは、もう少し後になりそうである……
だがこの時、同じく今回の件に関して別の組織も動いていた……
港に留めた一隻の大型貨物船の中にある真島一派のアジト。その内の一室に置いてあるパソコンを眺める真島は、砂糖入りの珈琲を飲みながら画面に映っている録画映像を観ていた。
画面に映し出されていたのは、今までとは苦戦していた赤服のリコリス………千束との戦闘映像だった。
『避けてんのかなぁ……もしかして、アンタの射撃が下手なんじゃないのかぁ?』
「いいや、この距離で外す訳ねぇ。しかもこの後、コイツ迷いなく撃ち返してるだろ?当たらないと分かってなきゃできない事だ。」
通信越しから協力関係となったロボ太の問いに、すぐ答える真島。映像から確認する千束の動きは、真島が発砲した銃弾をいとも簡単に躱していた。もはや人間離れと言わんばかりの技術を持つ彼女は、首元にかけてあるアランのペンダントを持っているなら納得できる。
だが、問題なのはリコリスだけでなかった。
「なぁハッカー……コイツの居所、まだ見つからねーのか?」
そうロボ太に問い詰めながら真島は、パソコンに映る映像を切り替えた。映し出されたのは、後一歩の所で追い詰めようとするリコリスの前に突然と現れたインパルスガンダムの姿。部下達がアサルトやロケットランチャーで応戦するも、全く歯が立たなかった。逆にインパルスの圧倒的な武装力に負けてしまい、殺してはいないものの次々と部下達をアッサリ撃退した。
『いやその………調べたのは調べたけど、全くそれらしき情報が出て来なかったぞ。一応知り合いのハッカー達に調べてもらったけど、ほとんどお手上げ状態だぜ。』
「━━ッチ……まぁいい。この合体ロボットもそうだが、その他の奴らはどうなんだ?つーか一体どこの誰が、どうやって造られたんだ?」
『(おいコイツ、舌打ちしたぞ……)さ、さぁそこまではまだ分かってないな。ただ、今の日本の技術で造るのも難しいし………かといってあのビーム兵器を造れるなんて、数百年後の未来の技術力じゃないと無理だぞ。』
「みたいだな……それよりコイツすげー合体方法だな。空中で合体なんて、もう完全にゲッ◯ーロボじゃねーか。」
『あぁ……この変形合体の技術はアメリカかロシア……いや無理だな。いくらトップクラスの軍事力を持つ国でも、流石にあんな変形合体を造れる技術を持ってないし。』
「それに見てみろよコイツの動き……人間みたいじゃねーか。どうやって再現したんだよ、コイツ絶対に特撮かアニメの世界からやってきたんだろ。」
『いやどうだろうなぁ〜……アランという説もあり得なくはないけど……でもまぁ、このロボットを造ったのが宇宙人だったら、何となく納得するわ。もしも宇宙人が実在するなら、オカルト好きの人が泣いて大喜びするぞ。』
「これまで地上、空、海、そして宇宙にも現れたんだ。しかも今度は変形合体を持つやべーのがいたんだぞ!なぁハッカー、次はどんな奴が現れると思う!?」
『えぇ!?そ、それは……』
「島ごとぶっ放すビーム砲か、それとも俺達が知らない未知のエネルギー源を使っているのか………あぁ〜だめだ、想像するだけで興奮するぜ!!」
『…………』
「でよ、コイツらをどう探すか何だけd『あ、あのさぁ……』━━あ?」
『その…なんていうかさ………僕が言うのもあれなんだけど………
巨大人型兵器について話し合った途端、通信越しから聞こえる真島の口数は明らかに増えている。
流石のロボ太も違和感を感じ、思わず尋ねてしまった。そしてその問いを聞いた真島はニヤリと笑い、今度はロボ太の方にも問い返した。
「なぁハッカー……
目の前に実在しない
『━━━は?』
「ガキの頃……テレビや映画で観たんだ。街を壊す怪獣、悪を倒すヒーロー、そしてロボットアニメ………特にSFの映画なんかも面白かったぜ。けど、成長していくうちに分かったんだ……“どれも全部、嘘の世界にしか存在しない”なんつって。」
戸惑うロボ太を気にせず喋り出す真島。テレビに映る特撮やロボットアニメなんかは全て、非現実としか思えない。実在するはずがない………そう思っていた。
「だけど突然現れたんだ………あの自衛隊の新型戦車をぶっ壊した巨大ロボット!ビーム兵器に、ビームの剣を使ったんだ……それだけじゃない!戦闘機に変形したり、海でレールガンをぶっ放したり、今度は宇宙にも現れたんだ!そしてついに……俺の前にも現れたんだ……」
これまで現れたMSを思い返す真島は、興奮するかのように口数が増えていく。そして先日に真島一派の前に現れたMS……インパルスガンダムを近くで目にした真島は、語ろうとする。
「俺は今まで信じてなかった………だが、目の前に現れたあの合体ロボが、俺の中に潜む心が蘇ったんだ!分かるかハッカー………
『…………』
「だからこそだ………俺は手に入れたい!そしてこの兵器を造った奴を探してやる!どうやって造ったのか、ソイツは一体誰なのか!?例えそいつが宇宙人だろうがな!」
今までにない興奮する真島の声を聞いたロボ太は、ドン引きする。同時に“とんでもない奴と手を組んでしまった…”と内心で語っていた。
「とりあえず探すだけ探せハッカー……絶対に何かあるはずだ。」
━━と、そう言いながら真島は画面に映し出したインパルスに拳銃を突き付けて、不気味な笑みで問い詰める……
「千束、私達もそろそろ戻りましょう。お店の手伝いもしなければなりませんし。」
「あ〜うん。ちょっと待ってね〜」
一通りの報告を終えた二人は、リコリコへ戻ろうとする。そんな中、千束は未だにスクリーンに写っているカボチャ頭の似顔絵を目にする。
そして彼女も、画面に向けて問い詰めた……
「なぁロボット野郎、お前は━━」
「カボチャ君……君は━━━」
一方その頃、楠木はというと……
「━━━っ」
「あ、あの……司令……本当に大丈夫ですか?」
「全く、これから上層部に説明しなければならないのに……真島や新たに現れた巨大人型兵器……そして襲撃したリコリスの治療をしたのはアンノウンであると………全く、上にどう説明しろっていうのだ━━」ブツブツ
「…………司令……やはり休んだ方が…」
「平気だ……それより━━
追加で薬を買ってきてくれ。」
━━と、愚痴を呟きながら
★☆★☆★
二つの組織が謎の巨大人型兵器について動く中、今日も喫茶店リコリコでの仕事が始まるのだった。
「(よっし、これで終わったと…)」
開店前の掃除を済まし、後はカウンター内に置いてある調理具を整理しようとする蒼夜の前に、店の扉にある鐘の音が鳴った。
“カラン、コロン〜♪”
「やぁミカ……珈琲を一つ頼む。」
視線を向けると、そこに中年の男性が立っていた。
「い……いら……しゃい……ませ……」
「おや?君は………ミカはいないのかい?それに、千束ちゃんもたきなちゃんもお休みかな……珍しいね。」
中年男から“ミカ”というのは、おそらく店長の事だろうと何となく察した蒼夜は、男の問いに答えようとする。
「て、店長は………こ、コーヒー………豆の替えを……さが…しに…行って…ます。ち、千束さん……とたきな…さんは……用事で……どこかへ………行ってい……す…」
「そうか……なら、ミカが来るまで座って待つよ。」
「あ、あの……店長を…呼びm「あぁ〜いいよそんな事しなくて。ミカが来るまで待つからさ。」…は、はぁ……」
相変わらず言葉足らずだが、何とか問いに答える事ができた蒼夜は一安心する。その際に男はカウンター席に座り、ミカが来るまで待つ事にした。
店長であるミカや、千束とたきなの事をまるで以前から知っているかのような口調で話していた。一体どういう関係なのかと気になる蒼夜だが、なかなか尋ねる勇気が出なかった。
「(なんか店長に用事があるらしいんだけど、本当に呼ばなくていいかな?でもなんか大事な話があるかもしれないし、やっぱり呼んだ方g━━━ヒィっ!?)」
ミカを呼んだ方が良いのかと悩みながら視線を振り返ると、何やら男は蒼夜の方をじっと見つめていた。気づいた蒼夜は驚き、思わず視線を逸らしてしまう。
「(な、なになになに!?なんか物凄く僕の事を見つめているんだけど!?か、顔に何かついてるの!?)」
リコリコで仕事を始めてから、客や常連客達から興味津々な目で見ていた。もちろん何とか慣れているが、カウンターの席に座っている中年の男性は今までにない視線で、じっと見つめている。
ハッキリ言って普通に怖い……そう内心で語る蒼夜は疑問を抱いていた。怖がりながらみ、恐る恐ると男性に尋ねようと口を開く。
「あ……あの……」
「ん……あぁいやすまない、見ない顔だと思ってつい。ところで君は……もしかして新人かい?」
「はい………その……は、初め……まして……」
「そうなのかい、それは知らなかった。一応名前も聞いてもいいかな?」
「………あ、暁月……蒼夜…です。」
「そうかそうか……なるほど君が
「あぇ……ど……どうも……」
「ハハハ、そう固くならなくていいよ暁月君。」
━━と、中年の男性……吉松シンジは柔らかい表情で、軽く笑っていた。お互いに自己紹介を済ました時、蒼夜は電源が付いているテレビから音が流れている事に気づく。
「す、すみま…せん。テ、レビ…けs「いや、大丈夫だ。消さなくていいよ。」…えぁ…わ、分かりま…した。」
テレビの付けっ放しは良くないと思った蒼夜は電源を切ろうとしたら、吉松に止められた。何か気になる番組でもあるのかと気になった蒼夜は思わず視線を向けると、画面には報道ニュースが流れていた。
そうやらどこかの音楽コンクールで取材として生中継を行われているらしい。
「そうだ……君、すまないが隣に座ってくれないかい?」
「(━━━え゛ぇ、きゅ、急に何!?)いや、その……「少しだけでいい。」……は、はぁ…」
いきなり隣に座って欲しいと頼む吉松に、疑問と同時に思わず目が点になった蒼夜。流石に意味不明で戸惑いを隠せないのだが、とりあえず隣に座る事にした。
「(とりあえず座ったけど……こっからどうすればいいの!?千束さん達はいないけど、店長やクルミさんを呼べるかもしれない………けど、呼びに行ける状況でもないし……ど、どうすればいいの〜!!)」
いつもだったら千束達からのアドバイスを受けていたが、困った事にこの場には蒼夜しかいない。しかも、今日会ったばかりの吉松とどう会話すれば良いのか分からず、そもそも何故“隣に座って欲しい”よ意味不明な頼み事をするのかも理解ができない。疑問を抱きながらも蒼夜は、恐る恐ると尋ねようとする。
「あの……どうs━「彼、素晴らしいと思わないか?」━━へぇ?」
「彼だよ、
そう言いながら吉松はテレビの方に指を差した。
報道の生中継として映っている音楽コンクール。報道のメインとして映し出している男性は音楽家で、今回のコンクールで賞を受賞した発表された。
受賞できた事に喜んでいるのか、感極まった表情で涙ながらも感謝の気持ちを記者達に伝え続けた。
その際、男の首元に
「(あれって………錦木さんの首につけているやつと同じなんじゃ……)」
「本当に素晴らしい音楽だったよ。これで彼も、彼自身の素晴らしい才能が世界に届けられる………やはり、アランは素晴らしい人物だ。」
━━と、吉松の口から“アラン”という言葉を聞き、記憶を思い返す。
それは先月、水族館で千束が見せてくれた梟のチャーム。それが謎の支援団体『アラン機関』と呼ばれ、才能がある者達に様々な支援をさせている。そして、その機関のトップである者の名は、アラン・アダムズと呼ばれている。
音楽家の男が涙ながらも何度も感謝の言葉を語っているのは、自身を救ってくれたアランに対する感謝だった。
「病のせいで不自由な身体になってしまった彼に、最新の治療を無償で提供したというのだよ。彼のような素晴らしい才能は、必ず世界に届けられなければならない。」
「へ、へぇ〜……(確かにすごいけど……でもやっぱりなんか胡散臭いんだよなぁ〜)」
無償で治療を提供するアランについて語る吉松。だが蒼夜に関しては、にわかに信じていなかった。無償で支援してくれるのは確かにすごい事なのだが、未だに分からない謎の組織が支援する金を持っているのだろうかと、疑問を抱く。
不審に思った蒼夜は、ヴェーダに調べてもらおうと一瞬考えてみたが………
「(…………いや、やっぱやめとこ。逆に目をつけられたら、なんか怖いし…)」
━━と内心でそう語る彼は、再びテレビの方へ視線を向けようとする。
「そういえば暁月君、君は“才能”についてどう思うんだい?」
「━━━へぇ?」
視線を変えた途端、隣でいきなり問いかけてきた吉松に、思わず間抜けな声を出してしまう蒼夜。突然でなんて答えれば良いのか分からず、頭の中に浮かぶ言葉を出すしかできなかった。
「す、すみま……せん………わかり……ません………」
「ふむ………では代わりに私が答えよう。才能とは、神から与えられたギフトだ。」
「か……かみ?」
「そうだ、才能とはとても素晴らしいものだ。どんな形であれ、それは世界を発展させたり、多くの者達よりも超える大きな力とも言えるのだよ。」
「(………あれ、何だろう。なんか自分に似ているような何かを感じをするんだが……気のせいかな……)」
才能について代わりに答える吉松の言葉に、
「あの……ぼ、僕……もどr…「少し待ちたまえ暁月君。」━━ヒェ!?」
「仕事の邪魔をしてしまうのは申し訳ないが、もう少しだけ君に聞きたい事があるんだ。」
そう言いながら吉松は立ちあがろうとする蒼夜の肩を掴み、再び問いかけてきた。突然で再び間抜けな声を漏らしまった蒼夜は、驚愕する。
「(ちょ、ちょちょちょっと急に何ですかぁ!?まだ僕に聞きたい事があるの!?)な、なん……でしょ…かぁ……?」
「仕事を邪魔してしまってすまない、後でちゃんとミカに説明するよ。何より━━━」
「ヒェエ……」
「君はさっき才能についてあまり知識を持っていないし。ちょうど良い機会だから、私が教えるとしよう。」
━━と、懸命に教えようとする吉松の目を目にした蒼夜は、怖気で小さな悲鳴を漏らしてしまう。
先程よりも怖く、もはや泣きそうになるくらいの視線だった。今すぐにでも離れたいが、相手の目は蒼夜の方をじっと見つめており、まるで何かに縛られて動かなくなった。
「(………ヤバい………ヤバい………ヤバいよヤバいよヤバいよ!!!この人、めっちゃくちゃ怖いんですけど〜!?店長、早く戻ってきてぇ!!錦木さん、井ノ上さん、ミズキさん!クルミさんも、誰でもいいから……誰か助けてぇぇえ!!!)」
「シンジ、あまり暁月君を困らせるんじゃない。」
内心で困惑する蒼夜は必死で千束達に助けを求めていた時、二人の前に呆れた顔をするミカが現れた。
「(て、てんちょぉぉぉぉ〜!!)」
いち早くその声に反応した蒼夜は、今にでも泣きそうな顔になり、“やっと解放される”と言わんがなりな表情を見せた。そんな彼の様子を目にしたミカは何となく察し、ため息を吐いた。
「………一体彼に何を話したんだ?」
「いや何、アランの素晴らしさについて教えさせようと思ったんだが……どうやら怖らがせてしまったようだね。いや、本当に申し訳ないね。」
「ハァァァ……すまない暁月君、彼の接客は私に任せてくれ。ついでにで悪いが、押し入れの隣に置いてあった物を厨房にまで運んで欲しい。」
「は……はい………」
ようやくカウンター席から立ち上がった蒼夜は、ミカが言う場所へ向かおうとする。その際、吉松が手を振りながら“また会おう”と満面な笑みで声をかけるが、結局何も言い返してくれなかった。
「おや、どうやら私の事を怖い人だと思われてしまったね。」
「自業自得だぞ全く……いくら何でも、あれは流石に怖がるぞ。」
「ハハハ!いや何、つい久々に熱くなってしまってね。」
そう軽く笑う吉松は、ミカから受け取った珈琲を飲んだ。
「(あれが暁月蒼夜………たきなちゃんとは同じかと思ったが………
そう内心で語る吉松だが、彼でさえも気づいていなかった。
まさか……自身が探し求めていた巨大人型兵器を造った正体が、近くにいたとは……
「おぃ〜蒼夜。ミカが持ってて欲しい物はここにあるぞ。」
「くる……みさ……ぃあ……そ、その………あ、あり……だと……ざいま━━」ガタガタ
「…………おい……大丈夫か?」
いつもより怯えている蒼夜の様子をたまたま目にしたクルミは、若干ドン引きしていた。
何度もお伝えしますが、大変遅くなってすみません。
次回も遅くなるかもしれませんが、なるべく早めに投稿できるよう頑張ります。
感想と誤字報告もよろしくお願いします。