リコリコの世界にモブキャラとして転生したら、全てのモビルスーツシリーズが造れる件   作:フェルトファン

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 まず、お気に入りに入れてくださった皆様、感想をくださった方、ありがとうございます!

 非常にマイペースに進めておりますが、今後とも楽しんでいただければ幸いです。

……というわけで、本編第3話となります。


 今回の話は、リコリコキャラがメインなので、一般人君の登場は、か〜なり少ないです。








Episode 3  The Suspicious Person

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

東京─────とある海岸沿いの廃工場地帯

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 普通であれば一般人がそこを通ることはまず出来ない。観光ツアーや肝試しなどであれば、入ることは出来るかもしれないが。職員や関係者でもなければ、許可も無く入ることが出来ない場所だ。

 

「あ〜〜〜全く!なーんでDA直属の依頼がよりにもよってこんな所での依頼なんだーーーって感じ!おまけに、物を盗みに行くって私達は泥棒かー!おのれDAー楠木さんめー!」

 

「千束、あんまりそれ以上言うとまたフキさん達に色々と言われますよ。それと盗みに行くのではなく、()()()()()です。」

 

 そんな特殊な場所ではあるが、何気ない会話をしながら千束とたきなは歩いていく。まるでこれが、ごく当たり前のことのように。

 

 千束は喫茶リコリコにいた時とは違い、赤い学生服を着ており、一方のたきなは紺の学生服を着ている。

 

 もちろん、彼女達は観光ツアーなどで入ったわけではないし、肝試しを体験しに来たのでもない。はっきり言って、こんなところに入ることはまずもって不可能であり、着てくる格好としても不適当だと誰が見ても思うが、彼女達にとってこれは仕事着であり、今回はここが仕事場なのである。

 

 

 彼女達は喫茶リコリコの店員であると同時に、もう一つの顔を持っている。

 

 

 

 

 

 それは─────()()()()としての顔である……

 

 

 リコリスとは、DA【Direct Attack】と呼ばれる、日本の治安維持を目的として結成された組織の実行部隊のエージェントであり、女子高生程度の年齢の女子のみで構成されている。

 

 テロリストや犯罪者等、日本の平和を脅かす者を秘密裏に処理することが目的であり、それだけ聞けば映画でよくある、平和を守る秘密組織として捉えられるのかもしれない。

 

 だが、この組織自体かなりグレー、というより黒い部分がかなり多くあり、それが原因で以前、とある大きな事件が発生しかけた。だが、それも全て、アトラクションのPRの一環ということにされたのだが……といった具合に、実はかなりな隠蔽体質の組織でもある。

 

 そんなリコリスにこの2人も所属しているのだが、……彼女達のメインの職業はリコリスであり、たきなに関しては、1ヶ月くらい前の事件のきっかけでDAから移されたのだ。簡単に言えば、半分クビになっているような状況。そんな彼女達は現在は喫茶リコリコにいながら、DAが受けないような依頼ごとの対応をメインにしつつ、それ以外の日常のお困りごとの解決も行うという、町の御用聞きなんかも行っている。

 

 そして時には、こうしてDAから来る依頼を対応することもある。

 

 なので、喫茶リコリコ自体もただの一喫茶店ながら、その実DAの支部の一つであり。ミカやミズキもまたDAの関係者であり、同時に千束とたきなの協力者でもあるのだ。

 

 今回もまた、いざという時の逃走用の足、ではないが、万が一も兼ね、廃墟の近くの駐車場で、ミズキが車に乗り最悪の事態に備えて待機している。一方ミカは、遠距離からの援護もあり、どこかのビルの屋上で狙撃銃を用意する。

 

 なお、クルミはDAの者ではないが、ある方法で彼女達をサポートしている、協力者の一人だ。

 

『おーい千束ー、たきなー、聞こえてるか〜?相手や他のリコリスに気づかれないようにお前達の服に追尾機を付けさせてるからな。それでずっとお前達の位置情報が分かるから、何かあった時の脱出経路も常にマッピングしてあるから安心しとけよ〜。』

 

 耳に装着している通信機から声が聞こえ、後ろを振り向くと、遠くから黄色いドローンが機械音と共に、ゆっくりと自分達を追跡している。

 

 声の主は、喫茶リコリコ内の、いわゆるスタッフが使う休憩室の押し入れにいる。

複数のモニターを駆使し、大量のデータを同時で確認しつつ、顔にはいわゆるVRゴーグルを装着している。

 

 2人のモニタリングを常に行いながら、彼女達の耳に付けている通信機宛に連絡を取っているのは、あのクルミだ。

 

 実はクルミには、千束やたきなのリコリスとしての顔、と同じように、もう一つ別の顔がある。

 

 それは、彼女がDAでは無く、"ウォールナット"という名の、その界隈では最も有名なハッカーとして知られている人物だ。つい先月、色々あって今は“()()()()()()()“になっている。

 

 見た目は普通の子供なのだが、その能力や趣味など含め、わからない点の方が多いのだが、それでも喫茶リコリコにとって欠かすことの出来ない、信頼出来る大切な仲間であり従業員だ。歳は不明……

 

 

 話を戻し、では何故今回、こんな特殊な場所を歩いているのか……

 

 

 

─────それは、今回の依頼は……ターゲットの捕縛とそれ以外の敵対戦力の無力化&()()()()()()()()()()である……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 時は戻り、2日前の夜─────

 

 

 

 

 

 

「千束、楠木からだ。」

 

 

 喫茶リコリコの営業が終了するかしないかというタイミングで電話を持つミカが千束に尋ねる。相手は、クルミ以外の誰もがよく知っている、DAの司令官である楠木という人物からであった。 

 

 そんな楠木からだと言い、ミカは千束に電話を替わるように渡す。

 

「もしもーし。千束はいませーん。また後でかけなおしてくださーい。」

 

 通話相手を変えた途端に早速いたずら半分本気半分で電話を替わるが、もはやその冗談にも慣れているのか一切怒ることもなく楠木は会話を続ける。

 

『相変わらず口の減らない生意気なクソガキだ。お前達2人に頼みたい仕事がある。引き受けてくれるな?』

 

「い〜や〜で〜す。あ!定期健診永久パスさせてくれるなら考えま〜す。」

 

 仕事の依頼に対しても千束は冗談を返すが、そんな千束の冗談を一切無視し、楠木は話を進めていく。

 

『2日後東京近くの廃工場地帯で複数人の傭兵部隊が潜んでいる。そこにフキとサクラも向かう予定だ。お前達は彼女達の増援だ。』

 

「フキさんと………サクラさんもですか?」

 

「……なんで私達なんですか?そっちはフキ達だけで十分でしょ?」

 

 フキというのは、彼女の元同僚であり、リコリスの中でもファーストと呼ばれる、エース的な扱いをされている存在だ。

 

 実を言えば千束もファーストであるが、実力だけで言えば千束の方がフキより上であり、その実力から、DA内部では"最強のリコリス"と呼ばれているのだ。

 

 なのだが、そんな力の差がありながらも互いが互いを意識しているため、わかりやすく言えばライバル、もっと言えば犬猿の仲のような立場でもある。ただ、その様子を見ている人からすれば、ケンカするほど仲がいい、っというようにも見える腐れ縁的な関係だ。

 

 ちなみにサクラと言う物はフキの現相棒であり、そんな仲間や他にもリコリスが多くいるDA本部が行えばいいっと千束は楠木に提案するが……

 

 

『………1か月ほど前からだ。』

 

 

 電話越しだが突如それまでとは話し方の雰囲気が変わり、楠木は語り始めた。

 

『1か月ほど前から、陸上自衛隊の基地で厳密に保管してたはずの『10式戦車改』……通称10式改は、何者かによって盗まれてしまった。しかも相手は、謎の傭兵部隊だ。』

 

「10式………って、あのバカでっかい戦車を盗んだの!?」

 

「ですが司令、今日のニュースで流れているのは……」

 

 今日の昼、確かに10式改はニュースに流れていた。もしも盗まれていたのなら、なぜ自衛隊の基地にあるのか……楠木はすぐに答えを出す。

 

『本来は2機も保管していたんだ。一つはさっきたきなが言ったのはあくまで観察用……だがもう一つは厄介でな。』

 

「?……厄介とは……」

 

()()()()だ。装備してある武器は全て本物の実弾だ。それに、もし間違えて街中で使用すれば、当たり一面大惨事になる可能性だってあし、……()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。』

 

「「!!」」

 

 大勢の死者……それが本当のことながらも、一つため息を吐く千束とたきな。その場にいるミカとミズキ……そして別の部屋の押し入れの中にいるクルミも驚きを隠せない。

 

『そこでだ、一部の政府から我々DAに依頼を送られたのだ。それが今回の任務だ。今から三日前、ラジアータの解析による自衛隊の基地の防犯カメラに移っていた傭兵の一人を発見した。場所は、廃工場地帯……よって作戦は、ターゲットの捕縛とそれ以外の敵対戦力の無力化………もしも抵抗があれば、すぐに()()。』

 

「そして……盗まれた10式改を奪還せよ……って事ですね楠木司令。」

 

『そうだ。それともう一つ政府からの指令がある。奪還作戦の際、絶対に10式改を動かさないことだ。もしもそれが動き出し、街中で被害が起こしてしまったら、今後の自衛隊の信頼………国としての信頼も無くなるっと言う事だ。』

 

「つまり穏便に済ましてほしいってことか………確かに……この作戦にはサードを向かわせる事は難しいな。」

 

 

 サードというのはリコリスのランクであり、一番下でもある。

 

 

 上からファースト、セカンド、サードとなっており、制服の色もそれぞれ赤・紺・ベージュとなっている。基本的に小さい事件に関してはサードに任せている仕事が多い。だが、今回の作戦に関してはファーストやセカンドに行かせた方が適正である。

 

『作戦は二日後………場所は海岸沿いの廃工場………』

 

 

 

 

 

 

「━━━とはいったものの、本当にあのバカデカい戦車がここにあるのかねぇ~たきなさんや~。」

 

 

 

 

 そして話は戻り現在……

 

 楠木から作戦について聞いた千束は、一映画好き故に見てみたい、という興味本位はあるが……実際は少し疑っている。こうして彼女達は仕事を承諾し、こうして現在他の場所で何処か突入しているだろうフキ達と合流すべく、廃工場に中に入っているっというわけだ。

 

 また、もし本当に傭兵の一人が10式改を動かしてしまった場合、すぐに対策を考えるため、司令部からもドローンを飛ばす。探せば分かるが、こうして外であっちこっちDAのドローンを飛ばしている。

 

 ちなみに……クルミが飛ばしているドローンは、DAに見つからないよう上手く遠くで飛んでいながら、千束達を見守っている。

 

 廃工場に侵入してから数分………たきなは周辺の警戒をしていたが、ポン、と肩を千束に叩かれて意識を戻した。

 

「さぁってっとぉ……どう、たきな?()()()()()()()()()?」

 

「……確認できているのは、三つ先の角に一人と、南の方に潜んでいる一人です。」

 

 

 まるで、世間話でもしながら……といった様子で歩き出した二人だが、内容は不穏なものだった。それと言うのもこの数分間、千束とたきながここへ侵入してくる事は、恐らく読めているだろう。だが、そんな事は建物に侵入してからとっくに気づいていたのだ……

 

 

「いやはや〜、モテる女は辛いですなぁ〜。とはいえ、流石にずっと私達の事を覗き見するのは嬉しくないし、そろそろやっちゃう……物理的に?」

 

「……彼等は恐らく傭兵です。という事は、仕事を依頼した人間……または戦車の強奪作戦の計画を立てた人が居るはずですね。」

 

「う〜ん、だと思うよ。だってほら、あんなデッカい戦車をゲットしたんだから、それなりの警備をつけるよね〜」

 

 

 戦闘部隊の様に行う尾行であり、ただ姿を隠すのみならず、戦闘で優位の得られる配置を意識していた。だからこそ、リコリスには分かりやすかった。今日は上空からドローンでクルミが監視しているため、動きも把握できる。

 

 問題なのは、この事態にどう対処するかだ。

 

 

「いずれにせよ、先手を取られるのは危険です。仕込みは済ませていますし、上手いタイミングでこちらから仕掛けましょう。」

 

「ラジャー!よ〜し!麗しい乙女の魅力で、傭兵さんも虜にしてみせようぞ〜!」

 

「…………」

 

 千束は唐突に、変なポーズを作って決めた。変としか言いようのないポーズを……思わず足を止めるたきな。

 

「………」

 

「………」

 

「………」

 

「………」

 

「………すみません、早くツッコんでください、お願いしますたきな様……」

 

……な、なんでやねん……

 

 

 正直、他人のふりをしたかったけれど、顔を真っ赤に涙目な千束を無視も出来ず、軽く裏手チョップでツッコむたきなだった。その姿は、外の雰囲気が似合わず、これから命懸けの戦いをするとは思えない、ごく普通の女子高生にしか見えない……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「先輩、命令についてなんとなくわかったんですけど……あのデカい戦車をどうやって回収するんっすか?大体、私達戦車を操縦した事なんて一度もないっすよ。」

 

「余計なこと言うな。それに今は戦車の事を気にするな、今は司令からの命令……テロリストの捕獲に集中しろ。」

 

 一方、千束達と離れた所に歩き回りながら、相手の視界に入らないようつけていく2人組のリコリス。

 

 千束とたきなが着ていたものと同じ、赤い制服を着た()()()()と、紺の制服を着たその現パートナーの()()()()()は、今回彼女達と同じ作戦に実行している最中である。

 

 その理由については、大体事前に楠木司令から聞かされているフキ達もこの作戦についてすぐに承諾した。尤も、司令からの命令を断るなど、リコリスとしてあり得ないのだが……

 

「まぁそりゃ、私だって自衛隊の新しい戦車……10式改でしたっけ?それくらいは知ってますけど………にしたって自衛隊って結構セキュリティ甘すぎなんじゃないっすか……あの戦車を簡単に基地から盗まれてしまって。」

 

「サクラ、それ以上言うな。グダグダ言ってないで、さっさと終わらせるぞ。」

 

 サクラの軽口をフキが流す。この2人がコンビになってからしばらくが経つが、2人にとっても当たり前となったやり取りをしつつ、フキとサクラはバレないようテロリスト達が潜む廃工場に潜入する。

 

「(……まぁ、サクラの言いたいことはよく分かるがな……)」

 

……と言いつつ、実際のところ、口には出さないがフキも少しだけ疑問に思っていた。

 

 そもそもなぜそんな秘密兵器をこっそりと基地からテロリストか傭兵なのかも分からない組織に盗まれることができたのか……むしろ、どうやって実行したのかも気になる。

 

 そんな考えをするフキは、ファーストを長年努めているフキからしてみても想定外の、前代未聞の出来事だった。正直、知りたいのだが……それでも命令とあっては仕事をこなす他ない。そう思い、思考するのを一度止める。

 

「(だけど………まさか増援が()()()()だとは思わなかったな。)」

 

 アイツらとは……千束とたきなの事だろう。落ち着いて考えれば直近のDA支部である喫茶リコリコ以外居ないのは自明の理だが、過去の作戦やその後のイザコザもあり暫くは一緒に行動することも無いだろう思っていた矢先に今回の作戦だ。

 

「…………しっかし、本当に捕獲するだけでいいんすか?」

 

「あぁ、それが司令からの命令だ。できるだけ生かしておく必要があるとさ。」

 

 

 色々と言いたい事はあるが、今はそんな暇はない。とは言え、この現場にいるリコリスは千束、たきな、フキ、そしてサクラの四人だけである。

 

 その時………

 

 

 

 

 

 

 

パァン!パァン!

 

 

 

 

 

 

 

 

「(!……もう始まってるな…)サクラ、行くぞ!」

 

「了解っす!」

 

 

 

 

 銃声音が聞こえた同時に出す作戦実行の合図。二人は、銃声音が聞こえた方向へ駆け出す……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ー銃声音が鳴る前の時ー

 

 

 

 

 

「チッ、本当に一体いつまでここにいなきゃならねーんだ……」

 

 

 長髪の男──傭兵達のリーダーを務める男は、悪態をついていた。

 

 

 依頼主による『10式戦車改』の強奪には成功したものの……今度は海の向こうへ運ばなければならない。そのため、貨物船が来るまでこの廃工場に隠れながら、待ち続けている。

 

「(俺達は、便利屋だとでも思っているのか!?)」

 

 自分達が軽んじられている事も、そして訳の分からない戦車の強奪。何よりも、こんな依頼を受けざるを得ない現状に、腹が立った。

 

 けれども、腹を立てているだけで生活は出来ない。愛する家族と、気の置けない仲間達を養う為、男はこの作戦に参加する事を決意したのだ。

 

 

 

「全員、配置につけ。奴らが侵入してきた……実弾を装填しろ。生き残りたかったら決して侮るな。子供を装ってる殺し屋と思え……」

 

 

 通信機片手に、男は海岸沿いの商業施設の廃工場内で待機する。

 

 誰もが無言のまま各自それぞれの役割を果たそうっと、目的地へ向かう。確認を取ると、既に他のチームが二班、遠方のビルにもチームが一班、到着していた。

 

 

「なぁリーダー、本当にこんな所に噂の“リコリス“が来るのか?」

 

「仕方ねーだろ……“ハッカー”の情報だそうだ。あの戦車を見回りしなきゃならねぇんだ。それに……明日の夜中に船が来る…それまでに死守しろだってさ……」

 

「けっ、マジかよ……結局また今日も退屈な1日になんのかよ……」

 

「そう言うな、明日で全てが終わる。」

 

 傭兵の仲間の一人が文句を言うが、家族を養いにはこうするしかない。何よりこの計画を成功させれば、今まで以上の報酬が貰えるかも知れない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『あ〜あ〜、テステス。ただいまマイクのテスト中〜本日は、晴天の霹靂なり〜』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ところが突然、配電盤も死んでいるはずなのに、愛らしい声の館内放送が始まったからである。途端、リーダー含め、傭兵達は体を低くし、周辺へ気を配るが……人影は……見当たら無い。

 

 

『もしもーし傭兵さーん?よかったら一緒にお茶でもしますか〜……うーん、やっぱ普通の自己紹介した方がいいかな?』

 

「い、いつの間にっ!?」

 

「おいバカ、黙ってろ!」

 

 

 挑発に乗りそうになる仲間を、リーダーが諌める。

 

 

『ま〜分かりますよ。そっちもお仕事でしょうし、色んな都合があるよね。かと言ってね、私達も黙って言いなりになる訳にも行かないので……』

 

 

 そんな中、スピーカーから聞こえる声だけが気楽で、自信満々だ。リーダー格の男は、嫌な予感を覚えた。もしかしたら自分達は、とんでもない人間を相手にしているのでは……と。

 

 

 

 そしてその時……嫌な予感に限って当たってしまう……

 

 

「超痛いけど我慢してねっと!」

 

 

  背後からの声……、っと銃声と共に放たれた。

 

 

「ぁが!?」

 

「ちぃっ、カバーしろっ!」

 

「りょ、了解!」

 

 

 視界を横切る赤い影。瞬く間に、二人が背中を撃たれた。仲間を助けようと、すぐさまリーダーは、アサルトライフル──AK-47による反撃が行われるも、少女……千束は綺麗に避け続けている。

 

 その隙、射撃を続けながら負傷した仲間を引きずり、建物の中央部……事務所のソファの影に隠れる。

 

 

「い、痛え……っ」

 

「おいしっかりしろ! すぐに応急処置を……あん?」

 

「どうした、重傷なのか!?」

 

「い、いや、それが……」

 

 

 手の空いた仲間が、損傷したボディアーマーを脱がすのだが………()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。つまり、彼女が使っている弾は、プラスチック弾のような物である事を今知る。

 

 

「(殺す気がない……いや、まさか俺達の事を舐めているのか?)」

 

「ほらほら、おにーさんこーちら!手ーの鳴ーるほーうへ!」

 

「クソがぁ……舐めやがって……!」

 

「馬鹿野郎冷静になれ! 誘い出されたら逆にこっちがヤられるぞ!」

 

 

 自分たちの事を舐めている……正直腹が立ってきた。仲間も同じ思いなのだろうけれど、仮にも戦闘中、冷静さを欠けば確実に負ける。リーダーは怒りを奥歯で噛み殺し、どうにか勝機を見出そうと、瞳を細めるのだった。

 

 

 

 

 

 

「こちら千束。たきな〜、そっちはどう?」

 

 

 一方の千束は、彼等の見立て通り、呆れるほどの余裕を持って、ハンドガンをリロードしていた。左耳に付けた小型通信機の先に居るたきなが、それを見越したような溜め息混じりの返答をする。

 

 

『なんとか対処しましたが……今ワイヤーで拘束しております。』

 

「そうかそうか。ところで、フキ達は?」

 

『ついさっき確認しましたが、もう後二、三分くらいで千束の方に到着します。私も今からそちらの方へ向かいます。』

 

「うん、分かった。待ってるからね〜」

 

 今頃、裏口から侵入してきていたフキ達、そしてたきなもこっちに向かってくるだろう。その前にできるだけ多くの傭兵達をできるだけ戦闘不能にしたい。

 

『……ですが……やっぱりこの弾、使い辛いですね。』

 

「まぁ〜まぁ〜、そう言わないで。無駄な殺生をせずに済むでしょ?」

 

『そうですけど………やっぱり……』

 

「うん、使い辛いよね……分かってる。それに今回はできるだけ生かしておくことが重要なんだからさ。付き合わせてごめんね、たきな。」

 

 慣れない近接戦闘を強いられ、若干の苛立ちも感じていそうな声のたきなに、珍しく素直に謝る千束。

 

 今頃、傭兵達は、痛みに悶えている事だろう。死なないだけマシなのかも知れないが、千束が押し付けた赤い弾頭の非殺傷弾は、その威力と引き換えにしたか、冗談抜きで真っ直ぐに飛ばず、確実に当てたいなら5mから10m以内に近寄らねばならない。

 

 

『……まぁ、依頼内容の中には、傭兵達の捕虜っと言われましたけど……もしも手に負えないようであれば、私は迷わず実弾に切り替えます。それでいいですよね。』

 

「充分!ありがとう。」

 

『では、私もそちらに合流します。』

 

「うん、お願い。多分こっちにリーダーが居る、あの人を抑えれば……」

 

 

 自販機の影から様子を伺うと、長い髪の男が銃を構えつつ、カウンターに滑り込むところだった。予断なく警戒を行う動きは非常に慣れていて、それなりの戦闘経験を感じさせる。

 

 

 

 

 

 

「(銃口が少しだけブレてる。あの人……迷ってるんだ。)」

 

 

 

 

 

 千束には、相手の動きから次の動作を予測するという特技がある。

 

 

 その精度は、人間としては「異常」であり……実際、銃を撃とうとする動作から射線を読み、銃撃を回避するの事ができる。それらを利用する事により、彼女は相手の感情すらも、ある程度なら読み取る事が可能だった。

 

 

 

 焦り、困惑、悲しみ、憎しみ、喜び、などなど………

 

 

 

 強い感情は、胸の内にあるだけで体の動きに影響を及ぼす。

 

 

 銃撃の回避より精度が劣るけれど、千束には確かに感じられるものなのである。

 

 

「ねぇー! さっさと降参しないー? 今なら依頼人について教えてくれるだけで、何も無かった事にしてあげられますよー!」

 

「う、ウルセェ!そんな事したら商売上がったりなんだよ!!」

 

「……だよねぇ〜」

 

 

 試しに声を掛け、降参させようと提案するが、返されるのは銃弾。苦笑いと共に銃弾を返し、相手のリロードの隙をついて違う遮蔽物へ。ちらりと覗くAKの銃身が、色濃く焦りを伝えていた。

 

 

「クソ!こうなったら……おい!西口に待機しているお前ら、今すぐ援護を……っておい!誰か応答しろ!……クソッタレがっ、この短時間で、オレ達以外全滅だと……!?」

 

「(あ〜フキ達、もう制圧できたんだ……や〜るじゃん。)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーバン!!!ーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「動くな!」

 

「動いたら撃つっすよ〜!」

 

 

  次の瞬間、千束の前に合流したフキとサクラ。

 

「あ〜〜フキ〜〜久しぶり〜」

 

「フン!私はお前に会いたくなかったよ。」

 

「え〜〜そう言わないでよ〜〜それにやるじゃん、他の傭兵を制圧するなんて〜」

 

「な、何!?クソ!やっぱりまだ仲間がいたのか!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ?何言ってんだお前……()()()()()()()()()()()()()()()?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「…………え?」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「すみません千束!遅くなりました!」

 

 

 

 ……っと千束の前にまた再び現れたもう一人のリコリス………たきながついに彼女の前へ合流する事ができた。そんな彼女にいきなり問いかける千束……

 

 

「………ねぇ、たきな………こっちに来るまでさ、誰かと出会わなかった?」

 

「?………いいえ、さっき交戦してた傭兵達以外……誰も…」

 

「………サクラ君さ、さっきフキが言っていた事本当?」

 

「え?あ〜、まぁ〜ここへ来るまでの間……特に誰も会ってないっすけど…」

 

「……………んん? あのー、リーダー傭兵さん。」

 

「なんだ!? おちょくってんのか!?」

 

「いやいやいや、そうじゃなくて……他が全滅?裏口のチームだけじゃなくて?」

 

「…………は?」

 

「…………千束?」

 

「………え、ちょなんっすかこの空気?」

 

 

 不意に、奇妙な沈黙が広がった。千束達が侵入するより、大きな被害を教えるもの………不安そうな仲間が顔を出していた。

 

 たきなは、独断で西口のチームと交戦はしないはずだし……

 

 フキやサクラに関しては、楠木司令の命令無しで交戦を独断で行うはずがない……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 つまり…………()()()()()()()()……

 

 

 

 

 

 

 

「クソっ!誰かが紛れ込んでる……警戒s──」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーBAAaaaaaaaaaN!!!!!!ーー

 

 

 

 

 

 

 突然と起きた銃声と共に、スローモーションとなる視界に捉えたのは、傭兵部隊のリーダーの隣に居た男が、頭に真っ赤な花を咲かせ倒れる姿。千束との延長線上に居たから、運悪く流れ弾を受けたのだ。

 

 

「……………は?」

 

「な、なんだ………何が起きた……」

 

「え………ちょ……はぁ!?」

 

 一瞬で人が倒れた事に困惑し、戸惑うリーダーとその仲間。

 

 

「……だ、誰が撃ったんだ!?」

 

「じ、自分じゃないっすよ!」

 

 

 当然この場にいる全員が撃ったわけでもない……その時━━

 

 

 

 

ータンー

 

 

 

 

 

 

 

「!……誰!?」

 

 

 

 

 

 一瞬だけ、足音が聞こえた……しかも……重い足音……

 

 

 大急ぎで体勢を整える千束。彼女だけでなく、たきな達や傭兵達も一斉に足音が聞こえる方向へ銃を構える。やがて、足音がドンドン近づいてゆく……

 

 

 

 

 そこには、…………一人の人間が立っていた。

 

 

 

 

 

 黒のライダースーツを着る不審人物が現れた。男か女なのか分からない……まるで、最初からそこに立っていたとでも言うべき、不自然な立ち姿で。そしてよく見ると片手に持っているショットガン………銃口から薄い煙が出ている……

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「「「!?」」」」」

 

 

 

 

 

 

 

 だが、彼らが驚いたのは、立っている不審人物が突然現れたからではない。彼らが驚いたのは、その人物の頭に付けている()()()……

 

 

 

 

 

 

 

「か……」

 

 

「か……」

 

 

「か……」

 

 

 

 

 

 

 

「「「「「カボチャを被っている〜〜〜!?」」」」」

 

 

 

 

 

 

 不審人物……の顔全体……なぜか()()()()を被っている……しかも顔のように造ってあり、毎年ハロウィンに出てくる……“ジャック・オー・ランタン”にも似ていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・Is it Halloween today?」

 

 

 もはや理解が追い付かない千束も、こればかりは英語ジョークで気を紛らわすしかなかった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 ちなみにハロウィン日は、まだ数ヶ月先である………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

=============

 

 

 

 

 

 

 

 

「(え!?何これ......どういう状況なの!?)」

 

 

 

 

 

 

 そのカボチャを被っている不審人物の正体は……まさかのとある一般人(モブキャラ)である。

 

 

 

 

 

 







「(.........)」この後どうしようっと悩む偽物(一般人)

「「「(.........)」」」カボチャを被る不審人物とどう話せばいいのかわからないリコリス&傭兵達




最後に登場したのは誰?

  • 知らない
  • 新たなテロリスト
  • 連邦に反省を促すダンサー
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