リコリコの世界にモブキャラとして転生したら、全てのモビルスーツシリーズが造れる件 作:野薔薇ファン
※ Episode 4、5、6のタイトルエピソードを変更しました。
ーとある一軒家ー
「ーーーーは………何だよ……これ…?」
PCモニター以外の光源が一切皆無の部屋で、一人の
ー日本に巨大人型ロボット出現!ー
ネット上……またはダークネット、いわゆるインターネットの裏社会でも、唐突に流れ出した情報。発信源は複数存在し、信憑性の高そうなものから便所の落書きレベルまで、様々な形で吹聴されている。
普段なら一笑に付す話だが……
「ふ……ふふふ……ふふっふっふふふふっ……」
男は大きく肩を揺らしつつ、不規則に吐息を漏らす。そして……
椅子を跳ね倒し、絶叫した。声からして憤怒に満ちた表情を浮かべていそうだが、その顔は、“玩具のロボット“のような被り物で隠されている。
「このボクがぁ〜!
三徹の勢いに任せ、男……ロボ太は叫び続ける。
非常に高いハッキング技術と、自尊心と嫉妬心を併せ持ってしまったロボ太は、依然から天才ハッカーとして名高いウォールナットを敵視していた。
だが、今ウォールナットが死んだことで、自分が日本最高ハッカー(笑)だと勝手に思っている。(当然だが、彼女が生きている事も気づいていない。)
また、このロボ太こそ、
「勝手に戦車を使って街で暴れたり、なんかアニメみたいなロボットが即撃墜しちゃってよ!おまけに、アイツからの連絡もねーし、依頼料もなんてな、一円も貰ってないぞ!」
先日の大事件…東京の街中に暴れた10式改。そしてその10式改を苦戦することもなく、圧倒的な兵器で叩き潰した謎の巨大人型兵器。そのせいで、依頼主からの連絡も無くなり、依頼料も貰っていない。
「ふぅ……ふぅ……い、いいや……一旦落ち着こう僕!そうだ…そうだ…まずは…一旦落ち着こう…」
体力が底をついた所で、ようやくロボ太も冷静さを取り戻す。ああいった情報が信憑性を得るのは、ある程度の時間が経過してから。
ロボ太は自分が確かめた情報しか信じない。だが何より、今はこの巨大人型ロボットについて、興味を持つようになった。まるで、心が童心に戻った気分である。
「しっかし本当にすごい……本物なのか!?しかもこれ……ビーム兵器じゃん!誰が造ったんだ?誰が一体どこのどいつだ……?よ、よ〜し、全部暴き出してやるぞぉ!そうすれば、今度こそこのロボ太様こそが日本一……いや、世界一のハッカーだと証明するのだぁ!! ぬぁあーっはっはっはっは!!!!!!」
椅子に座り直し、猛烈な勢いでタイピングしつつ、追加のエナジードリンクをキメたロボ太は、また大笑いしながら踏ん反り返る。
ーーーが、あまりに角度をつけ過ぎ、椅子ごと倒れて頭を打つのは、この三秒後であった。
〜喫茶店・リコリコ〜
「ううむ〜むむむ〜うぬぅ……」
客の全く居ない、喫茶リコリコの店内にて。
和服姿ではなく、赤い制服の錦木千束は、何かしている。
その顔と言ったら、みずきがこの場に居たとすれば「一週間くらい便秘してる時の顔みたい」と評するだろう…が、そんな苦しげな表情から一転。
クワっと眼を見開くと、凄まじい勢いで足を前に突きつける。
「そぃ!……って、なんか違うな〜」
ーと、何かのポーズを決めている彼女。
「うーん、おっかしいなぁー……こうじゃなかった気がする〜」
得心のいかない顔で、千束はすぐに動いた。
「こうかな~?いや、もっとこっちに〜」
「ーーーー何しているのですか、千束?」
「おわっ!?」
突然後ろから話しかけられて千束は驚いた。振り返るとそこには、ノートパソコンを持つたきながいた。なぜか、彼女は千束を冷たい目で見る。まるで不審人物を見るような眼差しだ。
「まったく、さっきから何をやっているのですか?」
「いやその……」
千束は必死に弁明する。さっきからて事は、一体どこまで見ていたのかが分からないが、取り敢えず誤魔化すことにしたのだ。
「ほ、ほら!運動だよ運動!」
「……嘘ですよね?」
「うぅ〜……」
「………はぁ、大体さっきから
彼女の言う通り、千束は運動したのではなく、踊っていたのであった。しかも結構下手でクセが強そうな踊りである
「いやほら、カボチャ君が踊っていててさ!」
「カボチャ君…………あ。」
とここでたきなは、巨大人型兵器を操縦する不審人物…カボチャ頭が、踊っていた記憶を思い出す。
「ーーーー確かに……踊っていましたね……というか、何故千束が真似して踊るのですか?」
「それがさ、この踊りに何かあるかな〜と思って!」
「……………それ、意味あります?」
「そう? ホントは意味あるんじゃ無い?私も気になるんだ。それに、これはきっと何かのヒントでもあるんだよ?」
「そ、そうなんですか?」
「うん! だって、あんな踊りをしたらそりゃ何か意味があると思うじゃん………………多分。」
「今の間は何ですか?」
とツッコミを入れるたきなだが、一応彼女は納得してくれたようだ。
「それはそうとさ、たきなは何しているの?」
「え、えぇ……実は、先日の事件映像について観察していました。」
「おぉ、真面目ですな〜たきなさん。」
答えたたきなは、客席の机の上にノートパソコンを置き、その映像を千束にも観せる。ちなみに、千束に観せている映像はDAのではなく、クルミのドローン映像記録である。
「何度も観ましたが……やはりすごいですね…」
「そうだね〜って!これ夢じゃないよね!?しかも何この超最新技術クオリティーは!もはや戦隊ロボじゃん!」
「そう……ですよね……」
たきなは、自分自身言っていて気付いたのだが、この巨大人型兵器が、SF、アニメ、または特撮ロボと言われてもおかしくない。更にその操縦者でもあるカボチャ頭も相応しいのだろう。
「でも、他に手掛かりは殆どありません。映像だけとはいえ、流石にこれだけでは今の所分からないことだらけですね。」
「そうだね……けどさ、カボチャ君が使っている弾も不思議だよね〜」
「……確かにそうですね。しかも、千束が使っている特殊な弾丸と似ていますよね。少し、違いますけど。」
「しかも
「ですね…」
たきながパソコンを作業しながら、情報を整理する二人。
「…………ねぇ、たきな。カボチャ君てさ、どんな感じの人かな?」
「……どんな人、ですか?」
「うん。変な仮面を被って、それに変な踊りをしている割りに、めっちゃ撃ってきたじゃん。しかも、不殺だったんでしょ。やっぱ気になるじゃない?」
カボチャ頭。
顔、性別、年齢、身元、などなど、全てが不明である。
また、別の意味合いでは、ハロウィンのジャック・オ・ランタンなども存在するが、たきなが抱く印象としては、たった一つ、圧倒的な技術力である。
「……やっぱり技術力ですね。あの巨大ロボ、正直今の技術で造れないのではないのか疑うくらいです。」
「………まぁ、あんなロボットを造れるレベルくらいだしねー。…………え、そんだけ? 他には?」
「……他とは?」
「あるじゃん、カボチャ君の事だよ!動きが男の人っぽいとか、逆に女の人っぽかったとか、雰囲気的な仮面ラ◯ダー!とかさ?」
「…………」
千束は両腕を広げ、その場で背伸びし一時停止、あざとく小首を傾げる。他にと言われても困ってしまうが、しかし改めて考えてみると、たきなの胸中にも、ある想いが芽生えた。
「これは、あくまで一個人の感想ですが…」
「うんうんうん」
「正直………ふざけているようにしか考えられません。」
「ーーーは?」
あんだって? という表情の千束に気付かないまま、たきなは言葉を重ねていく。
「どれだけあのカボチャ頭との戦闘を頭の中でイメージしても、勝てる道筋が見えないんです……と言うか、あのふざけた踊りはどうかと思います!」
「あーそ、そうなんだー」
「そういう千束はどう思うのですか?」
「……え。わ、私!?」
今度は、千束に問うたきな。
「そうだな〜〜私としては………カボチャ君はいい人だよ思うよ?」
「ーーーいい人……ですか?」
千束の答えに疑問を抱くたきなだが、そんな彼女を気にせず続ける千束。
「だってさぁ? カボチャ君、誰も殺さなかったんだよね。正体は全然知んないけど、敵対する意思はない、って考えられないかな?それにさ、巨大ロボを使って、街の人々を助けたじゃん!」
「それは……そうかも知れませんけど、あの兵器を見れば流石のDAでも野放しには出来ませんよ。」
「まぁそれもそうなんだけどぉ……仲良くしといた方がいい気がするんだよねぇ、千束さん的には〜」
と千束はそのカボチャ頭と一応仲良くしたいと考えた。その時…
と店の電話のベルが鳴る。千束は気持ちを切り替え、見た目だけが旧式の受話器を取り上げた。
「はいはいはーい、毎度ありがとうございまーす!お口に甘味と幸せをお届けします、皆さまの心のオアシス喫茶リコリ…」
「ひゃいぃんっ!?」
耳をつんざく怒声に、思わず尻尾を踏まれた犬のような悲鳴が上がる。聞き覚えがあるその声は、DAの主任医師である、色んな意味で脂の乗った女医……
『いつになったらこっちに来るの!体力測定、済ませてないのはもうあんたを含めて二人だけよ!』
「あ、あはは……申し訳……ん?
これでもかと声に乗せられた怒り。知らず、見えもしないのにヘコヘコと頭を下げまくる千束だったが、最後の言葉が引っかかった。
山岸の言う体力測定とは、リコリスとしての活動免許を継続更新するために必要不可欠なものである。遅刻常習犯の千束自身はともかく、この時期になってまだ受けていないリコリスが居るのは珍しい。
「ちなみにもう一人って?」
『フキよ。まぁ、あの子は色々と忙しいから分かるけど……
「うぐっ……いいいいやいやいや、そんな事はありませぬぞ〜?わたしだって色々と忙しくてですねぇ……」
『はぁ……とにかく!早いうちに来なさい、いいね!』
「は〜い……」
山岸が口酸っぱく注意を促すのは、心配してくれている証拠。分かっているからこそ、不服ながらも、千束は小さくなってDA本部行きを承諾した。
そして、受話器を置いて溜め息を一つ。
「いやはや、難儀なもんですなぁ〜と。ま、生きてるだけで丸儲けですけども…」
「…………千束、今さっき聞こえてしまいましたけど………電話相手は、山岸先生ですよね。まさかまだ行ってないのですか定期検査?」
「うぐっ……た、たきなさ〜ん?いや〜それh「行きましょう!」…っえ!?ちょ、ちょっと待って!まだカボチャ君やロボットとかは!?」
「それは後にしましょう!今はまず、定期検査に行くことが重要です!」
「えぇ〜〜!?」
身体の検査にまだ行っていな千束に対して怒っているたきなは、無理矢理彼女を連れて行こうとするが、何故か行きたくない気持ちを持つ千束。それは、病院へ行きたくない、少女そのものであった。
「え〜〜〜明日がいいn「ダメです!」…はーい…」
『随分と騒がしいですね』
「全く、あの子は……」
千束が犬のような悲鳴を上げた裏では、ミカが携帯片手に頭を抱えていた。電話口の相手……楠木司令にも聴こえていたようだ。
「で、そちらではどうなっている?」
『……何の事でしょう?』
「とぼけるな。あの人型兵器とカボチャ頭とかいう奴だ」
気を取り直し、楠木を問い詰めるミカ。定期連絡のついでと言うには、重過ぎる内容である。誤魔化しは効かないと悟ったか、楠木が溜め息混じりに応えた。
『悩みの種、としか言いようがありませんよ。情報一つも見つからないどころか、以降は一切の痕跡を見せず、完全に迷宮入りですね。』
「ふむ。言い得て妙、だな」
楠木の言い分はもっともな物だった。
カボチャ……または、謎の巨大人型兵器が日本で確認されてから三日が経過している。つまり、日本で生活しているということにもなるかもしれないし、もしくは海外のどこかに潜んでいるに違いない。
人間とは生きるだけでも様々な痕跡や証拠を残すものであり、近年ではそれがデジタル的にも記録される。だというのに痕跡どころか、証拠一つも得られていないという事実。しかも、世界最高のAI・ラジアータでさえ、見つかっていない。
※まぁ、蒼夜には優秀なAI達がいるので、見つかることはないのだが。
『実はDA内でも、アンノウンの処遇を巡って意見が対立しています。』
「……と言うと?」
『断固処分すべきという強硬派と、奴の巨大人型兵器や技術を取り込むべきという穏健派、ですね。上層部でも割れているのが困りものでして……』
「なるほど……」
『一応言っておくと、私は強硬派です。』
「だろうな。」
気が緩んだのか、楠木は内情の愚痴も溢し始める。厳格な管理体制下にあるDAでも、こうした思想問題は付きまとう。
千束達の報告から判明した、兵器を操縦する正体と、技術と威力のレベル。
これを脅威と見做して、変わらず排除を試みる強硬派。
一方その反対派は、その技術を手にし、懐柔を目指す穏健派。
これまで一枚岩で活動し続けてきたDAを割ってしまうなど、その影響力が伺えると同時に、ある種の懸念も抱かざるを得ない。このままでは、一つの組織がバラバラになってしまうのではないかと…
『………………
「…………は?」
「もしも日本政府があの巨大人型兵器を手にしたら、ぜひ譲って欲しいと、アメリカ政府が出す最高金額は
「いきなりオークションか………で、日本政府は?」
『同然ですが、中には日本国の大赤字を回避できる考えを持つ者やその技術を日本の物にしようと考える者も分かれていますね。』
「だろうと思った…」
何となく分かっていたミカ。日本だけでなく、全世界も黙っていないだろう。もし日本がその兵器を手にした場合、バラして研究したい、と思っている連中が山ほど居るのだ。下手したら、国家やテロリストなども狙っているだろう。
その時はネジの一本すら残さず回収して研究されるだろうし、そもそも現代科学を大きく上回るオーバーテクノロジーの塊を造れる製作者も知りたいだろう。
「一応聞くが、
『さぁ、まだ分かりませんね。ただもしも本当にあの兵器がアラン機関が造っていたのだとしたら、何故10式戦車改を破壊する必要はあるのでしょうか?』
「……だよな」
〜アラン機関〜
それは、この世界に100年前から存在しているとされている支援機関の名前だ。
支援対象は「あらゆる分野の天才」。
スポーツ、文化、学問。ありとあらゆる分野において突出した才能を示した、または示す者に対して、アラン機関は無償の支援を行っている。
アラン機関の支援者は支援した者に対して接触することが禁じられているため、支援された当人が何の才能を持っているのかは自身で探していかなくてはならないのだが……実際の所、アラン機関によって支援された者たち通称「アランチルドレン」はその大半が己の才能が何であるのかを理解し、その突出した才能を以て世界に進歩をもたらしている。
そして、10式戦車改こそ、アラン機関からの支援でもある。当時のニュースでは、日本でアラン機関が認めた技術の才能を持つ開発者達の報道が流れていた。本来なら、日本にとって誇らしいはずだったが……
「まぁ、あの事件が起きてから、世間の目は変わったな……」
とミカは、カウンター席にあるテレビを見る。その画面には、『アラン機関が支援した開発者達は間違いだったのか!?』と、流れてあった。
「それにしても……コンピュータウィルスの感染が原因で暴走。なんて、よくそんな
先日の記者会見で発表された事実は……ラジアータ機能が出した
『戦車が暴走したのは、一人の傭兵の仕業だと世間に公表する訳ないでしょ。もしこれが知れば、日本の治安は悪化、更に国民からの信頼も無くなりますよ。」
「まぁ、そうだな……ところで今更だが、あの巨大ロボが映っている映像もラジアータで何とかできたんじゃないのか?」
『えぇ……ですが、その時ラジアータの機能が不完全だったため、処理時間前には間に合いませんでした。』
それにあの大きさだ、いくら映像を消そうとしても、人々の記憶には残るだろう。また、今回の事件で結構な大ダメージを負うことになった日本政府。事件に遭った被害者や建物の賠償金なども山ほどの問題が残っている。
「と言うか、もしコイツが本当に敵だったらどうする?映像を観たかぎり、リコリスの手で対処難しいだろう。」
『えぇ、だからこそ、対処できるようになってもらうだけです。例え相手が巨大兵器だろうと、確実に狩りますよ……』
「…………」
ミカの心配など無視して、楠木はこう言い放つ。
彼女がどういう意味合いで、この言葉を使ったのか。それを理解できないままに、けれどミカの嗅覚は、言い知れぬ不穏さを嗅ぎ取っていた。
ちなみにミズキは………
「どぅふ、うふふひひぃ……いい男ぉ〜〜」
飲んだくれていた………以上。
〜リコリコの一室の押し入れ〜
「………よし、来た!」
一方、仄暗い空間で青白く展開されたモニター画面を操作しているクルミは、電波の逆探知を目的としている。と言うのも、彼女が探しているのは、日本全国の空港の追跡機能や監視カメラ機能もハッキングし、先日の事件で空へ飛び去った巨大ロボの場所を特定している。もちろん、目的は巨大ロボを見つける事である。
そのために、まず最初は空港内の機能をハッキングするのが、一番近いとそう考えたのだから。
「海外の中継基地は排除、国内に限定……セキュリティはよし……」
ヘッドセットを急いで被り、高速でタブレットをタイピングしながら、音声入力による補助も追加で行う。そうしている内に、検索の結果としては……
「ーーーーーちっ、結局見つからなかったな…」
「………地道な作業は苦手じゃない。どっちが先に尻尾を掴むか……」
顔も名前も性別も分からない誰かに対し、それは挑戦的な笑みを浮かべるクルミ。実は彼女、こう見えてかなりの負けず嫌いなのだ。今のクルミは内心で舌を巻く反面、未知の技術にすこぶる興奮しているのだ。
〜同時刻・DA本部〜
「面目丸潰れ、だな」
ミカとの電話を終え、報告書を執務机へと放り投げ、楠木は革張りの椅子に肘をつく。
10式改の暴走と
「それで、10式改の強奪の作戦を行った依頼主は誰だ?」
「はい、つい先程、
と続けての報告する秘書に、片眉を上げる楠木。あの事件の後、10式改を強奪しようとした依頼主が誰なのかはラジアータで簡単に見つけることができた。
「強奪した目的は?」
「明確ではありませんが、闇オークションで売る予定だとか…」
「……そうか」
秘書に対する返事は短い。興味がないのではなく、その逆。言葉が少なくなるほど、楠木は考えている。それを踏まえた上で、秘書は楠木に問い出す。
「あの司令………例のアンノウンについて、上層部はなんと?」
「
皮肉屋な笑みを浮かべ、楠木がまた報告書を投げ出す。自身の苦境よりも、上の騒ぎっぷりが楽しいようだった。楠木も楠木で、これまでの鬱憤が溜まっていたのかも知れない。
だが、結局そのカボチャ頭は誰なのかは全く不明である
白人か黒人、男か女、それともアランチルドレンなのか……
様々な可能性が浮かび上がってくる……
「それと……念の為に他のリコリスにも、伝えておけ。」
「分かりました……ですが、情報はまだ……」
「今は映像と、彼女達が描いた絵しかない。」
話は終わりだ、と言わんばかりに椅子を回し、背後にあった窓を見やる楠木。秘書も無言で頭を下げ、執務室を後にする。
「…………アンノウン……一体何者なんだ?」
花散らしの雨は、少し長引いていた。
一方、蒼夜のアパート近くの廃工場の地下倉庫。
DAの捕獲対処となった事を知らず、カボチャ頭──蒼夜が一人、MSの整備格納庫にいた。普通の地下より広いのだけあって、ある物といえば多数の機体と修理道具や予備パーツだけである。とはいえ、これだけの広さを造れる技術は、世界の技術者達に驚かせれるだろう。
「…………ハアァァ……」
そんな場所で、MSの機体確認や整備などの作業をしている蒼夜は、大きくため息を吐く。何故なら……
「ーーーー仕事……どうしよう……」
先日の事件でバイト先のだったはずの会社が閉業し、再び無職に戻ってしまった一般人。つまり、また仕事を探さなきゃならないと最初からスタート地点へ戻ってしまった気分である。
「ソウヤ、大丈夫?」
「大丈夫?大丈夫?」
「ハイ、冷タイオ茶ドーゾ!」
「あぁ……ありがと……」
そんな落ち込んでいる彼を慰めるハロ達。とそこへ…
「大丈夫ダヨソウヤ!例エ、ソウヤハ
「ーーーーーーーう、うん……ありがとね。」
恐らく悪気はなかったと思うが、一瞬だけ傷つく言葉が聞こえた。それでもハロらしい喋りなのはもう慣れている。別に気になる必要はない。
「……………でも………仕事どうしよう……」
ーーーが、やはり無職から抜け出す方法はないのかと考えてしまう。そう思いながら、MSの作業へ戻る。
作業中に一滴の汗が、ゆっくりと流れつつあった。
リコリスキャラ達「「「「何なんだコイツは!?」」」」
モブ主「はぁ〜仕事……どうしよう……」
ハロ達『ソウヤ、大丈夫〜?』← 主人を心配するハロ達
MS達『俺らの出番まだかな〜?』