陰実廻戦   作:水絆創膏教教祖

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とある日の最強達

「うっわ、キモ」

「はっきり言うのは良く無いよ、悟」

 

血、肉、骨、腐敗臭と泥の様に粘ついた呪力。

そして、それらを食した虫が不自然に巨大化し奇声を上げながら地面を這っている。

宛ら地獄。それかバイオハザード。

 

獣は本能なのか其れ等に近寄ることも無く。

結果として、たかった虫のみでその変異生物の発生は止まっていた。

 

モノによっては猫ほどの大きさもある変異生物達。虫が変異する瞬間を見なければ、何がベースなのかさえ見当をつけられなかっただろう。

多くはハエやその幼虫、蟷螂由来のようにギリギリ見えなくも無い。

しかしそれぞれ人の口や獣の様な目、蝙蝠のような羽を持って這い回っているのだ。

初見では呪霊にしか見えないだろう。

 

しかし呪霊の様だが生物であり、人でないのに呪力を孕んでいる。

大した強さでも無いが森一体に広がるほどの数。駆り出された階級の低い呪術師は死んだ目をしながら怪虫の駆除に徹していた。

 

どの個体も飛ばずにいるのは突然の巨大化で飛ぶことができなくなっているからなのか。

不幸中の幸いだが、そんな状態でも羽だけバタつかせている。

普段呪霊で見慣れているとはいえ、コレが生物なのだという事実が気持ち悪さを後押ししていた。

 

精神衛生に限りなく悪いR18指定の世界が現実に顕現しているなか、日常のように談笑するのは2人の男子高校生。

 

現代の異能、五条家の神童、クソガキ。

彼を冠する名は多く、そしてそうした括りでも定義しきれていないと感じるほどの規格外の存在。

美しい深雪を思わせる白髪に晴天の空を思わせる青い瞳。全てを見下す様な態度。

名を五条悟。曰く、最強の片割れ。

 

非術師の突然変異、個の百鬼夜行、DV顔。

同じく彼を冠する名は多く、そして括りきれない五条悟と同格の存在。

奇妙に一房だけ左に垂らした前髪、ボンタンの様なズボン、詐欺師の様な顔。人当たりの良さそうな態度では隠しきれない、全てを見下す態度。

名を夏油傑。曰く、最強の片割れ。

 

「いやコレは言っても良くね!この虫もどき達死ぬほどキモいじゃん!?」

「どっちかと言うと君、虫じゃ無くてそれの処理に奮闘する術師達に言ってたでしょ」

 

ゲ…と、嘘がバレた子どもの様に視線を宙に泳がせる。

「バレバレだからね…?」と言いながらも、当の本人も虫の死骸に塗れながら処理に奮闘する術師に若干引いていた。

 

「あんた達、早く手伝ってよ!帳張ってくれてるからバレないとはいえ、数が多すぎて駆除しきれないのよ!」

「歌姫虫まみれじゃん!ウケる」

 

五条の煽りに過敏に反応してドロップキックを仕掛ける和装の少女。

名を庵歌姫。弄られまくる宿命を背負った少女である。

ドロップキックは五条の術式によって防がれた。

 

「歌姫先輩、僕等が来たのは虫の駆除のためじゃ無いんですよ」

「は!?」

「そうそう、俺たち噂の“黒づくめ”の調査に来てんの。歌姫は駆除頑張って〜」

 

そう言って立ち去る2人の最強を見送り、歌姫は額に青筋を浮かべながら他の術師に術式のバフを送った。

 

*************

 

歌姫を茶化して森の奥に進む最強達は、違和感を感じていた。

 

「……傑」

「どうした?」

 

五条は先程までの舐め腐ったような態度を落ち着かせ、親友を呼ぶ。

その様子を敏感に感じ取り、夏油は返す。

 

「確かここで“黒づくめ”と魔獣が戦ってたんだよな?」

 

魔獣とは、死体として出現した未確認生物に付けられた俗称だ。

 

「いや、一応報告ではそうは言ってない」

 

夏油は窓の報告をなぞる。

 

「特級相当の呪力を感知。その後“窓”が現地を確認したところ、突如として未確認生物の死体と黒づくめの呪術師が現れる。呪術規定に則り、機密保持の観点から帳を下ろす。ーー戦ったかどうかは明記されてなかったね」

「でも片っぽの魔獣の残穢は撒き散ってる。現場検証したけど、どう見ても共食いじゃないだろ」

「同感だね。回収された魔獣は全部鋭利な刃物での両断が死因だった。

それに破壊痕から推測するに、それなりに激しい戦闘だったんだろう」

 

若干の苛立ちを浮かべながら、五条は吐き捨てる。

 

「つまりだ。“黒づくめ”はそれだけの戦闘をしながら、残穢一つ残していない。何かしらのトリックでも使ってないなら、俺以上の呪力操作技術だ」

 

六眼を持っているにも関わらず、呪力操作という点で遅れをとっている。

それが苛立ちの原因だろうと夏油はあたりをつけた。

 

「…君以上か。それはまた、随分と高い評価だね」

「あぁクソ、うっぜぇ。……けど、面白れぇ」

 

苦戦ということを、五条悟はほぼしたことが無い。

唯一隣にいる夏油傑だけが、決着をつけきれなかった相手だ。

それ以外は、例え幼少期に対面した五条家お抱えの指南役だろうと、関係無しにその場でボコせていた。

 

まだ姿形も知らない“黒づくめ”。

 

生まれて初めて、己を脅かす様な気配を感じる。

 

「悟は死刑執行役だっけ。負けそう?」

 

煽りに近い親友の言葉に、僅かに口角を上げる。

 

「勝つさ。ーー俺たちは最強だからな」

 

 

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