飛べよ個性~異世界転生したら空も飛べるはず~   作:桜子道 晴幸

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前の投稿から時間が空いてしまい申し訳ないです
お詫びとして今日3話投稿します


第十七話 対決

さて、俺は学校の運営を刷新し、新年度を春からとして募集をかけた。すると予想を超える募集が集まり、選抜や抽選に四苦八苦しているとあっという間に秋が過ぎ、俺は11歳になった。俺のお披露目会は終わっているが、10歳を超えたら国王には祝われに行かなければいけないらしい。いや、おかしいだろ。祝われるのは俺なんだから面倒くさがらずに祝いに来いよ。俺がそんな文句をぶつくさと呟いていると、馬車が来てしまった。はあ、冬の馬車って寒いのに。俺は泣く泣く愛しのアルフレッドを置いて王都に向かう。

 

 

 

 

 

「王都は雪が降らないんだな」

「王都は比較的温暖な場所ですから」

 

 

 

 

クリスとそんなやり取りをしていると、曇天の空からパラパラと雪が降ってきた。天気予報があればこんなことにはならないのになあと考え、将来的に気象予報士を育てようと決意する。そして、雪が地面を覆う頃に、俺たちは王宮に到着した。王宮に到着した俺たちは、荷物を部屋に入れると少し時間が余るようになった。なんでも、俺を祝う貴族の到着がこの雪で遅れているとのことだった。馬車で雪はきついよなと思っていると、ガタガタと揺れるトラックが出現した。そこから出てきたのは以前オワリ領に行く際に、途中で挨拶しに行ったアグリム領の領主、アグリム伯爵の息子であるマルコだった。

 

 

 

 

「マルコ! 久しぶり!」

「殿下! これはこれは寒い中お出迎え下さりましてありがとうございます!」

「いいっていいって!それよりこのトラックは?」

 

 

 

 

俺の興味は完全にトラックに向いていた。何しろこの世界で車が走っていることは知っているが、どれもおんぼろの小型車ばかりだった。そんな中、かなりまともなトラックを初めて見た俺は興奮のあまりマルコを出迎えに外に出てきてしまったのだ。マルコはそんな俺に優しく経緯を説明してくれた。

 

 

 

 

 

「我が領地のアグリは農業国ですので、こういった運搬車両は豊富にあるんです。それに今回は私どもの他に同乗者もおりまして」

 

 

 

 

 

マルコはトラックの荷台を開くと、そこには雪道で揺られに揺られて死屍累々となったオワリ領の兵士と知識人であったヨイチ、ユキチらが乗り合わせていた。マルコに聞いたところ、彼らは実質の国外追放処分となっており、歩いて俺のいる王宮まで行く手筈になっていたところを拾ってくれたのだと言う。俺は車酔いで死にそうになっている彼らに変わり、マルコに礼を言う。

 

 

 

 

 

「マルコ、彼らをありがとう」

「いえいえ、私も彼らに恩を売ることができ良かったです」

 

 

 

 

 

なかなか貴族らしく強かな性格なようだ。しかし、腹の中ではきっと純粋に困っている人を助けたい、そう思っていそうな顔だった。貴族の建前とか皮肉たっぷりだと思っていたが、なかなか気持ちのいい皮肉である。俺はマルコがますます好きになっていた。俺はトラックから酔いつぶれのヨイチたちを出し、俺の控室に案内することにした。これからうちの街で働いてもらう者たちだ、丁重に扱わなければ。そうこうしているうちに、他の馬車も到着し始め、俺は俄かに慌ただしくなっていった。

 

 

ほとんどの貴族が揃い、俺の誕生会という名目のパーティーが開催されていた。俺はまたもお飾りとして椅子に座り、挨拶ばかりしていた。お腹もすいたし、ご馳走を食べたいところだが続々と挨拶の列が途絶えることはなかった。王族も大変なものだと、火照った顔を手で仰ぐとクリスが水を持ってきてくれる。さすがは気配りのクリスだ。

 

 

 

 

「坊ちゃま、暖房が熱すぎますか?」

「え、暖房ついてたの?!」

 

 

 

 

俺はびっくりしたことに、暖房がついていたことに驚愕した。何を当たり前のことをと言わんばかりのクリスの顔だが、それよりも俺は気になっていた。よくよく考えれば当然だが、この異世界には少ないながらも車が走っている。その燃料や発電システムはどうなっているのだろうか。この中世のような情勢のどこにそんな技術が眠っていたのかと、俺は興味がふつふつと湧いてきてしまった。そのことに気づいたのか、クリスが俺に釘を刺しに来る。

 

 

 

 

 

「坊ちゃま、今は挨拶に集中してください」

「ああ、でもあとで教えてね」

 

 

 

 

俺は抑えられそうにない知的好奇心に座っているのが辛くなってきてしまった。しかし、強制的に座らざるを得ない事態が発生してしまったのだ。俺の目の前にやってきた人物は二人、その二人は同格にして王族の俺からしてみれば王族以外での地位は最強格の二人。それが俺への挨拶に同時にやってきてしまったのだ。もちろんその二人をご紹介させて頂こう。最近領地にも遊びに行ったオワリ領からの使者、青コーナーはシャルロッテ・ブルボン・オダ! 続いて金髪縦ロールでお馴染み、オセロの虐殺者、赤コーナーはリーゼロッテ・シュタインマイヤー!

 

 

 

 

「レディ・・・・・・・・ファイッ!」

 

 

 

 

俺が小さく囁くと同時に二人は俺への挨拶の順番で厳かに、それはそれはお上品にお貴族様らしくお喧嘩をお始めになられた。青白い高圧電流のような火花を互いに散らせた見事なまでの淑女同士の戦い。さあ、どちらが勝つのか見物です。実況は私、このパーティーの主人公であるビスマルク・マクシミリアン・デ・メ・フェルディナンドです。さあ始まってしまいました、まず最初は金髪縦ロールでお馴染みリーゼロッテの攻撃のようです。

 

 

 

 

 

「あら、お久しぶりですこと。以前よりお太りになられて? それともそれは筋肉ですか? 貴族の淑女たるもの身体のラインくらい整えて下さいまし。仮にも貴族の頂点たる公爵令嬢ともあろうあなたが、見すぼらしいですわ」

 

 

 

 

 

おおっとこれは痛烈! 武装国家の姫に対し女性らしさのアピール攻撃だあ! これはなかなか手厳しい指摘ですね。確かにリーゼロッテはバラです。全身からバラの香り及びバラの装飾及びバラが背景となっています。これは確かに攻撃力としては申し分ありません! さて青コーナーのシャルロッテどう対応するのでしょうか!

 

 

 

 

 

「あら、見ない内に随分と派手さだけが優れたようですね。殿方によく見られたいのは分かりますが、それでは夜のお相手の時にがっかりされましてよ? もう少し内面も磨かれては?」

 

 

 

 

何と言うことでしょう! 外面を叩かれた思いきや返す刀で内面を攻撃だあ! これは手痛いしっぺ返しを食らってしまいました、赤コーナーのリーゼロッテ選手! 最後の『内面も』という三文字には外面もダメであるとの二重の意味の口撃が含まれています。これは芸術点も加点です! それに夜のお相手ってなんのことなのでしょうか。俺はさっぱり、皆目見当がつきません! みなさんは分かるでしょうか。さて、ここで会場の皆さんの反応を伺ってみましょう。

 

 

 

 

「「「・・・・・・」」」

 

 

 

 

 

見事に、見事なまでに会場は静まり返っております! この会場には多くのギャラリーと言う名の貴族が集まっておりますが、先ほどまで熱く感じていた会場の熱もいまや氷河期時代に突入した模様です! この先の天気は曇りのち天変地異、繰り返します。この先の天気は曇りのち天変地異です! これはどのように収集を付ければいいのでしょうか。主賓であるはずの俺が置いてけぼりなところを鑑みますに、一番の被害者はこの俺と言うことで間違いなさそうです! 二人にダメージが蓄積されていくところではありますが、現状俺のHPの方が先に尽きそう、というかとっくの昔に瀕死状態です! ここで回復アイテムを使用しましょう! 回復ポーションとして我が愛しのメイド、クリスを召喚します! さて、これで少しは私のHPも回復することでしょう!

 

 

 

 

「・・・・・・」

 

 

 

 

なんてことだ! 俺の応急修理女神であるクリス女神は不在! まさかの不在、というか逃亡です! 助けて下さぁい! そして、どことなくこの状況を収めろと無言の圧力が俺に注がれているのは気のせいでしょうか! いいえ、二人の公爵令嬢以外全ての貴族が俺に注目しています! 無責任でぇす!

 

 

 

 

「ちっ! どうして王族の俺が一番働かなきゃいけないんだ・・・・・・一応俺の誕生日のはずだろ」

 

 

 

 

 

俺はようやく立ち上がると、一斉に先ほどまで距離を取っていた貴族たちがまるで誘蛾灯に誘われる虫のように集まり出したではありませんか。これだから貴族は嫌いだ。俺はゆっくりと、限りなくゆっくりとバチバチに燃え盛る炎に近づく。周りから見れば英雄か蛮勇のどちらかに映っているだろう。俺もこんなことに巻き込まれたくなどなかったのだ。仕方なく、仕方なくである。

 

 

 

 

「二人とも久しぶり。シャルロッテ先日はお招きありがとう。リーゼロッテ、この前は遊びに来てくれて嬉しかったよ」

 

 

 

 

 

俺は二人にいい顔をしてやり過ごすことを選択する。とにかくこのリングと言う名のバトルフィールドを鎮火しなければ燃えてしまう。主に俺が。俺が話しかけると二人は目を輝かせて話しかけに来る。二人同時に。

 

 

 

 

 

「「どういたしまして!」」

 

 

 

 

 

二人とも本当は仲いいだろ、俺を困らせたいだけだな。だが、俺は二人の仲を止めることは出来ず、今度はどちらが先に会話するかが争点となってしまっている。ああ、ビスマルクよ。俺じゃなく、ドイツ首相の偉人ビスマルクよ、どうか同じ名を持つよしみとして俺にお力を授けたまへ。俺は天に願いを捧げた。しかし、もちろん都合のいい考えなんて降りてくるはずもなく、俺は深刻球をして二人と向かい合うことを決心する。

 

 

 

 

 

「シャルロッテ姫」

「はい、何でしょう?」

「あとで二人だけの時間を貰えるかい?」

 

 

 

 

 

俺の提案にシャルロッテは目を見開いて喜んでみせる。対照にふくれっ面になるリーゼロッテ。もちろん俺はどちらも差別する気はない。改めて今度はリーゼロッテに向き直り、提案をする。

 

 

 

 

 

「先に今お話を伺わせてもらっても?でも他の方もいるから少しだけね」

「私だけ少しだなんて、殿下もお人が悪いですわ」

「だって、君の領地にはこれからお邪魔するからね、楽しみは取っておくものだろう?」

 

 

 

 

俺の人差し指を口元に当ててウィンクをする仕草にリーゼロッテも顔を紅く染めている。俺だって恥ずかしいんだ、我慢してほしい。でもどうにかして俺の提案を遂にリーゼロッテも首を縦に振った。周囲からは小さく称賛の声すら聞こえてくる始末だ。どうやら乗り切ったらしい。これがホストの気分なのだろうか。世のホストの皆さん、刺されないようにお気を付けください。とりあえず、シャルロッテを下がらせ今はリーゼロッテの話を聞くとしよう。

 

 

 

 

 

「それで、リーゼロッテの用事はなんだい?」

「どうしたもこうしたもないですわ!」

 

 

 

 

 

どうやらリーゼロッテ姫はご機嫌な斜めのようだ。ここで俺はなぜリーゼロッテが怒っているのか考えてみる。よければみんなも考えてみよう。シンキングタイムは5秒だ。ええ、まず・・・・・・うん、分からない。たぶん俺と同じでお腹が減っているのだろう。それかまた一番になれなかったことを嘆いているのだろう。なんの一番かは知らないけれど。では、答え合わせだ。

 

 

 

 

 

「以前にやったオセロの販売権を私に下さいましっ!」

 

 

 

 

 




喧嘩の仲裁ってなんか怖いですよね
よく巻き込まれるので勘弁願いたいです

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