飛べよ個性~異世界転生したら空も飛べるはず~   作:桜子道 晴幸

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今回も少し短めです
明日は必ず頑張ります


第十九話 謁見と宿題

次の日は恒例の国王と女王との謁見である。再びトラウマが蘇るようで憂鬱だが、こればかりはやらなければいけない俺だけの仕事だ。俺は溜息を隠しきれずクリスに叱られる。

 

 

 

 

「坊ちゃま、気を抜き過ぎです」

「クリスぅ、そうは言ってもこればっかりは気が進まないって」

 

 

 

 

俺の着替えを手伝ってくれるクリスだが、つい去年に俺は国王と女王の前でクリスを処罰されかけたし、俺は左手を切り落とそうとした。これが溜息を堪えずにいられるだろうか。俺は気分がダダ下がりのまま王宮に向かうこととなる。

 

 

 

 

「ビスマルク殿下が参内されましたぁ!」

 

 

 

 

相変わらず仰々しい声で扉を開かれる。俺は仕方なく王座の間へ通されるままに従う。父たるヴィルヘルム国王と母たる王女が奥の玉座に鎮座している。今回はどんなことを言われることか。俺は王の前でかしずき、クリスの台本通りに挨拶をする。

 

 

 

 

「ビスマルク・マクシミリアン・デ・メ・フェルディナンド、11歳の奏上に陛下の御前に参上しました」

「うむ、楽にせよ」

 

 

 

 

だからなんで祝われる側の俺が面倒なことしなきゃならないんだ。態度がでかすぎるぞ国王め。俺のそんな愚痴を悟ったのか、近くに控えるクリスの冷たい視線が背中に刺さる。ごめんってクリス。ちゃんとするってば。

 

 

 

 

「ビスマルクよ、世継ぎはまだか」

 

 

 

 

口を開いたらこれだよ。だから俺はまだ11歳だっつってんだろ。はいそこクリスさん、顔を赤くしないように。可愛いけども。まったく変態家族を持つと苦労するね。俺は平然を装って国王であるヴィルヘルムに華麗に返答してみせる。

 

 

 

 

「陛下、我が愚息はまだ目を覚ましません。こればかりは夜が明けるまでしばしお待ちください」

 

 

 

 

へっ、どうだねこの華麗なる下ネタ敬語。俺にクリスをショタコンにさせる勇気はございませんっての。諦めろ変態おやじ。ヴィルヘルム国王は溜息をつくと、いや俺がそうしたいんだけどね、もうよいとばかりに話題を変える。

 

 

 

 

「最近好き勝手やっているそうだが、王族の義務を忘れてはおらぬな」

 

 

 

 

 

王族の義務、出ましたよ。俺に王族の自覚なんかあるはずもないし、あわよくば禁止されてる空を飛ぶことを画策してますよだ。メラメラと燃える下心を隠しつつ、俺は最近手を出している株式取引や各領への外遊、そして学校の設立を美辞麗句を並べ立てて正当化する。

 

 

 

 

「もちろんです。王族たるもの、民への配慮を忘れず、日々苦慮しております」

「分かれば良い。ただ、卑しき金銭を持つことは王の務めではないことを心に留めておけ」

 

 

 

 

なにを言っちゃってくれてんですか。俺のやってることこそ国民の明日への希望になるんだろうが。そもそもあんたら国王様とやらは何をしてんのか。黙って王宮に籠って毎年誕生日の度に煌びやかなパーティーやってる暇があるなら俺に投資しやがれってんだ。俺はいつの間にかべらんめえ口調になっていることに気づき、心を落ち着けるためヴィルヘルム国王に嫌味を放ってやる。

 

 

 

 

「私が好きな詩にこのようなものがあります。『高き屋に のぼりて見れば煙立つ 民のかまどは賑わいにけり』」

 

 

 

 

俺の言ったこの詠った句は前世日本で人徳天皇が言ったとされる逸話だ。難波高津宮から遠くを見ると、人々の家から煙が立っていないことに気づき、民が燃やす薪すらないためかまどから煙が立っていないと嘆き、3年間の税を免除した結果、再び煙が民家から立つようになった、という民を思う慈愛に満ちた指導者の言葉だ。俺の言葉にヴィルヘルム国王はムッとしたような気がしたが、ざまあないとしか思わなかった。

 

 

 

 

「・・・・・・ビスマルク、ならばお前に一つ頼んでみるとしよう」

 

 

 

 

 

ヴィルヘルム国王は俺に次のことを指示した。なんでもこの王国の南にはヒンブルム皇国という小さな国があると言うのだ。もちろん俺は初耳だった。そのヒンブルムで最近きな臭い動きがあるのだと言う。フェルディナンド王国とヒンブルム皇国との関係は決して良いものとは言えず、そんな国で動きがあると言うのは王国としても看過できないことだと言う。一体そんな複雑怪奇な国際情勢を俺にどうせいちゅうんだ。

 

 

 

 

「ビスマルク、そなたのその曇りなき目で見定めよ」

「曇りなき目とか・・・・・・ぷっ」

「なにか言ったか?」

「いえなにも」

 

 

 

 

どこのジブリの名シーンですか。でも、見定めるって言うけど俺は具体的に何をすればいいのやら。俺はとりあえず適当に返事をしておいた。ようやく変態国王から解放され、俺とクリスは部屋へと引き返し、帰りの支度を始める。もちろん、帰りには馬車を手配してヨイチやユキチたちを俺の街へと運んでもらう手配も抜かりはない。ようやく誕生会という、既に罰ゲームと化した忌々しい行事を終え俺たちはアルフレッドの待つ館への帰路に着くのだった。

 

 

 

 

 




あれ、王様に好感が持てないのはどうしてだろう
下ネタとかやってる場合じゃないですね
心は清廉潔白にですよ

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