飛べよ個性~異世界転生したら空も飛べるはず~   作:桜子道 晴幸

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今回はリーゼロッテのいるブルボン領にお出かけです
どんな出会いがあるかな


第二十一話 リブルボン領!

俺は泣く泣く街を離れ、クリスを伴ってリーゼロッテのいる領地である、ブルボン領へと足を向けていた。ブルボン領は鉱山が多く、冬の間は雪で閉ざされてしまうためこうして春に出向くこととになった。冬の間もリーゼロッテからは催促の手紙が届いていたが、こうした足場の良い時節にした。いくつかの山を抜けると、そこには確かな賑わいを見せるブルボン領が広がっていた。

 

 

 

 

「確かに王都の次に、いや俺の街くらい賑やかだな」

「ブルボン領は鉱山資源が豊富な領地です。王国に普及する貨幣のほとんどはここで生産されています」

 

 

 

 

解説ありがとうクリス。今日も可愛いよ。俺は説明を聞いた頭でリーゼロッテのいる館へと向かうわけだが、そこにはシャルロッテの領地、オワリ領で見た安土城みたな城にも劣らない立派なお屋敷が屹立していた。おそらく、というか絶対あそこに住んでいるんだろうな。俺は大貴族の権力を目の当たりにした気分で、少し参ってしまった。もちろん近くに到着するとその屋敷の迫力はより一層増すもので、俺は思わず首を180度見渡すほどの広さを誇っていた。

 

 

 

 

「お待ちしておりましたわ!」

 

 

 

 

元気よく出迎えてくれるリーゼロッテを見ても、その背景がまさにマッチするのは幻覚だろうか。バラの花で埋め尽くさんばかりのリーゼロッテだが、いつもにも増してバラが生えまくっている。俺はこの目で実際に見たことはないが、この屋敷というか宮殿はまさか。

 

 

 

 

「やあ、リーゼロッテ姫。すごいお屋敷だね」

「屋敷ではありませんわ!宮殿でしてよ!」

 

 

 

 

 

やっぱり、そうなるとこの宮殿の名はおそらく。マジもんの宮殿を自分の口から言っちゃうあたり、既にリーゼロッテの中ではこの領地の王たる自信を持っていると言うことなのだろう。時代が時代なら打ち首もんだよ。それこそギロチンでね。そんな王族たる俺を前にして意気揚々と自慢するリーゼロッテの隣にこれもまた見栄えがいいおじさんが登場する。

 

 

 

 

 

「これはこれはよくお越しになられました、殿下」

 

 

 

 

 

でっぷりと肥やした腹、周りを圧倒する髭、過装飾気味の服装といい、まさに大貴族いや、悪代官を彷彿とさせるおじさんはどうやらリーゼロッテの父親であり、このブルボン領の領主であるその人だろう。

 

 

 

 

 

「お初にお目にかかります、ワシがこのブルボン領を治め、フェルディナンド王国最大の領地を保有する大貴族、公爵のゴールデン・ブルボンであります」

 

 

 

 

うわあ、まじで口をついて出そうになっちゃったよ。ここまで自画自賛できる神経って元日本人の俺からするとマジでできないよ。尊敬したくないけど、この自信は誉めるべきかな。俺が悩んでいるとゴールデンは俺の後ろにいるクリスに舐めるような視線を向ける。

 

 

 

 

「ほうほうこれは・・・・・・」

 

 

 

 

俺はこの変態オブ変態な視線に気づき、悪寒を超えて吐き気がした。クリスもそれに勘づいたのか、それでもメイドとしてあくまで仕事と割り切ってお辞儀をする。なんともげすい野郎だ。俺は少しむかっ腹が立ったが、リーゼロッテに向かって話を進めることにした。

 

 

 

 

 

「リーゼロッテ姫、今日この日をとても楽しみにしていたよ。長く待たせてしまって悪かったね」

「本当に待ちくたびれましたわ! 早くお上がりになって!」

 

 

 

 

俺は促されるままに宮殿とやらに入る。もちろんリーゼロッテの父親であるゴールデンも一緒に。クリスにはこの変態おじさんの視界に入らないように少し俺から離れるように命じておいた。クリスも了承し、少し俺とは距離を取っての行動となった。

 

 

 

 

 

「それにしても大きいやし・・・・・・宮殿だね」

「もちろんですわ!この宮殿は私のために立てられた、その名もベルサイラル宮殿ですもの!」

 

 

 

 

なにその石油王発想。前世で聞いたことのありそうな名前がさらに豪華な名前になってパワーアップだよ。それにしても果てしなく大きい。聞くところによるとこの地に住む貴族の家族ごと住まわせてもいるらしい。共同住宅ですかい。

 

 

 

 

 

「その昔、この鉱山の利権を賭けて争っていた家族を招いて決めた条約? というのでここにいるんですわ」

「え、戦争してたの?」

 

 

 

 

俺はびっくりした。やはり金の集まるところに人の欲ありっていうしね。というか、戦争してた派閥の家族を住まわせるって悪く言うとそれ人質だよね。てか、条約? そんなのが同じ領地内であるとかおもしろい自治権も存在したもんだね。これ同一王国って言っていいんだろうか。俺が不安になると後ろからついてきたリーゼロッテの父であるゴールデンが話に割って入る。

 

 

 

 

 

「昔はたくさんの小さな地域同士で争っておりましてな。それをワシの一族がまとめ上げ、統一してこの大規模な連合にしたのです。さしずめ、ワシは連合国家の統一王という立ち位置ですわい」

 

 

 

 

ああどうも、いたんだね。どうしていちいち自慢を挟むかね。王族の俺がいる前であんま自分のことを王、王って連呼しない方がいいと思うけどな。ていうか、戦争を終結させた人間がどうして王国の二番手なんてやっているのだろう。ここまで野心丸出しなら王様になっていてもおかしくはないのに。

 

 

 

 

「さすがはお父様ですわ!」

「ははははは!リーゼロッテはやはり可愛いのう!」

 

 

 

 

この親あってこの子ありってか、マジもんのやばい親子だったか。ここで人質に取られている貴族もさぞかし大変なんだろうな。どういう条件でここに住んでいるんだろう。間取りとか賃金とか。俺がそんな部屋探しのようなことを考えていると、またもゴールデンが口を挟んで説明を入れてくる。

 

 

 

 

「ここに住む貴族たちとは『ベルサイラル条約』というのを結んでおりましてな」

 

 

 

 

 

なにその怖い名前の条約! 俺の名前と言い、ちょっと怖いんですけど。王族になんか恨みでもあるんですか。まさか前世の史実通りの条約内容だったりしないよね。前世の史実では、戦勝国が敗戦国に巨額の賠償金を吹っかけたために世界は大変なことになったりもしてたりする。俺がそんなことを考えながら恐る恐るリーゼロッテを見ると、リーゼロッテは俺の視線に気づき、にこりと満面の笑みを開花させる。ああ、あかんやつかもしれませんわ。俺は聞かなかったことにしてリーゼロッテと二人きりで話をすることにする。

 

 

 

 

 

「さて、殿下からいただいたオセロの販売についてですが、さっそく売れ行きは好調ですわ!」

 

 

 

 

 

以前、リーゼロッテに無理やりせがまれてなんとか条件付きで交換したオセロの独占販売権だが、なんと既にリーゼロッテは軌道に乗せてしまったらしい。さすがはオセロの虐殺者と俺が陰で言っているだけはある。確かに、貴族を住まわせたりするくらいだし、娯楽が結構必要とされているのかもしれない。地域柄が出る商品だったんだなと感慨にふけっていると、リーゼロッテが俺に紙を渡してくる。

 

 

 

 

「これが殿下が仰っていた、我が領地の諸情報ですわ」

「おお! これが!」

 

 

 

 

渡された紙に目を通すと、確かにこのブルボン領の情報が数多く記載されており、俺としても結構満足のいく揃者に仕上がっていた。さすがは仕事はできるリーゼロッテさんだ。俺が喜ぶのを見て、リーゼロッテも喜んでいるようだ。

 

 

 

 

「どうしたの? 嬉しそうだけど?」

「そっ、そんなことはありませんわ!」

「そう? それにしてもリーゼロッテに頼んでよかったよ」

「本当ですの?!」

 

 

 

 

これまた笑顔を満開にさせて喜ぶリーゼロッテを前に、俺は素直な称賛を贈る。有言実行してくれる人間ほど信用できる者はいない。約束を守ると言うのはそれだけでかけがえのない価値があるのだ。

 

 

 

 

「本当だよ。リーゼロッテにあげてよかった」

「・・・・・・!!!」

 

 

 

 

リーゼロッテはピョンピョンとそこら辺を跳ねて回っている。よほど褒められたのが嬉しかったのか、俺はそんなリーゼロッテを微笑ましく見ていた。ようやく我に返ったリーゼロッテが顔を赤くして席に着くと、咳ばらいをして何事もなかったように話を続けようとする。やはり貴族は貴族でもまだ子どもには変わりないのだと安心してしまった。

 

 

 

 

 

「オセロは人気を博し、今では領民のほとんどがオセロを保有している状況ですわ」

「え、そんなに!」

 

 

 

 

まさかそんな爆発的にバズルとは思わず、俺は腰を抜かしそうになる。娯楽によほど飢えていたのか、俺はさらなら娯楽遊戯に思考を加速させる。俺の計画を察したのか、リーゼロッテは商人顔になってにこりと提案を持ちかけてくる。

 

 

 

 

「殿下の頭の中にはまだなにか面白そうなものが眠っていそうですわね」

「まあね」

「それを下さいまし」

「いやです」

 

 

 

 

 

俺は即答で拒否する。なんだってこの困った姫は俺の知的財産をタダでもらおうとするのか。抜け目ないと言えば聞こえはいいが、今の現状ではジャイアンだよ。俺はやれやれと内心思っていいると、ふくれっ面になるリーゼロッテが我儘を通そうとする。

 

 

 

 

「どうしてですの!」

「だって、俺の知的財産だよ?」

「チテキ財産?」

 

 

 

 

俺はリーゼロッテに知的財産について説明してやる。リーゼロッテは実に興味深そうに俺の話しを聞いていた。まるで宝石でも見つけたかのように目を輝かせて食い入るように俺の話しに相づちを打っている。

 

 

 

 

「そんな無から有を生み出すなんて、まるで錬金術ですわ!」

「錬金術なんてあるの?」

 

 

 

 

俺はリーゼロッテの言った錬金術に反応してしまった。俺もどうしてリーゼロッテと同じ穴の狢らしい。でもよく考えてほしい。この異世界だ。錬金術があってもおかしくないじゃないか。俺が錬金術について聞こうとすると、リーゼロッテはにこりと嫌な顔をして手を差し出す。俺は徐にリーゼロッテの手にお手をしてみる。

 

 

 

 

「なにをしてらっしゃるのですか?」

「え、えっと・・・・・・ワン?」

 

 

 

 

俺の渾身のギャグを振り払うと、リーゼロッテは話を知的財産に転換する。せっかくの俺のギャグが。

 

 

 

 

 

「錬金術について聞きたくば私も知的財産権を行使しますわ!」

「うわっ! ずるいぞ!」

 

 

 

 

俺の抵抗を勝利の笑みで一蹴するリーゼロッテに俺はまんまと一杯食わされた。まさかこんなに早く吸収学習して反撃して来るとは。さすがはリーゼロッテ、侮れん。俺はやむなく俺が知るボードゲームやカードゲームについての知識を教えることにした。満足したと思われるリーゼロッテのホクホク顔に俺は苦虫を嚙み潰したようになるも、これで交渉は成立だ。俺はさっそく錬金術について話を聞く。

 

 

 

 

「この鉱山地帯には炭鉱夫など鉱山を生業とする人が多くいますわ。その中でも、変人・・・・・・面白いことをしてる人物がいますの」

「え、今変人って言いかけたよね」

 

 

 

 

俺の不安を忘れさせるように、リーゼロッテは俺を外へと誘う。俺は一抹の不安を抱えながら外に出る。リーゼロッテに付き添われて鉱山の麓まで来ると、そこにはいかにも怪しげな家が建っていた。

 

 

 

 

「着きましたわ」

「え、ここなの?」

 

 

 

 

 

そこにはいかにもやばそうな、家が建っていた。そう、変な人が住んでいそうな家である。

 

 

 

 

 

 

 

 




明日も頑張ります

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