フシギナセンセイ   作:聖剣エクスカリ棒

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アビドス編です


いざゆけあびどす

「手紙?」

 

両腕で抱えていたダンボールをオフィスの隅に下ろす。 衝撃で中に入っている品々がぶつかり、音を立てる。

来たばかりの時に比べて、シャーレも随分と物が増えてきた。

しゃがみ込み、箱の中身のチェックを済ませていく。

 

「はい。 一通だけ、不穏な手紙が来ていまして」

 

確認を終え、すぐに必要な備品だけを先に取り出す。

机の上には様々な自治区、多くの生徒から送られてきた手紙の山。 アロナはその中の一つが気になっているらしい。

 

組み立てた卓上用のファイルラックを机に置いて、代わりに1枚の手紙を手に取る。

 

「えっと……これ?」

 

「それです」

 

差出人はアビドス高等学校。 聞き覚えは無い。

便箋を取り出す。

 

『連邦捜査部の先生へ

こんにちは。私はアビドス高等学校の奥空アヤネと申します。

今回どうしても先生にお願いしたい事がありまして、こうしてお手紙を書きました。

単刀直入に言いますと、今、私たちの学校は追い詰められています。

それも、地域の暴力組織によってです。

 

こうなってしまった事情は、かなり複雑ですが……。

どうやら、私達の学校の校舎が狙われている様です。

今はどうにか食い止めていますが、そろそろ弾薬などの補給が底を突いてしまいます……。

このままでは、暴力組織に学校を占拠されてしまいそうな状況です。

 

それで、今回先生にお願いできればと思いました。

先生、どうか私たちの力になっていただけませんか?』

 

簡潔で、それでも要点はしっかり抑えられた3枚の手紙。

 

読み取れるのは、噂でしか知らないシャーレに助力を頼まねばならないほど、アビドス高等学校は追い詰められているということ。

 

手紙を読み込みながらデスクチェアに身を預ける。

 

「うーん……アビドス高等学校ですか……」

 

ホログラムで投影されたアロナが悩むように目を閉じる。

 

「昔はとても大きい自治区でしたけど、気候の変化で街が厳しい状況になっていると聞きました。

どれほど大きいかというと、街のど真ん中で道に迷って遭難する人がいるぐらいだそうです!」

 

「街に影響を与えるほどの気候の変化?」

 

「あまり詳しくは知りませんが、大きな砂嵐が起きたそうで……」

 

机の引き出しからキヴォトスの地図を取り出す。

 

アビドス高等学校の場所を調べてみると、付近に広大な砂漠が広がっている。 砂嵐はここから発生したのだろう。

自治区もアロナの言う通り、人が迷ってしまってもおかしくない広さ。

 

「アロナ。 クラフトチェンバーって、弾薬とか補給品も作れるの?」

 

「はい、問題なく作れます。 家具ほどの大きさまでなら、理論上は製造可能です」

 

「なるほど」

 

確か、物置の中に要らないものをまとめておいたはず。

そこにある不用品をクラフトチェンバーで再生成すれば、アビドスへの物資は充分足りるだろう。

 

「じゃあその物資を運ぶ手段はある?」

 

「いえ、私にもクラフトチェンバーにも、そういった機能は……」

 

「うーん……」

 

大量の荷物を運ぶ為に車を使いたいが、俺は運転免許を持っていない。 運ぶ方法が無ければ大量の補給品も役には立たない。

何度か分けて運ぼうにもシャーレとアビドスは近い距離じゃない。

 

どれだけ頭を捻っても良い案は出ない。

あまり悩んでいても仕方が無いので、早速最終手段を使うとしよう。

 

「……王様」

 

『よもや貴様、また我の宝物庫を荷物運びに使う気か?』

 

「でも、使用期限とか決めてなかったよね?」

 

過去の記憶を呼び覚ましているのか、王様は俺の言葉に沈黙。

そして、思い切りため息をついた。

 

『…………契約を確認しなかった我の不手際と、臆面もなく揚げ足をとる度胸に免じて、もう一度だけ使用を赦す。 これで最後だ』

 

分かりやすく不機嫌な声。

そもそも応じない選択肢もあるのに手を貸してくれる王様は、やっぱり優しい。

 

一人で話す俺に、シッテムの箱の内部から、アロナが怪訝そうな目を向ける。

 

「先生? どなたかいらっしゃるのですか?」

 

「気にしないで。 それより、準備が出来たら出発しよう」

 

「早速向かうんですか!? かしこまりました!」

 

無邪気に目を輝かせたアロナは、綺麗な敬礼のポーズを見せる。

 

「アロナは戸締りとか、シャーレの設備のチェックをお願い」

 

「分かりました! 少し待っててくださいね」

 

俺がアビドスにいる間のセキュリティやその他諸々の作業をアロナに任せ、物置へと足を運ぶ。

 

必要なものはアビドスへの補給品と、それに加えて砂対策。

砂漠には行かないだろうけど、いつ来るか分からない砂嵐に備えて、防塵ゴーグルやストールも作っておきたい。

 

地下室と物置を往復して、製造のための素材をクラフトチェンバーに投入していく。

補給品がどの程度あればいいかも分からないので、とにかく物置にあった物を全部入れた。 これだけあれば足りないことは無いはず。

 

地下室の椅子に座って、物質の生成が終わるのを待ち続ける。

 

弾薬や食料が生成されると同時に、金色の歪みに落ちていく。

ドバドバとクラフトチェンバーが物資を吐き出し、それが次々何処かへ消えていく異様な光景を見て、口を開けて固まるアロナ。

 

「先生、何が起きているんですか……?」

 

「あはは、まぁ、ちょっとしたズルだよ」

 

3分をかけてようやく物資の放出が止まる。

アロナに頼んでいた手続き無事終わり、アビドスへ向かう準備は大方完了したと言ってもいい。

 

着替えやタオルを旅行バッグに詰めて、キャリーバッグに括り付ける。

ちょっと重いけど特に支障は無い。

 

「アロナ、良かったらナビゲートをお願いできる?

私も地図は持っていくけど、初めて行く場所だから。 私の端末のGPSを使って、道案内をしてくれると助かる」

 

「ナビゲートですね、お任せ下さい! 私が完璧に案内してみせます!」

 

ホログラムのアロナが自信満々で胸を叩く。

 

道に迷ったことが原因でアビドスに物資が届かず、校舎が占領されてしまう可能性もゼロでは無い。 その点、アロナは本当に頼りになる。

 

「よし、行こう」

 

キャリーバッグを引いてシャーレを出る。

キヴォトスに来て初めて、ちゃんと学園に入る事になる。 先生として気を引き締めないと。

 

 

 

 

★★★

 

 

 

 

照りつける太陽の中、似たような道を何度も曲がり、進んでいく。

 

「先生、目の前の十字路を左です」

 

「……了解」

 

広げていた地図を閉じてポケットに仕舞う。 既に自分の予測している場所とは違う場所。

これ以上地図を見ていても無駄に頭を使うだけ。なら、このままアロナの誘導に従う方が懸命だ。

 

砂漠が近いこともあってか、アビドス自治区は他の場所よりも暑い。 そのうえこの広さともなれば、迷えば命の危険すらあるだろう。

熱中症にならないよう、自動販売機で買ったスポーツドリンクで喉を潤す。

 

「その先を右に曲がって、真っ直ぐ進めば目的地です。 そろそろ目視出来ませんか?」

 

「うん、見えてきた。 ありがとうアロナ」

 

右手側に見えてきたコンクリート製の校舎。

外見だけならば、外の世界の高校と大した違いは見当たらない。

 

言われた通りに道を曲がると、学校を囲むように聳えるレンガの壁が奥の方に見えた。

アビドス高等学校へ無事に到着したみたいだ。

 

開きっぱなしの校門は砂に塗れていて、壁もよく見ればところどころ蔦が絡んでいる。

 

歩き疲れたこともあり、中に足を踏み入れようとして、ふと思いとどまる。

 

「アロナ、これ入ってもいいのかな」

 

「シャーレの権限なら全ての学校に立ち入ることができますが……、やっぱり、誰かの許可を取るに越したことはないですね」

 

「だよね。 ちょっと呼んでみる」

 

校門の前から校舎に向けて呼びかける。

俺の声がシンとした自治区内に響き渡るものの、校舎の中にまで届いているかは分からない。

 

今は昼時、学校に誰もいないことは無いと思うので、続けて何度も呼びかける。

だが、誰かが校舎から出てくることは無い。

 

諦めて自分の足で探した方が早そうだ。

 

「あの〜、何かご用ですか?」

 

後ろから掛けられた声に思わず跳び上がる。

振り返ると、同じく驚いた表情の亜麻色の髪の少女。

 

「すみません、驚かすつもりは無かったんです。 ただ、さっきから熱心に人を呼んでいらっしゃったので、何か用があるのかと……」

 

眉をひそめながら頬を掻く少女。 その首に下げられたネックストラップには、校章とアビドスの文字。

言うまでもなく、この学校の生徒だ。

 

「こっちこそすみません。 ぉ、じゃなくて、私はシャーレから来た藤丸立香です。 手紙を見て救援に来ました」

 

届いていた手紙と身分証を少女に示す。

少女は再び驚いた表情を見せた後、満面の笑みを浮かべた。

 

「わぁ、本当に来てくださったんですね! 私は十六夜ノノミって言います! ここじゃあれですし、中へどうぞ!」

 

軽い足取りの少女、ノノミに続いて校舎の中へと踏み入る。

 

外見と同じコンクリートで出来た綺麗な校舎は、歩いていると懐かしさを感じる。 だが、広大な自治区に比べると随分と小さい。

それに、学校の何処からも他の生徒や先生の気配が一切感じられない。

少なくとも、ただ暴力組織に襲われているだけの問題では無さそうだ。

 

階段を昇って廊下を進むと、やがて少女はひとつの教室の前で立ち止まった。 部屋の名を示すプレートには『対策委員会』の文字。

部屋の中からは数人の生徒の声が聞こえてくる。

 

「みんなー、ビッグニュースですよ〜〜!」

 

扉をスライドさせ、ノノミが対策委員会の教室に入っていく。

一瞬そのまま入っていいのか迷ったが、思い切って中へ。

 

想像していたものとはレイアウトの違う、どちらかと言えば会議室に近い配置の教室。

中央に置かれた机を囲むように4人の少女が座っている。

 

「先日送った手紙が正式に受理されて、連邦捜査部からの救援がやってきました!」

 

「シャーレの藤丸立香です。 よろしくお願いします」

 

くの字に広げられた両手で存在を示される。

若干の気恥ずかしさ感じながらを頭を下げると、座っていた生徒達は目を丸くした。

 

「え、早すぎじゃない……? ちょうどさっき、そろそろ手紙が到着した頃だろうって話をしてたんだけど……」

 

「それに、思ってたよりもずっと若い。 本当に先生?」

 

頭頂部に耳を生やした2人が困惑した様子で首を傾げる。

すると、赤いメガネをかけた少女が椅子から立ち上がり、目の前までやってくる。

 

「私が手紙を出した奥空アヤネです。 ……疑っていたわけではありませんが、本当に来てくださったのですね。 ありがとうございます」

 

深く頭を下げるアヤネ。

そして、身近にあった並んだ椅子の一脚へと俺を促す。

 

右側に黒髪で猫耳の少女とノノミ。 左側に銀髪で狼耳の少女とアヤネ。 正面には長い桃色の髪でオッドアイの少女。

 

「今から手短に、アビドスの置かれている状況を説明したいのですが、先生は大丈夫ですか?」

 

「助かるよ。 お願い、アヤネ」

 

「はい。 それでは、手紙にも書いた暴力組織のことから……」

 

アヤネの話を聞きながら、横目で目の前に座る少女の様子を伺う。

教室に入った時から感じる視線は、俺を値踏みしているようだった。




今回の√分岐
・アビドスに向かわなかった場合道場行き
・補給品を自分で運んだ場合、道場行きにはならないが後々の戦いが苦しくなる
・アロナにナビゲートを頼まないと、原作通りに迷うがシロコに見つけられずそのまま瀕死。 サーヴァントによる救済が入るがアビドス編初戦闘に間に合わず学校が占領されて道場行き
・勝手に中に入ると最初に出会った人物からの好感度が若干下がる
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