フシギナセンセイ   作:聖剣エクスカリ棒

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1天井で正月カヨコも正月アルも手に入りました
すり抜けで通常アルも引けました
新茶は引けませんでした


先生流の指揮

アビドスにやってきて数日。

特に襲撃が起きることも無く、シャーレの仕事をこなしたり、生徒たちに授業を行ったりする毎日。

この数日間の多くの時間をアビドスで過ごして、この学校にも随分と詳しくなった。

 

だからこそ見えてくる謎もあるのだが。

 

『もちろん私には凡その検討がついている。 いかにも簡単な推理だったよ』

 

頭に直接届く、淡々としつつも自慢げに感じる口調。

声が聞こえただけだと言うのに、椅子をクルクルと回しながらタバコを更す名探偵の姿を幻視する。

 

「絶対に言わないでね?」

 

ホームズが勝手に答え合わせを始めるとは思わないが、しっかりと念押しをする。

 

ホームズの推理は恐らく当たっているのだろう。 だからこそ、それを聞くわけにはいかない。

皆が隠し事を教えてくれるまでは、その謎は謎のままにしておきたい。

 

思っていることをそのまま伝えると、ホームズはフッと小さく笑った。

そして、それと同時に嗄れた含み笑い声がどこからか耳に届く。

 

『呆気なくフラれちゃってまぁ、お笑いものだネ。 かの名探偵から推理を奪ってしまえば、残るのはお喋りな薬物中毒者だ』

 

『ははは。 滝に落ちて死ぬような老人の僻みなど、蚊に刺されるのと大した差はないな』

 

『その減らず口、一生閉じてる方が良いと思うヨ?』

 

「2人ともうるさいんだけど……」

 

突如始まった口喧嘩に辟易して、空き教室の机に突っ伏す。

実体化する魔力も無いはずなのに、2人は以前のように互いに挑発の応酬。 ほんとにやめてほしい。

他の誰にも聞こえずとも、マスターである俺には一言一句が脳内に伝わるのだ。

 

2人を黙らせてノートパソコンに向かっていると、ドアの引かれる音と足音が聞こえた。

 

「先生、居る?」

 

シロコがスライド式のドアを開けて現れる。

 

「……? 先生、誰かと話してなかった?」

 

「いや、知り合いとちょっとね」

 

懐から取り出したスマートフォンをひらひらと振る。 背中に熱を感じるも、ちょっと思考を誘導しただけで嘘はついていない。

教授印の誤魔化しテクだ。

 

シロコも納得してくれたようで、廊下の先に視線を向ける。

 

「アヤネとホシノ先輩が、これからの動きについて話したいって。 来れる?」

 

「分かった、行くよ」

 

ノートパソコンを閉じ、キャリーバッグを持ってシロコに続く。

対策委員会の教室に入ると、俺以外のメンバーは全員揃っていた。

 

ホシノの向かい側にある定位置に座ると、ホシノは満足気に頷く。

 

「よし、じゃあ全員揃ったね。 今日集まったのは他でもない、次」

 

ホシノの声をかき消す断続的な音。

 

花火を小さくしたような音が何度も校舎の中を突き抜ける。

今までで聞いた経験は少ないが、それでも俺の記憶には確かに刻まれた音。

 

「じゅ、銃声!?」

 

「先生、伏せてください! 襲撃です!」

 

アヤネの声が届くと同時、机の下に隠した体をキャリーバッグで庇う。

飛来した銃弾が1発、教室の中を数回跳ね回った。

 

「ヘルメット団のやつら、また……!」

 

「ここからでも視認できる。 本当に性懲りも無い」

 

窓を覗き込むシロコの瞳に映る20人ほどの人影。

学校に向かってやって来る、ヘルメットが特徴的なその集団は、間違いなくカタカタヘルメット団だ。

 

「すぐに出るよ。 先生のおかげで、弾薬と補給品は充分」

 

ヘルメット団から視線を外し、シロコは握る愛銃を手早くチェックする。

それに倣うように他の面々も自分の銃を確認。

 

俺も持っていたシッテムの箱を起動する。

 

「ぉ、私が指揮する。 アヤネ、サポートをお願い」

 

「わかりまし……ってえぇ!? 先生!?」

 

「あ」

 

アヤネの叫び声を聞いてハッと我に返る。

何かを考えるまもなく俺は窓から飛び降りていた。

 

当たり前だが着地を任せられる相手は存在しない。

この高さなら生身でも死ぬことはほぼ無いだろうが、骨折してしまうには申し分の無い高さ。

 

キャリーバッグを下敷きにしながら、目を固く閉じる。

 

「……あれ」

 

急に消えた浮遊感に瞼を開けると、俺の乗るキャリーバッグは地面に着いていた。

落ちた際の衝撃は全く受けていない。

 

「大丈夫ですか、先生?」

 

「……あぁ。 ありがとうアロナ」

 

シッテムの箱の中から心配そうな顔を覗かせるアロナ。

体験するのは初めてだけど、高性能な防衛機能があると話には聞いていた。 それを使ってくれたのだろう。

 

「先生! 大丈夫ですか!?」

 

「今そっちに行く」

 

窓から身を乗り出すみんなに手を振って無事を伝える。

ヘルメット団もこちらを視認できる位置にいるし、あまり姿を晒さないで欲しいのだが、俺の言えたことじゃないので口を噤む。

 

同じく窓から飛び降りて綺麗に着地をしたシロコ。

シロコと2人で学校を出て、近づいてくるヘルメット団の見える場所で身を隠す。

 

「ひゃっははぁ! 今日こそ学校は占拠させてもらう!」

 

弾丸を撒き散らしながら笑い声を上げるヘルメット団は、初日に見た生徒たちより何倍も不良らしい。

 

威嚇射撃を行うシロコの傍で姿を隠していると、正面玄関からアヤネを除く対策委員会が現れた。

 

「おまたせ〜」

 

「それでは先生、お願いします」

 

ノノミからイヤホン型の無線機を受け取り、装着。

 

シッテムの箱を左手に持ち、アロナに呼びかける。

 

「アロナ、戦闘補助をお願い」

 

「お任せ下さい!」

 

シッテムの箱から投影される周囲の地形のホログラム。

リアルタイムで更新されていくその映像は、地形だけでなくメンバーのバイタルや敵の行動予測、その他様々な情報が表示されている。

 

サポートする側はこれだけの情報を処理しなきゃいけないのか。

 

今までは知らなかった事実に色んな人の事が頭によぎるも、深呼吸をして意識を切り替える。

今はこっちの方が大切だ。

 

「……出撃しよう。 射程を考えてホシノが1番前に。 ノノミは取り回しが効きにくいから後ろで待機、セリカとシロコは要所でホシノの援護を。 アヤネは指示を出すから、適宜ドローンで支援をお願い。

まずは俺とホシノが前線まで出るから、セリカとシロコは敵に攻撃をさせないように射撃」

 

「了解!」 「わかった」

 

俺の言葉に頷き、銃を構える2人。

 

「ホシノ、行こう」

 

「んぇ、えっと、そうだね……?」

 

2人が牽制をしている間に遮蔽物に隠れながら屈んで移動。

相手も多様な武器を持っていて、こちらと同じように編成を組んでいるみたいだ。

 

これまでなら強力な一撃で一点を崩して起点をつくっていた。 だけど、そういう手はもう使えないと言っていい。

強いて言うならシロコの手榴弾だが、起点にできるかどうかを俺が把握出来ていない。

 

よって、以前と同じ手を使わせてもらう。

 

「作戦を話すね。 まずは俺が隙を作るから、合図を出したらシロコが手榴弾を投擲。 爆発と同時に右手側をホシノ、左手側をノノミが攻撃。 撃ち漏らしはシロコとセリカが対応。

その他はこっちが随時指示するから、大まかな流れはこれで」

 

「何言ってんの!? 先生は銃弾を受けたら死んじゃうでしょ!」

 

「そうだよ、先生。 こんな前線に出てるだけでも危ないのに、そんな事まで任せられないよ」

 

「……え。 先生、前線に居るの?」

 

後ろのブロックからシロコが顔を出す。 そうして俺を見た途端、シロコは驚いたように目を見開いた。

さっき確かにつたえたとおもうんだけど……。

 

「先生、私の場所まで戻ってきてください。 そこだと何が起きるか分かりません」

 

「アヤネちゃんの言う通り、ここは私たちに任せて下がってください」

 

「先生が後ろに居ちゃ格好がつかないよ。 それより、さっき伝えた通りに行くよ」

 

「先生!」

 

無線機を通して聞こえるみんなの声。 心配してくれているのがこれ以上くらいに伝わってくる。

だけど、生徒だけを危険に晒すだけなんて出来るわけが無い。

ドクターやゴルドルフ司令もこんな気持ちだったのかな

アロナに目配せをすると、こっちも中々不満げな様子。

だけど、アロナなら守ってくれると信じている。

 

「待って、先生」

 

立ち上がろうとした俺の服をホシノが掴んで止めた。

 

「先生がそこまでする必要は無いでしょ。 ここに居て」

 

無線機を切っているのだろう、イヤホンからは聞こえない声。

俺と向き合うホシノは、普段の眠たげなものとは違う、何度も見慣れた瞳をしていた。

 

「……大丈夫」

 

自分の無線機を切って、ホシノの頭に右手を載せる。

ただの高校生がそんな目をしないで欲しい。

 

「みんな勘違いしてるけど、俺は本当に強いからさ。 ホシノは俺の事を信じてて」

 

そっと小さな腕を握ると、服を握っていた手は呆気なく外れた。

 

ホシノから視線をシッテムの箱へと移す。

 

「先生のことは、アロナが守ります!」

 

画面の中で拳を握るアロナ。

可愛らしいその仕草に思わず笑を零して、ブロックの陰から飛び出す。

 

「アロナ!」

 

突然現れて走ってくる存在。

ヘルメット団は一瞬狼狽えるも、即座に発砲を開始する。

 

先頭にいた生徒たちの小銃から続けて吐き出される弾丸。 その尽くが、水色のバリアに触れるや否やあらぬ方向へと逸れていく。

『シッテムの箱の持ち主を守る』という概念の力を超えるものは、この場には存在しない。

 

撃っても撃っても止まらない俺に怯むヘルメット団達。 その5メートルほど前で立ち止まり、思い切り手を上げる。

 

「撃たないで! 死んじゃうから!」

 

頭の上を指し示しながら叫び続けると、やがてゆっくりと銃撃が止み始めた。

ヘイローが無いことに気づいたらしい。

 

「お前、誰だ! なんでここに居る!?」

 

1人の赤いヘルメットを被った人物が怒声を上げる。 無理もない。

 

「俺は藤丸立香。 ちょっとアビドスに用があって」

 

「なんで無傷なんだ!」

 

「連邦生徒会から凄い機械を貰ったんだ。 ほら、私は弾丸1発で死んじゃうから」

 

威嚇するように向けられた銃。

投げかけられる質問に答えつつ、さりげなく無線機をつけておく。

 

「何をしに来た、目的は!」

 

「ちょっと言いたいことがあるんだ」

 

「言いたいこと?」

 

「うん。 今だって」

 

「……なに?」

 

相手にはギリギリ聞こえる程度の声量で出した声に、案の定赤いヘルメットの生徒は聞き返す。

それを無視して、俺は後ろを向いて全力で走る。

 

前を見ると、怒った顔をしたシロコが何かを投げた後だった。

作戦に従ってくれた事にお礼を言うことを心に決めながら、無線機越しに名前を呼ぶ。

 

「ホシノ、ノノミ」

 

1番近いブロックの陰に滑り込んだ瞬間、道路に爆音が鳴り響いた。




ここでは対策委員会の教室は2階ということにしています。 原作で明記されていましたらご指摘ください。

今回の√分岐
・シロコへの誤魔化しが失敗すればホシノの好感度がゼロに
・銃声を聞いての反応が遅ければ跳弾によって負傷。 処置が遅れればそのまま道場行き
・飛び降りる前にシッテムの箱を起動していなければ道場行き
・ホシノの言うことを聞けば好感度変動無し
・無理矢理説得をしなければ不必要に物資を使い、対策委員会も多少ダメージを負う
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