フシギナセンセイ   作:聖剣エクスカリ棒

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ランキング乗ってました。 かんしゃあっ


シッテムの箱

僅かな明かりで照らされた部屋の中、着物姿の少女と向かい合う。

ここに来る途中で出会った不良生徒たちは全員撤退した。 つまりこの少女は、不良の仲間ではあっても同じグループでは無いという事。

この少女はたった1人で、あの不良たちと協力関係を結べる程の実力がある。

 

とはいえ、まだ敵対はしていない。 ゆっくりと階段を降りて少女へと近づく。

 

「こんにちは。 俺は今日から此処で働く先生なんだけど、君は?」

 

まずは対話から。 今までに何度も行ってきた手法で、これに何度も助けられた。

勿論、何も知らないで通じるとは思っていない。 だけど、彼女自身の口から素性を聞きたかった。

 

「狐坂ワカモ。 此処を襲撃した主犯格、とも言えます」

 

「そっか、俺は藤丸立香。 襲撃の理由は?」

 

「連邦生徒会が運び込んだものを破壊するため」

 

鋭い声が暗い部屋中に響く。

ですが、と困ったように周囲を見廻す少女──ワカモ。 最も、本当に困っているかどうかは窺い知れないが。

 

「具体的に『何なのか』が分からないので、破壊のしようが無いのです。 先生は何か御存知で?」

 

「ごめん、それは俺にもちょっと……。 壊す物が分からないなら、早く帰った方がいいと思うよ」

 

「あら。 それは助言ですか? それとも……命惜しさ?」

 

ワカモの声がワントーン低くなり、空気が一気に張り詰める。

分かりやすくライフルを持ち直すワカモには、他の不良とは比較にならない迫力がある。

 

ただ、一つだけアドバイスをするならば、ワカモは威圧するのが少し遅かった。

 

「どっちでも無いけど、強いて言えば助言かな。 女の子が大人の男と2人きりになるのは良くないよ」

 

俺とワカモは互いに言葉を交わして名乗りあった。

出会ってすぐ敵意を向けられるならまだしも、その会話は信用するのに充分すぎる時間。

 

『少なくとも、いまこの瞬間は敵じゃない』。 それを知れた事は大きな成果だ。

 

「今回は何もされなかったから目を瞑るけど、悪い事は程々にね」

 

目線ほどの高さに位置する頭を軽く撫でる。 普段よりも身長は高いけど、気持ち的には子供を撫でる時と変わらない。

 

自分が少し迷惑なだけのイタズラ(悪い事)なら、何度も受けなれている。

大事なのは、それが他の人に及ぶ前に良くないことだと教えること。

 

気持ちが伝わるようにと、手入れが行き届いた柔らかい髪を撫で続ける。 すると、特徴的な狐耳が次第にピコピコと震え始めた。

 

「あ、あああのっ!」

 

「どうしたの?」

 

「し、失礼しますっ!!!」

 

脱兎の如くワカモが走り去る。

連邦生徒会に恨みがあったであろう彼女も、そう悪い人物には見えなかった。

 

ワカモが出ていった事で手持ち無沙汰になり、1度地下を出る。

綺麗なビルの中を眺めていると、リンから通信が入った。

 

『先生。 今、この騒ぎを巻き起こした生徒の正体が分かりました。 戦闘は終了したと聞いていますが念のためお伝えします』

 

「ワカモでしょ? さっきまで目の前に居たよ」

 

『…………はい?』

 

リンの間の抜けた声を機械越しに聞きながら近くの壁に寄りかかる。

就任初日からバタバタしているけれど、そう悪い気はしなかった。

 

 

 

★★★

 

 

 

ワカモと出会った地下室で待機していると数分でリンがやって来た。

急いできたらしく、息は上がり、身嗜みも一部崩れている。

 

「お待たせしました。 お怪我などはありませんか?」

 

「大丈夫だよ。 俺も此処も無事」

 

「…………そのようですね」

 

俺の体と部屋を一通り見て回り、リンは安堵したように息を吐き出した。

予め問題無いことは伝えていたけど、それでも相当心配をかけてしまったみたいだ。

 

俺の伝えた通り何も起きていないことを確認したリンは、手早く乱れていた服や髪を整える。

そして、保管されていたひとつのタブレット端末を取り出した。

 

「これが連邦生徒会長が残した『シッテムの箱』です。 受け取ってください」

 

シッテムの箱という名前に何かが引っかかったような感覚。 まるで何処かで聞いたことがある気がして、勘違いだと軽く首を振る。

 

リンに渡されたタブレットは手触りも重みも、よくあるタブレット端末とさして変わらないものだった。

 

「普通のタブレットに見えますが、実は正体の分からないものです。 製造会社も、OSも、システム構造も、動く仕組みの全てが不明。

連邦生徒会長は、この『シッテムの箱』は先生の物で、先生がこれでタワーの制御権を回復させられるはずだと言っていました」

 

「そうなんだ……」

 

手元のタブレットを改めて観察する。

最新型らしきモデルのそれは、外見ではとても不思議な物には見えない。

 

視線だけをずらして、無言で問いかける。

 

『すまないね、解析してみたが分からなかった。 解析出来なかったのでは無く、その内部技術の全てが私の理解の外だ。

唯一分かったのは、使われているのが、私の知る機器類の遥か上の技術ということだけだ』

 

返ってきた答えに、口には出さずに感謝を伝える。

 

「私たちには起動すら出来ませんでした。 押し付けがましいですが、ここから先は先生にかかっています。

私は邪魔にならないよう離れていますので、何かあれば呼んでください」

 

「ありがとう、リン」

 

一礼をして部屋を出るリン。

歩いていく後ろ姿を見送ってシッテムの箱を起動させる。

 

普通のタブレットのように光の点いたそれは、グラデーションのかかった水色の背景を画面に映し出した。

リンの言葉が嘘かのように呆気なく起動したシッテムの箱に拍子抜けしてしまう。

 

「あれ、パスワード?」

 

起動したシッテムの箱は、次いでパスワードの入力を求めてきた。 当然、来たばかりの自分では知る由もない。

 

それでも何故か思い当たる文章があった。

 

……我々は望む、七つの嘆きを。

……我々は覚えている、ジェリコの古則を。

 

《『シッテムの箱』へようこそ、藤丸先生。

《生体認証及び認証書生成のため、メインオペレートシステムA.R.O.N.Aに変換します。》

 

 

 


 

 

 

崩れた壁と天井。

その奥に見える、果てしない海と青空。

壁の外に積み上げられた机。

対照的にきちんと並べられた机。

 

床一面が水で満たされた見覚えの無い教室にて、1人の少女が机に伏せて眠っていた。 寝言を聞く限りなにやら幸せな夢を見ているらしい。

 

至福の時間を邪魔するのは申し訳ないが、眠っている少女の体を揺する。 緩やかに上下していた肩が跳ね、寝ぼけ眼を擦りながら少女は体を起こした。

 

「むにゃ……んもう……ありゃ?」

 

パチリと開く蒼の瞳。

少女は真っ直ぐに俺を見つめながら、混乱しつつも少しずつ状況を飲み込んでいく。

 

「こ、この空間に入ってきたっていうことは、もしかして、藤丸先生……!?」

 

「そうだけど、君は?」

 

「うわあああ!? そ、そうですね!? もうこんな時間!?」

 

少女は慌てたように何かを喋ろうとするが、出てくるのは同じ叫び声ばかり。 俺が深呼吸を促してようやく、少女は落ち着きを取り戻したようだった。

 

「えっと、それではまず自己紹介から。 私はアロナ!

この『シッテムの箱』に常駐しているシステム管理者であり、メインOS、そしてこれから藤丸先生をアシスタントする秘書です!

やっと会えました! 私はここでずっと、ずーっと先生を待っていました!」

 

心の底から嬉しそうに笑うアロナにつられて笑みが零れる。

 

「アロナ、よろしくね」

 

「よろしくお願いします! それではまず、形式的ではありますが、生体認証を行います! 少し恥ずかしいですが、こちらの方に来てください」

 

言われた通りアロナに近づく。

もっと、もっとと促されるうちに、至近距離にまで接近した。

 

「さぁ、この私の指に、先生の指を当ててください」

 

立てられた小さな人差し指に自分の人差し指を重ねる。 指先に伝わる人の温もりと柔らかさ。

それを見て、アロナはえへへと笑う。

 

「まるで指切りして約束するみたいでしょう?」

 

「うん、言われてみればそうかも」

 

「それでは、先生の生体情報の指紋を確認します!」

 

指を離して俺の指をじっと見つめるアロナ。 見た目は少女のようだけど、目視で指紋を識別できるあたり優秀なのだろう。

 

「(よく見えないけど、これでいいですかね?)」

「……はい、確認終わりました!」

 

「ありがとう。 それじゃあ早速で悪いんだけれど、少し話を聞いてくれるかな」

 

「お話ですか?」

 

今のキヴォトスは、俺の思っているよりも深刻な状況だと思われる。 それこそ、色んな学校の生徒が陳情を述べに来る程に。

だとするならば、まず行うべきは行政権の回復だろう。

 

「アロナに助けて欲しい事があるんだ」




色彩を倒すだけなら令呪3画切ってカルナとかの概念焼却宝具。 多分これが1番速いと思います。(余波で崩壊するキヴォトス)

次の短編(プロローグ編終了後に投稿予定)

  • ホシノ
  • カヨコ
  • ノア
  • ワカモ
  • フウカ
  • サオリ
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