佐倉愛衣side
「はぁっ!はぁっ!はぁっ!」
私は今麻帆良学園の外れの森の中を必死になって逃げています。
「まさかっ!あんなに魔物がいたなんて、事前にお姉様と確認したときはいなかったのに!」
周期的に弱まる麻帆良の結界。そのタイミングをついて学園を襲撃する魔物を退治するのが私のような魔法生徒の仕事の一つなんです。
今日もいつも通りの魔物退治のはずだったんですが、予想外の敵の増援があったようです。数が少ないからお互い単独行動にして早く終わらせようとしたのが裏目になってしまいました。
「ゲゲゲッ!グゲゲッ!!」
後ろから魔物の声が聞こえる。人語でないぶん魔物としてのランクは高いとは思えませんが、何があるか分かりません。
そこで、私一人で戦うのは避けた方がいいのかなと思い、さっきお姉様と念話で集合場所を決めて、そこで撃退しようという事になりました。そこに早くたどり着かないと!
「あっ!!」
地面から出っ張った木の根に躓いて体制を崩し、倒れてしまった。後ろから魔物迫ってきているのが聞こえる。お姉様との集合場所までまだ距離があるから、助けを読んでもお姉様が来てくれる可能性は少ない。どうしましょう。絶体絶命です。
「追い付きましたね。ギーグ、この少女が逃げないように見ておいてくださいね。」
「ゲゲッ!」
相手は一人だと思っていたら後ろからもう一人出てきました。しかもソイツは人語を話しているから、ランクもある程度の存在。
本当に私一人では相手が出来る状態じゃなくなってきました。どうしましょう。お姉様、私ここで魔物にやられてしまうのでしょうか?人語を話すどことなく人に似た姿の魔物が近づいてくる。ギーグと呼ばれた獣の魔物は後ろに控えているけれど、ここから脱出できる隙はない。
「さて、名前も知らない魔法使いのお嬢さん。あなたには私たちに捕まっていただきましょうか。」
「捕まる?」
「簡単に言えば人質という奴ですね。」
倒れた状態で後ろに下がるが、人型の魔物は「逃げられませんよ」と笑いながら手を伸ばしてくる。これじゃ捕まってしまう。助けてお姉様!誰か!!
〔テレポート・ナウ!〕
「え?」
「っ!どちら様ですかね?」
突然聞こえてきた音声。目の前の魔物が手を伸ばしたまま音のした方向を見ている。つられて私の音のした方向に顔を向ける。
視界の先にいたのは腰に手の形をした大きなベルトをした白いローブ姿で顔は荒くカットされた宝石みたいな仮面の人と、同じようなベルトをした黒髪のどこにでもいそうな感じの男の人でした。
Sideout
白い魔法使いに連れられてテレポートした先はどこかの森だった。そして目の前には倒れている制服を着た女の子と、人型と獣型のなんかよくわからない奴らがいた。
「おい、これってどういう状態なんだ?」
「これから、お前に魔力の集め方を見せてやる。」
白い魔法使いはそう言うと、前にいる集団の方に歩いていく。俺はどうすればいいんだよ?
「お前はまずそこで見ていろ。先に私がそこにいる魔物で実践してやる。」
ああ、あのよくわからない奴らは魔物だったのか。という事はここはすでに『ネギま!』の世界に来ているのかな?
それによく見たらそこで倒れている女の子も良く見たら漫画で見たような感じの制服を着ているし、女の子の方も見たことあるような感じの子だ。俺がそんなことを考えていると、白い魔法使いと魔物が対峙していた。
「先ほど私たちを倒すと言っていましたが、冗談がうまいようで。」
「冗談など言った覚えはない。」
「そうですか。ギーグ、この白いローブの人をさっさと食ってしまいなさい。」
「ギャゲゲッ!」
人型の魔物の指示に従って獣型の魔物、ギーグが白い魔法使いに襲いかかる。思わず叫びそうになるが、魔法使いは何なく避けると、後ろに下がりつつ右手の指輪を変え、パームオーサーを左、右と変えて手をかざす。
〔エクスプロージョン・ナウ!〕
音声とともに現れた爆発によってギーグは一撃で跡形もなく消え去った。
「一撃って強すぎるだろ……。」
「魔物を倒すやり方は任せるが、私たちに重要なのはこれからやることだ。」
白い魔法使いは魔物がいた場所を見ながら、俺に向かって話す。話しながらまた右手の指輪を変えている。
「敵を倒したら、すぐにこの指輪を使って、敵の残った魔力を集めろ。」
〔ホープ・ナウ!〕
前にかざした右手に魔法陣が現れ、そこにさっきまでギーグがいた場所から何か光る粒子見たいなものが吸い込まれていく。現れた粒子を全て吸い込むと白い魔法使いは俺の方を向いた。
「今のがお前にやってもらう魔力集めの方法だ。敵を倒したら必ず行え。さっきお前に渡した指輪・『ポープウィザードリング』に魔力を集めろ。」
そう言われてさっきの白い空間で渡された指輪を見る。これは『ポープウィザードリング』だったのか。
「なるべく多く魔力を集めておくことだ。期待しているぞ……そう言えば。」
「なんだよ。」
「お前の名前は何だ。聞いていなかった気がしたな。」
白い魔法使いの指摘に俺もそう言えばコイツとあってから名前を言った覚えがない。
「辰連拓人(たつつれたくと)。」
「そうか、では拓人魔力集め任せたぞ。」
〔テレポート・ナウ!〕
白い魔法使いはそれだけ言うといなくなった。後に残ったのは俺と女の子と人型の魔物。俺にどうしろと?女の子は意識はあるようでこっちを見ているが倒れたままだし、魔物もさっき相方のギーグがやられているからこっちの出方をうかがっているみたいだし。
「さて、どうすっかね。こりゃ。」
俺の呟きに魔物が反応する。大きく後ろに跳び下がった後、目の前の地面に魔法陣をだし、何か呟いている。
「何をする気だアイツ?」
「!?気を付けてください!アイツ新しい魔物を召喚するつもりです!!」
「え?」
倒れている女の子が叫ぶ。教えてくれてありがたいのだけれども、君は大丈夫なのか?女の子の声に続いて魔物が叫ぶ。
「おや、そこのお嬢さんは聡明ですね。しかし気づいてももう遅いですよ!」
魔物の言うとおり魔法陣からは身の丈が俺たちの倍以上ある巨体の一つ目の魔物が現れていた。召喚を終えた人型の魔物は笑いながらこちらに向かって言う。
「この場はコレに任せて私は退散させて頂きますよ。少々予定外の事が起こりましたし、時間もかかってしまいましたから。」
人型の魔物の足元に魔法陣が現れる。その魔法陣に魔物は沈んでいく。
「待ちなさい!!」
「それではまた何れ。」
女の子が叫ぶが、それに反応せず魔法陣の中に消えていく。残ったのはついさっき召喚した一つ目巨体の魔物。ソイツは俺たちの方を見ると一つ目を歪め笑うとこっちに向かって歩き出す。距離は大体十メートル。倒れている子もいるし、逃げ切れる距離じゃないな。
「そこの嬢ちゃん、君歩ける?」
「すみません、足を挫いてしまってまだ歩けません。あと私の名前は佐倉愛衣です。」
佐倉愛衣、確か魔法生徒の中にそんな名前の子がいたな。あんまし覚えていないけど。
「ええと、佐倉さんね。俺は「辰連拓人さんですね。さっきのやり取り聞こえていました。」あっそうですか……。」
なんて自己紹介してたら、もう半分くらいの距離に魔物が来ちゃった。どうしよう、もうこれ絶対逃げられないよ。佐倉さんは動けないから、俺がやるしかないのかね。
「グルル……。」
考え事をしている間にも魔物は近づいてくる。…………やるしかないか。
「佐倉さん、危ないから俺の後ろの方に下がってくれないかな?」
「分かりましたけど、辰連さんは戦うことが出来るんですか?」
「まあ一応ね。(これが初陣ですけどね)」
右手になっているハンドオーサーを左手に変える。
〔シャバドゥビタッチヘンシーン!シャバドゥビタッチヘンシーン!〕
これ本当にうるさいし、出しているのが自分だとかなり恥ずかしい。操真晴人はこんな音が自分の腰から聞こえていて、良く平気だったな。
「え?シャバドゥビ?」
後ろにいる佐倉さんの唖然とした声が聞こえる。初めて聞くなら当然の反応かな
「ふざけているわけじゃないよ。音は気にしないで。」
後ろの佐倉さんに一言言っておく。その間にも魔物は近づいてくるわけで、ポケットから出した『フレイムウィザードリング』を左手にはめて指輪のカバーを下して、ハンドオーサーにかざす。
「変身。」
〔フレイム・プリーズ!…ヒー!ヒー!ヒーヒーヒー!!〕
横に伸ばした左手の先から赤い魔法陣が現れて俺の体を通っていく。自分の体だから見えないけど、今俺はちゃんとウィザードになっているのだろう。
ちらりと見た左腕は黒い服に変わっていたし、後ろで佐倉さんが「姿が変わった!?変身魔法?」とか言っているから変身は成功だろう。ドラゴンの言っていた素質のない奴じゃなくてよかった。
「グググゥ………!!」
一人感傷に浸っていたら目の前の魔物を忘れていた。奴は俺の姿が変わったから警戒しているのか、背を低くしてこちらの様子をうかがっている。俺の変身がいつまで続くか分からないし、ここはさっさと戦った方がいいかな。俺は左手を相手に見せるようにかざして。
「さあ、ショータイムだ。」
魔物に突っ込んでいった。
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