その鴉天狗は白かった   作:ドスみかん

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第四十四話:ロストファンタジア

 

 

 夕暮れの光に浮かぶ桜と月が揺らめく。

 (ほの)かな月光に彩られた花吹雪は妖しげに、沈みゆく太陽の残り香に浸りながら燃えていた。そうして紫紺(しこん)に染まる空が妖怪の山を深く深く、夕闇の底へと導いていく。これより始まるのは妖怪の時間である。賑やかな昼は地平線を通り過ぎ、静かな夜がやってくる夕の刻。

 

 ーーーこれより語られるのは二つの世界が混じり合う、あったかもしれない世界の一幕。それは薄く隔たれた『境界』を越えた先、一片の夢幻(ゆめまぼろし)が紛れ込んだ偽りの物語となるのでしょう。

 

 

 

 

 

 

 その日、天狗の里の中心にある天魔の屋敷に一つの影が降り立っていた。手を伸ばせば指先が届いてしまいそうな雲が浮かび、桜の花びらが視界に舞う庭園。足下から立ち込める淡い草木の匂いが鼻先を掠めていくのも心地よい。

 

 

「葉桜も良いものだけれど、やはり花は咲いている姿こそ愛でるもの。散る姿もまた美しいとはいえ、桜が終わる時期は毎年のことながら物寂しいものねぇ」

 

 

 そう言って、八雲紫は満開の桜を見上げていた。

 地面に敷かれているのは花の絨毯(じゅうたん)、所々に混じっている素朴な草木もまた花を咲かせている。久しぶりに足を踏み入れたのだが、相変わらず趣味の良い庭園である。春の野山を思わせるような空気を舌の上で転がしながら、スキマ妖怪は微笑んだ。

 そして影法師が一つ、自分へと伸びていたことに気づいて口を開く。

 

 

「あら、いらしていたのですか?」

 

 

 後ろを取られたのは久しぶりだ。その事実に少なからず驚いて、しかしそれを悟らせないよう優雅に振り向いた。風に持ち上げられて金髪がふわりとなびき、それを見届けてから声の主は深々と頭を下げる。

 

 

「お久しぶりです、八雲殿」

「ええ、久しいですわね」

 

 

 そこにいたのは若々しい鴉天狗の男。どこかで見た深紫の羽織を装束の上から重ね、浮かべている表情からは穏やかな雰囲気が漂っていた。そして頭を上げてから自分を見つめてくるのは夏空を思わせる碧眼だった。扇子で口元を隠しながら、紫はにこやかに男へと向かい合う。

 

 

「久しいですわね、お変わりないようで安心しましたわ。いえ貴方が『お役目』を継いで千年の節目ですし、お世辞でもますますご立派になられたと言うべきかしら?」

 

 

 西に傾いた太陽に『黄金』が混じり合う。

 夕日を背にした鴉天狗の背中から生えているのは、眩い金色(こんじき)の双翼。恐ろしいくらいに神々しく、人妖を問わずに惹きつける輝きを秘めた色であった。その光に思わず目を細めた紫に気を使ったのか、男は少しばかり身体をずらす。

 

 

「父上に比べればまだまだ若輩者、どちらでも貴女のお好きになさってください。元より同じ『賢者』とはいえ、八雲殿と同格でいるなどと自惚れてはおりませぬ」

「うふふ、相変わらず天狗らしくない謙虚さですわね。そういう姿勢は好ましく思います、本当に貴方のお父上とは大違い。ええ、本当に」

「くくっ、父上は貴女と競うのが生き甲斐のようなモノなのです。これからも程々に相手をしてやってくだされば私も助かります」

 

 

 溢れるのは影のない快活な笑み、そこにはカラスというよりは雀や鳩のような愛嬌がある。からかうと面白い反応を見せてくれるし、時には冗談にも乗ってくる。それでいて、この男は九尾である八雲藍すら凌ぐ妖力を秘めているのだ。桜の舞い散る中、そんな相手と何でもない言葉を交わしているのだから平和なものだと紫は思う。

 さて、今日ここを訪れた理由を果たすとしよう。

 

 

 

「在位千年、(つつし)んでお(よろこ)び申し上げますわ。天魔殿」

 

 

 

 この男の名は『天魔』という。

 この妖怪の山を本拠とする天狗たちの長老にして、幻想郷にて賢者の一人に数えられる大妖怪。それでも驕ることなく、河童や他の妖怪たちにも敬意を込めて接するという珍しい天狗でもあった。誰を貶めることもなく、何を蔑むこともない、その在り方は好ましく、紫としても友人である幽々子の次の次くらいには信頼している相手だ。

 

 

「天魔殿、新しい風と古い風を調和させた貴方の手腕には感謝しております。だからこそ幻想郷は千年もの間、大きな戦いは何一つ起こらなかった。なればこそ八雲として、貴方の節目を心からお祝い致しましょう」

「紫様からそんな言葉を受け取れるとは……今宵は雨でも降りそうだ。くくっ、急いで屋敷の雨戸を閉めさせねばなりますまい」

「……こういう皮肉はアイツそっくりよねぇ」

 

 

 今夜は大規模な宴が催される。

 この天狗が『天魔』の号を継いでからちょうど千年の記念すべき日、その式典に紫を含めた幻想郷の有力者たちが招待されているのだ。こちらへどうぞと、天魔は夕日色に燃える庭を横切って屋敷へと紫を案内していく。

 一本歯下駄が乾いた音を鳴らし、地面に落ちていた花弁たちが宙に巻き上げられた。夕焼け空は春の欠片を透けるように照らし出し、まるで火の粉を見ているように桜の花が輝き出す。わざわざ歩きながら天魔は風を操ってくれているらしい。客人を楽しませるために、風と花で彩られた庭園は彼を含めて風流なものである。

 

 そして屋敷まで辿り着いた二人を出迎えたのは、黒い翼の老天狗だった。

 

 

「ーーー来たか、八雲よ」

 

 

 紫にとっての宿敵にして好敵手、もう千年以上も争い続けてきた因縁深い存在がそこにいた。猛禽のごとき鋭い眼光はそのままに、だがその肩にいつも掛けていた深い紫色の羽織はなくなっている。だからだろうか、その姿は少し痩せたように見えた。

 

 

「あら、迦楼羅じゃない。後継者が立派に育ってたから忘れていたわ、まだ生きてたのね?」

「ようやっと倅が一人前になりおったのでな。この身は晴れて楽隠居、ここからが楽しい天狗生の始まりじゃわい。まだまだ狐めが未熟な貴様はうらやましかろうて」

 

「……父上、それは藍殿に失礼でしょう。彼女はいずれ八雲の名を継ぐ一流の式神です」

「真実であろう息子よ。そこのスキマ妖怪が未だに現役でいるのがその証拠であるぞ」

 

 

 先代天魔、迦楼羅(かるら)はカラカラと笑っていた。

 仏法の守り神でありながら、妖怪である天狗の長として組織を纏め上げていた元賢者。千年前に『天魔』の号を息子に譲り渡してからは、もっぱら若鳥たちを育てるのに精を出しているらしい。

 ここ百年ばかりは表舞台に出ることもなく、最後に八雲紫と直接争ったのは二百年前の昔話になっていた。彼の特徴であった紫の羽織も現在は息子に譲られて、天魔の証として双肩で揺らめいていた。

 それに少しだけ寂しさを感じないこともない。

 

 

「……私もそろそろ藍に全部押し付けてやろうかしらね。そして一日中布団で寝転がりながらスキマで幻想郷を見守るのは素敵かもしれないわね。まあ、まだ私の手でやることがあるのだけれど」

「ほう、何を企んでおる。天狗に関わらぬことならワシにも話してみるが良いぞ、暇つぶし程度に手伝ってやらんこともない」

「なら昔みたいに一つ悪巧みといきましょうか?」

 

 

 賢者と元賢者は怪しげに視線を交わす。

 どうやら物足りなさを感じていたのはお互い様であるらしい。宿敵ではなく好敵手として、自分たちはまだ在り続けていけそうだ。

 そして妙な展開になったものだと若き天魔だけが困惑した表情を見せていた。悪巧みを始めた二人へ下手に口を挟むわけにもいかず立ち尽くすしかない。そんな不穏な空間へと軽やかな歯下駄の音が近づいてくる。

 

 

「こんなところで何してんのよ、お父様」

 

「残念ながら私にも分からないんだよ」

「嫌ですわ天魔殿、愉快なピクニックの打ち合わせではないですか」

「くかかっ、確かに楽しげな企みには違いない」

 

「いやこの忙しい時に何してんのよ、まとめて馬鹿じゃないの?」

 

 

 涼やかな声が三人に容赦なく突き刺さる。

 天狗の長老と元長老、そしてスキマの賢者にここまで遠慮のない言葉をかけられる者はそういない。すっかり夕闇に包まれた屋敷の縁側に、はらりと落ちたのは純白の羽だった。そこにいたのは清められた天狗装束に、静かな青色の羽織を重ねた白い少女。

 

 

「もう人里の代表者も集まってるわ。それに向こうで白狼たちから支度について話があるみたい。私だって忙しいんだからさっさと動いてよ、お祖父様もね」

「う、すまん。いつもながら私より娘であるお前の方がしっかりしていて助かる……母さんに似たのかなぁ」

「ほら、スキマは私が適当に相手しておくからお父様はさっさと行く。お祖父様も手伝ってよ」

 

「分かった分かった。すまない八雲殿、私はこれにて……父上も行きますよ」

「む、孫から頼まれたのなら仕方ない。後のことはまた後日話し合おうぞ、八雲」

 

 

 白い少女に急かされて、苦笑した天魔と老天狗が足早に離れていく。

 基本的に天狗社会では、年長者に逆らうことは許されないのだが、人間と同じく父親や祖父たちは娘に弱いらしい。まして一人娘ともなれば尚更だ、きっと目に入れても痛くないというヤツだろう。それが可笑しくて緩んだ口元を紫はそっと隠すことにした。

 将来的にはこの少女自身か、もしくは少女の(つがい)となった者が次代の『天魔』となる。しかし可愛がられているこの状況ではまだまだ遠い話に違いない。ジロリと空色の眼差しで睨まれたので、そこで思考を中断する。

 

 

「お父様を困らせて遊ぶのは程々にしておきなさいよ。こっちも暇じゃないんだから」

「ふふっ、大所帯のまとめ役は大変ねぇ。私のように個で動く妖怪には預かり知らぬ分野だけど、身分があるせいで色々と思い通りにならないことも多いのでしょう?」

「別にこのお役目に不満はないし、不足もないわ。強いていうなら、友人が出来にくいのだけは困ったものかもね」

 

 

 家族には恵まれているが、それ以外はいつも独りきり。たまに会うことのある自分と話すことをこの少女が楽しみにしていることも紫は知っていた。何せ幻想郷にて最大勢力の跡取り娘、近づける者は限られている。友人など簡単に出来るはずもないのだ。そんな天狗少女の心のうちを読んだ紫はポツリと呟いた。

 

 

「茶飲み友達ならここにいるでしょう、刑香?」

「考えてあげないこともないわ」

 

 

 悩みを打ち明けたのが恥ずかしくなったのか。

 ほのかに赤く染まった頬で少女は視線を外す、その仕草が可愛らしくて思わず手を伸ばした。しかし頬に触れそうになったところではたき落とされたので断念する。

 二人の間には芳しい若葉の匂いと、伸びきった木々の影が横たわっていた。山の空気は夕焼けの熱を帯び、白い翼は傾く春の太陽に美しく照らされている。草木が夕日になびき、寝床に向かう鳥たちが歌う、ただひたすら穏やかな光景が広がっていた。

 

 

「…………で、この茶番劇はいつまで続くのかしら?」

「あら、もう気づいてしまったのね。もう少しの間だけ溺れていれば良かったのに」

「ここでの私の名前は『刑香』じゃないのよ。そりゃそうよね、鬼の四天王との繋がりもないんだから」

 

 

 これは既に失われた可能性だ。

 忘れられたものの集う幻想郷にも、拾われることのない泡沫の夢。白い天狗少女が歩んでいたかもしれない未来であり、それを世界と世界を隔てる『境界線』を紫が操ることで体験しているのだ。

 幻想郷は全てを受け入れる、だが既に失われてしまったモノは二度と戻って来ない。それはとても、残酷な話である。

 

 

「早く戻しなさい。少なくとも私たちは今、こうして呑気な会話をできるような状況ではないはずよ」

「そうね。夢は認識してしまえばそこで終わり、目が覚めた先には剥き出しの現実が残るだけですもの。それでは、名残惜しいですがこれにて閉幕と致しましょう」

 

 

 もう一度だけ刑香の横顔を眺めてから、八雲紫はゆっくりと瞳を閉じた。

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 その昔、月面戦争と呼ばれる出来事があった。湖に映った月に飛び込むことで、地上の妖怪たちが遥かな『月の都』に攻め入ったという千年以上も前の語り草。

 圧倒的なチカラを誇る月の民たちにより、多くの名立たる大妖怪たちは露と消え、特に天狗は組織そのものが大打撃を受けることになる。命を落とした者の中には、次代を支えるはずだった天魔の息子も含まれていたのだ。

 

 

「月の住人が強かっただけではない。世界が変われば在り方も変わる、だからこそ地上の者は月の世界では月の民には敵わない。そんな当たり前のことさえ失念していたが故に妖怪たちは大敗したのですわ」

 

 

 呉越同舟、妖怪たちは敵も味方も巻き込んで泥舟に足を踏み入れた。かくして旧い勢力は一掃されて、大して損害を受けなかった新しい強者は勢力を伸ばしていく。特に種族を持たなかった『スキマ妖怪』の名は大きく知れ渡ることになる。月に至る道を用意した者、つまり月面戦争を導いた主犯として。

 

 涼やかな月光を浴びながら、歪んでいく口元。その視線の先では、紅に染まった白い少女が座り込んでいた。腹部から流れ出した血糊は金属製のレールにへばりつき、本来は銀色であるはずの線路を真っ赤に濡らしている。眠気を払うように頭を振りながら、刑香は言葉を紡ぐ。

 

 

「ぐぅ……結局のところ、私は幻覚を見せられていたってことかしら?」

「あれは紛れもなく現実よ。ほんの少しだけ私が境界に穴を空けて、貴女にも覗かせてあげた世界の向こう側。つまりここには存在し得ないもう一つの可能性、なのかもしれないわ」

「それなら、あの金色の天狗は私の……なるほどね」

 

 

 傷口を抑えながら刑香は立ち上がる。

 紫としては当てるつもりなどなかったのだが、先程の熱線はまともに腹部を貫いてしまっていた。夜風に乗るのは血肉の焼ける匂い、内臓まで届く傷を負わせたのは疑いようもない。美しい桜の花びら模様をあしらった扇子で口元を隠しつつ、紫は言葉を紡ぎ出す。

 

 

「あの戦いで少なくない天狗たちが命を落とした。そしてその中には天魔の息子、貴女の父親も含まれていたの。私が知ったのは随分と時が過ぎてからだけれど」

「……だからどうしたのよ、その話で私が呪詛の一つでも吐くと思っているの?」

「ええ、思っているわ。だって誰だってそうなるでしょうから」

 

 

 それでも刑香からは怒りや憎しみといった感情は伝わって来ない。線路に降り立った紫は一歩また一歩と、その上を進んでいく。傾いた月は真珠のように冷たく、青い星々は澄んだ光で自分たち二人を照らしてくれている。憎らしいぐらいに透明な夜であった。

 

 

「刑香、本来なら貴女は長老家の跡取り娘として何不自由ない生涯を送るはずだった。家族に囲まれて、やがては天狗の長となる未来もあったでしょう。その運命を歪めてしまった原因の一端が私にもあるはずよ」

 

 

 この千年あまりの天狗社会に何があったのかは分からないし、知る気もない。しかし目の前にいる白い少女が歩むことになった苦難の旅路、その出発点となったのは恐らく八雲紫なのだろう。月面戦争の切欠を作り出し、彼女の父親を死に至らしめ、挙句にこうして対立している。とどのつまり、自分たちは最初から『敵』であったのだ。

 

 

「……バカバカしい夢想話かと思っていたけれど、ここまではっきり見せられたのなら信じてやるわ。アンタが余計なことをしなければ、私は能力を利用されることも山から追われることもなかった」

「そうでしょうね」

「人里で医者の真似事をする必要も、無理をおして異変に参戦する必要もなかったのよね」

「ええ、その通りよ」

 

 

 挙げていけばキリがないだろう。

 それだけの因縁が自分たちの間にはあったのだ。錫杖を頼りにして身体を支えている刑香の胸へ白魚のような紫の指が触れる。そのまま言霊が唱えられ、青白い『術式』の光が少女の装束に染み込んでいく。もう戦う力は残っていないのか、刑香からの抵抗はない。せいぜい今は恨んでくれればいい、どうせ式神にした後なら記憶の一つや二つはいつでも書き換えられるのだから。

 

 

「でもアンタがいなければ、私はアイツらと友人になんて成れなかった。家族はいても、文とはたてがいないなんて運命だったんでしょうね」

「……さあ、どうかしら」

「それにあの子、霊夢とも出会えなかった。だから私は感謝こそしないけれどアンタを恨みもしてやらない……ざまぁみなさい、スキマ妖怪」

 

 

 研ぎ澄まされた月光に浸されて純白の翼が輝く。

 かすかに混じった『黄金』の色に魅せられて、少し返答が遅れてしまう。呪いの一つでも投げかけられると思っていた、だがこの鴉天狗にはそういった言の葉は似合わないらしい。別の形で出会えていたならと思わないこともない。

 

 

「私もあなたみたいな妖怪、けっこう好きだったわ」

 

 

 何割かの本心を込めてそう告げると、その拍子に刑香に腕を掴まれた。どうやらまだ諦めていないらしく、引き剥がすつもりのようだ。既に契約のための妖力は身体に馴染んでいっている、非力な少女にはどうしようもないだろう。このままある程度まで術式を埋め込んでしまえば、後はどうにでもなる。

 ギシリと掴まれた腕から痛みが伝わってきたのは、そう考えていた時だった。

 

 

「くっ、刑香、あなた一体何を?」

「もう勝ったつもりでいるようだけど……っ、そろそろ反撃させてもらうわよ」

 

 

 軋み始めた腕にスキマ妖怪が顔をしかめる。

 天狗でありながら大した腕力を持っていない刑香は、速度を上乗せすることでの戦い方を主にしている。だからこそ触れ合うほどに接近してしまえば、その攻撃の殆どを無力化できる。なら掴まれた腕から感じる痛みは何なのかと紫が困惑する。

 それはもう一つの誤算、眠りに着いていた冬の間に白い鴉天狗へと託されたチカラが原因だった。逃がすまいと紫を捉えながら、刑香が小さな笑みを浮かべる。

 

 

「ようやく捕まえてやったんだから、せいぜい覚悟しなさい。……そのアンタに似合わない表情を殴り飛ばしてやるんだから」

 

 

 河童の少女が指摘したことは正しい。鬼の四天王、星熊勇儀の誇る力の欠片が確かに宿っていたのだ。白桃橋刑香の持つ錫杖に。

 

 

 


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