死ねないマーちゃんは今日も流れる
一度だけ捕まえてくれた腕をマーちゃんはするりと抜けてしまった
今回は捕まえていてくれるかな
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都会の喧騒から離れ山々に囲まれた田舎。急こう配の坂が町の交通網を担い人々はその斜面に木々を植え熱心に愛情を込めて果物を育てる。それ一本じゃ生計を立てられない世知辛い世相に頭を悩ませ、果樹園経営の中で一番気を使い一番やりがいを感じる収穫の瞬間すら、シーズンの観光客に売り渡す。
山梨県、僕の実家。何故帰って来たのだろうか。
先日のバイアリータークさんとの邂逅の後、いきなりこの世界にやって来た。
「かあさ~ん、農協行ってくるから」
「お願いね~」
目が覚めるともうそこは僕の実家だったのだ。何の目的もなく上京したかつての僕でなく、この僕はキチンと家業を継いだようだった。お陰でマーチャンのトレーナーになる事こそないが、両親と毎日顔を合わせられるというのが本当に久しぶりで、つい涙を零しかけてしまったくらいだ。
軽トラックを運転しながら、田舎の支配層にして農家の偉大なる味方である農協へ向かう。道の駅の役割もしてくれてるお陰で我が家の大きな収入源の一つだ。
何の農家か紹介するのを忘れていた。我が家は100年程前からブドウとモモを主とした農家として家業を営んでいる。にしては金城って苗字は珍しいでしょ?父が沖縄から婿養子としてきた感じらしい。
「あ~真船君、今日もお願いねぇ」
「いえいえこちらこそいつもウチの品取り扱ってくれて、ありがたい限りです」
母が苗字とかを気にしない人間のお陰で、山梨に金城氏が爆誕したわけだ。
今は夏。モモのメインシーズンという事もあり毎日汗水垂らして収穫しては売りさばく日々だ。あの夏合宿でかく汗とは一風変わった汗の感触、正直悪くない。積極的に筋肉を働かせて全身の汗腺が激しく熱さましを行う汗と、視神経と脳細胞にエネルギーを局所集中して炎天下に耐え忍ぶ汗とではこんなにも違うのかと驚いたくらいだ。今では肉体労働をする時の半分以上『僕』の意識で楽しんでいる。会計や経営等は不勉強なので未だに任せているが。
そんな、ある意味実家に帰省してぬくぬくな日々を送る僕だがマーちゃんの救済という目的を忘れた訳ではない。どう、この実家付近でマーチャンを宣伝しようか、日々頭をこね繰り回している。しかし今の彼女はデビュー前。現担当トレーナーはどうやら腕が良くないらしい。僕ならもっと早くマーチャンをデビューさせられるのに。大々的な宣伝を打ちたいが外部の人間があやかるには早すぎる時期。日々SNSで推し活するしかない現状がまたもどかしい。
「ありがとうございました~」
というか推し活のやり方を間違えたらマーチャンにファンサされる側になってしまう。違うんだ、そうじゃないんだ。目的が違うんだ。
そんな出来る事がグッと狭められた窮屈な箱の中。軽トラの悪路走破性能の高さを噛み締めながら我が家に戻っていく、夏を過ごしていた。
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トレーナーさんは今から…マーちゃんの専属レンズです。どんな時でも、どんな場所でも、マーちゃんを写していてくださいね
どうして忘れてしまうの、どうして私を捕まえてくれないの
今度はずっと、離さないでいて
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あ~、テステス。んっ…ん~。こんな感じでいいのかな?真船、真船です。実家に4世界分ほど居座ってまた時間が経ちました。今は東京のデザイン系の会社で働いてます。マーチャンともコラボ商品出したよ。
「こんにちは金城さん。今日はマーちゃんの可愛さをアピールすべくの新商品企画、よろしくお願いするのです」
コラボはこれで3度目。今回は方向性を変え、基礎を作るファン向けグッズと言う方面から日常でもさりげなく使える万人向けがコンセプトだ。ワンポイントにマーチャンを差し込むのも悪くないが、それでは記憶に留めるには少々インパクトが弱いのではないだろうか。
様々な商品アイデアを出し合いここが弱いここが難しいなどドンドン削って磨いてイメージの形を整えていく。
「トレーナーさんとしては、どんなマーチャンさんを意識した商品が望ましいですか?」
当然同伴しているトレーナーにも意見を仰ぐ。そう、今の僕はトレーナーという職ではないため別の人間が彼女の指導をしているのだ。…よりにもよって翼なのだが。まさかこんな縁でかつての親友と再会するとは予想していなかった。…どんなきっかけなんだ。
「えっ俺?…そうですね、やっぱり彼女らしい可愛らしさとレースの時のカッコよさのギャップなどを出してみたいですね。レース時の写真とかもドンドン使っていきたいです」
「ありがとうございます。ですと、こういった方向での商品化になるかと思われますね」
最近、自分の中で大きな変化があった。要所要所であるが僕の意思を介入させやすくなったのだ。以前はどうやら無意識にその世界の僕がしている思考に引っ張られていたらしく、『僕』の意思がそこまで世界に反映できていなかったようだった。それこそ外部要因なしじゃ何もできない位に。しかしタークさんのお陰で、乗っ取るとまではいかないが幾分かは『僕』の意思で行動できるようになった。初めは慣れなかったが、慣れのお陰でこうして翼にちょっかいみたいなことも出来るのだ。
急なちょっかいでも冷静に対処する辺りは流石と言えるだろう。お陰で会議の方向が絞れた。サンキュー友よ。
「ふ~む…このマーちゃんハンカチ、もうワンポイント特典を付けたいですね」
「特典?」
「はい。ばば~ん!」
可愛らしい効果音と共に出てきたのはマーちゃん人形。以前貰ったものとは格段に装飾の出来が違う。色合いがパステルカラーらしくなっていて可愛さの後押しがされている。腕を上げたねマーチャン。
恐らくは人形をセットで付けたいということなのだが…ふ~む…これは…僕が頑張らなきゃならないかな?
「マーちゃん人形です。これをハンカチのおまけにつけましょう!ふっふっ~バンバン配っていきましょう~」
当然コラボ初回からマーちゃん人形の商品化はしていた。していたが…結構精巧な作りである以上工場の方からあまりよく思われていないのだ。品質確保はマストである以上生産工場と喧嘩する必要がある…なこれは。
彼女の目標を知る身としてはマーちゃん人形の生産に妥協はしたくない。彼女の理想を極力聞き届け、次回の会議の予定立てをしてから彼女らを見送る。
「…頑張ろうね」
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勝って、負けて、何度も何度もレースをして、何回もあなたに出会って、何回もあなたと絆を結んで、何回もあなたの前から消え去って
どうして私は、覚えられないの
もっと源流にある、もっと本能的な願い。生きたい
マーちゃんは昔一頭のお馬さんでした
お馬さんとしてウオッカやスカーレットと一緒に走りました
でもマーちゃんは勝てませんでした
そんな時、あなたが来てくれた
あなたが私に夢を託してくれた
めっちゃ難解でしたよねw意図しての配置ではありますが
簡単に言えば並べ替えて意味が成立するようにしています。読む順番のヒントは置いてあるので探してみてください
解読出来たらぜひコメントに!
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追記(2026/02/07) 誤字修正