永久に君を刻んで   作:アテル

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トゥワーズ・ザ・フィナーレ

マーちゃんはウマ娘になりまた

光になって、こっちにやってきました

また、あなたに会いたい

あなたに見つかるように、夢を叶えるね

何度も何度も走りました

何度も何度も勝って負けて

いつしかあなたは私を見つけてくれた

もっともっと近くに来て

 

 

__________

 

 

 

 賑やかな昼時。大体の学生はこの食堂に集まる。広々とした空間を埋め尽くす勢いで人が集まり午後の活動に向けたエネルギー補給を行う。それは生徒だけにとどまらず、職員も同じであった。教師も事務員も、はたまたトレーナーまでもが押し寄せ昼休憩の時間を送る。毎度思うけど事務員やトレーナーだけ昼休憩時間ズラせればいいのに。

 そんなことを思ってもまだ僕は立場上ペーペーだし繰り返しの度提案するのも骨が折れる為仕方がないと受け入れ今日も長蛇の列に並ぶ。プレートで両手が塞がりスマホをいじる訳にもいかない。

 手持無沙汰になってしまい呆けていれば、鼻歌が漏れ出てしまうのも不思議ではない。

 

「~♪」

 

 歌う曲はいつぞやか、アストンマーチャンに語った懐かしい映画の主題歌。故郷への…はるか昔へ通り抜けた小児時代への思いを乗せ歌を口ずさんでいると後ろから優しい声が聞こえてきた。

 

『海を目~指して歩く~♪ 怖いも~のなんてな~い♪ 僕らはも~う一人じゃな~い♪』

 

 瞬時に振り返る。少し目線を落とした先には、小さく可愛らしく、マーちゃんが僕を見つめていた。思い出す、彼女にこの歌を語った時。あの時彼女はこの歌を知らなかった。だが今日はハミングしてくれた。この世界のマーちゃんは知っているのか。

 共感というものはどうしても嬉しいもので、つい頬を緩ませ驚きの言葉を投げかける。

 

「あれ?マーちゃん、知ってるんだ」

「ええ、知ってますとも。…トレーナーさんが、教えてくれましたから」

「えっ…?」

 

 つぶらな瞳で僕を見るマーちゃん。その奥に何かが見える。通常じゃ感じられない違和感。超常的なそれ。何より…違和感と同時に芽生える親近感。さっきの言葉をかみ砕く。僕がこの曲を教えたらしい。…いつだ。()()()()()()()()そんなことをした覚えはない。これまで、彼女の前でこの歌を歌ったのは今と…そしてあの時。それだけだ。

 まさか…いや、そうなのか?マーちゃん()なのか…?

 

「…マーちゃんにとって、海に行くっていうのは辛いことじゃないかい?」

 

 あの時と同じ質問を投げかける。恐る恐る、探るように投げかけた言葉を彼女はニッコリ受け止めて言葉を返す。

 

「…誰かと海に行ける。それはとっても幸せなことだと、マーちゃんは思いますよ。…ようやく見つけましたね、トレーナーさん」

「君も…だったんだね」

 

 掴み所のない霧の中で彷徨っていた。タークさんに少しだけ光を貰って、あれからまだ、旅を重ねてきた。トレーナーという職ですらない時も何度も経験してきた。トレーナーではあったが、彼女の担当になれない時もあった。ようやくまた…君の担当になれて…やっと…やっと掴めたんだ…君を。

 涙が頬を伝う。お盆が手から零れ落ち、マーちゃんに恐る恐る手が伸びる。

 

「捕まえた…」

「えへへ、ようやく捕まっちゃいました」

 

 

__________

 

 

 

…捕まえた。あなたは私の、トレーナーさん

初めてのトレーナーさんは私を見てくれなかった

私のヒーローさん

マーちゃんの代わりに、消えていってしまった

あの浜で、私はあなたを追っていった

 

 

__________

 

 

 

 夏、セミが鳴く。メイクデビューを終えた夏休み。夏合宿には行かず、ガランとしたトレセンでせっせとトレーニングを積んでいく日々。今日もトレーニングを終え、日が沈みかけている時間に差し掛かる。だが今日は少し、違う。

 

「いらっしゃい」

「お邪魔します。おお~、これがトレーナーさんのお宅なのですね」

 

 今日の帰宅は一味違う。初めてのマーちゃんを連れての帰宅だ。世界の旅を始めた頃は何にもない部屋だった僕の部屋も、いつしか物でごった返す人並みの部屋になっていた。仕事デスクには紙の山とパソコン、その周りにはマーちゃんの自作グッズが。その隣の机は趣味の…マーちゃん4コマ漫画制作のためのデスク。まだ制作用道具は充実していないが、それでも日々を描き世に流している。

 ソファもあるテレビも構えた。寝室はベッドに変えたなど、あの頃と各所で変わっている。

 

「おやおや?トレーナーさん、これはなんの道具なんですか?」

 

 興味深そうにあちこち探検する彼女はやがて、4コマ制作デスクに興味を示しだした。デスクにポツンとあるペンタブのペンを握り空に文字を書く。嬉しそうに、可愛らしく書いていく様子を見ると少女らしさを感じる。その後使い方なんかを教えていった。

 

「おぉ、ここでいつも可愛いマーちゃん宣伝をしていたんですね!」

「そうそう」

「…!わぁ…このお人形さんは」

「うん。君に貰ったマーちゃん人形。…ずっと僕の部屋にあってね」

 

 次にマーちゃんが手を取ったのはマーちゃん人形。あの日、押入れから出てきたあの人形だ。ずっと僕についてくるように旅をしていたためか、気分は相棒として僕の部屋のタンスの上に鎮座させ見守って貰っていたのだ。

 懐かしむよりも、ずっとずっと愛おしそうに見つめる彼女に少し気になり声をかける。

 

「…久しぶり、だもんね」

 

 タンスから取って渡すと、マーちゃんは人形を抱きしめる。彼女にとっては自分の手で生み出した子どもみたいな存在なのだ。慈愛に溢れ、大切そうに抱いて…。

 

「マーちゃん…」

「この子が、見守ってくれていたのですよね。貴方を」

「そう…だね。ずっと、見てくれてた」

 

 微かに、マーちゃん人形が光る。淡い白の光る球体は段々、段々とマーちゃんの中に入っていく。一つになる。託したものが還るように。あるべき場所へ、戻るように。

 

「…これからは、マーちゃんがしっかりと見守ってあげますよ。…えへへ」

「ありがと。逃げないよう、しっかり見ててね」

 

 過去を戒めるように。喜びを噛み締めるように。

 

 

 

__________

 

 

 

寂しさじゃない

虚しさじゃない

生きて夢を叶えて、幸せになりたい

今回はあなたに会えるかな

あなたが私の命になって




なぜ時間を開けて投稿したの?(遅筆)
飽き性はいかんね(自戒)


追記(2026/02/07) 誤字修正
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