永久に君を刻んで   作:アテル

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スウェアー・ザ・トップ

 日が暮れ、ウーマーイーツを取って一緒に晩御飯を食す。よく知るファストフード店のハンバーガーセットを2つ。記念日にしてはなんだか味気ないが、それがいい。着飾ったディナーよりも、こうした気軽さの方が、なんだか話しやすい。パティが2枚も入った集めのバーガーを頬張り、口にリスみたいな膨らみを作っているマーチャンを見れば、真船の頬が自然と緩んだ。

 彼もそれに続きハンバーガーを頬張る。粗挽き肉が歯の神経を刺激し心が若返るような実感をもたらす。脂ギッシュな肉汁も遅れて届き味蕾を刺激すれば当然、口角がほんのり上がった。

 

「今日はメリケンマーチャンです!」

 

 今の彼女がいくつか分からない。だが、女子中学生らしい、体の年齢に見合ったような無邪気な笑顔でハンバーガーを頬張る姿を見て、すっと…真船の涙腺が少し決壊する。やっと追いつけた。やっと見つけられた。永い永い輪廻の輪をようやく打破する、そんなヒントがここに。それが何よりも嬉しくて、誇らしくて…そして、よやく掴み取ったアストンマーチャンの姿が…可愛らしくて。涙が伝う。頬がじんわり熱を持つ。

 

「あははっ…そんな姿も、プロデュースしなきゃね」

「ではお願いします。色んなマーちゃんを、余すとこなく宣伝してください。それが…専属レンズさんのお仕事なのです」

「うん。了解っ!」

 

 それからはもう撮影会だった。ハンバーガーにかぶりつくマーチャンを、角度を変え表情を変え構図を変え、ベストショットを探し出す。彼女が最も可愛い瞬間をカメラに収めるべく、冷めるなんてお構いなしのシャッター音連打が室内に響き続けた。

 しばし経って撮影会も一段落。見事ベストメリケンマーチャンを撮影し彼女のウマッタ―に投稿し終え、冷めてしまったポテトをちまちまとつつく。そんな折、真船が口を開いた。

 

「ね、マーちゃん。…今回はさ、挑戦…してみない?」

 

 何に挑戦するのか。肝心なことを何も明言しない曖昧な言い草。だが真船の真剣な表情を見たマーチャンは真正面から言葉を受け取り、微笑んで返す。

 

「…トレーナーさんはいつでもマーちゃんの為に動いてくれています。そんな貴方が言うのなら…それはきっと、マーちゃんにとってすごく価値のあることなのでしょう。信じていますよ。それはもう…すっごいくらいに」

「そう言ってくれるって信じてた。…ねぇ、マーちゃん。今回はさ…トリプルティアラ、全部取りに行こう」

 

 トリプルティアラ。これまでは桜花賞のみ、出ていた。彼女の脚に合わないと、断念していた。だけど今は…適性を乗り越えられる物を持っていると確信している。永い時間で積んできた真船自身の知識、そして同じく、時間に裏打ちされたマーちゃんのスキル。練習量の桁が違う。身体がなんだ適性がなんだ。積み重ねてきた努力でそれをなぎ倒そう。

 

「最強、取りに行こう」

 

 世界一のマスコットは…欲張りでなきゃ。

 

「…スカーレットとウオッカに勝つ。ということですね」

「ああそうだ。あの2人も倒して、君がこの世代…いや、時代の最強になろう。君と僕なら…負けない」

 

 我儘だ。執念だ。それでいいそれがいい。真船の差し出した手を、マーチャンが強く握る。

 

「分かりました。その提案、マーちゃんがズバッと解決して差し上げましょう。ではでは、改めてよろしくお願いしますね。まいばでぃさん」

「バディ…。ああ、よろしく、バディ」

 

 

_________

 

 

 

 どうして私はまだ生きているのだろう。終えたはずの私の魂は波に載せられ、これまでいくつもの世界を旅してきた。

 でもそのどれもで、私は世界から弾かれてきた。そのどれもが私を邪魔者だと告げるように、私の存在そのものが初めからなかったかのようにしてくる。

 こうなってしまったのは…きっと彼のせい。彼が私に夢を与えてくれたから、その夢を叶えたいと心の底から思えたからまだ生きていられる。

 母は語った。故郷は見せてくれた。忘れられゆく人々を。でも彼が私に夢を持たせてくれたから、それに抗おうと思えた。

 

「トレーナーさん、覚えていますか?」

 

 覚えているはずがない。彼は…私の知る彼では無いから。数奇な運命は残酷に、彼の偽物を用意してくれた。

 

「マーチャンに初めてあった日を」

 

 偽物だろうと彼は彼だ。そう言い訳して縋り続けてきた。それはこれからも変わらないだろう。

 八方塞がりな私の夢への道は、彼(儡)に縋り付くしかない。

 そう…思っていた。彼は決してまがい物じゃなかった。ただ、すれ違っていただけ。私たちはお互い、迷子だっただけ。回り回って重なり合う。せせらぎがやがて大河に集まるように。運命が交差する。

 

「最強、取りに行こう」

 

 本当に本当に…欲張りさん。貴方が大きな夢をくれるから、勇気が湧くんです。もっと頑張ろうって思えるんです。貴方の言葉に、希望が満ちているから。

 世界中で愛される、最強最カワのマスコット。ええ、ええ。分かっていますとも。その称号、マーちゃんにとってもお似合いですね。取らせてくれますか?取って見せましょう。私はマーちゃん。貴方が愛する、アストンマーチャン。未来の、世界を股にかけたマスコットですから。




スピンオフが長い~。思ったよりこっちがスッキリ終われそうでちょっと困惑してます

構成がアホ過ぎてあと2話くらいかけそうです…
私生活すんげぇ忙しくなってきてるのに!?

いつもご拝読ありがとうございます!
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