日本の首都、東京から遠く遠く離れ、今ここは西の都市福岡北九州市。僕は今日、初めての遠方で行う仕事としてここに来ていた。…観光庁職員として。
僕が自由を奪われて早4か月弱、最初は全く分からなかったこの状況も何となくわかって来た。まずは僕自身。今この体を操作している僕…便宜上本体としよう。本体は名前や誕生日、出身地や高校までの経歴に両親、多くは僕と一緒だった。ただ、歩む人生が少し異なればその後に多少の影響を与える。大学が違う、生まれた年が違う。多分、それだけの違いのはずなのに職も趣味嗜好も変わっていた。
「それでは、この方向性で事業を進めましょう。私共も、定期的に視察に来ますので、追々発生してくるであろう疑問点はその際にお願いします」
「お願いします」
北九州に来た理由は1つ。目的は2つ。
今回の業務は北九州市の観光資源を増やす事。具体的には、北九州のシンボル、八幡製鉄所の世界遺産認定への活動の打ち合わせだ。八幡製鉄所…僕が中学生の頃に世界遺産へ認定され、当時の歴史の授業で騒がれていたのを覚えている。ここでも、ほぼ同じ歴史をたどっているのかと思うと少し感慨深い。…ウマ娘が存在しない、ここでも。
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その晩、僕らは市内のビジネスホテルに宿泊していた。『ら』と言っても流石に部屋は別室だが。
「えっと…今週末走るのは…」
初めての
(うだつの上がらない成績だが)トレーナー一筋の僕とは大違いの、それなりに充実した人生を送っていた。
「お、新馬戦あるのか」
その言葉でハッとした。そうだ。今この7月下旬、ここ北九州。正確には小倉。ここで…ここであの娘のデビュー戦が行われるのだ。ディープインパクトの名だってここにはいた。その他多くの名バの名前だって聞いてきた。
なら…ならまさかいるんじゃないのか。この地に、あの娘が。
「まぁメインは小倉サマージャンプかな」
僕は初めて、心の底から競馬が見たいと感じた。
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週末。小倉競馬場。昼下がり。正午の針を少し過ぎた頃だった。よく覚えている。僕はトレーナーとして何度も…何度も、何度も何度もこの場所から彼女の初レースを送り出してきた。
中学生らしい幼い体で、中学生らしからぬ堂々とした態度で向かっていく彼女の背を、見送って来た。この場所の、あのパドックでポーズを披露する彼女に、毎度精一杯のエールを送るのは僕だけだった。それが悔しくて…毎度、改めて決意を固めていた。
そして今、僕はパドックの前にいる。7月22日、第5R。今日は、新馬戦だ。
『3番 アストンマーチャン』
嗚呼…どうして君はそこにいるんだ。どうして僕は、ここにいるんだ。まさかとは思っていた。予想もずっとしていた。分かっていた気がしていた。割り切っているつもりだった。
だがいざ君を目にすると、悔しくて仕方がない。目で捕えられる距離に君がいるのに、君とこんなにも離れている。話す事も触れる事さえ許されない、海にも等しい僕らの距離。
僕はこの心の檻に。君は、そんな体の檻に。神は…運命はどうして、僕らにこんな試練を与えたのだろうか。
「アストン…マーチャン…」
そんな僕の心など知る由もなく、彼の心に一つ、名が刻まれた。
そろそろ核心に入っていきますし、訳わかんなくなっていきます。プロット書いてるの時点でちょっと頭こんがらがってるのでどうにか簡略化&分かりやすい説明ができる様頑張ります
私事ですが新時代の扉見てまいりました。非常にクオリティ高く、大満足の一本でしたね。見てない方はこの際お近くの4DXへGO
この先を入れると長過ぎちゃうから今回は短めです。
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追記(2026/02/07) 誤字修正