なんか、変な奴と暮らしてたら変な組織に人理を救えと言われて連れ去られた件。 作:にわかによる妄想劇場
第1話 カルデアに来た
殺気を出しまくるオルトを宥めつつ、標高6,000メートルの冬山に入り口がある長ったらしい名前の研究所に連れられた俺らは、指紋や声帯を始めとした人間としての情報を徹底的に調べられた後で結果が出るまで2人部屋に居ろとのお達しが来たので大人しく居る事にした。
オルトは予定を潰された挙句、今の状況に不満げで苛立ちの余りに部屋の中を歩き回っているのだが、俺としては引き篭もり生活を送っていたとは言っても彼女が暴れて周りの人に迷惑をかける方が嫌だったので、彼らが本拠地としている研究所に行く事に素直に従った。
何しろ、車で自宅にやってきた黒スーツの人達の他に距離はバラバラだった物の何人もの人間が俺達を見張っている事を探知できたので、余計な騒動を起こして大揉めするリスクを考えたらそうするしかなかったしね。
幸い、研究所に持っていける荷物をまとめる時間があったので必要な物をまとめるのと同時に、掃除や食料などの日持ちしない物を積極的に消費したりして当分の間は自宅に戻って来れなくても大丈夫な様にした。
そして、2人部屋に通されてから暫くすると呼び出しを受けたのでやってきた職員に案内される形で所長室に入ると、10代半ばだと思われる美形の域に入るであろう少女が座っていて、対面する形で置かれた椅子に座る様に促されたのでオルトと共に座った。
「初めまして、オルガマリー・アニムスフィアよ。ここ、人理継続保障機関フィニス・カルデアの所長をしているわ」
「初めまして、新倉 誠です。ただのボンクラから
「粗方の事情は報告書で知ってるわ。ある日突然、やってきたって?」
「はい。個人のトレーダーとして稼いでいたんですが、ひょっこり現れまして」
「それで共同生活を始めたと」
何しろ、人型の姿をしていた物のアニメを模したてあろう適当な顔をした球体関節人形だったので、現実における人間の顔を学習させる所から始まって言葉や料理、人体の構造からマナーと言ったありとあらゆる物を宇宙人に教える必要があったので、赤ん坊に付きっきりの母親の気持ちの一端を感じ取れた。
しかも、彼女は宇宙人の中でもトップクラスの力を有している様で力の加減ができずに振り回した腕の指先が掠っただけで体が壁にめり込んだり、腕の骨やら肋骨やらが折れる事が何度もあり、挙げ句の果てにそれで10回以上は死にかける程の重傷を負ったりもした。
彼女が俺の側に現れて、俺の事を第一に考えて治療に当たってくれなかったら既にくたばっていて墓の下か、大地の肥やしになっていただろうと言う事も含めて話すと、彼女は深くため息を吐いてからある事実を告げてきた。
「言っておくけどね。アンタ、そいつの事なんも分かってないわよ」
「あぁ、確かに。深く聞くのを躊躇ってたな」
「よくそれで生きてたわね。そいつ、
「アル………なんだって?」
「アルテミット・ワンよ。唯一最強の一体、原初の一にして単体で属する星の生命体全てを滅ぼす事ができる存在なの」
「
「大真面目に言ってるわ。正直、私だって1人で対面したくないもの」
話の内容はこうだ。
オルトはローマ字でORTと書き、西暦以前に地球外から南米に飛来した輝ける唯一の存在であり、16世紀には魔術師の中でも最強クラスのパーティを組んで探査に当たったものの1人を残して全滅した挙句、その1人も様子見程度に留めた方が良いと言い残してくたばったらしい。
しかも、ORTの監視を務める魔術師曰く、ORTに対処できるのは後100年と言う時間が必要な程に強いとの事なのでオルトに聞いてみると事実との事だった。
何度も死にかけたのにも関わらず、人類の手に余る存在であるオルトと5年も同居できたなと思いながら、オルガマリー女史の話を聞くと2つの道を示された。
1つ目は、監視の目が付きながらもカルデアに来る前の生活に戻る道であり、カルデアがこれから行う仕事とは関係なく、それまでの生活に戻れる保証をしてくれるそうだ。
2つ目は、それまでの生活から一変するがカルデアが行う仕事である人類社会の存続を目的とした業務の一端を担う役割を与えられ、その間に同居人であるオルトが安全な存在である事を証明する道だ。
正直に言って、元の生活に戻れる道に強く惹かれたのでオルトを見ると能面の様に表情が削ぎ落とされた様な顔をしていたので、1つ目の道を選ぶと速攻で彼女に殺されるだろうなぁと推測して渋々ではあるが2つ目の道を選んだ。
俺個人としては、一般的な庶民として普通の生活を送れれば問題ないのだが宇宙からの来訪者として、地球の文化を楽しんでいるオルトが絡んでくるとそうも言ってられなくなる。
何しろ、想像を絶する程の長寿命と高火力を持つ彼女からすれば人間の一生なんてあっという間だろうが、その間はずっと監視の目が付くのは歯牙にも掛けないだろうが目障りなんだろう。
彼女にとって監視とは、休暇中に仕事が立て続けに舞い込んできて休暇が潰れる様なものであり、俺と言うストッパーがいなければこのカルデアすらも破壊し尽くしていたと思う。
その為、2つ目の道を選ぶと息を吐いてから俺の腕に抱きついて来たので自由に動かせるもう片方の腕で彼女の頭を撫でると何故か、オルガマリー女史が額に青筋を立てながら皮肉を言ってきた。
「ど素人なのに良い身分ね」
「生憎、貴女方の様に魔法に精通していない庶民なもんでね。いくら、コイツの危険性を説明されても実感が湧かない」
「今だから言っておくけどね。ソイツは猫を被った化け物なの! だからいつ寝首を掻かれても知らないんだからね!」
「忠告、ありがとうございます」
「ふん!」
どうやら、真面目な話をしているのにイチャつき始めたのが面白く思わなかった様なので、素直に忠告を受け取っておくと顏を背けたのでベタなツンデレ頂きましたと思いながら細々とした話をしてから所長室を出た。
「だけど良かったの? 元の生活に戻らなくて」
「可能なら戻りたかったさ。だけど、監視付きの生活なんて君が嫌そうだったからねぇ。安全だと思われる様に行動するまでさ」
「そう。じゃあ、愛し合いましょうか」
「君とヤるとこってり搾られるんだよなぁ。ヤりたいけどさ」
そして、一定の距離を歩いた後でオルトがここで生活する理由を聞いてきたので説明すると彼女は満面の笑みを浮かべながら、俺を割り当てられた部屋に引き摺り始めたので抵抗にならない抵抗をしながら駄弁る事にした。
5年にも及ぶ同居生活で、オルトが理解の範疇を超えた能力を持っている事は察していたし、何かしらの怪我を負う度に治療と称した肉体改造を彼女から受けていたのでそこそこ強くなっていて、その気になれば並大抵の人間の力ではその場から一歩も動かない様にできる程に強くなった。
そんな俺の抵抗を、物ともしないオルトの強さに惚れてここまでやってこれたのだが、こんな所でその強さを間近で拝めるとはこの時は少しも考えていなかったのである。