ファイナルファンタジー3 リブートエディション   作:北村 貴之

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其之11 ドラゴンの住む山

カナーンの町を後にして、東にあるというドラゴンの住む山へと向かっていた、ウルの村出身のクリスタルの勇者、ソール、マイム、ヴェント、ティエラ。

なぜ彼らがこの山を目指しているのかというと、ある男がこの山へとたった一人で向かって行った、という情報を得たからだ。

デッシュには自身に恋したという少女、サリーナが、彼が自分を置いてたった一人で山へと向かってしまったことにショックを受けていた。

それを見かねたソールたちが、彼の捜索をするために山へと行くこととなったのだ。

「しかし、ドラゴンか……」

ソールが呟く。

「ええ。町から見える大きな山に、あんな存在がいたとは」

ヴェントが彼に返答する。

その山は、カナーンの町からもはっきりわかるほどに見えていた。山の大きさはかなり高い、というわけではなかったが、それでもその頂上付近は全く見えないほどの大きさであった。

「でも…。そんなドラゴンに何か用があってあの山に向かったってことよね?何か理由があるのかな?」

マイムの言葉に、ほかの3人も疑問に思っていた。

「確かに。その山に住む竜が悪い存在だとは限らないし…」

ティエラが腕を組んで考えていた。そして、目線をソールとマイムに向ける。

「…で。昨日の宿屋で、随分お楽しみだったじゃない?」

彼女の言葉を聞いて、二人は顔を見合わせる。

「なっ!?」

「あっ…!」

二人とも顔を赤くしていた。昨日なのだが、マイムが新しく服を新調した。

白魔導士のローブなのだが、腰くらいまでの高さまであるもので、下半身には生脚が見える青いミニスカートを履いていた。

何とも今時の女の子らしい姿だった。今の彼女の姿も、この白いローブを着ている状態だ。

「あ、あれはだな…」

ソールが顔を赤くして答えていた。

「ふーん……。トイレに向かう途中でなんかあなたの部屋で何か聞こえてきた気がするんだけど気のせいかしら」

「あ、ああ。ただ彼女と話をしてただけだ。今後のことについて、二人で相談し合ってた。な、マイム?」

慌てたソールがマイムに話を振る。

「ええ、そうね。もっとも、いいところで中断させられちゃったけどね……」

彼女は苦笑しながら答えていた。

「そうなんだ……」

二人の話を聞いたティエラは納得する。その顔はどこか怪しんでいる様子だった。

ソールはマイムが何とかごまかしてくれたおかげで、何とか難を逃れることができた。

(危ない…。この子に処理を手伝ってもらったなんて口が裂けても言えないな…。まっ、まだやってはないんだが)

ソールは昨日の夜のことを思い出していた。

夜中、マイムが自分の部屋に入ってきたのだ。その時に白いローブを着たに彼女に発情してしまい、それが彼女にバレたのか不明だが、マイムが処理を手伝うと言い出してしまった。

幸いといっていいのかは不明だが、互いは初めてを奪わずに済んだのだが……。

それでもソールにとっては昨日の出来事は忘れることができなかった。

村の孤児院で育ったサーシャという少女に、どこか申し訳なさも感じていた。

サーシャはソールの彼女というわけではなく、単に彼と同じ時を過ごした仲だ。

しかしながら、同じくウルの村で育ち、商人の養子の娘だったマイムにあんなことをされてしまったため、どこか罪悪感を感じてしまっていた。

「……どうしたの?ソールくん」

隣にいたマイムに声をかけられ、我に帰る。

「いや、何でもないよ」

彼は笑顔で答える。マイムはそれを見て安心する。

そんなこんなで、山の入り口が見えてきた。

ピーヒョロヒョロヒョロ、と、遠くの方からトンビの鳴き声が聞こえてくる。

広い草原を歩いていく中で、その山はまるで巨大な壁のように聳え立っていた。

そして、山の入口へと、ソールたちは入っていった。

 

このドラゴンの住むとされる山は、なかなかの斜面だった。

平地を歩いていることの多いソールたちにとって、この山は体力を奪われるものであった。

「ふう……。なかなかきついな……」

ソールが額の汗を拭う。

「うん……。さすがにこれは……」

マイムも息切れをしていた。他の三人も同様であった。

「まったく……。これじゃあデッシュさんやドラゴンに会う前に私たちの方が参っちゃうわね」

ヴェントも首筋に汗を一筋流している。

太陽が昇っており、彼らを照らしている。

山の中の周りは岩場が多く、草はところどころに生い茂っている。

「とにかく、早く行こう。デッシュを探すにしても、このままだと俺たちも遭難しちまうぞ」

ソールの言葉に、ヴェントも同意していた。

「そうね……。急ぎましょう」

ソールの言葉に、全員が賛同する。

 

彼らはさらに奥へと進んでいった場所で、モンスターに遭遇した。

モンスターは、猛禽型の魔物で、3匹いた。

「強そうだな…」

ソールが剣を引き抜いて身構える。ほかの仲間たちも、それぞれ武器を取り出した。

猛禽はキーッ、と威嚇する鳴き声を上げた。

そして、ソールたちに襲い掛かる。

「来るぞ!」

4人は散開し、それぞれの敵に対して攻撃を仕掛けていく。

「はっ!」

まずはマイムが杖で1匹の頭を叩き潰すように殴る。

バキッ!という音が響き、一撃で倒れてしまった。

「喰らえ!」

ソールは剣を一振りするが、鳥はその攻撃をよける。そして、反撃とばかりにソールにくちばしでつついてきた。

「このやろっ!」

ソールは抵抗する。そんな彼を助けようと、マイムが魔法を詠唱していた。

「なびく風よ……、邪悪なるものを切り裂け……。エアロ!」

マイムが白魔法である「エアロ」を使用した。マイムの持つ杖の先から、風の刃が、ソールを襲う鳥をめがけて飛んできた。

そのエアロの攻撃を受けた鳥は地面に倒れていった。

残る一匹は、ヴェントの放つファイアと、ティエラの槍の攻撃で倒された。

なんとか襲ってきた鳥たちを討伐できた。

「ふぅ…」

ソールが額の汗を拭う。

「ここの鳥の魔物たちには風の攻撃が効くみたいね」

先ほど一撃で猛禽の魔物を撃破したマイムが言った。

カナーンの町の老婆からこんな話を聞いたことが、ソールたちはあった。

「エアロという白魔法は、風を操り相手を傷つけるのじゃ。空を飛ぶ怪物によく聞くぞ」

町の人から得られる情報は、決して無駄ではない。

冒険のヒントとなるものが、何かしらあるのだ。

 

「それにしても……。動き回ったせいか暑いな……」

ソールは暑さを感じていた。

空を見上げると、雲一つない快晴だった。

「まあ慣れない山ですからね……」

近くの小さな岩に腰かけているマイムが答えていた。シミ一つないきれいな白い脚を、少しだらしない感じで伸ばしている。

ヴェントは持っていた瓶の中の水を飲んでおり、ティエラは緑色のロングコートを脱いで暑さをしのいでいる。

山の中で少し休息をしていたソールたち。

そんなソールの視線に、あるものが空に浮かんでいた。

「ん?」

当然、ソールもそれに気づく。

それは…。大きな翼を持った大きな身体の竜だった。

鎧よりも硬そうな、白金色の鱗をしている。

それはどんどんソールたちの方に近付いていく。

「え、嘘…」

接近している竜に、ソールは身震いしていた。

「おい!みんな、あっちを見てくれ!」

その言葉を受け、マイムたちがソールの指さす方向を見る。

「ええ!?これがドラゴン!?」

「ってこれ、ただのドラゴンじゃない。伝説の幻獣、『バハムート』じゃない!!」

マイムは戸惑っていたが、ヴェントはそのドラゴンが幻獣であることを知っていた。

このドラゴンこそが、伝説の幻獣、バハムートであることを。

「バハムート?確か、絵本で見たことがあるような…」

「まさか、本当に存在していたとは!」

ティエラが驚いている。

バハムートは、ソールたちに近づくと、そのまま彼らの方に急接近していく。

その様子に、ソールたちは呆然と見ていた。

バハムートになすすべなく、ソールたちは彼に捕まり、どこかに連れていかれてしまった。

 

ソールたち4人を器用につかんで飛行していたバハムートは、突如ソールたちを手放してどこかに去ってしまう。

手放されたソールたちは地面に叩きつけられた。

何とか怪我もなく無事だったが、連れてこられた場所は、巨大な卵がゴロゴロと転がっている場所だった。

しかも、卵が孵化して、そこから幼いドラゴンが姿を見せていた。

「ホンギャー!」

幼生のドラゴンが鳴き声を上げていた。小さいサイズとはいえ、鳴き声はかなりの大きさだ。

あのバハムートの子供なのだろうか。

そのドラゴンの子供は何体かいた。だが、卵の中に下半身を隠していたため、動くことはできなさそうだ。

「これがドラゴンの子供か…。初めて見たよ」

ソールはその幼いドラゴンたちに驚いている。

辺り一面には藁が敷かれているため、どうやらここはドラゴンの巣なのだろう。

しかし、その中でただひとつだけ、ドラゴンとは思えない存在がそこにはいた。

そう。どう見ても「人間」にしか見えない。しかも男だった。

ソールたちはその男に近付いてみた。

黒い髪をオールバックにしており、紺色のコートを着ていた。耳には金色のイヤリングをしている。

年齢は20代後半くらいだろうか。

「ハハハ!すべて見物させてもらったよ。お前らドジだねぇ~!ドラゴンに攫われて、ざまあないな!」

その男はソールたちを見ていきなり、小ばかにしたような発言をしてきた。

「この状況でよく人の事を笑えますね…。あなたもドラゴンに捕まったんでしょう?」

ティエラが呆れ気味に言い返した。

「え?いやぁ…。はっはっは!俺はデッシュっていうんだ」

この男性が、ソールたちが探していたデッシュという男のようだ。

意外とすんなり見つけることができた。

そうソールたちが安堵していると、竜の咆哮の声が聞こえてきた。

先ほど自分たちをさらったバハムートだろう。

ソールとデッシュたちは上空を見た。そこには先ほどのバハムートが、飛行していた。

「げげっ!ドラゴンのお帰りだ!隠れろー!!」

しかし隠れるといっても、バハムートの視線にはしっかりと5人の人間が映っていた。

慌てている様子の彼らを、今はじっと見つめている。

「戦おうなんて馬鹿な気起こすなよ!勝ち目はないからな!」

デッシュがソールたちに注意喚起をする。

「そりゃ伝説の幻獣様だからな…」

ソールがやれやれ、という表情をする。

「絶対に逃げるんだ!逃げるんだ!逃げるんだあああ!」

デッシュが絶叫しながら、足早にかけていく。ソールもマイムもヴェントもティエラも彼に続いて走っていく。

 

 

なんとかバハムートの視線から抜けることができる場所まで行くことができた。

どこまで走ったのか、自分たちでもわからない様子だった。

しかし、あの巨大な竜から逃げられただけでも、大きな収穫だった。

バハムートの視界から消えたところで、彼らは立ち止まって息を整えた。

「はあ……、はあ……」

「ふう……」

「ふぅ……」

「はあ……」

4人は呼吸を乱している。

「おいおい、大丈夫か?」

「ええ。メガフレアが飛んでこなかっただけでもラッキーだったわ」

息切れを起こしながらヴェントが回答した。

メガフレアというのは、バハムートが放つ、必殺のブレス攻撃だ。その威力は計り知れず、食らってしまえば消し炭になってしまうほどだ。

「ふぅ…。危なかった。逃げ足だけは自身があるんだ!」

ハァハァと息切れを起こしている4人とは違い、デッシュはまったくそんな様子は見られなかった。

デッシュが、コートのポケットからあるものを取り出した。それは、ポケットにも入るサイズの魔法書だった。

コンパクトサイズの魔法書はかなり珍しい。

「そうだ、これをもらってくれないか。とても珍しい『ミニマム』とかいう魔法さ。買ったのはいいけど、使いこなせなくてな」

この魔法書はミニマムという魔法を覚えるための本のようだ。本の表紙には人間が小さくなる過程を描いた絵が挿絵として描かれている。

「その代わり…。一緒に旅をさせてくれないか?実は俺、記憶がなくてさ…。名前以外は何も思い出せなくて」

どうやらデッシュは記憶喪失のようだった。こんな状態の人間を一人で放っておくのはよくないと、ソールは思っていた。

「僕は別に構わないが…。みんなはいいか」

ソールの言葉に、3人の少女は無言でうなづいていた。賛成のようだ。

「それはいいけど…。あ、そんなことよりもあなた!サリーナさんが泣いていたわよ!!」

カナーンの町に住むサリーナのことを思い出したマイムが、デッシュに詰め寄ってきた。

「そうか……。でも俺は何かをしなければならないんだ」

マイムに詰め寄られた彼は、何やら思いつめたような顔をしていた。

「でもそれが思い出せなくて。まあ、そのうち思い出すだろう!頼もしそうな仲間にも出会えたしな」

曇った顔をしていたが、一瞬で晴れた顔をした。

「さあ、あいつがまた来ないうちに、飛び降りよう!」

そして、山の崖へと歩いていき、

「それっ!!」

と、掛け声を上げて飛び降りていった。

ソールたちもそれに続き、崖へと落ちた。

こうして、光の勇者たちは記憶をなくした旅人、デッシュを仲間に加え、新たな地へと踏み込んだのだった。

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