ファイナルファンタジー3 リブートエディション   作:北村 貴之

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其之12 トーザスの村

記憶喪失の旅人の青年、デッシュを仲間に加えたクリスタルの光に選ばれし勇者たち。

1人の少年と、3人の少女だ。

黒いハイネックのシャツと青いベストを着た、茶色い髪と瞳をした長身の瘦せ型をしている少年のソール、灰色と銀色の中間点の色のセミロングの髪を持ち、袖に赤いギザギザの模様が入った白いローブと青いミニスカートを着た少女のマイム、ウェーブがかった桃色の髪に、アメジスト色の瞳を持ち、白いブラウスに黒のミニスカートといった服装の少女のヴェント、緑色の瞳に長いブロンドの髪をポニーテールにまとめ、薄い青色のブラウスと緑色のフード付きのロングコートと紺色のミニスカート姿の少女のティエラの4人組だ。

彼らは辺境の村、ウルの村出身であり、村付近のクリスタルの調査に訪れた際、クリスタルが反応し、世界の危機に瀕していると聞かされる。

そして、クリスタルから光を授かり、光の戦士となったのだった。

そんな彼らは旅の道中で、デッシュに出会ったのだった。

カナーンの町にて、彼を目撃したという情報を手に入れ、さらにはデッシュに好意を抱いているというサリーナという少女が彼がいなくなったのを嘆いていることを確認した。そして、町近くの山でデッシュに出会うことができたのだ。

 

そんなこんなで、彼らは山から飛び降りて別の大地にいたのだった。

というのも、その山にはドラゴンが住んでいた。

ドラゴンの名はバハムート。伝説の幻獣だ。

銀色の鱗をしており、大きな翼を持つ、雄々しいドラゴンだ。

バハムートには到底勝ち目はないので、ソールたちとデッシュはバハムートから逃走し、無事に着地できたのである。

「結構な距離降りたな…」

ソールは上空をを見上げながら呟いた。

「そうね……でもここどこなんだろう?」

マイムも同じく、ソールと同じ方向を見ている。

「わからないけど……。とりあえず、まずはこの土地を探索してみましょう」

ヴェントが言った。

辺り一面は草原だ。もう少し行ったところに、森がある。

しかし、町や村などはいまのところ確認できない。

そんな見知らぬ土地にたどり着いたところで、改めてデッシュが挨拶をする。

「おまえさんたちと一緒なら、旅も安全だ。よろしくな」

ソールたちと出会う前までは1人だったデッシュだが、心強い仲間たちができて安堵しているようだった。

しかし、記憶をなくしているという事だけは忘れてはならない。

「記憶がないなんて大変ね…」

ティエラがそんなデッシュを心配している。

「何かをしなくちゃいけないんだけど、なんだったかなぁ…」

デッシュがうつむき、頭に手を当てる。

「えっと……思い出せないのか?自分が何者なのかとか……」

「あぁ……。自分の名前は憶えている。ただ、それ以外は……」

「そうか……。まぁ、そのうち思い出せるさ!」

ソールがデッシュを元気づけた。

そして、5人は草原を歩き始めた。

 

やがて草原を抜け、森の中に入った。

森の中は静かで、魔物の気配がなかった。

青々とした草木が、太陽の光を浴びて輝いていた。

鳥たちの鳴き声が聞こえるくらいだ。

5人は何もない静かな森を歩いていく。

しばらく歩いていると、突然目の前に湖が現れた。

ソールたちはその湖へと近づいていく。

湖の水は透き通っており、清潔だった。

そのまま飲めそうだ。

水面を覗き込むと、自分たちの姿が見える。

まるで鏡のように鮮明に見えるのだ。

「綺麗な湖ね」

「ほら見て、魚がいるわよ」

マイムとヴェントが言う。

すると、ティエラが叫んだ。

「ちょっと待って…。誰かいるわ」

ソールたちが、ティエラが察した気配の方向を見る。

そこからやってきたのは、やけに背が低い人間だった。手にはバケツを持っている。

見るからに身長は1メートルもなさそうだった。

緑色の帽子を被っており、子供のような顔つきをしていた。

「おい。誰なんだあんた」

ソールが、そのあまりにも小さい人間に声をかける。

その人間が答えてくれた。

「おいらは、この森の水を汲みに南の方の小人の村からやって来たんだ。小人しか入れない、『小人の村』さ!」

この1メートル未満の身長の人間は小人のようだ。

体型はあまりずんぐりしておらず、筋肉質でもない。

肌の色は白く、髪の毛は茶色で短い。

瞳は緑色で、耳が大きいのが特徴的だ。

「へぇー。こんなところに村があったのか」

「でも、小人しか入れないそうよ」

ソールとヴェントが話していた。

すると、マイムが何かを思い出したかのように、

「あ、そうだ!さっきデッシュさんからもらったこれなら…」

マイムが、デッシュからもらった魔法書を取り出した。

魔法書の表紙には、人間が縮んで小人のような姿になる絵が描かれている。

マイムが持っているこの魔法書こそ、小人になる魔法「ミニマム」を封じ込めた魔法書だ。

ティエラはしゃがんで、小人に話しかける。

この小人にとって、ソールたちは巨人も同然だ。

3人の少女は皆スカートを履いているため、小人の目線からだとパンツが見えてしまう恐れがあるのだ。

「あの……。私たち実は旅人で、この土地は初めてなの。ここの近くに町とかありませんか?」

ティエラが丁寧に質問をした。

「えーっとね、残念だけど、さっき教えた小人の村だけになるかな」

小人が回答してくれた。

「あんたら、ミニマムの魔法があるなら自分たちにかけて小人になってみたらどうだい?」

続けてその小人が提案する。

「そっか、それもそうね……」

「じゃあ、早速やってみましょうか?」

4人は互いに見つめあい、うなずく。

「それでは……」

マイムが魔法書を開く。そして、魔法の詠唱を始めた。

5人全員を小人にする準備をしている。

「我、自身たちに願う。我を小人と化せしめんことを……、ミニマム!!」

マイムが呪文を唱えると、5人を包みこむように光が放たれる。

「おぉ……なんか体が熱くなってきたぞ」

「私も」

ソールとティエラは身体に違和感を覚えていた。

ミニマムの魔法がかかった5人は、みるみる目の高さが変わっていくことに気づいていた。

そう。小人になるという事は、当然見る景色も違ってくることになるのだ。

「わかりやすく、縮んでいっているわ」

マイムがそう言った。

「本当ね……」

「うん……」

他の4人も自分の変化に驚いていた。

マイムが魔法書をパタンッと閉じた。

すると、5人を包んでいた光は徐々に消えていく。

「これでいいみたい」

魔法を使用したマイムは、自分たちが小人になったのを自覚していた。

先ほどまで、しゃがまないといけないほど低身長だった小人と同じ視界になっていた。

「よし、じゃあ行くか!」

小人になったソールは、縮んだことを気にしていない様子だった。

「そうね」

「行きましょう」

ヴェントもティエラも、小人化を受け入れていた。

「そうしよう!」

デッシュも小人になっており、先ほど教えてもらった村に行く気だった。

「ありがとう、その村に行かせてもらうよ」

「いいってことさ、トーザス村っていうんだ、よろしくな」

ソールは水汲みに来た小人にお礼を言う。

こうして5人は、小人の村へと向かっていった。

 

湖から少し歩いたところで、デッシュがこんなことを言ってきた。

「小人じゃ、まともにモンスターとは戦えない。魔法で戦うのがいいだろう」

そう。自分たちは縮んでしまったので、それに伴って所持品も縮んでしまっている。

そのため、元のサイズで戦って時に通じている普通の攻撃は、相手に通用しづらくなっているのだ。

物理攻撃よりも、魔法攻撃で戦った方が、効率が良さそうだし、ダメージを通すことができる。

それを聞いたソールたちは、納得していた。

 

小人の姿になったソールたちだったが、幸いにも魔物に遭遇することなく、先ほどの小人に紹介してもらった村と思われる場所に到着していた。

この村が、トーザス村なのだろう。

屋根は葉っぱや細い木の枝で作られていて、建物も普通の人間たちの住まいに使われているレンガや木ではなく、土や石で作られているようだ。

地面は芝生で覆われており、そこに様々な形の小さな家が建っている。

まるで童話の世界のような光景だ。

「へぇー。なかなか綺麗な村じゃないか」

「うん」

「そうだね」

「そうね」

ソールとマイムたちは、そんなメルヘンチックなトーザス村を見て、感心していた。

「とりあえず、ここから次の大陸に通じる場所を探さないとね」

マイムが言う。

ひとまず、村に住んでいる小人に話を聞くことにした。話を聞いてくれた小人の一人が、こんな情報をくれた。

「この村にはミラノス山脈を貫く洞窟があるんだ。そこを通れば、バイキングの住む『ミラルカ谷』に出るぜ」

「その洞窟って、どこにあるんですか?」

ヴェントが質問をする。

「う~ん。あると聞いてはいるが、場所はわからんなぁ。あ、そうだ。村の医師のシェルコ先生なら、洞窟の場所を知っているそうだが」

この村には次の場所に行くための道があるそうだ。しかし、この小人が聞いたのはあるのは知っている、というだけで、場所は知らないらしい。

ソールたちはそのシェルコ先生という人物に会いに行くことにした。

「シェルコ先生なら、あの山吹色の屋根の建物にいるぞ」

「ありがとうございます」

マイムがお礼を言った。

 

5人は小人が教えてくれた情報をもとに、シェルコがいるという場所にたどり着いた。

「ここだな、教えてくれた場所は」

「中に入ってみましょう」

ティエラがそう言って、ソールたちはその山吹色の屋根の建物の中に、扉を開けて入った。

シェルコは村でたった一人の医師である。

そのため、この建物の中は、見るからに診療所であった。

薬が保管されているであろう棚や、聴診器をぶら下げたスタンドなどが置いてあった。

「すみません……。どなたかいらっしゃいますか?」

ソールが声をかけた。しかし、誰も出てくる様子はない。

「いないぞ…」

「一人で運営しているのかしら?」

ヴェントが顎に指を当てる。

「ちょっと踏み込んでみましょ」

マイムが、この診療所に本当に人がいるかどうか確かめようと、提案した。

ソールたちはそれに従い、診療所にあった、関係者以外立ち入り禁止であろう扉を開けた。

そこは簡素な台所や棚が置かれた、普通の生活スペースのようだ。

シェルコが普段仕事以外に使っているのだろう。

「やっぱり、ここにはいなかったみたいね」

「待って、あっちから声がする…」

ヴェントがしっ、と人差し指を鼻の近くにあてて静かにするよう皆に指示する。

ソールたちのいる部屋の隣の方から、何やらうめき声のような声がする。

「い、行ってみよう…」

デッシュが少し青ざめた顔で言った。デッシュのその表情を見た4人も緊張した面持ちでうなずく。

そして、5人は隣部屋へと移動していった。

そこには、苦しそうな顔をしてベッドの上で寝ている男性がいた。この男がシェルコだろうか。

少し小太りで、赤茶色のぼさぼさの髪をしている。見た感じは中年といったところだろう。

「うーん、うーん…」

顔中に汗をかいて、シェルコはベッドの上で苦しそうに声をあげている。

「あ…。あなたがシェルコ先生ですか?」

心配そうな表情をして、マイムがシェルコに声をかける。

「い、いかにも…。わたしがシェルコだが…」

やはりこの男が村の医師のシェルコのようだった。しかし、今の状況では会話ができる状態ではない。

「一体どうされたんですか? 大丈夫なんでしょうか……?」

シェルコの顔色は悪くなっていた。見るからに何とかしないといけない状態だった。

「ど、毒消し…。もってる…なら…」

どうやらシェルコは毒消しのための薬を欲しがっているようだ。

毒消しと聞き、ヴェントが荷物の中から、青色の液体の入った小瓶を取り出した。

彼女が取り出したのは、毒を持つ魔物から攻撃を受け、体内に毒が入ってしまった際に飲んで解毒させるための毒消しの薬だった。

カナーンの町の道具屋でたまたま購入していた品だった。

「これで…。どうでしょうか?」

元は魔物からの攻撃で受けた毒を治すための薬なのだが、彼女はだめもとでシェルコを治すことにした。

シェルコの口に、ゆっくりと、青い薬液を流し込んでいく。

「焦らずにゆっくり飲んでくださいね」

ヴェントの指示に従い、シェルコは薬にむせないように慎重に、重たい身体をわずかに動かし、薬を少しずつ飲み込んでいった。

しばらくすると、シェルコの呼吸が安定してきた。顔色もよくなり、先ほどまでとは打って変わって、安らかな表情になっている。

「ふぅ……。助かったよ。君たちのおかげで命拾いをしたようだ」

シェルコは感謝の言葉をソールたちに述べた。

「何か食べ物にでもあたったらしい…。本当に助かったよ」

解毒をすることはできたが、病み上がりなので、まだ無理はできそうにない状態だった。

しかし、まともに話すことは可能のようだ。

「お礼に、私の宝をあげよう。そうそう、その先にミラルカ谷への抜け道もあるぞ」

シェルコが抜け道の場所を知っているのは本当のようだった。

ゆっくりと立ち上がり、シェルコはソールたちに、診療所内に隠されている、宝の部屋と抜け道の場所へと案内をした。

 

シェルコが言うには、診療所の奥には、隠し通路があり、そこから外に出るらしい。

「ここだな」

ソールたちはその扉の前にいた。

「うん」

「そうだな」

マイムとデッシュはその扉を見て言った。扉のノブには鍵穴があった。

シェルコからもらったあずき色の鍵で、その鍵穴に合うかどうか試してみる。

カチャリという音が鳴り、扉を開けることができた。

扉の向こう側には、薄暗い洞窟が続いていた。

「こんなところに洞窟があるなんてなぁ……」

「ちょっと不気味ですね」

「気を付けて進みましょう」

デッシュ、マイム、ヴェントは洞窟の薄暗さに少し恐怖心を抱いていた。

「さて、ここからが本番だぞ」

「ああっ」

「行きましょう」

「頑張ろう!」

ソール、マイム、ヴェント、ティエラ、デッシュの5人は、炎のついた松明を手に、ミラルカ谷へと通じる洞窟を抜けることにした。

 

洞窟内はじめじめとしていて、まさしく「地面の中」と形容するしかない造りの洞窟であった。

ところどころに草の根っこと思われる細く白いものが壁から露出していた。

まるでモグラが掘ったような道だった。

「うーん。アリかモグラになった気分だ」

松明を片手に先頭を歩いているデッシュが呟いた。

「畑の匂いがすごいな…」

元々孤児院で畑の仕事をしていたソールが言った。農作業を長年しているので、土の匂いは慣れていた。

しかし、あくまで洞窟なので、空気の通りが悪い。そのため、少し息苦しく感じた。

「こっちの方は、あまり魔物がいないみたいね……」

ヴェントは鼻をくんくんさせながら辺りを見回した。

「本当だ……。全然いないわね……」

マイムも鼻をひくつかせる。

歩いているデッシュがいきなり、立ち止まった。

「悪い。魔物のお出ましのようだ」

デッシュはそう言って、近くにいたソールに松明を手渡した。

熱い炎が灯る松明を持ったソールが、炎でまぶしく照らされた暗闇を見る。

そこには、3匹の大きな、悪魔の顔のような魔物がいた。

まるで「般若」の面を髣髴とさせる魔物だ。黒い顔に、白い角を持っている。

「うっ……! なんだあれは!?」

「お、お面……!?」

「何あの見た目……!」

「気持ち悪すぎる……」

4人は驚きを隠せなかった。

「待て。ここは俺がやる!」

デッシュが魔法を詠唱し始めた。

悪魔の面のような魔物…「ダークフェイス」は、尖った牙をちらつかせ、ソールたちを凝視している。

「サンダラ!!」

電圧の大きそうな雷が、デッシュの手から放たれた。

その雷が、1体のダークフェイスに命中した。

「ギエェッ!!」

命中と同時に、ダークフェイスは叫び声をあげて燃え上がった。

「よし……。まず一体だな」

残る2体にも、デッシュは続けてサンダラを放つ。

2体のダークフェイスは成すすべなく、その電撃の餌食になり、黒焦げになって地面によこたわったのだった。

サンダラを軽々と使いこなすデッシュを見て、ソールは驚く。

「驚いたな…。あんた、雷の魔法が使えるのか」

「旅の経験ってやつさ」

デッシュは得意気に答えた。

「ふぅ~……」

戦闘が終わったので、ソールたちは一安心した様子を見せる。

「それじゃ、先に進みましょう」

「ああ、そうだな」

一行は再び歩き始めた。

その後しばらく歩いていくうちに、だんだんと洞窟内の湿気が減ってきたことに、ソールは気が付いた。

「どうやら、この洞窟はもうすぐ終わりのようだぞ」

ソールがそう言った時、出口の光が見えてきた。

「やった!」

「これでやっと外に出られるんだな」

「ふう、よかった」

マイムが安堵した声を上げる。

「じゃあ、この小人の姿はいらないわね」

マイムは自分の身体をじっと見つめる。

「ああ。やっと普通のサイズに戻れる」

デッシュがそう言った。

5人は抜け道の洞窟を抜けた。

外は日が沈みかけていた。もうすぐ夜が来る時間だった。

「ここがミラルカ谷か……」

「思ったより広い谷ですね……」

「でも、谷の向こうに、バイキングの住処があるんですよね?」

「そうみたいだね」

ヴェントの疑問に対し、ソールが答える。

「さて、行こうじゃないか」

デッシュがそう言い、先陣を切る。それに続いて、光の戦士たちが続いた。

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