ファイナルファンタジー3 リブートエディション 作:北村 貴之
小人の姿にならないと入ることのできない村「トーザス村」の抜け道をぬけて、新たな大地へとたどり着いた、クリスタルの光に選ばれた勇者、ソール、マイム、ヴェント、ティエラ。
4人には、記憶喪失の旅人のデッシュもいた。
彼は魔法も使用することができる。
小人の姿から元の大きさに戻り、ソールたちが次に目指すのは、ミラルカ谷にあるとされる、バイキングの住処であった。
バイキングとは、今でいう海賊のような存在だ。彼らは海をわたって様々な土地をまわり、その土地の産物や特産品を買いつけ、それを船で運んで売りさばくことで生計をたてているのだ。
彼らが航海に出るときに使う船こそが、いわば彼らの仕事道具である。
バイキングたちは、そういった品々を使って交易をおこないながら、あの谷にある洞窟で暮らしているそうだ。
だが、そんな彼らの住処は、今はというと…。
ソールたちはそのバイキングの住処を訪ねた。
洞窟内にあるため、暗くじめじめとしている。
だが、太陽が一切当たらないため、1年中を通して気温が低いため、この洞窟では、それがかえって心地よい場所になっていた。
「ようおこし」
出迎えたのは、バイキングにしてはかなり小柄な男だった。
顔に無数の傷跡があり、いかつい髭面をしているのだが、身長が低いためか、それほど威圧感はない。
豪快そうなイメージとは裏腹に、どこか少し暗い顔をしている。
「おれたちゃ、バイキング。海の貴族さ。…でもな、実は困ってるんだ」
彼らはある問題を抱えているようだ。
「何があったんですか?」
ティエラが彼にその悩みを聞いてきた。
「数か月前、大地震があっただろう。あの大地震のあと、海竜が現れて、俺たちの船は壊されてしまった。エンタープライズだけは無事だったが、怖がって誰も乗りたがらない…」
普段から仕事で使っているであろう船は、大地震の影響で現れたとされる海竜に壊されたという。
これはかなり深刻な問題だ。
「ほかの人たちにも、話を聞いてみよう」
ソールはそう言って、このバイキングのアジトの中で、ほかのバイキングたちに話を聞いてみることにした。
バイキングたちはかなりネガティブな雰囲気に陥っていた。
船を壊されて仕事ができないためふて寝をしている者もいれば、酒に溺れてしまっている者もいた。
「ボスも頭を抱えちまってるよ。海竜には敵わねえ…」
先ほど出迎えをしてくれた者とは別のバイキングが話してくれた。
ここにいる、アジトを束ねるリーダーのボスも困っている模様だ。
それから、別の場所で栗ようかんを食べていたバイキングから、ある情報をもらった。
「岬にはネプトの神殿がある。ここにいるじっちゃんが何か知ってるはずだ」
そのバイキングが食べていた栗ようかんは、濃いあずき色をしており、みずみずしさがあった。
その話を聞いたソールたちは、その「じっちゃん」と呼ばれる人物を探すことにした。
アジト内の一室に、ひとりの若い男がいた。
おどおどとした様子で、どこか落ち着きがない。
それが気になったソールは、声をかけてみることにした。
「どうされましたか」
「じっちゃんがあがってくるのを待っているんだ」
その男のいる部屋の下に「じっちゃん」がいるそうだ。
ソールたちは、目の前にあった階段を下り、その「じっちゃん」に会いに行く。
階段を下りたその先は、どうやら倉庫のようだった。
バイキングたちが手に入れた物資がところせましと箱や壷に入れられて保存されている。
これらを生活用品及び売り物として利用し、交易をおこなっているらしい。
奥の方へと進むと、「じっちゃん」と思わしき老人がやってきた。
彼はかなりの高齢であり、背中が曲がっていた。
しかし足腰はまだしっかりしており、杖をつく必要もないようだ。
「おお……。あなたが『じっちゃん』ですか」
その老人を見たソールが、彼に向かってこう言った。
「そうだ。ワシが『じっちゃん』じゃ。バイキングの中でも一番、最年長だ。して、私に何かご入用かな」
「実はですね……」
ソールはこの洞窟のバイキングたちから聞いた話をした。
海竜のことと、ネプトの神殿のことだ。
それを聞いたじっちゃんが、回答をしてくれた。
「ネプトの神殿は海竜『ネプト竜』が眠っている場所なのだ。だが、この前の大地震でいきなりネプト竜が目覚めて、狂ったように海で暴れだしたのだ」
やはり、あの大地震が影響していたようだった。
ウルの村周辺だけでなく、他所の地域でも問題は発生していたらしい。
「ネプト竜が暴れている原因は分かったが、それをどうにかする術はあるのでしょうか?」
マイムがじっちゃんに質問をした。
「それは分からん」
じっちゃんは首を横に振って答えた。
「だが、このまま放っておくわけにはいかんぞ」
確かにそうだ。このままだと、バイキングたちは生活できずに、飢えて倒れてしまうおそれがある。
それを阻止するべく、ソールたちはネプトの神殿へと向かうことに決めた。
その前に、体力を回復するため、このバイキングのアジト内の宿屋で一泊することにした。
ソールはその夜、眠りについていた。
バイキングが経営する宿屋のベッドは、意外と寝心地がよい。
これも各地で手に入れた品のひとつなのだろう。
しかし、バイキングは、地震の影響によって仕事を失ってしまったも同然の状態のため、この状況が長く続けば困窮してしまうことは目に見えていた。
そんな彼らを救うべく、ソールは明日、ネプトの神殿の調査に赴かなければならなかった。
無論、一緒にいる仲間たちもだ。
そんなソールの部屋の扉に、ノックする音が聞こえてきた。
何だろう、と思いソールは声をかける。
「はーい」
そうソールが一言言うと、人が入ってきた。入ってきたのは…。ティエラだった。
「あ、ティエラちゃん」
「ソールくん……。お疲れ様」
ティエラは少し恥ずかしそうにしながら、ソールの部屋に入ってきた。
「ちょっと、いいかしら?」
「ああ、構わないよ」
ソールはそう許可をすると、彼女は彼の隣にやってきた。
彼女の服装が違っていたのを、ソールはすぐにわかった。
ティエラが来ていた服は、白いノースリーブの上着に、ピンク色のズボンと、どこか中華風のデザインのある服装だった。
彼女の着ているその白いハイネックの上着は、ぴっちりとしていて、ティエラのボディラインがよくわかる。
お腹のくびれと、ふっくらとした胸の大きさが、はっきりと分かるほどだ。
下半身に履いているピンクのズボンもふわふわとしており、とても可愛らしい。
「どう?似合うかしら……」
「うん、すごく可愛いよ」
ソールは彼女が着替えた新しい服を褒めた。
それを聞いたティエラが頬を赤く染める。
そんな彼女がソールの顔を見る。
「……ありがとう」
彼女は笑顔を浮かべながら、ソールに礼を言った。
それから、しばらく2人は会話を続けた。
「バイキングたちのことだけど、早く何とかしないとね」
「ええ、そうよね」
バイキングたちを救うためにも、まずは彼らの生活を取り戻すことが先決だった。
「…ところで、なぜ君は僕の部屋に…?」
ソールが気になっていた質問をティエラにぶつける。
ティエラのブロンド色のポニーテールが、小さなランプで照らされて、薄暗い部屋の中で光っている。
ソールの腕に、何かが当たったような気がした。
柔らかくて、大きな何かだった。
もにゅ、とした感覚が腕に伝わってくる。
(あれ、これってまさか……)
「あなたのそばにいたかったから」
「えっ!?」
「それだけじゃダメ…。かな?」
「そ、そういうわけじゃないけど」
突然の告白のような言葉に、動揺を隠しきれないソールであった。
彼はティエラのことは別に好きでも別に嫌いでもないのだが、そんな発言をされてしまったら、どうすればいいかわからなかった。
ソールは何を言おうか迷っていた。そうこうしていると…。
ドサッ、と大きな音を立てて、ソールが何かに押され、ベッドの上に倒れこんだ。
ティエラがソールをベッドに押し倒したのだ。
「ちょ、ちょっと、何して……」
「ソールくん……」
ソールの両手を、自分の手で押さえつけたティエラは、ソールの耳元で囁いた。
「好き。あなたが好き」
「!!」
いきなりの告白に、ソールは顔を真っ赤にした。額に汗が流れた。
ベッドの上に仰向けに倒れた状態でいるソールに、ティエラが馬乗りになる形となった。
ティエラの吐息が、彼の顔にかかる。
「フフフ…」
ティエラは、ソールに対して好意を寄せていたようだ。どこか不気味な微笑みを浮かべている。
「ちょっと何かが物足りない?じゃ、これは脱ぎますね…」
ティエラは、履いていたピンク色のズボンを脱ぎ始めた。
白く美味しそうな生の太ももが露わになる。
白い上着は、前垂れのようになっていたため、ズボンを脱いだだけでは、下着が見えなかった。
「う、嘘だろ!ティエラちゃん!」
ソールは焦りの声を上げた。このままでは、ティエラに犯されてしまうと思ったからだ。
だが、そんな矢先に…。
「ソール!ソールったら!」
誰かがソールを呼ぶ声が、耳元で大きく響く…。
「ソール!ソールくん!早く起きて!」
ティエラが起こしに来たようだ。
着ている服は、薄い青色のブラウスに緑色のフード付きのロングコートと紺色のミニスカートと、普段のティエラが纏っている服だった。
ソールはベッドの中で心地よく寝ていた。
「うぅ…」
寝ているソールが、苦しそうに声を上げる。
「あ、起きた」
「え……ティエラちゃん……?」
「おはよう。もう朝ごはんの時間だよ」
「ああ……。そうか……。夢だったのか」
どうやら、さっきまでのことは、すべて夢だったようだった。
寝ぼけていたソールは、ティエラの顔を見る。そして、夢の出来事を思い出し、ひどく驚いて後ずさりした。
「…!!」
顔を赤らめ、その後、息切れを起こした。
「ど、どしたの?あたしの顔を見ていきなり」
ティエラはきょとんとして首を傾げる。
「な、何でもないよ。それより、早くご飯を食べに行こう」
ソールはそう言って、慌ててティエラに連れられて部屋から出て行った。
バイキングが経営する宿屋を出ると、バイキングたちは忙しく働いていた。地震の影響で船を出せなくなっても、宿屋の仕事は変わりがなかった。
ソールたちが食べたのは、だし巻き卵、カワハギの塩焼き、シイタケの煮物、白米などだった。
どれも味がよく、満足できる朝食だった。
「ごちそうさま」
バイキングたちに礼を言い、ソールと仲間たちはネプトへと向かう前に、ある場所へと来ていた。
そこは、バイキングのボスの部屋であった。
場所はじっちゃんから聞いている。
これからネプトの神殿の調査に行くことを伝えるのが目的だ。
バイキングのボスは、意外にも女であった。
やや高めの身長をしており、黒く長い髪をしている。
日に焼けた小麦色の肌をしており、着ている服はというと、自慢のスタイルを強調するかのように、白いビキニを纏っていた。
目は青い瞳であり、顔は整っていてどこか少し幼さすら感じさせた。
美味しそうな大きく豊かな乳房が、ぷるん、と揺れている。
「あなたがボスですか?」
マイムが質問をした。
「あぁ…。いかにもあたしがここの頭領だ」
ボスが肯定する。
「あの、僕たち、これからネプトの神殿へと向かおうと思うのですが」
マイムと交代するかのように、ソールが話をした。
「ほう……。そうなのか……。あんたらは一体?」
「僕はソールといいます。僕たちは旅の者です」
「そうか、旅人か。しかし、海竜にはあんたらでも勝てっこないぞ。だが、その海竜を退治してくれたら、お礼にエンタープライズをやるが、どうだい?」
ボスはアジト内に停泊している船「エンタープライズ」をくれるのだという。
「え?いいのですか?そんな大事な船を…」
「ああ。なんとかできたら、だけどな。せいぜい気をつけるといいさ…」
船の中でも無事だったのがエンタープライズという船のようだ。
しかし、ボスも他のバイキングも、あの海竜の強さは半端ではない、と言っている。
ソールたちは旅を続けてある程度強さを身に付けてはいるが、それがあの海竜に通用するのかは正直はわからない。
だが、ネプトの神殿に行けば、海竜に関する何かはあるはずである。
「ありがとうございます。では、行ってきます」
ソールたちはそう言い残して、ボスの部屋から出て、ネプトの神殿へと赴くことにした。
外に出ると、外は雨模様だった。雨脚はそこまで強くはないのだが、アジトから神殿までは歩くとかなりの距離はあるため、進むのに難儀しそうだ。
「さて、行くとするかな」
「うん……」
ソールの言葉を聞いて、仲間たちが返事をする。
こうして、彼らはネプトの神殿へと向かったのである。
雨が降る中、ソール一行は歩き続けた。
しばらくすると、目的地のネプトの神殿が見えてきた。
「あれが、ネプトの神殿ね……。何だか神秘的に見えるわね」
ヴェントが言った。
「海の様子はどうなっているのかしら」
ティエラがそう言って、海の方向を見る。
海の方はというと…。
全長がかなり長そうな、青い鱗を持つ強大そうな海竜が、暴れて泳いでいる。
それにより海面には大きな波しぶきが発生し、バサーッ、バサーッ、と大きな音を立てている。
海竜の鳴き声も、時折聞こえてくる。
「うわっ!でかい!」
「まさか、あいつが例の海竜か?」
デッシュとソールはその海竜を目の当たりにし、その大きさを実感していた。
「あの海竜……。なんか怒ってるような、苦しんでいるような…」
マイムがそう言う。
「あんなに強そうで暴れていたら手の付けようがなさそうね」
ヴェントが海竜を見て、船に乗り込み戦うのは無謀だと悟っていた。
「そうだな」
デッシュが答えた。
「だとしたら、ネプトの神殿に行って原因を調べるだけだ」
ソールがそう言って、先へ進むことを提案する。
「ええ」
「行きましょう」
仲間たちも同意し、雨天の中、ソールたちはネプトの神殿へと向かったのだった。