ファイナルファンタジー3 リブートエディション   作:北村 貴之

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其之14 ネプトの神殿

海で暴れている海竜「ネプト竜」を鎮めるべく、記憶喪失の旅人・デッシュを仲間に加えたソールたち光の戦士は、バイキングのアジトを抜けた先の岬にあるという、ネプトの神殿へと来ていた。

神殿といっても大きさは意外と小さく、どちらかというと祠のような印象を与えていた。

内部は清らかな水路が流れており、その中心部に竜の首を象った石像があった。

まるで壁から竜が首を出したような造りだ。

「ネプト竜の像だ…。片方の目がなくなっている」

ソールが目にしていたのは、竜の像の目の部分にはめ込まれていた、赤い宝石だった。

左の方にはしっかりと赤い宝石がはめ込まれているのだが、右の方にはどういうわけかなく、はめこむための穴がある。

ソールと同じくクリスタルの光に選ばれた白銀色の髪で白いローブを着た少女、マイムが、大きく開けた竜の口の中を覗き込んだ。

そこに何かを見つけた様子だ。

「奥へと小さな穴が続いていますね。小人になれば入れるかも?」

マイムの発言を聞き、同じく光の戦士である少女のティエラとヴェントもその竜の口の中を確認した。

確かに小さな穴があるみたいだ。マイムの言う通り、もしかすると、ミニマムの魔法で小人となれば通れるかもしれない。

ティエラがこう言う。

「ねえマイムちゃん、ミニマムをかけて。この中に何かあるかもしれない」

「ええ。わかったわ」

マイムが皆にミニマムの魔法をかける。

すると、5人の姿が縮んで小人の姿へと変化した。

「よおし、それじゃあ入るとするか」

ソールが先頭に立ち、竜の像の口の中へと入っていった。

 

竜の像の口の中は手掘りの洞窟のようになっていた。

まるで、モグラが土の中を進んだ後のように、一直線にその通路が続いている。

道幅は人が一人分ぐらいしかなく、狭い通路だった。

しかし、天井の高さは3メートル近くあり、横幅も広い方なので、窮屈さはなかった。

「随分と細いなぁ……。大丈夫なのかこれ?」

「心配ないですよ。複雑になっていないだけだいぶマシです」

心配そうなソールに、ヴェントが返答した。

確かに、複雑に道が分かれていては、探索に時間がかかるし、体力も減ってしまう。

そんな手間が省けるだけで、まだ助かったといえるだろう。

しばらく進むと、前方に光が見えた。どうやらあそこに何かあるらしい。

一行はそのまま進んでいった。

 

そこは、大きな部屋となっていた。

部屋の隅には、先ほど入り口にあった竜の像の目にはめこまれていた赤い宝石と同じ、輝きを放つ赤い物質が置かれていた。

シンプルに道なりに進んだ先に、ソールたちが探していた宝石はあった。

だが、そう簡単に取らせてはもらえなさそうだ。

 

そう。その赤い宝石の前に、ネズミが立ちはだかっていた。

それもかなり大きめの体つきをした、赤い眼光を放つどう猛そうなネズミだった。

紫色の薄い毛並みが整えられている。

「え?ネズミ?」

ソールがその大きなネズミを見て唖然とした。

普段の自分の大きさならこのような動物はかなり小さめの可愛らしい存在なのだが、

小人になって縮んでみればその大きさはなかなかのものに見える。

「あいつがあの宝石を奪った犯人さんかしら?」

マイムが推測する。

そのネズミの視線は明らかにこちらを睨んでいた。

そして、威嚇するような鳴き声を上げる。

「グォオオオッ!!」

どうやら話し合いが通じる相手ではなさそうだ。

「この宝石は誰にも渡さない…。お前らなんてこうしてやる!」

このネズミ、どうやら人間の言葉をしゃべることができるようだ。

だがそんなことに感心している場合ではない。

ネズミは宝石を奪いに来たソールたちに敵対心を完全にむき出しにしていた。

鋭い前歯を晒し、かじりつこうとしている。

 

ネズミが戦闘態勢に入ったため、ソールたちも身構える。

「生意気に言葉なんてしゃべりやがって……!戦うぞみんな!」

「はい!」

「わかったわ」

「了解です!」

「行こうか!」

ソールの言葉で全員が一斉に動いた。

「いいか!物理攻撃はあんまり通用せんぞ!」

デッシュが光の戦士たちに再度忠告をした。

小人になっていると、剣や槍といった攻撃はあまり通用しなくなってしまう。

だが、魔法なら難なく通用する。

まず最初に仕掛けたのはマイムだ。

彼女は素早い動きでネズミの背後に回り込むと、手のひらからブリザドで作られた氷の刃をネズミ目がけて飛ばした。

「チュッ!?」

マイムの存在に完全に気づかなかったのか、ネズミは背中にブリザドを受けて悲鳴を上げた。

「よしっ!効いた!」

マイムは続けて魔法を詠唱しようとするが、

「させるか!」

ネズミは素早くマイムの方に振り返ると、マイムめがけて、自身の尻尾を鞭のようにうならせてそれを振るってきた。

「きゃあっ!」

マイムはネズミの尻尾の攻撃を喰らい、吹き飛ばされてしまった。

「マイムちゃん!」

「大丈夫?」

ティエラとヴェントがマイムに駆け寄る。

マイムは少し痛そうにしているものの、特に外傷はない様子だ。

「私は平気よ。まだいける」

マイムが立ち上がった。

ソールは持っていた小瓶をネズミ目がけて投げ飛ばした。

ソールが投げたのは、瓶の中に強力な雷を蓄積した「ゼウスの怒り」だ。

これは雷の魔法と同等の効果があり、相手に向かって投げつけると瓶が割れて雷撃が放たれる。

激しい雷撃を受け、ネズミは悲鳴を上げた。

よく効いているようだ。

「うむ、道具でもいけるな!」

ソールが道具の効果を見て、満足げに言った。

次はヴェントが行動に出る。

「いくわよ!ファイア!」

炎の魔法・ファイアを、ネズミめがけて放つ。

だが、ネズミはその攻撃を素早い身のこなしで回避してしまった。

さらに、その小さな身体を活かしながら壁を伝って天井の方まで移動する。

「くそ、ちょこまかと逃げて…。うっとおしい!」

「落ち着いてください、ヴェント。ここは私が!」

今度はティエラが前に出てきた。

「いきます!はぁあああ!!」

ティエラは全身に魔力を纏わせてそれを一気に解放した。

すると、ティエラの周りに風が巻き起こった。

風の精霊の力を借りて、ティエラが発動したのは「エアロ」と呼ばれる魔法のようだった。

ティエラは手に持った杖を振りかざすと、そこから突風を放った。

強烈な風の刃が、ネズミに向かって放たれる。

風の刃がネズミの尻尾を切断した。

そこからプシャーッ、と血が噴き出て、ネズミは地面に落下した。

ゼウスの怒りの雷撃とエアロの斬撃で、ネズミの体力はかなり消耗したようだ。

だが、まだ動けそうな様子だ。

 

「下がれ!ここは俺が!」

デッシュが魔法を詠唱する。デッシュが詠唱したのは、雷の魔法「サンダラ」だ。

先ほどソールが使用したゼウスの怒りと同じ威力の魔法である。

デッシュの両手から、高圧の電気がほとばしり、それがネズミに向かって放たれる。

ビリリリリ…。とすさまじい音が響く。

「ギィイイッ……!!」

ネズミは、その攻撃に耐え切れず、そのまま倒れてしまった。

ネズミはピクピクと痙攣しながら、そのまま動かなくなった。どうやら絶命したらしい。

これで、宝石は無事に取り戻せた。

 

「ふう……。やっと終わったか」

サンダラを放ち終えたデッシュが額の汗を拭う。

そして、ネズミが守っていた赤い宝石を回収しに、ソールが近づいた。

「これがもう一つの目か…。これだけ綺麗なら、強欲なネズミも奪いたくなるな」

ソールがそう言いながら、落ちている赤い宝石を拾った。

「さあ、戻ってこれをはめに行こう」

ソールたちは来た道を引き返し、入り口の竜の像のもとへと戻った。

 

場所は変わり、竜の像の前。

ソールが赤い宝石を手にしている。

「この中にこの石をはめこんで…と」

ソールはそう言いながら、空いている目に赤い宝石をはめ込んだ。

カチッという低い音を立てて、その宝石はぴったりとはまったのだった。

「これで一安心…かな?」

ソールが皆にそう言うと…。

突然、両目に赤い宝石をはめこまれた竜の像の目が眩しく光り、ソールたちにこう語りかけてきた。

この言葉は、ソールたちの心に直接語りかけているようだった。

「ありがとう、光の戦士たち。我は海竜ネプト。宝石を戻してくれたこと、礼を言う」

竜のしゃべり声は、女性のようだった。

「この宝石は私の心。失われてしまえば竜の心そのものが残り、暴れるしかなかったのだ…。おかげで再びこの地に眠り、水を守ることができる…。しかし水はその光を失ってしまった。何者かが大地震を引き起こし、光を地中深くに閉じ込めたのだ」

ネプトの話によると、大地震の影響はソールたちの住む大地にかなりの影響を及ぼしているようだ。

「光の戦士よ、行く手を阻むものを水の力で打ち砕く、水の牙を授けよう。頼む、光を取り戻してくれ」

ネプトが話を終えると、竜の口の下顎の部分に、勾玉型の宝石が置かれていた。

これが「水の牙」なのだろうか。

ソールたちはその水の牙を回収し、このネプトの神殿を後にしたのだった。

 

 

ネプトの神殿を出て、バイキングのアジトへと帰る道なりでの出来事だった。

突然、デッシュが、

「悪い、少し待っていてくれないか」

と言い、ソールたち4人を待機させて、どこかへと行ってしまった。

それをヴェントは目で追っていたが、どうやらデッシュは深い茂みの中に入っていったようだ。

「ふーん」

興味なさげな声をヴェントが出す。

「なにしに行ったんだろね、デッシュさん」

「さぁ……」

マイムの言葉にティエラが答えた。しかし、そう答えた彼女はなんとなくデッシュの行った先を察していた。

男一人となったソールに、ヴェントが声をかける。

「ごめんねソールくん。悪いんだけど、デッシュさんの様子をちらっと見てきてくれない?」

「え?なぜに僕が…?」

「いいからいいから」

と、半ば強引に頼まれたので、ソールはデッシュの後を追うことにした。

しばらく歩くと、デッシュの姿を発見した。

デッシュは、後ろを向いていた。こっそり後をつけてきたソールには完全に気づいていない。

(あの人…。何をしているんだ?)

ソールは太い木に身を隠してデッシュの様子を見ていた。

ごそごそ、ごそごそ、と音を立てていた。

はっきりとは見えなかったが、デッシュが自分の履いている青色のズボンを何やらいじくっているようだった。

何かに警戒しているのか、デッシュは辺りをキョロキョロと見渡す。

その表情を見て、ソールはピンときた。

「あ、もしや」

その「もしや」だった。デッシュが辺りに誰もいないのを確認すると、どこかリラックスしたような顔をする。

そして数秒後。チョロロロロ…。という、水が流れるような音が聞こえてきた。

ヴェントがなぜ自分を偵察係にしたのかがわかった。デッシュが「やっている」間に魔物などに襲われないようにするために偵察と警備を任せたからだった。

「やっぱりなあ……」

デッシュの行動の意味を理解したソールは、ヘナヘナと地面に座り込んでしまった。

その後、しばらくするとデッシュがやり終えたようだった。

ソールは彼に気づかれないよう、大急ぎで仲間たちの元へと戻っていった。

「ん?なんかいた?」

ガサガサ、と茂みをかき分ける音が微かにした。

デッシュは再度辺りを見回した。しかし、魔物も野生動物も一匹も見当たらない。

人間もだった。ソールたちが来たということは確認できなかった。

「なんだ。気のせいか」

デッシュはそう言って、待たせている光の戦士たちのもとへと歩き出した。

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