ファイナルファンタジー3 リブートエディション   作:北村 貴之

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其之16 カナーンの町 再会する旅人と少女

記憶喪失の旅人のデッシュを仲間に加えている光の戦士たちは、海上で大暴れしていたネプト竜を見事鎮めることができた。

ネプト竜が大暴れしていた理由は、彼女を祀っているとされている神殿の竜の像にはめこまれていた赤い宝石の目が片方なくなっており、

それが原因で本来の竜の心だけが残って暴れ狂ってしまったのだという。

だが、ソールたちが目を盗んだネズミを討伐し、彼から宝石を取り戻して竜の像にはめこんだことにより、ネプト竜は理性を取り戻し、眠りについた。

そして闇の力を打ち砕くとされる勾玉型の青い石・水の牙をもらった。

ネプト竜が暴れていたことで海での活動ができなくなっていたバイキングたちは、光の戦士たちに感謝していた。

海が安全になったことで、他の大陸との交易がまたできるようになったという。

おまけに、バイキングのボスからは所有していた船・エンタープライズをもらったのだった。

エンタープライズをもらったことにより、ソールたちの他の大陸へと行けるようになったのだ。

 

バイキングからもらった船・エンタープライズは、以前、カナーンの町の技師である老人・シドの開発した飛空艇とほぼ同じ造りをしていた。

操舵室があるのはもちろんのこと、休憩のできるスペースも用意されていた。

そこでは仮眠をとることができるし、食料を保存できるスペースも完備されている。

エンタープライズに乗りこむと、ソールたち一行の興奮度合いは最高潮に達した。

「おぉ、これがエンタープライズか」

デッシュが船内を見渡していた。

デッシュは、黒い髪をオールバックにしており、紺色のコートを着ていた。耳には金色のイヤリングをしている。

「これで行き先がさらに広がったなあ」

ソールは嬉しそうに言った。

彼は、短めの茶色い髪と、黒の服装に青色のベストを身につけていた。腰には剣を携えていた。

「ええと、最初の行き先は…」

光の戦士のひとりの少女・マイムが訊ねた。

彼女は、腰まである白いローブに、青色のミニスカートを履いていた。青い瞳をしており、白銀色のセミショートの髪形だ。

彼女の着ているローブは、袖に赤いギザギザがついている。このローブは由緒正しき「白魔導士」のローブだとされている。

「ああ。さっきも言ったとおり、カナーンの町へと連れて行ってくれるんだったな」

カナーンの町には、デッシュに一目惚れしたという女性・サリーナがいる。

デッシュが何も言わずに町を後にしてしまったため、そのショックで泣きながらサリーナは寝込んでしまったという。

そんなサリーナを思い出したソールたちは、せっかくデッシュがいるので、彼の顔をサリーナに見せに行くことにしたのだ。

「今頃元気かしら…。サリーナさん」

そう言ったのはヴェントだ。

ウェーブがかった桃色の髪に、アメジスト色の瞳。着ている服は白いブラウスに黒のミニスカートだった。

「まずはカナーンへと向かいましょう」

光の戦士のひとりのティエラがそう言った。

長いブロンドの髪をポニーテールにまとめ、緑色の瞳の少女だった。

青いブラウスに紺色のミニスカート姿で、フードのついた緑色の長いロングコートを羽織っている。

「舵は僕がきるよ」

ソールがエンタープライズの操縦を名乗り出た。

「じゃあ、オレは荷物を運ぶ係りでもするか」

デッシュが張り切ってそう言うと、エンタープライズの倉庫に、持ってきた大きなリュックサックを置いた。

その中には、大量の食糧が入っていた。

「まあ、こんなに物資が…。ありがとう」

マイムが礼を言うと、デッシュは微笑んで返した。

こうして一行は、エンタープライズに乗って、カナーンの町へと向かうことになった。

 

 

 

ネプト竜が眠ったことで落ち着いた海上は、なんとも優雅だった。太陽の光が降り注ぎ、海鳥たちが気持ち良さげに飛び交っていた。

「ねぇ、ソール。あなたって本当に不思議な人よね」

「え? どうして?」

エンタープライズの甲板の上で、ソールの隣にいた少女・ヴェントが話しかけてきた。

「だって、いつも冷静だし、それに頭も良いし……。何か特別な能力でもあるのかしらって思って」

「いやぁ、特にないと思うけど……」

ソールは頭を掻きながら答えた。

「そういえば、あなたの過去について全然知らないわ。良かったら教えてくれる?」

「僕の過去か…。両親の顔なんてまったく覚えちゃいない。気づけばウルの村の孤児院で育ってたんだ」

ソールの話に、ヴェントが無言で聞いていた。

「孤児院の生活は楽しかった。畑仕事が中心の生活だったが、たまに村の中の商店街で買い出しに行ったりとか、他の子どもたちと剣の稽古をしたりとかしていたな」

「へえ」

「僕と同年代の孤児に、サーシャって女の子がいてね。サーシャとはずっと一緒にいることが多かったかな。口うるさい面はあったが、なんやかんやで面倒見は良くて、僕の姉みたいな存在だった」

「そうなのね」

ヴェントがソールの孤児院にいたときの話を興味深そうに聞いてくれた。

「君は確か…。商人の家に養子として引き取られたんだっけ」

ソールは今度、ヴェントについて聞いてみた。

「ええ。あなたと同じ孤児院にまだ1~2歳くらいのときに引き取られたんですって」

「よければ聞かせてくれないか。商人の娘としてどう暮らしてたか」

それを聞いたヴェントは、話をしてくれた。

「ええっとね…。一般的な商売についての学問はもちろんのこと、接客だったり、帳簿の記入の仕方だったり、さまざまな作法だったりと…。あらゆる商人の知識を叩き込まれたわ。あと、護身のために武術や魔術も、他所から先生がやってきて教えてもらったこともあった」

「ほお」

「礼儀作法も厳しく叩きこまれたわ。お尻を叩かれたことだってあった」

「それは大変だなあ…」

「そりゃあ、大変な日々だったけど……。おかげで私は立派に成長できたと思ってる。家は違ってたけどマイムもティエラもいたから、苦しくはなかったし」

「そうか。君も苦労したんだな」

「うん。でも、今の私があるのは、間違いなく養父母のおかげだと思う」

「良い人たちなんだな」

「ええ。父さんと母さんは、私のことを実の子供のように育ててくれたわ。血のつながりがない、こんな私を」

「そうなのか…」

孤児でありながらも大切に育ててくれたヴェントの両親に感心していたソールであった。

「あ、そうだ。僕からも話があるんだけど……」

「何?」

「マイムとティエラって古くからの友達かな?」

それを聞いたヴェントが、きょとんとした顔になった。しかし、すぐに普段の表情に戻った。

「どういう意味かしら?」

「ええ。あの子たちも同じくあなたのいる孤児院から引き取られたの。たまに3人で集まって勉学を学んだりしていたわ」

ウルの村には以外にも、大きな家を持つ商人が多く存在していた。孤児院の子供は、そのような裕福な家庭に引き取られることもあったとされていた。

「なるほど。それで仲が良いわけだ」

「ええ。それにしても、よく分かったわね」

「まあ、勘だけど……」

そう話をしていて舵をとっているソールだが、きちんとカナーンの町へは向かっていた。

バイキングたちから地図をもらい、進行方向も教えてもらっていた。

そのため、話しながらもソールは前を向いて方向を確認し、エンタープライズを進めていた。

「……ところで、あなたって好きな人とかいたりするの?」

「え? 突然何を言って……」

「いいじゃない。せっかく二人きりになれたんだから、恋の話でもしましょうよ」

「恋か……。あんまり考えたことはないなぁ」

「あら、サーシャちゃんは対象ではなくて?」

それを聞いたソールは黙り込んでしまった。そんな彼を見て、ヴェントはほほ笑んでいた。

数秒後、ソールが口を開く。

「サーシャねえ…。恋したことはなかったな」

「あら。残念」

「ただ、サーシャは大切な家族であることに変わりはないよ」

「そう……。素敵なこと言うのね」

「そ、そうかなぁ」

そんな会話をしているうちに、エンタープライズはカナーンの町の近くへと到着した。

「あら、意外に時間がかからなかったね」

ヴェントが言った。そして、

「お疲れ様。先に準備しているわね」

と言って、彼女はエンタープライズの船中に戻っていった。

「やれやれ……。まあいいか」

ソールはそうつぶやくと、背伸びをした。

 

 

こうして再びカナーンの町へと戻ってきたソールたち。

彼らがまたここに来たのは、サリーナに会いに来たからだ。

デッシュも一緒だ。

「うむ、きれいな川は相変わらずだなあ」

デッシュは町の中に流れている、汚れ一つない清潔な川を眺めていた。

その川には、小魚が泳いでいた。

「それよりも、サリーナさんに会わなきゃね」

マイムが言った。

「そうそう。行こうか」

頭をかきながら、デッシュは光の戦士たちとともに、サリーナのいる家へと向かった。

 

「あんた…。デッシュじゃないか。娘のこと、泣かせないでくれよ」

サリーナの家に入ったソールたちを出迎えたのは、サリーナの母親のジョリーナだった。

当然デッシュとは知り合いで、何も言わずに去っていった彼を少しにらんだような顔で見つめていた。

「ええと、娘さんは…。」

「ああ。部屋にいる」

ジョリーナはデッシュたちを、自分の娘のいる部屋へと案内した。

 

「デッシュ様!」

サリーナの家には、サリーナがいた。

彼女は今、部屋のそうじをしているところであった。

持っている竹箒を部屋の隅に置き、うれしそうにデッシュの元へと駆け寄る。

「おお、君は…」

デッシュは少々驚いていたが、すぐにいつもの調子を取り戻した。

「わたしのこと、見捨てたわけじゃなかったのね?」

それを聞いたデッシュは無言で頷いた。かける言葉がなかったのだろうか。

「無事なお姿を見て、安心しました。わたし、もう泣かない!ずっと、待っています」

デッシュがまた旅に出ることはサリーナは知っていた。

彼のつれている4人の若者が、光の戦士なのを知っているのだろう。

「あ、ああ。じゃあ俺はこれで。風邪ひくなよ…」

デッシュはそう言って、家を出て行った。

「あ、デッシュさん…」

ヴェントが呼び止めようとしたが、彼は振り向かずそのまま立ち去って行ってしまった。

「ふーん。やっぱり照れてるんだねぇ」

マイムがにやにやしながら言った。

「さて、じゃあ僕たちも」

続いて、ソールたちも家を出て行った。

 

「みんな悪かったな。回り道をさせてしまって…。おかげで胸のつかえがとれたよ」

町中のレストランで、料理を待っている間、デッシュはソールたちに感謝していた。

その顔は、どこかすっきりとした顔つきになっていた。

今までの様子とは違い、本当に迷いがとれたような顔だった。

「早いところあなたのやるべきことを済ませて、またここに帰ってあげないとですね」

ティエラがそう言った。

そうこうしていると、料理がやってきたようだ。

美味しそうな匂いを放ち、料理が運ばれてきた。

ソールたちが頼んだのは、ハンバーグステーキ、鶏肉の山賊焼き、ポテトサラダ、出し巻き卵だった。

「それでは、頂きますか」

デッシュの言葉を合図に、5人は食事を始めた。

ハンバーグステーキは肉汁をたっぷりとはなっていた。

 

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