ファイナルファンタジー3 リブートエディション 作:北村 貴之
記憶をなくした旅人のデッシュは、カナーンの町にいるサリーナに無事再会することができた。
デッシュには「やらなくてはならないこと」があった。
それを終わらせれば、彼女の側にいてあげられるのだろう。
デッシュを連れてきた光の戦士たちは、そう思っていた。
しばらく会うことはないかもしれないが、こうしてサリーナが元気でいたことが、デッシュにとってはうれしい事だった。
「さて……と。じゃあ行くか!」
デッシュはそう言うと、右手で拳を作って自分の胸に軽く当てた。
そして仲間たちと共に、次の大地へと、船・エンタープライズに乗って目指すのだった。
ソールたちが次に向かう場所は、飛空艇の情報を持つと言われているアーガス城だった。
バイキングからもらった地図によると、カナーンから東の方にあるとされている。
東の方にまっすぐに進むだけなので、航海するときには苦労はしなかった。
しかし…。
「きゃっ!海の魔物たちが…!」
そう叫び声を上げていたのはマイムだった。
ソールは舵の手を止めて、急いで魔物たちがいるところへと急行する。
そこには既にヴェントとティエラとデッシュもいた。
「悪いなソール、手を止めてしまって。どうやらこいつら襲ってくるらしい」
デッシュは、海の上を指差した。
そこには、獰猛そうな大きなシーサーペントや、槍を持った人魚たちがにらみを利かせている。
ソールたちに敵対心を抱いているようで、こちらに向かってくる様子はないものの、油断はできない。
「こいつらが海の魔物たちね……」
ティエラは冷静に分析をしていた。
ヴェントは弓を構えながら、いつでも戦える態勢を整えている。
「おいおい、こいつはちょっと厄介だぞ?」
「海にいるという事は水棲生物。となれば…」
ティエラは魔法を詠唱し始めた。彼女が放った魔法は…。
「サンダー!」
ティエラの放った電撃によって、海の魔物たちは叫び声を上げて悶絶していた。
その光景を見たデッシュは、
「さすが!」
と歓声を上げる。
「すげえ!ティエラさんって、こんなに強いんだ!」
「まあ、頭を働かせればこんな感じです」
ティエラがウインクしてそう言った。
船の周りにはもう魔物はいない。
それを確認したソールは舵へと戻り、再びアーガス城へと船を進めたのだった。
その後も海上の魔物には何度も遭遇していた。
獰猛で鋭利な歯を持つ魚が複数現れたり、海中からは巨大なサメが出てきたりと、苦戦することもあった。
だが、その都度みんなで窮地を脱することができていた。
ソールとデッシュは剣で魔物たちを倒し、マイムとヴェントとティエラは武器も駆使しつつ魔法で撃退していった。
しかし、海の魔物たちもそう簡単にはやられなかった。
口から強烈な鉄砲水を吐いて攻撃したり、頑丈な顎で噛みついてきたりした。時には海に引きずり込もうとしてきたこともあった。
そんな時でも、ソールたちの連携によりピンチを乗り越えることができていたのだ。
「海の魔物たち…。案外陸の奴らよりも手ごわいんだな」
戦闘を終えてへなへなの状態のソールが言った。
「彼らにとってこの海は庭みたいなものですからね」
そう言ったティエラの身体は水で濡れていた。敵からの攻撃を受けて、それで髪や衣服が濡れてしまっていたのだ。
薄青色のブラウスが濡れ、大きな胸とそれを守るブラジャーが透けて見えてしまっている。
「まだこういう敵にも慣れていないから、闘うのも一苦労ね」
そう言ったマイムのローブの袖とミニスカートの端が、魔物の魚に噛み千切られていた。
慣れなかったとはいえ、衣服の欠損を起こしてしまっていた。
「はぁ……。次の町に行ったら修繕してもらおう」
敗れたスカートの端を見て、マイムはため息をついた。
ソールはそんな彼女に気をとられず、目的地へと船を進める。
「ん?あれかな」
ソールの目に、大きな建物が映った。焦げ茶色のレンガで作られたような、城だった。
あの城こそが、飛空艇の情報を握るアーガス王が治めている城なのだろうか。
ソールは地図でそれを確認した。
「間違いないな」
安堵したソールは、そのままエンタープライズを城に近づけた。
場所は変わり、アーガス城。ここに住む王から飛空艇の情報を得るためにソールたちは訪れた。
しかし、普通ならば城の入り口には兵士がいるはずなのだが、なぜか兵士の姿は見当たらなかった。
だが、兵士がいないからそのまま入るのも失礼なので、まずは光の戦士たちは呼びかけることにした。
「すみません!誰かいませんか!」
ソールは大きな声で呼びかける。
…しかし、返事はない。誰かがやってくる気配もない。
「あれ?」
ソールは困惑した。
アーガス城はまだ誰かが住んでいる形跡はあったため、少なくとも廃墟の城ではないのは確かだった。
城壁は年月が経ってボロボロになっているが、それでもしっかりとしている。
「誰も出てこないわね」
「どうなってんだよ……?」
デッシュとマイムは不安そうな顔を浮かべている。
「とりあえず、入ってみるしかないですね」
「そうだな」
ティエラの言葉に、ソールは同意した。
光の戦士とデッシュは、城内に人がいないか確認しつつ、奥の方へと進んでいくことにした。
中に入るとすぐにエントランスホールが広がっていた。壁はレンガ造りになっており、床は大理石のような石でできている。
その中央には、大きな階段があった。
「ここは、城の入口なのか?」
デッシュは辺りをきょろきょろしていた。
「だとしたら、どうしてここに兵がいなかったのかしら?」
「確かに…。中を見ても綺麗にされているから、まだ使われているのは確かだけど」
ヴェントとマイムが不思議に思っていると、ソールは、
「とにかく、王様に会わないことには話が進まない。このまま探してみよう」
と言って、先に進むことを決めた。
その後、ソールたちは慎重に行動しながら、王や他の人を探し回った。
だが、誰一人として会うことができなかった。
寝室、キッチン、宝物庫など、様々な場所を当たってみたが、人の気配は一切なかった。
物音などもしなかった。
「おかしいな。誰もいないじゃないか」
デッシュが少し困った顔をした。
「…どうなってるの?」
ヴェントも同様の表情をしていた。
「本当に一人もいないなんて変よね」
ティエラは考え込んでいた。
「まさか……」
「どうしたんだ、ソール?」
ソールが何かに気付いたようで、デッシュが尋ねた。
「もしかすると……」
そう言うと、ソールは眉間にしわを寄せて、あることを考えていた。
「この城にいる人たちは…。神隠しにあったんだと思う」
「えっ?」
マイムが少し驚いた顔をした。
「あの大地震があったんだ。もしかすると、ここも何かしらの影響が及んだのかもしれない」
「言われてみれば…」
ヴェントがソールの考えに同意していた。
数日前、大陸全体で大きな地震が発生していた。
ソールたちの住む村の近くの谷で土砂災害が発生したのは序の口、封印されている魔神が復活したり、魔物の活動が活発化したりと、あらゆるよからぬことが起こっていた。
さらに、ネプトの海竜の話によれば、水の光が失われていると言われていたのだ。これらのことから考えても、大地や海に異変が生じていたのだろう。
そして、今いるアーガス城は、その被害に遭ったのかもしれない。
「あくまで推察だ。まだ生きていると信じたい」
ソールがそう話すと、他の4人は黙って聞いていた。
「さてと…。ここに長居しても王がいないと意味がないな…。次はどこへ行こうか」
デッシュが背伸びをした。他の仲間も考えている。
「この城のある大陸をもう少しなぞってみない?」
そうマイムが提案した。
「確か…。グルガン族の谷へ行くのがまだだっけ。そこに行ってみるか?もしかすると見つかるかもしれない」
ソールが仲間たちに聞いてみる。
「そうね」
「行きましょう」
こうして、光の戦士たちは次の目的地である、グルガン族が住むとされる谷へ向かうことに決めたのだった。