ファイナルファンタジー3 リブートエディション 作:北村 貴之
グルガン族の谷にて、記憶喪失の旅人・デッシュは、北部にそびえ立つ機械仕掛けの塔「オーエンの塔」へと向かうよう言われた。
デッシュのすべきことが、そこにはあるという。
それを聞いたデッシュは気を決して、そのオーエンの塔へと向かう事へとなった。
しかし、そのままの状態で行っても、まだ準備を整えていないので、いきなり行ってもその塔にいるであろう魔物たちにこてんぱんにされてしまうだろう。
準備も兼ねて、デッシュが同行している光の戦士、ソール・マイム・ヴェント・ティエラの4人は、大陸の地図に記されていた、最西端の村へと行くこととなった。
そして現在はというと。
「くそっ、海上での戦闘は慣れないなあ…」
剣を持ったソールは、船・エンタープライズの上で、海に潜む魔物たちと闘っていた。
他の4人も、魔物たちとの戦闘を行っている。
彼らが闘っているのは、両手に槍を持った数体の人魚と、鋭い歯を持つ頑丈そうな顎を持つ巨大な魚だった。
人魚は魔法を使い、戦士たちを翻弄していく。魚の方は大きな口を開けて噛みつき攻撃を行う。
この2種類の魔物を同時に相手にするのは、なかなか厳しいものだった。
だが、彼らは果敢に立ち向かう。
「俺達だって……。負けられないんだ!」
ソールの雄叫びと共に、彼は持っている剣を振り回し、まず最初に彼の近くにいた巨大魚に向かってとびかかった。
ソールの剣が、巨大魚の体に直撃する。
大きな音を立てて、巨体は海中に落ちていった。
「よし……!次だ!」
そう言って、ソールは次の標的である人魚に向けて走り出した。
その時だった。
「きゃあああっ!?」
ティエラの悲鳴が聞こえる。ソールはその悲鳴の方を振り返った。
人魚が魔法を詠唱して、雷を彼女に落としていたのだ。
彼女はそれに直撃し、船の上に倒れ込んでしまう。
「うぅっ……!」
苦しげにうめき声を上げている。どうやら、今の一撃で体力を大きく削られたようだ。
「ティエラ!!」
ソールは彼女の方へ駆け寄った。ティエラはダメージを喰らってしばらく立ち上がれなさそうにしていた。
傷もかなり深い。
「大丈夫か?」
「ええ…。私は…。それよりも」
ティエラは戦闘を行っているマイムたちを指差した。
長い髪を結っていたポニーテールは先ほどのダメージを喰らってほどけ、ブロンド色のロングヘアが海風に揺れる。
マイムは槍を手に持って、必死になって戦っていた。
だが、相手は水中から次々と現れて、彼女を襲ってくる。
彼女も苦戦していた。
そんな様子を見て、ソールは顔をしかめる。
(このままじゃ、まずいぞ……)
デッシュは魔法を詠唱し、サンダラで人魚目がけて攻撃を行っていた。
デッシュの攻撃は見事命中したが、人魚たちはビクともしない。
人魚たちの群れの中にいるリーダー格らしき個体の人魚だけは少しダメージを受けたが、他の人魚達は平然としている。
そして、リーダー格の人魚が魔法を唱える。すると、無数の水の刃が飛んできてデッシュを襲う。
「くっ……」
デッシュはそれを避けようとしたが、避けきれずに体中に切り傷を負ってしまう。
血を流しながら、甲板の上で倒れ込む。
「デッシュ……!」
マイムの声が聞こえてくる。だが、それに応える余裕がないくらい、彼は消耗しきっていた。
ソールは舌打ちをする。
(なんとかしないと……!)
そう思いつつ、彼は再び剣を持って人魚に飛びかかっていった。
「おりゃああぁっ!!」
ソールの渾身の一振りが、人魚を斬り裂いた。人魚に大きなダメージを与えたようだ。
人魚は悲鳴を上げ、海へと沈んでいった。
ソールはそれを確認すると、勝利に酔いしれることなく、残りの人魚たちを対処していく。
無事だったヴェントも、斧を持って人魚と闘う。
ヴェントの斧の一振りが、人魚の首を捉える。首を切り落とされた人魚は、そのまま海中へと落ちていく。
そして、人魚たちを次々と倒していって、残るはリーダー格のみとなった。
リーダー格の人魚は他の人魚とは比べ物にならないくらいの強さを持っていた。
他の人魚たちが束になっても敵わない程だ。
「ヴェント。ここは息を揃えてやるぞ」
「わかったわ」
ヴェントが頷いた。ソールは目をつむり、呼吸を整える。
そして、目を見開いた。
「いくぜ!」
掛け声と同時に、ソールとヴェントは同時に飛び上がった。
2人の戦士は空中で回転しながら、武器を振り回す。
「くらえっ!」
その2人の息の合った攻撃が、リーダー格の人魚へと放たれた。
ソールの剣の攻撃と、ヴェントの斧の攻撃が、その人魚目がけて放たれた。
人魚は持っていた槍で攻撃を防いだが、その攻撃があまりにも強力だったのか、槍がポキン、と折れてしまった。
そして、槍を失った人魚は、ソールとヴェントの攻撃をもろに受けてしまう。
「ぐひゃああああ!」
人魚は大きな悲鳴を上げて海へと沈んでいった。
「よし!」
「やった!」
ソールとヴェントはガッツポーズを取る。
「これで……。終わったみたいね……」
マイムが安堵の表情を浮かべる。
「一時はどうなるかと思ったけど、何とかなって良かったよ」
「ああ……。でも、まだ気を抜いてはいけないな」
ソールは海の方をにらみつけた。
海の中にはまだ魔物がいるかもしれない。航海はつねに警戒しつつ行わなければならなかった。
それよりも、ソールは先ほど大ダメージを喰らってしまったティエラが心配だった。
「ティエラ!」
「大丈夫。先ほど回復魔法はかけたので、しばらく安静にしていれば問題はないと思います」
ソールの呼びかけに応えたのは、ティエラの治療を行ったマイムだった。
彼女は回復魔法を使って、傷ついた仲間達を回復させていたのだ。
「ありがとう、マイム。じゃあ、僕はまた舵をとって村へと向かうよ」
「お願いします」
マイムが頭を下げる。
「じゃあ、最西端の村へと出発!」
ソールの言葉と共に、エンタープライズ号は再び動き始めた。
デッシュは甲板の上で寝転んでいた。
「はあ……」
ため息をつきながら、ティエラはエンタープライズ内の船室のベッドで寝ころんでいた。
緑色のコートは脱がされ、今は薄青色のブラウスと青色のミニスカート、足に履いている白のライン入りのニーハイソックスだけの状態になっている。
そんな彼女を、ヴェントとマイムが看病していた。
「ごめんなさい。私の不注意のせいで……」
「いえ……。気にしないでください。それよりも、あなたも早く体を休めてください」
マイムが優しい声色で言う。
「はい……」
マイムに言われた通り、ティエラはゆっくりと眠りについた。
仰向けになったティエラは、安心しているような寝顔をしていた。
「ウフフ…。可愛らしい寝顔をしてるじゃない」
ヴェントがティエラの寝顔を見て蠱惑的にほほ笑む。
「ちょっと?だからってセクハラはしないでよ」
マイムが少し顔をしかめる。
「わかってる。するならこちらがいるもんね」
ヴェントが、端が破れたマイムの青いミニスカートをぺろりとめくる。
このミニスカートは、マイムが次の町や村に行ったときに修繕してもらおうとしていたものだった。
まだ着替えておらず、ちょっとだけだったが敵の攻撃を受けてしまって破れてしまったのだ。
だが、中身が見えるまでの状態には達していなかったので、履き続けていた。
「なっ…!」
ヴェントにミニスカートを捲られたマイムが顔を赤らめた。
履いていた鮮やかな青色と白の縞柄のショーツが姿を見せる。
「もう!何やってんの!」
マイムはしかめた顔でヴェントの手から自分のスカートを離した。
「あはは!冗談よ」
「も、もう」
マイムが頬を膨らませる。
ソールが舵を切り始めて数時間後。
ようやく、大陸に船を近づけることができた。
「そろそろ着くぞ。みんな準備してくれ」
ソールがマイムたちに呼びかけた。
「オッケー。今支度してるから」
マイムはソールに返事をした。
それから、それぞれ準備を整えた後、徒歩で村へと向かうこととなった。
目的地の村へは、船を降りて、そこから歩きでいかないと行くことができない。
幸い、平らな土地が続いているので、山道などは確認できていなかった。
じっくりと傷を癒したティエラは、緑色のコートを羽織り、元気そうな姿を見せていた。
「おお。もう大丈夫なのか?」
ソールがティエラに声をかける。
「へーき。じゃ、行きましょう」
ティエラはいつも通りの調子に戻っていた。
「よし。行こう!」
こうして、ソールたちは再び旅を始めた。
「それにしても、まさかあんなに強い人魚が襲ってくるなんて思わなかったわね」
「そうだな。あれは驚いた」
「ええ。でも、なんとか太刀打ちができて、よかったわ」
ソールとヴェントが会話をしている中、ティエラは考え事をしていた。
(人魚たちに襲われた時、私は何もできなかった。ただ見ているだけ……。私がもっと強ければ、あの魔物たちを楽に倒せたのに)
海の上で魔物に負けてしまったことを悔やんでいるようだった。
そんなとき…。
「どうした?なんか気難しい顔をして。悩みなら相談しようか?」
いきなり、ソールが声をかけてきた。ティエラがビクッとなり、小さく悲鳴を上げる。
「きゃっ!」
可愛らしい声を上げ、慌てて後ろを振り向く。
「お、驚かさないでよ……」
ティエラが頬を赤く染めながら言う。
「ごめんごめん。何か悩んでるみたいだったからさ」
「別になんでもないわよ」
「そうか?それならいいんだけど」
心配で声をかけてくれたのはわかったものの、いきなり声をかけられたことにティエラは驚いてしまった。
だが、まだまだ未熟で強くない自分でも、ソールは仲間なのだと認識してくれているのだろう。
育った環境こそは違えど、共に戦ってきた仲だ。
その気持ちに感謝しながら、ティエラは再び前を向いて歩いた。
そして、ソール達は無事に最西端の村へと到着した。
「ここが村か」
「ええ」
「綺麗なところね」
5人は村を見渡した。
木造の家や蔵などがそびえたつ、のどかな村だった。
辺りを見回してみると、農作業を行っている人や、外で思いっきり遊んでいる子供たちなどが確認できる。
ソールたちは村の中に入り、
宿屋を探すことにした。
「すみません。5人で泊まれる宿ってありますかね?」
ソールは、見つけたやせ形の男に話を聞いてみた。
「ああ。この村の真ん中にある『美羅野亭』というところがオススメだよ。値段は安いけど、食事が美味しいんだ」
「なるほど。ありがとうございます」
「こんなとこに客人が来るとはねえ。俺たちは、古代文明を築いてきた古代人の末裔なんだ。掟に従って自然と共生してるんだ」
男の話によると、この村は古代人の末裔たちが住んでいる村のようだ。
村の家屋などを見てみるとかなりきれいに舗装されているが、これは昔の建築技術と現代の建築技術を混ぜ合わせて建てたのだろうか。
また、畑などで栽培している作物はどれも見たことがないものばかりである。
「古代の人たちが残した遺産ってことですか……」
ティエラは興味深そうに村を眺めていた。
「以前はオーエンの塔の守護が一族の大事な役割だったんだ」
男の口からオーエンの塔という言葉が出た。それを聞いたデッシュは目を見開いたが、言葉は返さなかった。
ソールたちは、この古代人たちが住む村で、重要な情報がないか、聞き込みを行うことにした…。
【古代人の末裔たちのお話】
「光の氾濫…。それは古代人たちが引き起こした、恐ろしい災いだ。古代人たちはクリスタルを用いて光の力を自由に操ったのじゃ。だがある時、光は暴走しだした。世界を破壊しだしたのだ。人間には大きすぎる力だった…」
末裔のひとりの老人が語った話だった。「光の氾濫」の話だ。
さらに話を聞くことができた。
「闇の世界から4人の戦士が現れ、光の暴走を食い止めたという。だが古代人たちは滅び去った。わずかに生き残った者だけが、この地に移り住んだというわけだ」
それをソールは意味深な顔つきで、黙って聞いていた。
一方では。
「この大陸は空中に浮いているのよ。信じられる?古代人の文明が築き上げたんだって。未だに動いてるみたいよ」
マイムと同じくらいの年齢の女の子が、自分たちの今いる大陸について教えてくれた。
空中に浮いているとはいえ、実感がわくはずはなかった。
だが、デッシュやオーエンの塔の話を聞いている身としては、その話は本当のような気がしていた。
「オーエンの塔が動力源なの」
マイムが思っていたことが的中した。オーエンの塔はどうやら、かなり重要な場所のようだ…。
「光と闇は心を持つ。そして何かが起きるとき、その心は4人のものを選び出し、自らの力を託すのだという」
ヴェントは古代人の男に話を聞いていた。茶色の服を着た、地味そうな男の人だ。
農作業で麦を育てていたが、話を聞くことができた。
「光の氾濫から危機を救った闇の戦士もそうだった。そして、今お前たちが光に選ばれたというわけ」
出してくれた麦茶をすすり、ヴェントは話を聞き続けた。
「これからも平和な暮らしを続けていきたいものだ」
「わかったわ。ありがとう」
話が終わったようだ。ヴェントは礼を言うと、その場を離れた。
「わしらの掟とは…。大いなる意思に身をゆだねて生きる。ということじゃ。機械には頼ってはならない」
ティエラは老人に話を聞いていた。
機械に頼らず、昔ながらの生活を続けているのだという。
ティエラが住むウルの村ではここ最近機械を使った産業により作られた商品を売買しているが、ここではそのような文化はないらしい。
この村には、他の町や村が取り入れている最新の技術には頼らず、ただ先人にひたすら教えられてきたことだけを忠実に守りながら、生活を送っているようだった。
「すごい話をきけたな」
ソールたちは宿屋「美羅野亭」に泊まり、その中の談話室で聞き込みしたことを共有していた。
この「美羅野亭」は村人の言う通り値段は安かったが、中は割と広く、そして清潔感があった。
「それにしても、オーエンの塔があんな重要な役割をしているなんてね」
マイムがお茶を口にした。
「ああ。ここには俺を待っている気がする。ここへきてよかったかもしれん」
デッシュはうつむいて言った。
ソールは椅子に座り、頭を後ろに垂れて天井を眺めていた。
明かりの灯ったシャンデリアがいくつも飾られている。
「みんな……。明日からオーエンの塔に向かうぞ。準備は念入りにしてくれ」
突然、ソールが上を向きながら言った。
「ええ。道具も買い込みしないとね」
マイムは買う物をメモ帳に書いていた。
「あれ?そういえば、ヴェントとティエラは?」
「新しい武器や防具を見て回ってるけど」
ソールはヴェントとティエラがいないことに気が付いた。
マイムの話によれば、武具の買い出しに行っているそうだ。
マイムはというと、敵に食らった攻撃で破けてしまったミニスカートを直してもらっていた。
先ほど話を聞いた女の子に直してもらったのだという。
歳が近そうながらも、裁縫の腕前は凄かったらしい。
白いローブに青のミニスカートはマイムが着こめば可愛らしく映えていた。
ソールはそんなマイムを、気づかれないようにちらちらと見ていた。
「お待たせー」
ティエラの声が聞こえてきた。どうやら買い込みは終わったようだ。
「お、戻って来たな」
デッシュが声のした方を向いた。
そこには、いろいろ武具を買ってきたヴェントとティエラがいた。
「いい品ばかりだったわ。あ、そうそう。あたしたちにお似合いのものもあったから、迷っちゃった」
ヴェントが微笑んでいた。
「ほう、どんなのだ?」
デッシュは興味深々で聞いた。
「ふふ……、それは後でのお楽しみよ。さて、明日はオーエンの塔ね!」
ティエラが意気揚々と話していた。
5人はそれぞれ、この古代人の住む村でしっかりと体調や準備を整え、デッシュの待つオーエンの塔へと向かうことへとした。
さて、その日の夕食はというと…。
出されたのは、地鶏の塩焼き、手羽先の唐揚げ、カワハギの塩焼き、村の野菜のサラダ、豚肉の香草炒め、村のスパイスで作られたカレー、果実を絞り作られたジュースだった。
5人は宿内の食堂で、出された食事に舌鼓を打つ。
村人の言っていたいることは本当のようだった。どれも美味しい料理ばかりだ。
「この村の料理は最高だな!このカレーとかいうのは絶品だぜ」
デッシュが大喜びしながら食べている。
マイムも気に入ったのか、いつもより食べるスピードが速かった。
「確かに、今まで食べたことのない味ね」
マイムは手羽先を手慣れた手つきで食べていた。骨でつながれた部分をぽきっと折り、肉のついた部分をしゃぶるように食べる。
「本当、おいしいわね」
ティエラも満足げに食べていた。
「これ、全部この村で作ったのかな。すごいわ」
「ああ。古代人たちの遺産だな」
ソールはむしゃむしゃと食べ物を砕きながらしゃべった。
こうして、光の戦士とデッシュは、古代人の作る食事を存分に味わったのだった……。