ファイナルファンタジー3 リブートエディション 作:北村 貴之
ウルの村の孤児院で育った少年、ソールは、村の北部に存在するクリスタルを調査しに行くという、3人の少女の護衛のために雇われた。
そして今――彼らはその道中だった。
「……ところで、君たちはなぜクリスタルの調査を?」
先頭を歩くソールが言った。
「この前、大地震があったのは憶えてる?」
ソールの質問に答えたのは、出発する前日、サーシャと共に入った喫茶店にいた桃色の髪の少女、ヴェントだ。
彼女は、ソールと同じくウルの村の出身なのだが、孤児院にそんな子はいた覚えがないのはソールは知っていた。
「ああ。ありゃすごかったな…」
そう言うと、ソールはあの日のことを思い出したのか顔をしかめた。
それは数日前のことだ。
突如としてウルの村に激震が走ったのだ。やや鈍感なたソールでも驚くほどの揺れで、大地が裂けるかと思ったほどだ。
幸いなことに建物が崩れたり、村人たちが育てている農作物などに被害はなかったものの、
たまに村の行商人たちが輸出しに行っているカナーン村への道が、地震による土砂災害によって道が塞がれてしまった。
ウルの村では何とかしてその土砂の塊をどかそうとしているのだが、なかなか上手くいっていないらしい。
土砂をどかすための機械の開発も未だに行われておらず、設計図の作成も行われていない。
そのため、今はカナーン村から輸入している食糧や生活用品などが不足しており、それを解決するためにもクリスタル調査の任務が彼女たちに与えられたのだとソールは聞いていた。
「あれってさ……絶対クリスタルが原因だと思うんだよね」
「え?どうしてですか?」
ソールのその疑問に反応したのは、昨日喫茶店にヴェントと一緒にいた、ブロンドのポニーテールの少女、ティエラだ。
「村の北のクリスタルの祠がどうやら怪しくってなあ…」
ソールは頭を掻く。
「……つまり、私たちの任務というのは、あなたの言うそのクリスタルの祠の調査ということね」
「まぁ、そういうことになるかな。といっても俺は何もできないんだけどな……」
そう言ってソールは肩を落とす。
「ふぅん……。まあいいわ。とりあえず、クリスタルの祠に行きましょうよ。そこで何か分かるかもしれないわ」
4人は歩き出す。
ソールたちは、村の北部にあるとされる、クリスタルが祀られているとされる場所へとたどりついた。しかし…。
「あれ?聞いた話によれば祠があるって聞いたんだが…」
「おそらく…地震で埋もれてしまった可能性があるわ」
そう言ったのは、以前ソールが村のはずれの森にある倉庫の扉を開けようとしたときに出会った少女、マイムだった。
白いワンピースに青い上着を羽織った少女だ。
4人は、祠があったとされる場所を捜索する。辺りは広い草原だ。しばらく探すと、ティエラが地面が盛り上がっている場所を見つけた。
「ここが怪しいわね……」
マイムの言葉に、彼女の近くにいたヴェントは驚いたように目を丸くしていた。
「よしっ!掘り起こしてみようぜ!」
ソールがそう言うと、他の3人も同意するようにうなずき、4人で土を掘り起こした。
数分後――
「おぉー!!」
そこに現れたのは、大きな洞穴だった。
しゃがまなくても入れる大きさだ。
「おそらく…。ここにクリスタルが埋もれているかと思うけど」
ティエラが言った。
「入ってみよう」
ソールのその言葉に、一同はその現れた洞穴へと足を運んだ。
入ったアリの巣のように入り込んでいた。奥まで行ってみたが、クリスタルがある気配は全くない。
「どこだ…?」
ソールはあたりをキョロキョロして探してみるも、クリスタルらしきものは見当たらない。
薄暗く、じめじめした洞穴に存在していた、大きく広い部屋で4人は捜索をしていた。
「うーん…。もしかすると…」
マイムがそう言い、洞窟内の地面を踏むと…。
「グラッ…」
足元が何やら嫌な音をたてて揺れ始めた。
そして次の瞬間、4人の足元に、大きくポッカリと開いた大穴がが現れた。
穴の大きさはかなりのもので、4人を丸ごと飲み込めるほどの大きさだ。
「なッ!こんなとこに!?」
ソールはそう叫ぶも空しかったようで…。
直後――
「うわあああああ!?」
ソールたちはそのいきなり現れた大穴に飲み込まれ、そして落ちて行っていった…。
ドシン!!
大穴に飲み込まれ、落下していったソールたちは、地面に突っ伏した。
「いててて……」
尻もちをつく形で着地したため、少しだけ痛む腰をさすりながら立ち上がる。
かなり奥深くまで落ちて行ってしまったようだ。
「落とし穴に落ちちゃった…」
マイムがお尻を痛そうにしている。
「まいったわね…」
ヴェントが天を仰ぐ。
「大丈夫?」
ティエラが心配そうにこちらを見つめている。
「ああ……。なんとか……」
全員の無事を確認し、彼女はホッと胸を撫で下ろす。
(……ここは?)
周りを見てみると、そこは今までとはまた違う場所のようだった。
どこか違う場所に飛ばされたというわけでもないようだ。壁や地面を見ても、先ほどの土壌と変わらない。
「とりあえず…。出口を探しましょう」
ヴェントがそう言う。
「そうだな。それにしても……ここって一体何なんだ?クリスタルなんてどこにもないぞ」
ソールは辺りをくまなく見渡すも、クリスタルは影も形も見当たらない。
「確かに……この部屋には何もなさそうですね」
ティエラも辺りを見るが、やはり何もない。
4人の目の前にいきなり…。
ソールたちと同じ人数のゴブリンが襲撃してきた。ここは魔物たちが潜んでいたようだ…。
「なっ!?」
ソールたちが武器を構える。
ソールは剣、マイムは弓、ヴェントは斧、ティエラは槍を装備していた。
「ぎーっ!」
ゴブリンたちは持っていた剣でソールたちに襲い掛かった。
「くそ!」
ソールはゴブリンの攻撃をいなす。
「えい!」
「とりゃ!」
「やあっ!」
ティエラは素早い動きでゴブリンの急所を突いていき、マイムは矢を放って的確に命中させていく。
「はぁっ!」
ソールはもともと孤児院で力仕事だけでなく、暇さえあれば剣の練習もしていたため、戦闘には慣れている方だった。
次々と襲ってくるゴブリンたちを難なく撃退していく。
「ふう……。終わったわね」
最後の1匹を倒し、ソールたちは一息つく。
「な、何なんだあいつら……」
「さあ……。それより、早くここから出ましょう」
そう言いながらマイムは弓をしまう。
「…参ったな。とんでもない所に来てしまったようだ」
ソールはそう言いながら、マイムたちをつれて洞窟内を捜索することにした。
ソールが深い洞窟を捜索してから数分後のことだった。
洞窟内に怪しげに光る場所を発見したため、ソールたちはそこに向かうことにした。
それがクリスタルなのかもしれないからだ。
そこにあったのは、クリスタルではなく、洞窟内に湧き出ていた、綺麗に透き通っている、泉だった。
「泉だ…。不思議な色だな」
その泉の色は少し独特な色をしていた。泉がエメラルドグリーンの色をしており、光が反射してキラキラと輝いていた。
「これがクリスタルなのかしら?」
「分からないけど……。とにかく調べてみよう」
そう言って4人はその謎の水を調べることにしてみた。
しかし……。
「特に変わった様子はないわね」
「うん……」
「ちょっと飲んでみようぜ」
ソールのその言葉に、ヴェントが少し苦い顔をする。
「ちょ、本気…?」
「ちょうど喉も乾いてたし、いいんじゃない」
ティエラはソールに賛成していた。
そうして、4人はこの神秘的な色の泉の水で喉を潤すことにした。
「ん……。美味しい……」
「ほんとだな……。これは何の味だろう……」
「なんか体に染みる感じ……」
「不思議……。心が落ち着くような……」
「……。あれ?何か力が湧いてくるような……」
マイムがそう言った。どうやらこの泉の水には、飲んだ者の体力を回復させる作用がある模様だ。
「おお!本当か!じゃあ、これを持っていこう」
ソールはそう言うと、持っていた水筒で、その水を汲んでいく。
「でも、こんな水勝手に汲んでしまってもいいのかしら……?」
ヴェントは疑問を口にした。
「まあいいだろ。持って帰る分には問題ないし」
ソールがケロッとした顔で水を汲んでいる。そして、適量になったところで蓋をしめて鞄の中にしまう。
「じゃあ、行くか」
そうして、4人は再び出口を求めて歩き出した。
もうずいぶん歩いているはずだが、一向に出口が見つからない。
それどころか、だんだんと道が狭くなってきている。
するとここで、何やら厳格な雰囲気を漂わせている扉が、目の前に飛び込んできた。
「うおっ!?」
「えっ……?」
「何これ……?」
「ここだけ、他のところと違う……」
まるで、ここに入れと言っているかのような、そんなオーラを醸し出している。
「入るしかない……よな」
「そう……ですね」
「行きましょう」
4人の意見が一致したため、早速その重たい扉を開ける。
その扉の先に会ったのは、緑色の輝きを放つ、クリスタルだった。
これこそが、ウルの村の北に本来祠の中に祀られているとされる、「風のクリスタル」だ。
神秘的な輝きが眩しい。
「ついに見つけたぞ…」
ため息をつきながら、ソールは嬉しそうにそのクリスタルを見つめる。
すると…。
何やら怪しげな煙が立ち込める。
4人は素早くその煙から離れた。
「な、なんだこいつは!?」
黒く不気味な煙の中から、何かが姿を現す。
それは、ゴブリンとはまた違った姿をしている魔物だった。
その姿は、通常のサイズよりもはるかに大きい、リクガメのような姿をした魔物だった。
頭部からは禍々しい魔力を感じる。
「こいつ……。普通のゴブリンより強そうだぞ」
「これも地震の影響?いや、考えるよりも、こいつを何とかした方がよさそうね」
ティエラがそう言いながら槍を構える。
「ああ。みんな、油断せずにいこう!」
ソールの言葉を皮切りに、4人は戦闘態勢に入る。
「ぎーっ!」
大きなカメ型の魔獣は、甲羅から生えている鋭い棘を振り回しながらこちらに向かってくる。
「くそ!」
「危ない!」
マイムは矢を放ち、ヴェントは斧でその攻撃を防ぐ。
「はぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
ティエラは魔法を詠唱し、手のひらから火炎を放つ。火炎はカメの首元に直撃したようだ。
「やったか……?」
しかし、相手はゴブリンのようにはいかなかった。
「なにっ!?」
首元の炎をものともせず、さらに速度を上げて突進してくる。
「ぐあっ!!!」
「きゃあっ!」
「ぐうっ……」
「つぅ……。なんて強さだ」
ソールは剣を杖代わりにして立ち上がる。
「このままだと、まずいわね……。なんとかして動きを止めないと」
「なら俺がやる。あいつの動きを止める」
マイムが弓を引き絞って狙いを定める。
「ぎぃぃいい!!!」
その刹那、巨大な亀の口から紫色の霧が放出される。
「なんだこれは……」
「毒ガス……?」
「しまった……。吸い込んでしまう……」
その隙に、カメの魔獣は一気に距離を詰めてくる。
「速い……!」
その巨体からは想像もできない速さだ。
「くらえぇ!!」
マイムの矢が、カメの急所に直撃する。しかし……。
「効いて……いない!?」
「ぎゃあぁあ!!」
カメの魔獣の勢いは全く衰えていない。そのまま突っ込んでくる。
「ちっ……。仕方がない……。ヴェント!援護してくれ!」
「分かったわ!」
風が吹き荒れ、ソールのスピードが上昇する。
「うおぉおおおお!!!」
ソールの渾身の一撃が、魔獣の腹を切り裂いた。
「よし……。いける……!はあぁあ!!」
続いてマイムの2本の矢が同時に放たれ、相手の脳天を貫いた。
カメはその矢の攻撃に怯み、口からよだれを垂らしてふらついていた。
そのすきに、ソールは剣を地面に突き刺し、その剣を踏み台にして高くジャンプした。
そして、
「うぉりあああああ!」
と叫び声を上げ、カメの顔面に向かって強烈な飛び蹴りを食らわせたのだった。ソールのキックは見事に決まり、その衝撃で魔獣は仰向けに倒れ込んだ。
カメは大きく叫び声を上げ、煙となって消えていった。
魔物は討伐できたようだ。
「はあ…。はぁ…。みんな、無事か…」
ソールが周りの仲間たちを心配する。
「ええ…。こんなに強い魔物が…」
「ああ……。一体何が起きているんだ……」
「とりあえず、クリスタルは?」
ティエラのその言葉に、一同は急いでそのクリスタルへと駆け寄ったのだった。
幸い、クリスタルには傷一つもなく、光も淀んでいるなどの様子は見られなかった。
すると、クリスタルが輝きだし…。
「お前たちは選ばれた…」
その声はクリスタルから直接聞こえてくるようだった。
「おい、クリスタルが喋ったぜ…!」
ソールもさすがに驚きの顔を見せる。
クリスタルは話を続ける。
「私の中に残った最後の光を…。最後の希望を受け取ってくれ。このままでは、この光も消えてしまう…。すべてのバランスが崩れるのだ」
「…ちょっと何を言っているの」
ヴェントが少し戸惑っている。
「光を受け取ればクリスタルから大いなる力を受け取ることができる。お前たちは希望を持つ者として生まれたのだ。この世界を、消してはならない…」
そう言うと、クリスタルの声は聞こえなくなった。
それと同時に、クリスタルから光が溢れ出し、その眩しさによって4人の視界は真っ白になった。
その眩しい光の先に見えたものは……。
「ここは……」
そこは、クリスタルが生み出したと思われる、光の空間だ。
ソール、マイム、ヴェント、ティエラを、世界の危機を救う勇者として、選んだようだ。
4人は顔を見合わせる。
「俺たちが……?」
「嘘……でしょ」
「そんなことってあるのか……」
「……」
4人とも戸惑いを隠しきれない様子だ。
しかし、心の中に、クリスタルと、そして世界の願いが伝わってきたような感覚がした。
「俺にできるだろうか……」
「いや、やるしかないわね」
4人はそれぞれ決意を固めているようだ。
4人は、光の中でその意思を、その心を感じ取り、旅立つ決意をした。
闇を払い、再びこの世界に光を取り戻すために。
それぞれの想いを胸に秘めながら、4人は新たな冒険の旅へと向かうのであった。
クリスタルの光を希望に変えて。
クリスタルの作った眩い空間は消え去り、4人はクリスタルの祭壇へと戻ってきたようだ。
ソールたちはこうして、クリスタルから光を受け取ったのだった。
「さあ、その魔方陣から外に出なさい。旅立つのだ、光の戦士よ!」
クリスタルは、静かに光を放っている。
「光の戦士たちよ、光と闇を分かつ者たちよ、この世界に再び希望を…」
その言葉を受け、ソールたちは、祭壇の外へと向かった。
そして、魔方陣の中へ足を踏み入れ、地上へと帰還したのだった。