ファイナルファンタジー3 リブートエディション 作:北村 貴之
ここは古代人の末裔が暮らしているのどかな村、古代人の村だ。
古くからの技術を守りながら、人々はここで生活をしている。
そんな村を訪れ、宿屋「美羅野亭」に一泊している光の戦士と記憶喪失の旅人、デッシュ。
彼らは宿屋のおいしい食事を堪能し、村で栽培された薬草のお風呂に入り、旅の疲れを癒していた。
彼らはこの浮遊大陸の北部にあるとされる機械仕掛けの高い塔「オーエンの塔」へと向かうため、しっかりとここで体を休めていた。
光の戦士である少年のソール、少女のマイム、ヴェント、ティエラの4人は、生まれ育ったこの大陸が浮いていることをここへきて初めて知った。
自分たちが何気なく生活してきた場所が空の上に浮いているなど、思いもしなかった。
その秘密を知った彼らは、以前訪れたグルガン族から「オーエンの塔へと向かうように」と言われていた。そして、グルガン族の男性はこう言っていたのだ。
「オーエンの塔にデッシュがやるべき使命があるだろう……」
と――。
その言葉を聞いたとき、デッシュは意味深な顔をし、オーエンの塔へと向かおうとしていた。
塔へ向かう前日の夜。皆が寝静まったときの出来事だった。
ソールは宿屋のベッドの中ですやすやと寝息を立てて眠っていた。
ここ「美羅野亭」のベッドは、柔らかくてとても寝心地が良い。ふかふかした布団に包まれているうちにソールはぐっすりと眠りについていた。
しかし、そんな真夜中、部屋の扉が静かに開いた。何者かがソールの部屋に侵入してきたようだ。
寝ていたソールは目を覚まし、誰が入ってきたのかを確認する。
(誰だ…?こんな寝静まってるときに…)
そう思いながら、ソールはすぐ近くにあったろうそくに火をつける。すると、そこには見覚えのある人物が立っていた。それは……ヴェントだった。
ヴェントはゆっくりと部屋に入ってきて、眠っていたソールの隣に立った。
「おい、何やっているんだ?」
「ん~……。ちょっとね」
ヴェントは何かを隠したような素振りを見せた。
ソールはそんな彼女の姿を見て、いつもの服装とは違うことを確認した。
普段着ている、白いブラウスに黒のミニスカートの出で立ちではなかったのは、すぐに確認できた。
そんなヴェントが着ていた服はというと…。
「あれ、服が違うけど」
ソールはいち早くそのヴェントの格好に気が付いた。
今のヴェントが着ていたのは、オリーブ色のポンチョに、紺色のホットパンツ、白のロングブーツと、どことなく狩人のような出で立ちをしていた。
ホットパンツを履いているため、シミひとつないきれいな太ももが光っている。
恐らくではあるが、日の出ているうちにティエラと一緒に買っていた服なのだろうか。
「どうかしら?」
ヴェントが新しい服装の感想をソールに聞く。
「似合ってると思うよ」
ソールはとりあえず、彼女の機嫌を損ねないように、率直に感想を述べた。
「フフフ…。ありがとう」
ヴェントが笑ってくれた。
「ところでなんだが……」
「どうしたの?」
「僕の部屋に来て何をしようとしていたんだい?」
「あー……。それはねぇ……」
少しだけ考えるそぶりを見せ、それから答えてくれた。
「実はね…」
少し照れくさそうな顔をするヴェント。ソールはこの後起こることが、あらかじめわかっていた。
こんなことは一度ではない。マイムもティエラも、新しい服を身に纏って自分の部屋に入ってきたことがあった。
二つとも夢だったが、とにかく自分が危ない目にあいそうになったのは確かだった。
マイムの方は正夢になってしまった。まさかと思ったが、やはり予想通りの展開がきた。
「私と……。エッチなことしない?」
「……えぇ!?」
やっぱりそう来たかと思いながらも、予想通りの展開に思わず声を出してしまう。
「いや、待て待て待て待て!ここへ来てどうしてそうなる?」
ソールは顔を真っ赤にして慌てていた。ヴェントの方は…。少し頬を赤くしてソールを見つめていた。
「いいじゃない、今日くらいは」
「『今日くらい』って…」
ソールの目線がうっかりヴェントの下半身を映してしまった。
きれいな生の太ももと美脚と白いロングブーツが、性的な妄想をかりたててしまう。
ソールも男なので仕方がないのだろうか。
「はい。じゃあまずは何から?」
「本当にするつもりか…」
「ええ」
満面の笑みを浮かべるヴェントを見て、ソールは断れる気がしなかった。
下手に答えれば、彼女の機嫌を損ねかねない。
意を決したような顔をしたソールは、ヴェントの履いているホットパンツに手をかけ、それを一気にずるり、と下ろす。
「きゃっ」
ヴェントの小さな悲鳴が聞こえる。
ヴェントのホットパンツがずりおろされたことで、彼女のお召しの下着が露わになった。
紫色の小さなリボンのついた、桃色のショーツだ。
「あんまり見ちゃダメだよ……」
恥ずかしそうにしているヴェントは、顔を手で覆っている。
ソールは目の前にあるヴェントの下着にドキドキしている。
ソールの喉に唾が流れる。
緊張からなのか、それとも興奮からなのかわからないが、ゴクリと飲み込んだ。
「じゃあ…。遠慮なく」
ソールはその桃色のショーツも下ろそうとした、その時。
耳元で大きな声が聞こえてきた。
自分の名前を呼ばれているようだった。
「ソール!ソール!!」
(まさか…。これもか。ま、予想通りだったけど)
ソールは安心したような顔をして、手をヴェントから遠ざける。そして…。
「ソール!ソールくん!起きて!」
ベッドの上でぐっすりと眠っているソールを、ヴェントがたたき起こしている。
それに気づいたのか、ソールは目を覚ました。
「ん……。なんだい?」
「もう朝ごはんの時間だから早く降りてきてください」
「ああ、わかったよ」
ベッドの横に置いてあった時計を見ると、確かに朝食を食べる時間になっていた。
そして…。そこにいるヴェントに目を向ける。
そこには、夢で着ていた服装をしているヴェントがそこにはいた。
オリーブ色のポンチョに、紺色のホットパンツ、白のロングブーツだった。
それを見たソールは一気に眠気が覚めて…。
「おわっ!?」
ソールは慌ててベッドの上で後ずさりした。
「どうしたのよ…。いきなり私の姿なんて見て驚いちゃって」
「そ、その恰好は…」
ソールが服を指差す。
「ああ。これね。ここの村で買ったの。似合う?」
ヴェントが身体をくるっと一回転する。
「に、似合ってるぜ…。最高だ」
「ありがと」
ヴェントがウインクし、部屋を出て行った。
「やれやれ……。またあの夢か」
そう呟きながら、ソールは部屋を出る。
宿屋内の食堂に行くと、すでにマイムとヴェントとティエラが待っていた。
「おはよう。マイムちゃん、ティエラちゃん」
「おはようソールくん。上ですごい音してたけど、なんかあったの?」
マイムがキョトンとした顔でソールに話しかける。
白いローブを着ていた。
「あ、いや…。なんでもない」
ソールは慌てて誤魔化した。
「ふーん……」
マイムはまだ不思議そうな顔をしていた。
(まいっか……。夢の内容までは覚えてないだろうし、気にする必要ないか……)
そんなことを考えていると、ティエラの姿にも目が行った。
ティエラの姿はというと…。白いノースリーブに、桃色のズボンと、どこか中華風の服装をしていた。
上半身のノースリーブは前垂れになっている。
かなりぴっちりとしたものだったので、ティエラのボディラインがくっきりとよくわかるものだった。
ティエラの豊満な胸が、主張している。
「て、ティエラちゃん…。その姿は?」
ソールがうつむきながら彼女に聞いてみた。
「これですか?この村で買った服なの」
ティエラが答えてくれた。
(ティエラ……、以前バイキングのアジトで見た夢の服まで着ている……。なぜだ?どうして夢に新しい服装の彼女たちが出てきているんだ……。そしてどうしてあんなけしからん展開が出てくるんだ?…何考えてんだ俺!今は食事中だしやめとこう)
「そ、そうか……。いいと思うぞ」
「ありがとう」
ティエラが嬉しそうな顔をした。どこか、彼女のたわわな胸が、ぷるん、と上下に動いたような気がした。
「さあ、今日はオーエンの塔だな」
デッシュが真面目な顔をして、皆の顔を見回した。
彼の待つ運命を確かめるべく、あの高そうな塔へと向かうのだ。
この古代人の住む村へ来たのは、準備を整えるためだ。
ソールたちはここで、新しい装備を新調したり、冒険に欠かせない必需品を買いに、ここへやって来た。
この村で自分たちの知らないことを聞くことができたので、一石二鳥だった。
「よし、準備ができたら早速村を出発だな」
ソールはそう言って、今一度、自分たちが忘れ物をしていないかどうかを確かめつつ、しっかりと確認することにした。
「じゃあ行くとするか」
ソールがそう言うと、皆が一斉にうなずいて返事をした。
こうして、ソールたち一行は、オーエンの塔へと向かったのだった。
ソールたちが、古代人たちが住む村を出発してから数時間後……。
オーエンの塔へと船・エンタープライズは進んでいる。
船の舵はデッシュがとっている。
基本的に船の舵はソールがとっているのだが、今回はデッシュがとりたいと言ってきたため、彼に任せることにしたのだ。
船を動かす技術が一見なさそうな彼だったが、意外にもその腕前は確かだった。
操舵の腕が確かなのはもちろんのこと、彼は帆の扱いもうまかった。
風向きに合わせて、上手く操っている。
そして、デッシュが運転する船は、ついに目的地であるオーエンの塔の近くまで到達した。
「あれがオーエンの塔か……。近くで見るとかなりの高さがあるなあ」
舵を手にしたデッシュの目の前には、黒い壁の高い塔が聳え立っていた。
「さて、そろそろ着くな。みんなに知らせないと」
デッシュが後ろを振り返って言った。
後ろには、ソールたち光の戦士がいる、船の控室がある。
そこでは仮眠や食事ができるスペースがある。
控室にいるソールたちに知らせるべく、デッシュは船を大陸へと近づけていった。
控室の扉をノックする音が聞こえる。
どうやら船はオーエンの塔の付近についたようだ。
幸い、モンスターの出現はなく、航海はスムーズにいけたようだ。
「おお、着いたみたいだな」
ソールは扉のノックで察したようだ。
「行きましょうか」
ヴェントがそう言って、マイムとティエラを連れて、部屋から出る。
「ああ」
そして、ソールは最後に部屋を出た。
「ほお、これがオーエンの塔ねえ」
ソールは目の前の塔の高さに目を丸くしていた。
「ここにデッシュさんの真相が…」
マイムが少し不安そうにしている。
「ここで立ち止まっててもしょうがない。早速塔の中へと入ろうか」
デッシュが先頭に立ち、オーエンの塔の内部へと入ることとなった。
オーエンの塔の中へと入った光の戦士とデッシュ。
その中は、歯車がガタガタガタ、とかみ合う音が響いていた。
「なんだか不気味なところね……」
ヴェントが周りを見ながら怯えていた。
「そうね……」
マイムがそれに同意する。
「ここは…。なつかしい感じがする…」
その塔の中へ入ったデッシュが塔の中の臭いを鼻で嗅いだ途端、脳裏に記憶が戻ってきたような感覚がした。
彼はキョロキョロと辺りを見回す。そうしていると、奥にあった階段を発見した。
「おうい、階段だあ」
「よし、行こう」
ソールはそう言って、デッシュの後をついていった。
階段を上った先も、1階と同じような造りの空間が広がっていた。
しかし、そこには大きな機械が置いてあった。
鎖が吊るされて引き上げられているようなものもあり、ここまで機械が多いと、どこか不気味さを感じてしまう。
少し暗いため、尚更その不気味さが引き立てられていた。
どこかほんのりと、オイルのような臭いもする。
「これは……。初めて見たなあ」
ソールが興味深そうに眺めている。
「機械がよくわからん君にはカルチャーショックものかもねえ」
デッシュがそう返答した。
それから、ソールたちが塔の中を歩いていると、どこからともなく、おぞましい声が聞こえてきた。
「ようこそオーエンの塔へ。ここが貴様らの墓場となるのだ…」
その声に一同は反応した。
「な、何!?この声」
ヴェントが不気味がった。
「なによこの演出…。そんなんであたしたちが怖気づくとでも思って…?」
マイムはそう強がってはいたが、腕を見てみると、恐怖で少し震えていた。
「なんだ、今の声は…。んん…!?」
デッシュも当然その声に反応していた。
「なんだかここは、見覚えがあるぞ!」
「おっ、思い出せそうかい?」
ソールはデッシュの記憶の手がかりが掴めそうなことに期待をしていた。
「うーん……、もう少しで出そうなんだが……。さあ急ごう」
頭をかきながら、デッシュは先に進んでいく。
「おい、待ってくれよ」
ソールたちも後に続いていった。
しばらく登りながら進むと、またあのおぞましい声が聞こえてきた。
「永久に、さまよい続けるがいい…」
上の方から聞こえてきたような気がしたソールは、天井を見上げた。
しかし、そこには何もいなかった。
オイルで黒くよごれたような天井が、そこにはあるだけだった。
周囲を見ても、これまた黒ずんだ壁と床、そしてかみ合う歯車があるだけだ。
「またあの不気味な声か…。どこから聞こえているんだ…?」
ソールはそう言った。
「あれ?次の階へ進むための階段がありませんね…。どうしたらいいのかしら」
ティエラは、自分たちの今いるこの階に、次の階へと進む階段がないのを不思議に思った。
「たしか、通路を開くためのスイッチがあったはずだ!」
デッシュのその言葉には、記憶が戻っていっているようにも思えた。
「そうだ!たぶん、あれだ」
彼はそう言って、通路の右側の壁にあるボタンを押した。
すると、壁が開いて、新しい道が現れた。
「これで次に進めるな」
ソールが嬉しそうに言った。
「さあ、行きましょう!」
マイムがそう言った。
ソールたちがはしゃいでいるのを、デッシュはただじっと見つめていた。
「ふっ……。今の人間たちはこんなにも活発なんだな」
デッシュはソールたちのことを微笑ましく思っていた。
すると彼は何かを思い出したかのように、意味深な表情をした。
「そうか…。俺はもしかすると、古代人…?」
彼はそうつぶやいて、自分の手を見た。
「まあいいか。今はそんなことより、塔を登ることを考えないとな」
そう言って、デッシュは階段の方へと向かっていく。
「あっ、ちょっと待てよ」
彼は慌てて、先へと進んでいく光の戦士たちを追いかけていった。
不気味な内部の塔を進んでいく、光の戦士たちとデッシュ。
最上階には、何が待ち受けているのか?