ファイナルファンタジー3 リブートエディション   作:北村 貴之

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其之21 オーエンの塔 メデューサ戦

浮遊大陸にそびえ立つ高い塔、「オーエンの塔」を上る、光の戦士ソール、マイム、ヴェント、ティエラ。そして、記憶喪失の旅人のデッシュ。

あちらこちらに配置されている歯車、機械装置があふれる塔の中を進んでいく。

内部は暗く、オイルのような臭いがただよう不気味な構造だったが、それでもソールたちは臆することなく塔を上へ、上へと昇って行った。

山道であれば、デッシュと最初に出会ったバハムートの住む山を登っていったことはあったが、建物である塔を上るのは彼らは初めてだ。

そのため、足に疲労を感じ始めた頃合いで休憩を入れつつ、階段を上がっていく。

「うーん……。この一番上に何かがあるのかしら?」

ティエラが、首をかしげながらつぶやく。

「わからない。でも、そこに何かしらあるのは確かだと思う」

そう答えたのは、マイムだった。

「ああ。最上階に行けばきっとすべてわかる。みんなすまない。最後まで付き合ってくれ」

デッシュが光の戦士たちに頭を下げた。

記憶を失っている彼は、この塔に入ってから以降、少しずつではあったが記憶が徐々に戻りつつあった。

自分が古代人かもしれないこと。そして、このオーエンの塔に何かしらの関与があること…。

最上階にすべての答えがある。

それだけははっきりとしていた。

「さあ、みんな大丈夫か?」

デッシュが光の戦士たちに声をかける。

「いつでもいけるわ」

紫色の髪の少女、ヴェントが返答した。オリーブ色のポンチョと紺色のホットパンツと、どこか狩人の姿を髣髴をさせる。

「大丈夫よ」

白銀色のショートセミロングの少女、マイムが答えた。腰まである白いローブを着ており、頭にはローブのフードを被っていた。

「行きましょう」

ブロンド色のポニーテールの少女のティエラが言った。前垂れのある白いハイネックのノースリーブとピンク色のズボンを着ている。

どこか中華風の姿だ。

「こっちはいつでもいいぞ」

茶髪の少年、黒い上着に青色のベストを着たソールが言った。

光の戦士たちはデッシュについていく気だった。

そんな彼らを見たデッシュは、少しだけ微笑んだ後、歩き出した。

 

一行は螺旋階段を上り続けていく。

しばらくすると、大きな扉があった。

その扉を開けると、そこには機械だらけの部屋があり、さらに奥に進むとまた別の部屋に続く通路があった。

「ここもすごいな……」

ソールは金属製の橋を渡っている最中、改めて塔の内部の歯車や機械に目をやった。

こんなものが浮遊大陸群にあったなんて……。

彼が知る限り、これほどの設備を備えた建物は、彼の故郷では見たことがなかった。

ソールたちの住むウルの村でも少しずつではあるが機械の技術は受け入れつつあったが、ここまで機械だらけだとさすがに驚いてしまう。

「こっちに何かあるぞ…」

先頭を歩いていたデッシュが呟く。

彼の目の前に映っていたのは…。

 

真ん中にマグマがたまっている、大きな鍋のような装置だった。

大部屋の真ん中に、その装置が壁に設置されている。

ソールたちは長い時間、この塔を昇ってきた。

この塔の最上階と思われるこの部屋に、この異質なものが置いてあったのだ。

ここがオーエンの塔の心臓部なのだろうか。

しかし、そこには「先客」がいたようだ。

 

 

マグマだまりの大きな鍋の前に、ひとりの少女が立っていた。

エメラルド色の長いロングヘアをした、灰色のセーターと紺色のプリーツスカート、足に白いハイソックスの少女が、何かをやろうとしていたようだ。

こんな場所には似つかわしくない少女だった。

彼女は、まるで何かをやろうとするかのように、じっとしていた。

デッシュはその少女を見て、

「そこで何をしているんだ!」

と声をかけた。

すると、少女が後ろを向いたまま返事をした。

「ザンデ様の命令により、このメデューサがこの塔を破壊し、この大陸を闇の星へと還すのだ」

そしてソールたちの方を振り向いた。

目は赤色で、端正な顔たちの美少女だった。耳にはピアスを開けている。

胸はかなり大きく、セーターを着ていてもその大きさがよくわかるほどだった。

「ジャマはさせない…。死ねっ!」

メデューサというその美少女がそう叫ぶと、右手に藍色の刀身の刀が現れた。彼女の武器のようだ。

「くるぞ、みんな!」

ソールたちが武器を出して構える。

メデューサは刀を構えている。丈の短いスカートが揺れる。デッシュが剣を抜く。

マイムが杖を構える。

ヴェントが弓を引き絞っている。

ティエラが槍を握る。

 

そして、戦いが始まった。

「はぁーッ!!」

まず動いたのは、マイムだった。

彼女が持っている杖から、緑色の風の刃が放たれる。

しかし、メデューサは軽々とそれをすべて避けた。

刀を持ったまま、メデューサはマイムの放ったエアロを回避した。

豊満な乳はぷるんと揺れ、シミ一つない太ももがつややかに光る。

攻撃を回避したことによりスカートがひらりと捲れ、彼女のショーツが見える。

ティエラは槍でメデューサを攻撃した。

槍の攻撃を読んでいたのか、刀でそれを弾く。

さらに反撃として、メデューサは刀を振るう。

「くぅ……!」

なんとか回避するティエラ。

「私を忘れてもらっては困るわ」

今度はヴェントが矢を放った。

矢を刀ではじく。その隙にマイムが次の魔法を放つ。ブリザドで氷の風を発生してメデューサにダメージを与える。

ソールとデッシュはそれぞれ剣を持ち、連携を取りながら戦った。

5対1というかなり不利そうな状況だったが、メデューサは余裕そうだ。

 

ソールたちとメデューサの戦いは続く。

マイムが放つ魔法の攻撃を、メデューサはすべて避ける。

「なかなかやるじゃない」

「そっちこそ」

ふたりは互いに褒め合った。

「でも、これで終わりよ」

「えっ…」

マイムが唖然とした。

メデューサはエメラルド色の髪からレーザービームのような光線を発射させた。

「きゃああああっ」

直撃したマイムは、そのまま床に倒れた。気絶してしまったらしい。

「マイム!しっかりしろ、おい!」

デッシュが駆け寄る。

「次はお前たちだ」

メデューサはソールたちに視線を向け、緑色の長い髪をなびかせている。

スカートもそれに応じるかのようにめくれて中が見えている。

プロポーションが抜群なメデューサだが、それに反して攻撃性能は高い。

ソールとデッシュは同時に斬りかかる。

しかし、ソールたちの斬撃も簡単に避けられてしまう。

メデューサは刀で迎撃する。

二人の剣の攻撃を器用にさばいていく。

剣士に見えない姿だが、刀を手足のように扱っていた。

(くそっ、なんて奴だ…!?)

メデューサの猛攻にソールとデッシュは苦戦する。

 

一方…。

レーザービームを喰らい気絶したマイムを、ティエラが治療する。

ケアルをかけて彼女の傷を癒す。

「お願い…。治って…!」

祈りながらケアルで傷を治していく。やがて、マイムの意識が戻る。

「あっ、大丈夫!?」

「ありがとう、ティエラ……」

「よかった……」

マイムが起き上がり、ソールたちの援護をする。

「私たちも負けていられないわね……」

「ああ……」

マイムは杖を、そしてティエラは槍を構えた。

 

「どうするデッシュ!?こいつ、攻撃が通じないぞ!」

ソールは剣を持った状態でデッシュに相談した。

「どこかで隙ができるはず!そこを狙おう」

「わかった!」

二人は再び剣を持ってメデューサに攻撃を仕掛けた。

「はぁーッ!!」

「せぇいッ!!」

デッシュが剣を振った後、ソールがメデューサを攻撃する。

「甘いな」

しかし、またもやメデューサは刀で器用にソールの攻撃を防ぐ。

その隙に…。

「とおっ!」

デッシュの剣による攻撃が、メデューサに入ったようだ。

ジュパ、と斬撃の音が鳴り、メデューサのスカートを裂いた。

ダメージの入ったメデューサのプリーツスカートはパタン、と地面に落ちた。

それにより、メデューサの白いショーツに包まれた大きなお尻が姿を見せた。

「ほう?少しはできるようだな」

スカートを失ったメデューサだが、恥ずかしがる様子は一切見せず、デッシュたちを称賛しているようだった。

下半身の白いショーツとハイソックスが、性的意欲を刺激させるようだが、ソールたちはそんなことには気をとられなかった。

「くっ、まだだ!」

「はああっ!」

メデューサは刀を構え、ソールとデッシュに突撃してきた。

「ぐっ!」

「うっ!」

メデューサの髪から衝撃波が放たれる。

ソールとデッシュがダメージを受ける。

「強い…!」

ソールが剣を杖代わりにして立ち上がる。

「まだまだいくぞ」

「くっ……!」

ソールがよろめき、膝をつく。

「死ねっ!!」

メデューサは刀を上から振り下ろした。

 

「させないッ!!」

マイムが杖を構え、ソールの前に立った。

体力の戻ったマイムは魔力を杖に込めて、メデューサの攻撃を受け止めた。

刀と杖がぶつかり合う。

「うぅーッ!!」

マイムが歯を食いしばり、必死に耐えていた。

「ふん……!」

メデューサはマイムを押しつぶそうとする。しかし、マイムも負けてはいない。

「今です!!」

そうマイムが、ティエラとヴェントに掛け声をかけた。

後方にいたティエラとヴェントは、ふたりで魔法を詠唱して大きな魔力の塊を作っている最中だった。

それが意味ありげに大きく膨らんでいた。

「デッシュさん!この塊を剣で刺して!」

「え?なぜ…」

剣を持ったデッシュが、ティエラの叫びに困惑している。

「いいから早く!」

「わ、わかった!」

デッシュは剣を魔法でできた球体に向けた。

「なんだこれは……?」

ソールが質問を投げかける。

「私たちの魔法を合わせた合体技よ」

「なるほど……」

マイムが気合でメデューサを抑えている間に、デッシュは言われるがままに、自分の剣をティエラとヴェントの作った魔力の塊に差し込んだ。

すると、その塊はデッシュの剣の刀身に吸い込まれるように、消えた。

剣はバチバチと、青と紫の火花を散らし、玉虫色に輝いていた。

デッシュが叫ぶ。

「これでとどめだ!消えろ!」

デッシュが剣を振り下ろす。

メデューサはマイムを弾き飛ばし、デッシュの攻撃をかわそうとした。

しかし、速さはデッシュの方が上のようだった。

攻撃を避けるのが遅かったのか、メデューサはもろにデッシュの魔力のこもった剣の一撃を喰らってしまった。

 

ジュパアアアアアアン、とすさまじい音が最上階に響き渡る。

メデューサにこの攻撃はかなり聞いているようだ。

「く……っ!」

メデューサはデッシュの攻撃を喰らい、後ろに下がった。

そして、そのまま床に倒れてしまった。

「やったか……!?」

デッシュが構えたままメデューサの様子をうかがっている。

倒れたまま動かないメデューサ。

「くっ…!ここで終わったと思うな…!」

そう言って、メデューサは消滅した。

 

それと同時に、メデューサの前にあったマグマのたまった鍋が、荒ぶりを見せていた。

中のマグマは波立ち、今にもこぼれそうだ。

ボン、ボン、と爆発する音も聞こえる。

「こりゃ…。まずそうだな」

ソールはその様子を見て、冷や汗をかいていた。

そんな大きなマグマの鍋の前へ、デッシュが歩いてきた。

この付近は大変危険だ。

「ダメよ!近寄っちゃ危ないわ!炎が吹き荒れて今にも爆発しそうよ!」

マイムがデッシュを制止しようとした。

「やっと…。記憶が戻ったようだ」

デッシュが静かに語り出す。

「俺はこの塔の監視人…。古代人の生き残りさ」

デッシュは自分の正体を明かした。

「デッシュ……。あなたが……!」

マイムは驚きを隠せないでいた。

「もしもこの塔に異変が起きたとき、目覚めるように長い間眠りについていたんだ。眠りすぎて少しぼけてしまってたようだな」

デッシュは自分の事を話す。そして、暴発する釜を見て、こうつぶやいた。

「随分ひどいが…。まだなんとかなるかもしれん」

釜の様子を見る。しかし、そんなデッシュの様子はかなり冷静のようだ。

「このままでは浮遊大陸は、太陽から離れてしまいどうなるかわからない…。俺が中に入って暴走を食い止めるから、お前たちは先へ進め」

ソールたちの方をちらりと見る。その瞳は、どこか自分のことを何やらたくそうとしているようだ。

「ここでお別れだな…。随分迷惑をかけたが、お前たちとの旅は最高だったよ」

デッシュはソールたちにお礼を言った。

「デッシュ、やめろ、死んでしまうぞ!」

デッシュの決意に、ソールはどこか納得がいかないようだった。

「気にするな!これが俺の使命だからな」

デッシュがそう返答した。

「お前たちはドワーフの住む島へと向かえ!そこに火の力があるはずだ!」

次のクリスタル、火のクリスタルはドワーフの島にあるそうだ。

グルガン族から聞いた情報だ。

「そんじゃあな。あばよっ!」

いつもの明るい口調で別れの言葉を告げ、デッシュは深い深い、マグマの釜へと降りて行った。

「あっ…!!」

それを見たヴェントが両手で口を押えた。

「デッシュ……!」

マイムが悲痛そうな声をあげた。

ティエラも驚いている。

「なっ!?」

不思議な光が、光の戦士たちを包み込む。

最上階はもはや危険であった。

ところどころに炎が発生し、爆発はさらにひどくなっていた。

ここに長居するのは、自殺するのも同然だった。

そんな場所へと離れさせるかのように、謎の光は、いきなり発生したのだった。

 

 

「あっ、ここは!?」

ソールたちはいつの間にかエンタープライズ船の船上にいた。

先ほどの光は、転送魔法の一種なのだろうか。

最上階の危険なマグマと爆発から身を守るために、安全な地上に戻らせたのだ。

「デッシューッ!!」

マイムが大声で叫んだ。

マイムは涙を流していた。

「まさか…。デッシュが助けてくれたの…?」

ヴェントが唖然としている。

先ほどの転送魔法はどうやら彼の魔法によるもののようだ。

「私たちはデッシュに生かされたのね」

ティエラがうつむき気味に言った。涙こそ流してはいなかったが、目頭を熱くしてるようだ。

「さあ、ドワーフの島へと向かいましょう」

彼女のその言葉を受け、一同は頷いた。

そして、ソールは船の舵を手にして、次の大地、ドワーフの島へと船を進めることにした。

ソールは無言で舵を切っていた。

しかし、そんな彼は、デッシュが生きていることを祈っていた。

(無事でいてくれ…。デッシュ…)

ソールは一瞬、黙とうした。

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