ファイナルファンタジー3 リブートエディション 作:北村 貴之
オーエンの塔に登り、同行していた記憶喪失の旅人、デッシュは古代人であったことが判明する。
そして、光の戦士であるソールたちの生まれ育った「浮遊大陸」を支えるオーエンの塔の監視人でもあったのだ。
そんなデッシュは、最上階にてこの塔を破壊しようとしていたメデューサを撃破した。
しかし塔の核部分といえる、マグマのたまった巨大な釜のような装置が異常をきたしていたため、その中に入り込んだデッシュは装置を修理しようと試み、その装置の中へと落ちて行ってしまった。
彼がどうなったのか、いまだ不明のままだ。
最上階は爆発や炎上が起こっており、このままいるとソールたちも命の危険が迫るため、一刻も早く脱出せねばならないのだが──。
そんなソールたちを謎の光が包み込み、彼らが乗っている船、エンタープライズの上に移動させたのだった。
突然の出来事に混乱する一同だったが、やがて落ち着きを取り戻したところで、次の目的地である、火のクリスタルのある「ドワーフの島」へと舵を切ったのだった。
舵を切るソール。
海上は魔物の出る危険性はあるのだが、比較的落ち着いており、波の流れも悪くはなかった。
空は青く澄み切っている。
デッシュとの突然の別れがあったため、全員がまだ気持ちの整理がついていないようではあったが、それでも今は前に進まなくてはならない時だと理解しているようで、誰も弱音を吐かずにいた。
ソールは複雑そうな表情で無言で舵を切る。
船の控室にいる少女たち…。マイム、ヴェント、ティエラの様子は気になるが、今は船を進めることに集中することにした。
彼は死んだのは確定ではないのだが、それでもあの状況から無事ではいられないだろうと察してもいたからだ。
エンタープライズ号は、順調に海原を突き進む。
しばらく船を進めていると、島が見えてきた。
大きな山がそびえている、面積は少し大きめの島だった。
「あれかな。ドワーフの島ってのは」
ソールはその島を見て、呟いた。
船は、島の港に向かって進んでいく。
港に船を停泊させる準備をしていくソール。
船の操作もだいぶ手慣れてきた。
エンタープライズは、ゆっくりと港に入っていく。
デッシュ曰く、この島には「ドワーフ」と呼ばれる種族がいるのは確かのようだ。
そんなドワーフたちに会うのは、ソールにとって初めての経験ではあるため、少し楽しみであった。
港に到着すると、控室にいるマイムたちに知らせに行く。
エンタープライズの控室では仮眠や食事ができるスペースとなっている。
「おーい、お嬢さんたち。ドワーフの島へとつきましたぞ」
ソールは少し執事っぽく気取って知らせに、控室の扉を開いた。
そこにいたマイムたちは気落ちしていた様子だった。
流石に先ほどのデッシュの件を受けてだいぶへこんでいるようだった。
マイムとティエラは椅子に座ってうなだれており、ヴェントは仮眠用のベッドの上に寝転がって焦点のあっていない目を天井に向けていた。
ソールの呼びかけに気づいていないようだった。
(あ、あれ…?)
ソールが少し心の中で慌てる。先ほどの自分の発言が届いていないのかと心配になっていた。
「次の目的地についたぞ、準備してくれ」
もう一度彼女たちに呼びかけた。…しかし、どこか届いていないようだ。
はぁ、とソールはため息をつく。
「なあ、デッシュに言われてた、ドワーフの島に着いたって言ってるんだけど…」
「わーかってるわよ…」
だらけたような声でマイムが返答した。どこかやる気がなさげな声だ…。
突然の別れが相当響いているのだろうか。それだけはソールは感じていた。
「……」
ヴェントは相変わらずうつろな目でぼんやりとしていた。
ティエラも、デッシュのことを引きずっているのは明らかで、何も喋ってくれなかった。
「おいおい…。仲間と一人別れただけでこんなにだらしなくしないでくれよ」
ソールはやれやれ、といった顔つきでそう言う。
デッシュの死を引きずるのはわかるが、いつまでもそれにとらわれていては先に進めないと思ったのだ。
だが、マイムたちからの反応はない。
仕方がないと思いつつ、彼女達に声をかけ続けた。
「ほら、さっさと準備しろ! これからドワーフたちの住む島へ入り、クリスタルの情報を得に行くぞ」
「うるさいわね…。言われなくてもやりますよ」
ヴェントが少しいら立った声でベッドから起き上がった。
ティエラも椅子から起き上がってどこかやらされているような感じで支度をする。
(どうした…。そんなに引きずってるなんて思わなかったぞ)
彼女たちの無気力な様子に、ソールは戸惑っていた。
今までの旅路でも、この三人の少女とは一緒にやってきた。
そんな彼女たちが、今は見る影もないほどに落ち込んでいた。
ソール自身も、デッシュとの別れは受け入れられなかった。
しかし、そんな様子をいつまでも見せていては、彼に申し訳が立たない。
それだけは理解していた。
「なあ、支度をするならさっさと…」
「もう!うるさいですね。ここまで急かさなくてもいいんじゃない?」
マイムがいらいらした表情でソールに詰め寄ってきた。
そんな彼女がいきなり詰め寄って来たので、ソールも一瞬、少し焦った。
しかし、彼女たちがいつまでもこのままだと、旅に支障をきたしてしまう。
そう思ったソールは…。
「いい加減にしないか!いつまでもこんなだらけた様子を見せていたら、光の戦士としての旅が、ここで終わりになるも同然だぞ!」
思わず、大声を出してしまった。
その言葉を聞いて、マイムたちが驚いた表情でソールを見た。
そして、そのまま固まってしまっている。
しまった……。つい大声をあげてしまったと、ソールは後悔する。
「あ、いや、今のは…」
どう言い訳をしようか、ソールは慌てていた。
次の言葉は何を言おうか、彼は頭を働かせて必死に考える。
すると、マイムが突然笑い出した。
「ぷふ……。ははは……。あぁ、おかしい」
彼女は突然笑っていた。
何が起こったのかわからないソールだったが、とりあえず何か言わなくてはと口を開こうとした。
「まったく、あなたって本当に前向きなのね」
「えっ!?」
ソールは突然の発言に驚いていた。
「あたしたちだけ後ろ向きなのに…。あなただけが真面目に明るくやってるのがすごいってわけ」
ヴェントが言った。その表情は、少し明るかった。
「あれかしら?孤児院の子供たちのリーダーみたいなことをしてたから、そのせいなのかしら?」
「えっと……」
「私たちが落ち込んでいても、元気づけてくれるのがあなたの役目だったのね」
ティエラがソールの近くにやってくる。そんな彼女に、ソールは冷や汗をかく。
「そ、それは……」
そんなつもりはなかったのだが、いつの間にかそういうことになっていたらしい。
「ま、とにかく……」
マイムが、ソールの顔を見る。
「ありがと。少し気分が楽になったわ」
「ああ……。うん」
マイムが微笑んでいた。
「あ、そうそう。あなたも支度を済ませないとね」
「……はい?」
ソールは、マイムからのまさかの発言に、驚きの声を上げる。
「あの、それは…」
「いいから。あなたも準備してきなさい。なに?またまさかまたふたりきりになってお説教してほしいの?」
「そ、それは…」
マイムが悪戯っぽい顔で笑って見せた。
「ほらほら、早く用意しなさい」
「あ、ちょ、ちょっと」
マイムに背中を押されながら、控室を追い出された。
ソールはどこか、満足そうな顔をしていた。
「ここが…。ドワーフたちの住処なのかしら」
ティエラが、山のふもとにあった大きな洞窟を見て言った。
ソールたちは船を港に泊め、ドワーフの住むとされる島を歩いていた。
歩いて数分のところに、その洞窟はそびえていた。
草木が生い茂る山の中に、ぽっかりと空いた穴があった。
中は暗く、奥の方まで見えていなかった。
「ここに……。ドワーフがいるんだな」
ソールは、改めて呟く。
この中にドワーフと呼ばれる種族の者たちが住んでいるのだろうか。
「中に入ってみましょう」
ティエラの提案に従い、ソールたちはその洞窟の中へと入っていった。
「ラリホー!たいへんだ、たいへんだー!」
洞窟の中に入ったソールたちが最初に目にしたのは、そう言いながら大慌てしている、低身長で毛むくじゃらで帽子を被っている、子供のような男だった。
この人物こそがドワーフなのだろうか。
「すみません、どうしたんですか?」
ソールが、その慌てているドワーフと思われる男に話しかける。
「ラリホー!人間、よくきた。ここはドワーフが住む洞窟。ここの宝が、盗まれた!」
それを聞き、光の戦士たちがピンとくる。
「まさか…」
「クリスタルかしら?」
「行ってみましょう」
この洞窟には、ドワーフたちが守っている宝があるのだという。
それを確認すべく、ソールたちは洞窟の奥へと足を運んだのだった。
洞窟内は数多くの灯りがともされているため、洞窟のなかであっても昼のように明るかった。
そのため、足場もわかりやすく、転ぶ心配はなかった。
ソールたちが奥へ進むと、大きな空間が広がっていた。
その真ん中に、大きな祭壇があった。
湖の真ん中に、その祭壇はそびえていた。
祭壇の中心にふたつの台座がある。
台座の片方には角型の宝石があったが、もう片方には何も置かれていなかった。
「あれが宝なのね」
マイムが興味深そうにその祭壇を眺めていた。
「でも、片方宝石がないですね…。それがないからあわててるのかな?」
マイムはそう言って首を傾げた。
確かに、その通りである。
片方の台座には何もなく、もう片方には何かが置かれていた痕跡はある。
しかし、その何かはなくなっているのだ。
「一体何がなくなったのかしら?」
「誰かが盗んでいったとか?」
「とりあえず…。話を聞いてみましょ」
少女たちは話をし終えると、早速ドワーフたちに聞き込みを行うことにした。
【聞き込み1】
「角を盗んだのは、『盗賊グツゴー』!ずる賢くて、嫌なやつ~!」
「グツゴー…。聞いたことがある」
盗賊グツゴーの名を聞いたヴェントが眉をひそめる。
商人の養子として育った彼女は、グツゴーの名を知っていた。
世界的に悪名を轟かせているという、盗賊の中でも屈指の実力者だという。
「まさか……。そんなやつがこんなところにいるなんて」
「それで、どこに逃げたのかしら?」
近くにいたマイムが話しかけてきた。
「それは……。わからないわ」
ヴェントは腕を組み、グツゴーのことを考えていた。
【聞き込み2】
「氷でできたふたつの角!これがドワーフのおたからー!」
祭壇に置かれていた角型の宝石は、ドワーフの宝のようだ。
しかも氷でできている。
「世の中ひろいなあ…。いろんな素材でできている宝があるんだな」
ソールは関心しながら祭壇に置かれていたその氷の角を見ていた。
「それを一本、悪い奴が盗んでった!ゆるせなーい!!」
ドワーフは怒っていた。それも無理はない。
大切にしていたものをとられたのだから。
「わかった。そいつから角を取り返せばいいんだな」
ソールは、ドワーフの発言を聞き、角を取り返すことを決めた。
【聞き込み3】
「前は北の山に、きれいなガラスみたいな塔がたっていたー!でも地震のあと、なくなってた!跡は洞窟があるだけー!」
大地震の影響はドワーフの島にも及んでいたようだ。
北の山の塔という単語が気になる。
恐らくここにクリスタルがあるのだろうか。
そうティエラは読んでいた。
「悪賢いグツゴー、ドワーフの角持って地底深くに潜ってにげたー!でもドワーフかよわい…。人間の戦士!たすけてー!」
祭壇を守っているであろうドワーフが泣いていた。
涙が白いもじゃもじゃの髭につたわりそれを濡らす。
ドワーフたちは160cmにも満たしていなさそうな身長をしており、まさしく「低身長」だった。
「まさかあのグツゴーが絡んでいるとは…」
ヴェントが思いつめた顔をしていた。
「知っているのか?」
ソールが気になる様子で彼女に聞いた。
「ええ。両親から話を聞いたんだけど、かなりのワルの盗賊よ。各地の豪商から、お宝を盗んでいる悪いわるーい奴なの」
「君たちはそのグツゴーやらに被害にあっていないのか?」
「ええ。私たちの家は大丈夫だったけど……」
ティエラが答えてくれた。
「なら、よかった」
ソールはほっとした表情を浮かべていた。
「ただ……あいつは人のものを奪っていくことしか考えていないの。だから、これから先も何をしてくるかわからないし、油断はできないわ……」
「ああ。気をつけないと俺たちの命も奪われかねないな」
「ええ。慎重に進まないと、道中で死にかねないわ」
マイムが言った。
「確か…。グツゴーは地中深くにいるとか言っていたな。よし、まずは奴が掘ったとされる穴を探すとするか…」
ソールはそう言って、グツゴーの後を追うことにした。