ファイナルファンタジー3 リブートエディション   作:北村 貴之

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其之23 グツゴーの洞窟

【ヴェントの話・盗賊グツゴー】

盗賊グツゴーについて話しておくわ。

先ほど(前話・其之22を参照)も言ったと思うけど、あいつは各地の豪商からあらゆる金品やお宝を奪っていく悪い盗賊なの。

筋肉隆々とした大柄な肉体をもつ大男でね、あんな図体でもかなりの足の速さを持つとされているんだって。

あの肉体だから、そりゃあもう、身体能力はかなりのもの。これでもかっていうほど、力が強いらしいわよ。

あと、あいつは武器の扱いにも長けていて、その腕っぷしの強さと器用さを駆使して、さまざまな種類の武器を巧みに操るの。

短剣はもちろんのこと、弓矢、鎖鎌、鞭といったものまで使いこなしてしまうみたい。

光の戦士に選ばれた私たちは今、いろんな武器や魔法やらを使いこなして戦っているけれど、それでも勝つのは容易ではないことは覚悟しといたほうがいいわね。

幸い、私の家や、マイムやティエラの家はグツゴーの被害にはあってはいないけれど、私の家の養父さんの知り合いの商人が被害にあったらしいの。

 

何があったのか知りたい?そうね、この際だから教えたげる。

カナーンの町を中心に商売をしていた名の知れた商人のおじさんなんだけど、その人が被害者。

その被害の内容はというと、まるでメロンのような緑色を誇るエメラルドを盗まれちゃったんだって。

そのエメラルドは50000ギルはくだらない、かなり価値のある宝石だったらしくて……。

グツゴーが突然その人の前に現れて、そのエメラルドを強奪したらしいの。

後、他にも金の卵を産むとされるにわとりや、高価な鉱石を使って作られた滅多にお目にかかれない防具やらも盗まれたみたい。

そのせいでそのおじさんは破産寸前にまで追い込まれてしまったとかなんとか。

そんな報告をもらったわ。

まぁ、そんなこんなで、グツゴーは戦闘と盗みの達人でもあるわけ。

商人の業界にとって、奴に会うことは死ぬことと同じって、言われてるそうよ。

私たちは運がよかったから狙われなくてすんだけど、下手すればウルの村の商人たちも被害にあっていそうね。

 

まあ…。ここでグツゴーの情報を得れてある意味ラッキーだったわ。

会ったら盗みがいかに重罪なのか、身をもって教えてあげるつもりだし。

……それにしても、私……あいつの顔見たことがないのよね。

一体どんな顔してんのかしら。気になるところだわ……。

 

 

 

ウルの村の商人の養子の娘として育っていたヴェントの話を聞いたソールは、ドワーフの洞窟の周辺に、グツゴーが掘った穴がないかどうか探している最中だった。

ソールの仲間である少女、マイムとティエラも、同じく商人の養子として育った。

家は違うのだが、3人はそれぞれ違う家で、商人の娘として育てられた。

商業のみならず、魔法や武術も学んだ。

「この辺りにはなさそうだな…」

ソールはグツゴーが掘っていそうな場所をくまなく探し回ったが、なかなか見つからなかった。

しかし、諦めることはない。

グツゴーは必ずどこかにいるはずだからだ。

「くそっ…。名のある盗賊がまさかこんな、火のクリスタルのあるとされる土地にいるなんてなあ」

ソールは額に流れる汗を腕で拭う。空には太陽が照っている。

ドワーフの島は少し、気温が高かった。

そのため、長く捜索していると暑く感じる。

「ふぅ……。ここら辺にはもういないようだな……。一度休憩しようか」

ソールは体力を回復するため、休憩できそうな場所を探した。

ちょうど近くに木陰があったため、そこに腰をかけて一休みすることにした。

「はぁ…。彼女たちは今頃…」

ソールはマイムたち3人の少女と別行動だった。

なぜ彼一人でグツゴーの洞窟を探しているのかというと…。

 

 

「ふぅ~…」

少女の安堵したような声が、草むらの中から聞こえてくる。

その中にいたのが、マイム、ヴェント、ティエラの3人だった。

男であるソールと一旦別れ、彼女達だけでグツゴーのいる洞窟を探していたのだ。

そんな中、彼女たちはちょうど催してきたので、ソールがいないのを見計らって、近くの茂みに身を隠して「出して」いた。

ヴェントはどこか、少し恥ずかし気な顔をしている。

ティエラも目をつむり、しゃがんで身を隠していた。

少女だけとはいえど、やはり外でするのは少し気恥ずかしいのだろう。

3人とも足首まで下着と下半身の着物をずり下ろした状態にしていた。

「はぁ、気持ちいい…」

マイムは、甘い声を出す。

彼女たちが身を隠していた茂みの中から、何やら水が流れるような音が微かに聞こえていた。

見せることができないのだが、マイムたちは「ある行為」をしているのであった。

ソールが来るかもしれないという不安はあったのだが、彼からの距離をかなりとった彼女たちは、ここで身を隠していた。

「長旅をしてたらのスリルもあるわね…」

ティエラが頬を少し赤くしてそう言った。

しばらくすると、水の音はなくなった。出し終えたのだろうか。

「ふぅ…。出しすぎちゃった」

マイムが少し照れながら、脱いでいたものを着用した。

他の2人も同様、下着とズボンを履く。そして、マイムがティエラに話しかける。

「ティエラ、どう?出せた?」

「うん。大丈夫だったよ……」

2人は笑顔を見せ合った。

そんな時だった。

「ん!?あれは……」

マイムが何かを見つけたようで、声をあげた。

彼女の目に映っていたのは、紛れもない「大きな穴」だった。

それもかなりの大きさで、人が入れるような大きさだ。

「ま、まさか」

ヴェントが口を両手で覆う。

「こんなにあっさり見つかるなんてね」

すっきりした様子のティエラが言う。

「これ、グツゴーが掘った穴かしら?」

「えぇ。私たち、運がいいわね」

マイムとティエラは笑った。

「……とにかく、入ってみるしかないわね」

「あ、ソールくんを忘れてる」

ティエラが気づいた。彼とは離れ離れの状態だ。

「う~ん。呼んだほうがいいかしら」

「まぁ、待って。とりあえず行ってみてから考えようよ」

マイムがそう言い、3人でその大きめの穴の中へと入っていった。

少年ひとりを放置し、少女たちは無謀にも、グツゴーの掘ったとされる洞窟内を探索しに出かけてしまった。

 

「……くそっ、一体どこなんだ?」

ソールは1人、グツゴーの居場所を探していた。

「あいつが掘った穴なんて、どこにもないじゃないか…」

休憩を終えて、ソールはひとりで散策をしていた。

しかし、一向にそれらしきものは見当たらない。

マイムたちと別行動をとり、穴を探していたのだが、全く見つからなかった。

「……はぁ」

そう言って、ソールが踵を返したその時、彼はあることに気づく。

「そうだ。彼女たちの方向へ行ってみれば、あるかもな」

そう思ったソールは、マイムたちが向かっていた方向を向き、そちらへ歩き始めた。

 

 

グツゴーが掘ったと思われる大穴の中へと入っていった、マイム、ヴェント、ティエラ。

彼女たちは、暗い洞窟内を歩いていた。

洞窟の中はひんやりとしており、外よりも気温が涼しかった。

「さすがは洞窟、気温が違って快適ね」

マイムが気持ちよさげに歩いていた。

しかし、油断はできない。魔物が現れる可能性もあるからだ。

ヴェントは辺りを見回しながら歩いている。

ティエラも警戒心を抱きながら進んでいく。

「ねぇ、ティエラ。ここって、どんな場所だと思う?」

マイムが尋ねる。

「う~ん……。まだわからないけど……。もしかして、ここって……」

「ここって、もしかして……」

マイムとヴェントが同時に言葉を発する。

その矢先…。

「待って!魔物よ!!」

ティエラが叫ぶ。

3人の目の前に、炎のような球体の魔物が現れた。めらめらと燃えるこの魔物は「ボム」だ。

「げっ、魔物!?」

「奴が用意したのかも」

ボムは合計で4体だった。

ボムは高笑いを上げながら、マイムたちを噛みつこうとして突撃してきた。

「うわっ!」

マイムが避ける。ボムの体温が、彼女に伝わってくる。炎のような姿なので、かなり熱そうな感じがした。

「ヴェント、魔法で攻撃するわよ!」

「わかった!」

マイムとヴェントは、それぞれボムに向かって手を向ける。

そして、ふたりは氷属性の魔法の呪文を唱えた。

彼女たちが放ったのは「ブリザド」。冷気の嵐や刃で攻撃する魔法だ。

ふたりの放った冷気の強風が、ボムたちを包み込んだ。

「ぐぎゃー」

ボムたちが寒さに耐えきれず、悲鳴を上げる。

どうやら冷気の攻撃には弱いようだ。

「よし、今!」

寒さで悶絶しているボムたちを、ティエラは手にした長い槍で一気に薙ぎ払った。

固まっているボムたちは成すすべなく、そのまま壁に叩きつけられた。

「やった!」

3人は勝利に喜ぶ。

「ふぅ」

「見たことがない魔物だったわね」

「ええ」

安堵のため息をつく3人。

「でも、まだ安心できないわ。奥まで行かないといけないから」

「そうね。気を引き締めないと」

油断ができない洞窟の探索。マイムたちは臆することなく、先へ、先へと進んでいった。

 

 

「あの子たちはここに向かったんだよな…」

一方のソール。マイムたちが散策していた場所へとやって来ていた。

草むらが生い茂っている、広い空間だ。

「あの子たちが通った道を探すしかない……」

ソールは注意深く探していく。草むらの中にもしかしたら穴があるかもしれない。そう思いながら、草むらをかきわけながら、穴を探す。

すると、マイムたちの形跡らしきものが目に入った。

「おや?地面が…」

ソールは草むらの中の開けた場所を見ていたのだが、そこに意味深に地面が濡れている箇所を発見した。

「おっ…」

ソールはその濡れている地面を見て、どこか少し興奮を覚えていたようだ。

彼の脳内に、どこか卑猥な妄想が浮かんでしまったのだ。

「……何を考えてるんだ、俺は」

そう呟いて、頭を横に振った。

「しっかりしろソール!変なことを考えるんじゃあない」

自分で自分をしかりつける。

そんな時だった。

「……おや?」

ソールの目に映っていたのは、大きな穴だ。人間が掘ったと思われる、大きめの穴が、ぽっかりと口を開けていた。

「もしや、まさか!」

ソールは辺りをキョロキョロと見回す。マイムたちがいるかどうか、探していた。しかし、当の彼女たちは見当たらない。

もしかすると、この大きな手掘りの穴に入っていったのかもしれない…。

「まったく…。男は邪魔なのか?」

愚痴を言いながら、ソールはこの大きな洞窟の中へと入っていった。

 

「くっ、結構やるじゃない」

魔物たちと闘いながら、マイムたちは洞窟内を進んでいた。

彼女たちがいま闘っているのは、ライオンと蛇、蝙蝠を混ぜ合わせたような魔物、「マンティコラ」だ。

獰猛な性格をしており、洞窟に侵入してきたマイムたちに容赦なく、爪と牙で攻撃をしてきた。

かなり高めの攻撃力なので、さすがの彼女たちも苦戦していた。

「このっ!」

マイムは両手に魔力を集め、それを爆発させる。

彼女の得意とする魔法、「エアロ」だ。

風圧で作った魔力の塊を、魔物にめがけて投げつけた。

その爆風を喰らい、マンティコラは大きく吹き飛ばされた。

「マイム、すごい!」

ヴェントが感嘆の声をあげた。

「私だって、負けてられない!」

ティエラも負けじと、もう1体のマンティコラを槍で攻撃していった。

「グオォッ!」

マンティコラが雄たけびをあげる。

「さぁ、とどめよ!」

ティエラは槍を振りかざし、マンティコラに向けてそれを投げつけた。

その槍は見事に命中して、マンティコラの体に突き刺さった。

魔物はうめき声を上げて、力尽きたようだ。

ティアラは先ほど投げた槍を回収する。

「ティエラもだいぶ戦い方がさまになってきたね」

マイムが言った。

「うん。でも、まだ魔物はいるかもしれないわ」

「そうね。油断は禁物です」

そう言って、ふたりは戦闘態勢を解除する。

その時だった。

「うわっ!?」

ソールが悲鳴を上げた。

「えっ!?」

悲鳴の聞こえた方を、3人は向いた。

そこにはソールがいた。彼は転倒して、腰を抜かしているようだった。

「な、何なんだよ、君たち……。俺を置いていくなんて」

「あ~っ、ごめんなさい。待ちきれなくてつい…」

マイムが頭を下げて謝罪した。

「い、いや……。まあ奴の居所が見つかって一安心だな…」

ソールはそんなマイムの健康的な生脚が視線に入ってしまう。

青いミニスカートを履いているので、シミ一つなく、白くむちっとした、どこか色気すら感じさせる生脚に、ソールの目がついそちらに向いてしまった。

しかし、すぐに目を逸らした。

「ん?どうかした?」

「い、いいや。何でもないよ」

ソールは首を横に振る。

「それよりも、こんな洞窟の中に身を隠してるのか…。しかも魔物をセキュリティにしてるなんてなあ…」

「最近の盗賊は手が込んでいるってことね」

ティエラが言った。

「よし、じゃあ行こうか」

「ええ」

「行きましょう」

3人は洞窟の奥へ進んでいくことにした。

 

 

洞窟内は相変わらずひんやりとしていた。

最初はその気温の低さに快適ささえ覚えていたが、次第に寒く感じるようになってしまった。

一刻も早くグツゴーから角を取り返し、ここから出ないといけないようだ。

そう思っていた矢先…。

 

洞窟の最深部に、4人はたどり着いた。

そこには、多くの金品やお宝がところせましと並べられていた。

「これは……!?」

「もしや、ここに…」

ソールとヴェントが驚きの声を上げる。

売れば一生遊んで暮らせそうなお宝の山の真ん中には…。

「だ、だれだっ!」

ソールたちの気配を感じていた、ひとりの大柄な男がいた。

鍛え抜かれた肉体を出し惜しみなく晒しており、下半身に纏った腰巻だけの姿の、いかつい顔の男だ。

「あなたが盗賊のグツゴーね?ドワーフの皆さんの宝の角を返しなさい!」

ティエラが叫んだ。

「い、いかにも俺がグツゴーなのだが…。お嬢ちゃんたちはいったい誰なんだ!」

男の正体はグツゴーで正解だったようだ。しかし、少し慌て気味だ。

「クリスタルに選ばれた光の戦士ってとこかな」

ソールがグツゴーの質問に答えた。

「え、えーい、寄るな寄るな~!お前らにこの角はわたさん!」

グツゴーは戦闘態勢に入った。

ファイティングポーズを構える。

ソールたちも武器を取り出し、グツゴーとの戦闘へと突入したのだった。

 

「ふん!せい!」

マイムが剣を振るい、グツゴーを攻撃する。

彼女は持ち前の素早さで敵を翻弄しつつ、着実にダメージを与えていく戦法を得意としている。

「ぐおっ」

マイムの攻撃によって、グツゴーは大きく後退した。

「今だ!」

ソールは怯んだグツゴーをめがけて、手にしていたダガーを投げつけた。

「くっ」

グツゴーはかろうじてそれを避ける。

「甘い!」

そこに、マイムの蹴りが炸裂する。

すらりとした生脚での蹴りは、かなりのダメージを与えたようだ。

「ぬおおっ…!」

マイムの強烈な一撃を喰らい、グツゴーは大きく後退する。

「くらえっ!!」

ティエラが魔法を詠唱し、それで追撃を加える。

彼女が詠唱したのはファイラ、ファイアよりも上位の炎の魔法だった。

ティエラの槍の先端から炎の渦が発生し、それがグツゴー目がけて放たれた。

「う、うわあああっ!」

ティエラの魔法に直撃して、グツゴーは大きなダメージを受けてしまう。

「やった!」

マイムが歓喜の声をあげた。

「うぅ……」

グツゴーはよろめきながら、立ち上がろうとした。

しかし、相当なダメージが蓄積されていたのか耐えきることができず、ばたり、と音を倒れ、そのまま消滅してしまった。

「以外にも呆気なかったな…」

ソールたちはグツゴーを倒せたものの、どこか拍子抜けした様子を見せていた。

「とりあえず、この宝の山を探そうか」

マイムが提案する。

「そうですね」

「ああ」

4人は手分けして宝探しを始めた。

 

「これかしら!?」

ティエラが金品の山を手探りで探している最中、角型の宝石を発見した。

そして、ソールたちにその宝石を見せる。

「それっぽいな」

ティエラが見つけたこの角こそ、ドワーフの大事にしているお宝のようだ。

「さあ、早くドワーフの皆さんにこの角を届けてあげよう!」

マイムが嬉しそうな顔で、3人に向けて言った。

3人もそれに同意するように、大きくうなずいたのであった。

「これで、任務完了ね」

「そうだな」

「ええ」

こうして、4人の任務は無事完了したのだった―――。

 

 

徒歩でドワーフの洞窟へと目指す最中。

ヴェントはひとつの違和感を覚えていた。

それは…。

(…何?なんか微かに私たちとは違う、足音が聞こえているような気が…)

ヴェントは意外にも聴覚が優れていた。

そんな彼女は、不穏な気配を感じていたのだった。

自分たちとは違う、別の「誰か」の足音がしている。

人間が堂々と歩いている音だ。

「どうしたの?」

そんな彼女の異変に気付いたのか、隣を歩くティエラが声をかけた。

「いえ、何でもないですよ……」

ヴェントは笑顔を見せ、ティエラに返事をした。

「そう?ならいいけど」

ティエラはそんな彼女に気遣ってか、それ以上は何も聞かなかった。

「……」

マイムとソールも特に気にしていないようだ。

ふたりとも、今の所は大丈夫そうに見える。

しかし、油断はできない。

いつ、どこから敵が現れるかわからないのだから…。

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