ファイナルファンタジー3 リブートエディション 作:北村 貴之
世界に悪名をとどろかせているとされる盗賊「グツゴー」を倒し、ドワーフたちが守っている、角のような形の宝石を取り返したソールたち。
ドワーフたちの住む洞窟の近くに手彫りで洞窟を掘ってそこに潜んでいたのだった。
魔物たちは彼が手なずけていたものたちだったのだろうか。
彼のところにたどり着くまでに多くの魔物たちと戦闘をし、ようやくグツゴーのところまでたどりつけたというわけだ。
そんなこんなで、ソールたちは取り返した角を早速ドワーフたちに返還しに、洞窟へと戻っていった。
仲間の一人である少女のヴェントは、歩いている最中に違和感を感じていた。
…足音が4人にしては多いような気がしていたのだ。
あと一人、ついているような気がしてならなかった。
実は、ヴェントは意外にも聴覚がかなり優れている。
オーエンの塔で別れたデッシュはあり得ない。
死んでいるかどうかも、生きているかもどうかもわからない。そんな彼が、自分を追ってくることなどないからだ。
では誰なのだろうか。仲間でないとしたら…。
「どうしたの?」
そんな彼女の異変に気付いたのか、隣を歩くティエラが声をかけた。
「いえ、何でもないですよ…」
ヴェントは笑顔を見せ、ティエラに返事をした。
「そう?ならいいけど」
ティエラはそんな彼女に気遣ってか、それ以上は何も聞こうとはしなかった。
「…」
マイムとソールも特に気にしていないようだった。
そうこうしているうちにようやくドワーフたちの住む洞窟へと戻ってきた。
「お待たせしました。確かに角は取り戻してきました」
ヴェントが角を持って、祭壇前にいるドワーフに報告しに来た。
彼女の手に握られている宝石を見たドワーフは嬉しそうな顔で光の戦士たちを見つめた。
「ラリラリラリホー!どーもありがとー!たしかにドワーフのつの!」
宝が戻ってきて喜んでいるドワーフを見て、ソールたちも自然と笑みがこぼれる。
「これで一安心ですね」
マイムが安堵したような口調でそう言った。
しかし、ドワーフは次にこう言ったのだった。
「元の場所にもどしてー!いま、祭壇のおまじない、とく!そーれ、ぽぽい!」
子供のような声のドワーフは、呪文を唱えて祭壇にかけられていたとされる結界を解除し、ソールたちが通れるようにした。
「これで祭壇にいけるよ。祭壇の上にドワーフのつの、もどして」
「おいおい、それはあんたらが…」
次から次へと頼みごとをしてくるドワーフにソールが渋い顔をするが、
「はいはい。行きましょうね」
マイムがめんどくさそうな顔をしているソールの背中をぐいぐい押しながら祭壇へと進んだ。
「ちょっ、マイム…」
ティエラがそんなソールの姿を見てクスクス笑っている。
大きな湖の上に浮かぶ小さな島のような祭壇には、片方に角型の宝石が置かれていた。
もう片方には何もない。
それもそのはず、ここには先ほどグツゴーが奪った角があったのだから。
「ここに置けばいいんだね」
ソールが何も置かれていない祭壇を見る。
「そうみたい」
ヴェントがドワーフに言われたとおり、角を置く。
しかし、足音が一人余計に多いのを気にしているのは変わらなかった。
ただ一人、警戒してはいたが。
「……」
四人が角を置いた瞬間、祭壇から何かが飛び出してきた。
「うわ!」
驚くソールに、その飛び出してきたものは体当たりをした。
「あなたは……!」
飛び出したのは、先ほどヴェントたちが倒したはずのグツゴーだった。
不意打ちを食らいよろめくソールだったが、そこはさすがは光の戦士だ。すぐに態勢を立て直し、鞘から剣を取り出し構える。
グツゴーも体勢を整えると、やや大げさにファイティングポーズをとった。
「ははははは!お前たちの影に化けて、ついてきたのだ!」
ヴェントの違和感はこれだった。
足音はやはり、グツゴーのものだったようである。
死んだと思わせて、実は生きていたグツゴー。
持っていた術で、影に化けてついてきたのだろう。
祭壇の上に堂々と立つグツゴーは祭壇に置かれている角を2本とも拾い上げ、
「角は、2本とももらったー!」
と、自慢げに言い放ち、ジャンプして祭壇から脱出だった。
「あっ、盗まれた!」
ティエラが叫ぶ。
「クッ…。しまった!奴は倒される際にまじないをかけていたのね…」
ヴェントが悔しそうに下を向く。
グツゴーはへらへらと笑いながら、こう言ってきた。
「何も知らない馬鹿どもめ!これは氷の角!炎を退けて、クリスタルへの道を開くのだ!これで、火のクリスタルは、このグツゴー様のものだっ!ふふふ」
「は、腹立つなあの筋肉馬鹿…」
煽るような口調と顔に苛立ちを見せるソール。
グツゴーはソールたちにあっかんべーをして、足早に洞窟を去って行ってしまった。
「なんてことホー…。今度は2本とも盗まれてしまったホー…」
身体を震わせて、絶望的な顔でがっかりしている祭壇を守っていたドワーフ。
「き、きっとあいつは北の山に向かったー!お願い、角を両方とも取り返して!」
「わかりました。奴は片付けてすぐに北へと向かいます」
ヴェントがドワーフの肩をポンと叩く。
「す、すまないホー…。僕たちはここから動けないから…。もし仮に行っても返り討ちにされそうだホー」
ドワーフは申し訳なさそうに頭を下げた。
そんなドワーフを見てティエラが声をかける。
「心配しないで、私たちが何とかします」
「よし、そうと決まればその北の山へやらと行ってみよう!」
ソールはそう言うと、光の戦士たちに声をかける。
こうして4人はグツゴーを追って北へと向かったのだった。