ファイナルファンタジー3 リブートエディション   作:北村 貴之

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其之27 トックルの村

「くっ!急いでるのに…!」

魔導士のハインが、浮遊大陸の南部に存在する村、トックルの村を襲撃してきたとの情報を受け、火のクリスタルのあるドワーフの島を後にし、急遽そのトックルの村へと船で急ぐ光の戦士たちの前に、海の魔物たちがたちはだかった。

かなりの量で、鋭利な牙を持つキラーフィッシュやシーサーペント、ヤドカリのような怪物であるハーミットが行く手を阻む。

「くそっ!何匹いるんだ、こいつら!」

剣を構えたソールがその魔物たちの量を見て顔をしかめている。

「そうだ!火のクリスタルから力をいただいたんだから、せっかくだしこいつらで試せばいいんじゃない?」

光の戦士のひとりである少女、マイムが、先ほどもらった、「火のクリスタル」の力を使ってみては、と提案した。

「そうね。ハインを倒す前のいい準備になるし」

と、賛成するヴェント。

「それに、大群との戦闘は経験しておいた方がいいかもしれません」

「よし。やってみよう!」

ソールが剣をおさめ、両手を前に出して念じた。

マイムは弓矢を構え、敵の動きを把握し、放つ。

「くらいなさい!」

マイムがそう叫び、弓から矢が放たれる。その矢は魔物たちをめがけて飛んでいった。

放たれている矢をよーく見てみると、1本だけではなかった。

マイムは無数の矢を、数秒の間に放っていたのだった。

鋭い先端の矢が、魔物たちの身体に突き刺さる。

魔物たちは悲鳴をあげ、そのまま海に沈んでいった。

「よし!これだ!」

ソールも叫ぶ。すると巨大な風の塊のようなものが現れた。

それはまるでかまいたちのような物体だった。

ソールは潮風を風の刃に変えていたのだった。

それを魔物たちに向かって放った。

「うおおおお!」

ソールが叫んだあと、魔物たちめがけて刃のように鋭い風が放たれた。

その風は魔物たちを飲み込み、切り刻んでいった。

魔物たちが血しぶきをあげ、海に沈む。

 

ソールが使用したのは「風水師」の力だった。

地形を武器に変えて戦う能力を持つ戦士の力だ。

一方のマイムはというと、弓の扱いに精通する「狩人」の力で敵を倒したのだった。

クリスタルの力は、さまざまな戦士たちの力を使うことのできる力だった。

 

その力を試し、魔物たちを倒した一行。

「これで敵はすべて殲滅できたみたいね」

海を眺めて、ティエラが一安心した顔をする。

「しかしあんまりゆっくりもしていられない。急いでトックルの村へと向かわないと」

ソールが、ハインが襲撃した村のことを心配する。

「そうね。急いで向かわないと」

ヴェントも、それに同意する。

ソールは船を全速力で走らせた。

 

 

こうして数時間後、ソールが操舵していた船、エンタープライズは浮遊大陸の南部へと到着した。

停泊できるところに船を止めて、ソールたちは地図を見ながらトックルの村へと目指す。

ソールたちにハインのこと、そしてこのトックルの村の事は、ドワーフの島へと傷つきながらもたどり着いた兵士の男から聞くことができた。

兵士はハインから村を救ってほしい、と懇願し、そのまま息を引き取ってしまった。

彼はさらに、ハインたちは村から人々や物を奪い取り、何度も村に襲撃をかけていたそうだ。

それを聞いた光の戦士たちは、ハインの非道なる行動に憤りを覚えた。

 

そうこうしているうちに、トックルの村へとたどり着いた。

小さな村で、木造の建物が多く並ぶ。畑が多いらしく、野菜が植えられていた。

しかし、人気はなく、どこかさびれている印象を感じさせる。

ドワーフの島で出会ったあの傷だらけの兵士が言っていたのは本当のようだった。

幸いにも建物や畑が荒らされて破壊された様子は見受けられなかった。

しかし、ハインが奪うものがないからこの村に火を放って更地にしてしまおうとしている。

それだけは一刻も防がねばならなかった。

「誰一人で歩いていないな…。ハインを恐れるのも無理はないか」

ソールが村の風景を見て、そう口にする。

「そうですね…。ハインに抵抗しようとする人もいないし…、村の人たちは、襲撃を恐れて建物から出ないのでしょう」

ティエラも周囲を見渡しながらソールに同意する。

「ハインがいつここにやってくるかわからないわ。気を引き締めましょ」

マイムがそう言い、緊張感を放っている様子を見せていた。

「村の人たちは恐らくどこかに隠れているんだよな…。まずは慎重に探索してみよう」

ソールがそう言って、光の戦士たちは村の探索を開始した。

 

ソールたちが入ったのはまず、民家だった。

ドアをノックしたが、誰も出てくる様子はなかった。

無人を装っているのだろうか。

「いなさそうだけど、たぶんいると思うわ」

ヴェントはそう感じていた。

「ど、どうする?」

ソールが質問してきた。

「まずは…。村の人たちを探すことが先決です。ここがどうなっているか、まず聞き取りをしないとね」

ヴェントがそう回答すると、反応がなかったドアのドアノブに手を付けた。

「じゃあ、私が開けるわ」

マイムがそう言い、ドアを開けた。

すると、中は本当に誰もいなかった。

台所はきれいにされていたが、他の場所は掃除がされておらず、荒れていた。

おそらく、ハインが襲撃に来るのを恐れ、どこかに身を隠して怯えているのだろう。

「誰もいないわ……」

マイムは家の中を見回してそう言った。

ヴェントはベッドの毛布をめくってみたが、誰も隠れてはいなかった。

ベッドの下も確認してみるがやはりいない。

「えっと…。ここは?」

ソールは置いてあった棚を動かしていた。

孤児院にいた頃に力仕事をこなしていた彼にとって、棚を動かすのは容易だった。

「あ、ちょっと、ソールくん?」

ティエラが唖然とした顔をする。

ソールが棚を移動させると、壁に開けられていた穴を発見した。

その穴は人がちょうど入れるようなサイズの穴だった。

「…驚いた。まさかこんなところに穴があるなんてね」

ヴェントが穴の中をのぞき込みながらそう言った。

「この穴にまさか…」

ソールがそう言うと、ティエラが頷いた。

「そうかもしれないわね」

ソールたちはその穴の中を覗くことにした。

穴の中にはなんと、女性と男の子がいた。親子だろうか。

ソールたちを目にした女性は、怯えた目つきで彼らを見つめていた。

「た、助けてください…!奪うものなど、この家にはひとつもありません…!」

「お、落ち着いてください!僕たちは、ハインたちの一派の者ではありませんよ」

ソールはそう言って、女性をなだめた。

「え?そうだったんですか?失礼しました…」

女性は安心したのか、胸をなでおろしていた。

「安心してください。僕たちはハインを倒すためにここへ来ました」

ソールがそう言うと、女性が口を開いた。

「ま、まさか……あなたたちは…」

「ええ。私たちはハインたちがこの村を焼き払うと聞き、この村へとやって来たんです」

ティエラがそう答えると、女性も男の子も安堵したような表情を見せた。

「よ、よかった……。てっきりまた兵士が襲って来たのかと思って」

親子揃って安堵の表情を浮かべる。それを見たヴェントが母親の方に話しかけた。

「何があったのですか?」

「この家では私の主人が拉致され、西の砂漠へと連れていかれたのです。アーガスの紋章をつけた兵士がやって来て。あの人は無事かしら…」

女性はうつむき気味に答えた。

マイムとティエラが心配そうな顔で女性を見ている。

「安心してください。ハインを倒して、旦那さんを救い出します」

ソールがそう女性に声をかけると、女性は涙を浮かべていた。

「ありがとう…、ございます…」

女性は泣きながら、ソールたちに礼を述べた。

「では、僕たちはこれで行きますので…。くれぐれも家の中にいるようにしてください」

そう言うとソールたちは外へ出た。マイムたちもそれに続く。

外に出ると、村の探索を再開しようと村の中を歩いていく。村人の姿は見えないが、建物から視線を感じるような気がした。おそらく怯えているからだろう、とヴェントは思った。

(本当にアーガスの仕業なのかしら?にわかにも信じがたいわ)

心の中で彼女はそう呟いていた。

いきなり一国の王が豹変してこのような村を襲撃するなど、違和感があったからだ。

 

ソールたちが次に訪問したのは、村の中央にあった建物だった。

中に入ると、そこにはこの村の村長と思われる老人が椅子に座ってお茶を飲んでいた。

「すみません…。あたしたちはハインが村を襲ってくると聞き、やってきた者たちなんですが…」

マイムが緊張気味にその老人に話しかけてきた。

「おお、そうなのか。たしかにアーガスの兵の姿ではないな。私がこの村の村長だ」

老人はそう言うと、ティーカップを机に置いた。

「いったい、この村で何があったんですか?」

ティエラがそう質問する。すると村長は語り始めた。

「実は以前の大地震以来、この村に西の砂漠から兵士たちがやってくるようになってな、村の若者たちや食料を奪っていくようになったんだ」

(だからさっきのお母さんは子供を守っていたのね…)

マイムはそう思い、村長の話の続きを聞いた。

「おかげでこの村はこのありさまだ。困ったもんだ…」

村長はそう言うと、うつむいた。

どうやらこの村は早く何とかしないと、壊滅の危機に瀕しているようだ。

もっとも、ハインを倒さなければ、この村に平和が訪れることはないだろう。

「あの、ハインたちはまだこの村には来ていないんですよね?」

マイムは念のため、そう尋ねてみることにした。

「……ああ。兵士の姿も見ていないな」

村長は回答した。

「ここは僕たちに任せて。いつ奴らが来るか、村の外で待機しています」

ソールは村長にそう言った。

「ああ、すまないな」

村長は礼を言うと、マイムたちを見送った。

そうして村の外へ出て、ソールたちは神妙な顔つきでハインたちの奇襲に備えていた。

 

それから数分後。未だにハインはおろか、アーガスの兵士の姿は見られなかった。

「おかしいな…。確かに来るとは聞いていたが…」

ソールは剣を持った手を下ろさずに警戒を続けていた。

「もしかしたら、ここに私たちが来ると知って、あえて襲撃してこないとか?」

ヴェントがソールにそう言った。

「確かにそれも考えられますね……」

マイムもそれに同調する。

すると…。

 

光の戦士たちの身体に違和感が走った。

全身に電流のようなものが流れ、しびれるような感覚がソールたちを襲う。

「うっ!なんだ…!?」

ソールたちはそのままの体制で地面に突っ伏した。

「う、動けない…!!」

ティエラが言った。幸いにも口を動かして話すことは可能のようだ。

「それっ、捕まえろ!」

どこからともなく、男の声が聞こえてきた。

それからしばらくすると、大勢の兵士たちがやってきた。

兵士たちが纏っていた鎧には、紋章がつけられていた。

この紋章をよく見てみると、アーガスの城にあったものと同じものだった。

彼らがアーガスの城の兵士のようだ。

「噂はホントのようだったみたいだな…」

ソールが彼らを見て、そう呟いた。

兵士たちはソールたちを拘束した。

「な、何をするんですか!?」

ティエラが兵士たちに向かって叫んだ。

しかし彼らは答えず、ソールたちを気絶させた。

頭部に強い衝撃を受け、彼らは意識を失ってしまった。

「そーれ、連れていけ!ハイン様の城で、奴隷として使ってやるわ!」

兵士のひとりがそう言って、気を失ったソールたちを抱えてどこかへと連れて行ってしまった。

 

突如として気を失い、拉致された光の戦士たち。

果たして、ハインを討つことはできるのだろうか?

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