ファイナルファンタジー3 リブートエディション 作:北村 貴之
空中に浮かぶ大きな「生きている森」の「長老の樹」が改造された城の中にて。
「長老の樹」を居城にしてアーガスの城の人々やトックルの村の人たちを拉致・監禁していた魔導士のハインは、光の戦士たちに倒されていた。
得意のバリアチェンジで何度も弱点を変えて彼らを翻弄してきたが、光の戦士たちの連携の前では無力だった。
光の戦士たちは追い詰められ、ピンチを迎えようとしていたが、気合で乗り切り、ハインを撃破することに成功した。
火のクリスタルの「学者」の持つ相手の情報収集の力のおかげだった。
これによりバリアチェンジを攻略することができ、ハインを打倒することができた。
「た、倒したか…!?」
ハインから大ダメージを喰らっていたソールは、ふらつきながらそう言い、倒れているハインを見ていた。
ハインは動いていないが、またいつ動き出すかわからない。
仲間の少女であるティエラは倒れているハインの近くに駆け寄り、彼が生きているかどうかを確認する。
「大丈夫。奴はもう息はないわね」
様子を見たが、ハインはすでに息を引き取っていた。
「よし…。これでアーガスとトックルの人たちは無事に帰れるんだな」
ソールは一安心してそう言った。
すると…。
グラグラ、と城全体に振動が走り出した。
まるで地震が起きたかのような、そんな揺れが4人を襲う。
「な、なに!?」
ティエラは思わず声を上げる。
ソールも驚きのあまり声が出ず、ただ突っ立っているだけだった。
「きゃっ!」
その揺れのせいでマイムが転んでしまった。
その拍子に手に持っていた杖を落としてしまう。
「きっとハインを倒したから…」
ヴェントがそう言った。
彼女もハインとの戦闘で相当疲労がたまっているようだった。
突然の城を襲う振動に動揺している彼ら。
その時だった。
どこからともなく、声が聞こえてきた。
「…ありがとう。戦士たちよ」
今このハインの間にいるのはソール、マイム、ヴェント、ティエラの4人だけだ。
どうやら壁の方から話しかけているようだ。
「なんだ、今のは?壁が喋ったような…」
ソールがキョトンとした顔をする。
「あ、そうか。ここは元々…」
ヴェントが思い出したような顔をしてそう言った。
先ほどのアーガス王たちの会話を思い出していた。
「ハインが倒されたから正気を取り戻したのね」
マイムが納得したような表情を浮かべていた。
「私は、生きている森の長老。ハインに呪いをかけられていたのだ。だが、おかげで呪いは解けた。ありがとう戦士たちよ」
長老の樹のその声は、優し気で落ち着くような声だった。
先ほどの戦闘で傷だらけのソールたちもこの声を聞き、心が落ち着きそうな様子をしていた。
「さあ。私の中に捕らえられた人々を元の村に帰し、生きている森へと帰ろう」
「ええ。みんな一緒に」
ティエラがそう言った。
そこへ、アーガス王たちがやって来た。
「あっぱれ、光の戦士たち!」
王は喜びの表情を浮かべて光の戦士を称賛して手をたたいていた。
みんな帰れるとわかり、嬉しそうな顔をしている。
「ありがとう!」
「ありがとう!」
やって来た人たちは皆口々に、光の戦士たちに感謝の言葉を送っている。
「さあ、帰ろう。少々揺れるが、我慢してくれ」
長老の樹はそう言って、みんなを乗せて移動したのだった。
それから数分後。
ごごごご、と振動する音が響き渡る。
そして長老の樹がこう言った。
「さあ、ついたぞ。みんな、降りるのだ」
どうやら地上に着地したようだ。
着地したと聞き、捕らえられた人々は嬉しそうに喜びの声を上げている。
「やったー!」
「ああ、よかった!」
光の戦士たちも、彼らが喜んでいる様子を見て嬉しそうにしていた。
「さあ、僕たちも下へ降りよう」
ソールたち光の戦士も、彼らに続いて長老の樹の中から出て行くのであった。
ソールたちが今いるのは「生きている森」。
青々とした木々が生い茂っており、静かな雰囲気を漂わせている。
森全体にうっすらと霧がかかっており、昼間でもどこか薄暗い印象を感じられる。
しかし、霧のせいか幻想的な雰囲気も出ている。
「ここが生きている森…。いざここへ来て見ると、落ち着く雰囲気だな」
ソールは辺りを見回しながらそう呟いた。
先ほどまでいた場所と違い、落ち着いているように見える。
森の中だからだろうか。
ソールはそう感じているようだ。
すると、ティエラが声をかけてきた。
「ソールくん!あれを見てください」
ティエラが指さす先には小さな身体の妖精たちがいた。
蝶の羽を背中につけており、可愛らしい雰囲気だ。
「すごい…。絵本でしか見たことがないけどまさか実在していたなんてね」
ソールは驚いている。
生きている森の中にポツンと佇む巨大な樹木がある。
これこそが先ほどソールたちが捕まっていた「長老の樹」だ。
「ありがとう…。やっと帰ってこられた」
感謝の言葉を述べる長老の樹。
「あなた方のおかげで、この森は救われました!」
妖精たちは嬉しそうにしている。
この「生きている森」も、ハインにより苦しめられていた。
それが今、光の戦士たちのおかげで救われたのだ。
「どういたしまして」
ティエラが彼に問いかける。
「闇の力は次第に世界を覆いつくそうとしている…。お前たちは光の力に選ばれたのだ」
そう言った長老の樹の声は、少し険しいものがあった。
「さあ、これを受け取りなさい。やがて闇の力が道をふさぐとき、きっと役に立つだろう」
そう言い終えると、長老の樹の根っこの部分から大きな木の実が出てきた。
「これは…」
ティエラはその木の実をまじまじと見つめていた。
その実は不思議な光を放っていた。
彼女がそれにふれると、木の実にヒビが入り、そこからあるものが出てきた。
透き通った翡翠色をした、牙のような形の物体だった。
翡翠色の牙を手にしているティエラは、こう感じていた。
「何かしら…。触ってると、そよ風みたいな、優しい感覚を覚えるわ」
「これは『風の牙』です」
妖精のひとりが説明してくれた。
「この先の旅で、きっと役立つでしょう」
なるほど、とティエラは頷いた。
「あ、そうだ…。アーガス王を助け出せたってことはですよ…」
ティエラが思い出したような顔をした。
アーガス王たちもまた生きている森へと帰還していた。
ソールたちよりも先に城へと戻っていったようで、今はいない。
「そうそう。飛空艇に関する情報を持っていたのよね」
ヴェントが思い出したように言った。
「僕たちよりも先に帰っているから、城に来た頃にはいてるかもしれないな」
ソールがそう言うと、ティエラが頷く。
「おそらくそうだと思うわ」
そう話していると、長老の樹から声が響いてきた。
「気を付けていくんだぞ」
それを聞いて、光の戦士たちは頷いた。
「そうと決まれば、アーガス城ね」
マイムがそう言った。ソールはマイムに言葉を返す。
「そうだな」
こうして光の戦士たちは、飛空艇の情報を得るために、アーガス城へと向かった。