ファイナルファンタジー3 リブートエディション 作:北村 貴之
「シドさんたち、元気にしてるかしら」
光の戦士のひとりの少女、ティエラが、バイキングより譲り受けた船・エンタープライズの操舵室の中で呟いていた。
今、エンタープライズは、凄腕の技師・シドの住むカナーンの町を目指して海上を進んでいた。
船はティエラと同じ光の戦士の少年のソールが舵をとっている。
「別れてまだそう時間も経っていないから元気にしてるでしょう」
ソールがそう返答した。
「そうね…」
ティエラはそう同意し、微笑んだ。
「…だけど」
ティエラが笑みを引っ込めて、また呟いた。
「どうした?」
ソールが尋ねる。
「ううん、なんでもない」
しかしティアラは首を振って、先の呟きを撤回した。
それからしばらくすると、大陸と町と思わしき、建物の並びが見えてきた。
「見えてきたわね」
ティエラが言う。
「ああ、カナーンの町だ。デッシュと来たとき以来だな」
ソールがそれに答える。
彼らはついに、シドの住むカナーンの町へと差し掛かっていた。
「おーい、ふたりとも。ついたぞ」
ソールが、仮眠室にいるマイムとヴェントに声をかけた。
「あら、そうなの?待ってて。準備するから」
マイムがそう言って、少し急ぎ気味に支度を始めた。
「準備できたら来てくれ。それまで僕はティエラと外で待機している」
「OK」
ヴェントがそう答えた。
ソールはそう言って船から降りていく。
「いよいよね」
ティエラが船室から、顔を出しながら言う。
「ああ、ついに空を飛んでの移動となるな。また木っ端微塵になるのはごめんだが」
ソールが言った。
ソールが発言した「木っ端微塵」とは、以前、光の戦士たちはシドと会った際に飛空艇に乗ったことがある。
その際に大地震の影響で発生した土砂崩れによる大岩をミスリルの船首をつけて、飛空艇ごと突撃させて粉砕させたのだが、その際に飛空艇も破壊されてしまったのだ。
幸いソールたちは無事だったが、肝心の飛空艇は当然ながらダメだった。
ソールたちはこれから飛空艇に乗り、浮遊大陸を離れて新たな世界へと旅立つ予定だった。
世界の危機というわけで、そうあんまりゆっくりもしていられない。
「あのときは、ほんとうに大変だったわ。服も泥だらけになっちゃった」
ティエラがそう言って、くすりと笑った。
「ああ。あの時は死ぬかと思ったよ」
ソールが苦笑いを浮かべて答える。
「もうあんな目にあわなきゃいいけどね…」
「それは私も同じよ。だけど、思い出しちゃったわ…」
ふたりはそう言って笑いあった。
「あ~ら。随分と仲がいいこと」
そこに、マイムが話しかけてきた。
「ああっ!マイム!?」
ソールが驚いて後ずさりした。
「何を驚いてるんですか?そんなにしなくてもいいじゃない」
マイムがソールの反応を見て笑っていた。ソールが赤くなる。
「ま、まったく…。普通に話してただけなのに」
「さあ、行くわよ!」
そして彼女は元気よくそう言うと、身を翻して町へと向かっていった。
「…まったく、マイムちゃんったら」
ティエラはそう言ってまた苦笑した。
それからしばらくして。
「さてと、忘れ物はないな」
ソールが言った。
「うーん、大丈夫。行きましょ」
ティエラは自分の荷物を確認すると、そう答えた。
こうして、光の戦士たちは再びカナーンの町へと足を運んだ。
トントントン…。
シドの自宅の扉を、ソールがノックした。
「はいはい、開いてるよ」
扉の奥からシドの声がした。どうやらいるようだ。
「失礼します」
光の戦士たちは、シドの家へと入っていった。
家の中は質素な雰囲気を感じさせる。
一般的な家屋で、中はきっちりと掃除されており清潔だった。
「シドさん、お久しぶりです」
ティエラが思わず呟いた。
「おや、あんたたちかい」
シドがリビングでコーヒーを飲んでいる。
奥さんがいるのだが、今は自宅にいない。買い物に出かけたのだろうか。
「お久しぶりです、シドさん」
ソールが言った。
「久しぶりだな。して、今日はどんな用かな?」
シドが微笑みながら答える。
そうシドが言うと、ヴェントが鞄から、アーガス王からもらった「時の歯車」の入った、焦げ茶色の木箱を取り出した。
そして、木箱を開けて、時の歯車の本体をシドに見せる。
「おお、それは『時の歯車』!」
「ええ。これがあれば飛空艇を作れるとアーガス王がおっしゃっていました」
ティエラが言った。
「よし、待っていろ。今、わしが改造して、お前たちが乗っている船を飛空艇に改造してやる!」
シドはソールたちが船でここまでやって来たことを知っていたようだ。
ソールたちも旅を長く続けてエンタープライズを手に入れたことはわかっていたのだろうか。
「お願いします!」
ソールがそう言って頭を下げた。
「お安い御用だ。昔、わしはアーガス王のもとで働いていて、時の歯車を使って飛空艇を作ったことがある」
「そうだったのね」
マイムが言った。
「ああ、そうだ。もしあれなら、久々にウルの町へと帰郷してみてはいかがかな?飛空艇を改造でき次第、そちらへと赴こう」
「いいんですか?」
ソールが問いかける。
「ああ、構わんよ。わしは小さいホバーを作ってそれでここへ戻ろうと思う」
シドが答える。
「じゃあ、お願いします!」
ソールはそう言って、深く頭を下げた。
こうして飛空艇を改造してもらっている間に、ソールたちはウルの町へと里帰りすることにしたのだった。