ファイナルファンタジー3 リブートエディション 作:北村 貴之
ウルの村へと久しぶりに帰ってきたソールは、村の商店街へと来ていた。
この商店街には孤児院で幼馴染の少女のサーシャとよく買い物に来たところである。
野菜や肉など、それぞれ取り扱いが違う店があり、商店街内には喫茶店や食堂もある。
光の戦士に選ばれる前、サーシャと喫茶店に入ったことがあるのだが、そこで旅の仲間であるヴェントとティエラと初めて出会った場所だった。
ふたりとも村に住む優れた商人の娘なのだが、実は養子なのだ。
両親はおらず、ソールが知らない間に引き取られたそうだ。
「おお、ソールじゃないか。ホームシックにでもなったのかい」
肉屋の店主が、ソールを見て話しかけてきた。
「ああ、ちょっと移動で使っている船を改造してもらっていてね、その間に帰ってきてしまったんだ」
ソールはそう言った。
「そうかい。まあたまには帰ってきて息抜きもいいかもなあ」
肉屋の店主は笑っていた。
その後、ソールは喫茶店へと入っていった。
サーシャと以前来た店だ。
ソールは喫茶店の扉を開けて、入店した。
ソールを出迎えたのは、顔見知りの女性のエメリだった。
黒と白のエプロンドレスを着たウエイトレス姿をしており、ソールと目が合うと彼女はニッコリと笑った。
「いらっしゃいませ…。あ、ソールじゃない」
喫茶店内を見渡すが、サーシャやマイムたちの姿はないようだ。
「あの、ここにサーシャとヴェントたちは来ませんでしたか?」
ソールがエメリに聞いてみた。
「あら? 来てははいないけれど…、あの子たちがどうかしたの?」
エメリはソールに聞き返してきた。
どうやらふたりは店には来てないようであった。
「そ、そうですか」
ソールは苦笑いを浮かべながら、エメリの前の席へと座った。
「もしかしてサーシャちゃんたちを探していたのかしら?」
エメリがソールに聞いた。
「違うんですが……」
ソールは苦笑いしながら答えた。
「そう、じゃ、あっちに座って」
「ありがとうございます」
エメリの言葉に、ソールは頭を下げた。
ソールは案内された席へと向かい、そこへ座った。
座り心地の良い椅子だった。
ソールはテーブルに置かれているメニューを見る。
ひとまずコーヒーを頼むことにした。
「あ、エメリさん。注文いいかな」
「はいはーい」
エメリがソールの席へとやってくる。
「あ、ブレンドコーヒー」
「わかったわ」
エメリはにっこりと笑いながら、その場を去っていく。
その後、ソールは喫茶店の窓から見える景色を眺めていた。
しばらく窓の外を見ていると、注文していたコーヒーが運ばれてきた。
コーヒーから湯気と香りが立ち込めている。
「お待たせ。あれ、どうしたの、何か意味深な顔をしちゃって」
コーヒーをテーブルに置いたアメリが、どこか元気のなさそうなソールの顔が気になり、声をかけた。
「いや、別に…」
「隠さなくても大丈夫よ。悩みがあるならお姉さんが聞いてあげる」
エメリがクスクスと笑った。
「まあ、悩みはないんですが…。旅は案外大変ですよ」
「そりゃ魔物を倒しながら進む勇者様の冒険の旅だもんね。苦労しない方がおかしいわよ」
エメリはいつの間にか、ソールの隣に座っており、彼に身を寄せながら話しかけてくる。
「いや、まあ……、そんなに苦労しているわけではないんですけど……」
ソールはエメリとの距離の近さにも驚いたが、さらに距離を縮めてくる彼女に対しても動揺していた。
「ならいいじゃない。マイムたちと仲良くやれているんだったら、それでいいわよ」
「ええ…」
ソールは曖昧な返事をする。
するとエメリは何かを思い出したような顔をし、
「あ、ソールくん。もしかして、あの3人の誰かに恋してるとか?」
「えっ!?」
ソールが唖然とした顔でエメリを見た。
「あら、図星?」
エメリはいたずらっ子のように笑っていた。
「そ、そんなんじゃないですけどね」
ソールは少し顔を赤らめながら否定した。
「ふふっ…。可愛い」
エメリはさらにソールに体を寄せてくる。
「ううっ…」
その時、喫茶店の扉が開いた音がした。
「おや…?」
エメリがその音に気づき、振り返ると同時に驚きの声をあげた。
そこにはマイムがいたのだった。
「…ソールくん!?」
マイムはソールの隣に座っているエメリを見て驚いた顔をしていた。
「ち、違うんだ、マイム!」
ソールは慌てて弁明した。
「えっと、何が違うのかな?」
エメリがソールに言う。
「そ、それは…」
ソールは言葉に詰まってしまう。
「んー? あっ、マイムちゃんいらっしゃい」
エメリはニコニコと笑いながら、マイムを迎える。
「……あ、こんにちは」
マイムは驚いた顔からすぐに切り替え、エメリに挨拶をした。
「今ね、ソールくんから相談を受けていたんだけど……、あ、そうそう、マイムちゃんも座っていいよ」
「は、はい…」
マイムは戸惑いながらも、ソールとエメリのいる席へと座った。
(別に恋愛の相談じゃないんだがなあ…)
ソールは心の中で困惑していた。
「ちょうどマイムちゃんの話をしてたの。あなたって、ソールくん好き?」
エメリがマイムに言う。
「え、ちょっと!?」
ソールは声を荒げた。
「はあああっ!?」
マイムもいきなりの発言に顔を赤らめる。
「エメリさん!別に僕はそんなことを言ったわけではないですよ!」
ソールはエメリに抗議する。
「そ、そうですよ!いきなり何を言い出だすの…!」
マイムもエメリに言う。
「あら、違うの?」
エメリはきょとんとした顔をしていた。
「違います!」
ソールとマイムはほぼ同時に同じ言葉を口にした。
(まったく……)
ソールはため息をつく。
そんなふたりを見ていたエメリは、マイムに近付き、
「あら。この服、旅の道中で買ったのね。白魔導士なんてかわいい~」
マイムが着ている、袖に赤いギザギザ模様のある白いローブに気づいたようだ。
エメリはマイムと顔見知りのようで、普通に会話をしていた。
「あ、ありがとう…」
マイムは若干戸惑った様子で礼を言う。
「ふふっ、マイムちゃんはおしゃれなのね」
エメリは優しく微笑んでいた。
そして、マイムの青いミニスカートに手をかけ、
「どんなの履いてるのかな~?」
と言いながら、ソールに見えるようにマイムのスカートをめくった。
「へっ!?」
マイムが小さな悲鳴をあげた。
一瞬、目の当たりにしたソールの顔が驚愕に染まる。
「ま、待つんだ!」
慌ててソールが止めようとしたが、時すでに遅し。
エメリにミニスカートをめくられたことにより、マイムの鮮やかな青と白の縞柄のショーツが露わになっていた。
「エメリさん…!もうっ…!」
マイムが頬を赤く染めてエメリを睨んでいた。
「かわいいじゃない!下着も服に合わせてるなんてね」
ソールはマイムの縞柄のパンツを目にし、ドギマギしていた。
マイムのきれいな白みのある太ももと脚だけでなく、パンツも魅力的に思ってしまったのだ。
ソールはまじまじとマイムのパンツを見てしまう。
「どうしたの? ソールくん」
エメリがそんなソールに気づき、声をかけてきた。
「えっ、いやっ……」
ソールは動揺して顔を赤くし、視線を逸らした。
「ふーん、なるほどねぇ」
エメリはニヤニヤしながら、テーブルから離れていく。
そして、エプロンドレスのスカートを持ち、
「マイムちゃんったらまだまだ子供なのね~。私なんてほら。こんなのよ」
そう言ってスカートをめくった。
すると、彼女の白いパンツがあらわになる。
エメリのパンツは、紐で結ぶタイプのもののようだった。
「ちょ…、ちょっと…!お客さんの前なのに…!」
マイムは顔をさらに赤くし、動揺していた。
「あれ?どうしたの?」
エメリはマイムの反応を楽しむかのように笑っている。
「い、いいから早く隠してください!もう、ソールくんはあっちを向いて!」
(やれやれ……)
そんなふたりの女性のパンツを目の当たりにし、ソールは顔を紅潮させて動かなくなっていた。
「ごめんごめん、マイムちゃん」
「あっち方面の客がやって来ても知りませんよ…」
マイムはため息をつきながら、そう言った。
「ところで、マイムちゃん、注文はある?」
エメリが、マイムの注文を聞く。
「えっ、あ、それではミルクティーをお願いします」
「了解」
エメリがミルクティーを用意するために、一旦その場から離れた。
「まったく…。エメリさんはいつもあんな感じだから…」
マイムは呆れていた。
「あ、知り合い?」
ソールがエメリのことについてマイムに聞いた。
「知り合いも何も。実はね、あたしとヴェントとティエラに戦いを教えている人なの」
マイムはため息をついた後、ソールに視線を向けた。
「へえ、意外だな。戦わなそうな格好してるのに」
ソールがエメリを見て言う。
「見た目で判断しちゃだめよ。彼女はあれでも元サスーン城の兵士だったんだから」
マイムは微笑みながらソールに言う。
「なるほどねぇ…」
ソールは納得した顔をしていた。
しばらくして、エメリがミルクティーを持ってきた。
「はい、ミルクティーね」
「ありがとうございます」
マイムがエメリに礼を言った。
エメリはテーブルを離れ、仕事に戻っていた。
ミルクティーを一口飲んだ後、マイムが言う。
「ところでソールくん。さっきエメリさんと何をしてたの?」
「え?それはだな…」
ソールが冷や汗をかいていた。
「あ、その…」
ソールはどう説明したらいいかわからず、戸惑っていた。
「別に変な話をしていたわけじゃないさ」
「ふーん」
マイムは若干、不満そうな顔をしていた。
そんなふたりをよそにエメリがニコニコしながら仕事をこなしていた。
「え?食事会?」
「そう。せっかく帰って来たんだから、やらないと、と思ってね」
孤児院へと帰宅していたソールが、サーシャと話をしていた。
「1か月も経ってないのに?」
「それでも私たちにしてみれば結構長い間だと思うんだけど?」
ソールとサーシャはお互いの顔を見合わせ、笑い合った。
「そうだね」
ソールは孤児院での暮らしに懐かしさを感じていた。
ここで久々に皆で集まって食事をするのも息抜きになりそうだと思っていた。
「みんなも喜ぶと思うよ!」
サーシャが微笑む。
「まあ、その前にマイムたちもせっかくだし誘おうと思うんだけど…」
「ああ、ティエラちゃんには声をかけてあるわよ」
ソールの言葉に、サーシャが頷いた。
「え!?来るのか?」
お嬢様であるティエラが来るのをソールは予想していなかった。
彼女たちはここで出るものよりもいいものを食べていると思っていたからだ。
そんなことを考えているソールの思考がサーシャに気づかれたのか、彼女がクスッと笑っていた。
「大丈夫よ。あの子たちにもここでの食事を楽しんでもらえると思うわ」
「そお?」
ソールは驚いて聞き返してしまう。
サーシャは頷いた後、口を開く。
「ティエラちゃんがね、ここでの事を知りたいって、言うもんだから誘ってあげたの」
「そうなのか…。ティエラがそんなことを…」
ソールは少し意外そうな様子だったが、納得もしていた。
(まあ、僕のこともそうだが、この孤児院のことを知らなさそうだしなあ…)
ソールは心の中でそうつぶやいた。
そして、
「じゃあ、そうと決まれば、マイムとヴェントにも声をかけないとね」
ソールは椅子から立ち上がり、足早に部屋から出て行った。
「もう、せっかちなんだから」
そんなソールの後姿を見ながらサーシャが微笑んでいた。
「え?孤児院で食事会ですって?」
ソールは現在、マイムとヴェントに声をかけて、村の広場にいた。
マイムが首を傾げながらソールに聞き返す。
「うん。サーシャが食事会を企画してくれたんだ。もしよかったら来てほしいって。あ、ティエラは来るみたいだ」
ソールが頷きながら言うと、
「そうなの。じゃ、来ようかな」
とマイムが承諾してくれた。
「ほ、本当か!?」
ソールが嬉しそうに声をあげる。
「あなたのことも、孤児院の事も知れるいい機会だからね。あちらで食べてるご飯にお呼ばれされてもいいよ」
「ありがとう!」
ソールがマイムの手を握り、感謝の言葉を述べた。
「あたしも行くわ。よろしくね」
ヴェントも来てくれるようだ。
「分かった!じゃあ、みんなに楽しみにしているって伝えておくよ」
ソールは張り切った様子で、孤児院へと走っていった。
そんなソールの姿を見ながら、マイムがつぶやく。
「なんかソールくん、村に帰ってきてからなんか生き生きしてるみたいだけど」
「でもまあ、いいんじゃない?久々の故郷なんだから」
ヴェントが少し笑みを浮かべて言う。
「そうね。あたしたちもソールくんを見習わないとね」
マイムは微笑んでいた。
こうして、光の戦士たちと孤児院の子供たちの食事会は決定したのだった。