ファイナルファンタジー3 リブートエディション   作:北村 貴之

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其之34 ウルの村 孤児院での食事会

ここはウルの村の孤児院の中の厨房。

今日は、ソール、マイム、ヴェント、ティエラ、ウルの村の出身の4人の光の戦士が帰って来ていたというわけで、孤児院内で食事会が行われることになった。

光の戦士の中でも唯一男であるソールは、この孤児院の出身だ。

年齢は孤児院の子供たちの中でも年長で、子供たちを引っ張っている存在だった。

彼の幼馴染である少女で同年代のサーシャの提案で、今回の食事会が行われるようである。

村の金持ちの商人の養子であるマイム、ヴェント、ティエラの3人も参加することになった。

ソールや孤児院の事を知れるきっかけになるかもと、今回の食事会の参加を決めたようだ。

 

サーシャが、いま年下の子供たちと厨房内で調理をしている。

厨房内には美味しそうな料理の臭いが漂っていた。

「よし、みんな頑張って」

サーシャが子供たちに声をかけながら、せっせと野菜を切ったり、炒め物を炒めたりしている。

孤児院の子供たちだけではなく、孤児院を管理する大人たちも調理に加担していた。

ニーナという女性が、スープを煮込んでいる。

ニーナは鍋をかき混ぜながら、マイムたちの顔ぶれに少し驚いていた。

彼女たちのことはあまり知らなかったが、いざ来ると知ると、驚かざるをえなかった。

「しかし、あの家のお嬢さんたちがそろってくるなんてね」

「えへへ」

サーシャが照れたように笑っている。

こうして、厨房内はあわただしくも、楽しい雰囲気に包まれていた。

 

 

そして、料理を作り終えると、子供たちは食堂に運んでいった。

ウルの村の孤児院は大部屋が数部屋あり、30人以上を収容できるようになっている。

ソールがテーブルのセッティングなどを行っている。

光の戦士の一員といえど、ソールもこの孤児院の育ちなので、食事会の準備に加わっていた。

サーシャたちに丸投げするのはさすがによくはないと判断し、せっせと場づくりに集中していた。

(どんな反応するのかな、マイムたち)

そう思いながらも、ソールは手を動かしていた。

 

食堂内に子供たちが集まり、席についていた。

「よし…。あとはあの子たちね」

サーシャがマイムたちがいないのを確認していた。

彼女たちが来れば食事会がスタートとなる。

ソールは全員の座席をチェックする。

「あと…、3人来るんだよな」

ソールがつぶやいたとき、食堂のドアが開き、孤児院で働いている女性が何かを知らせにやって来た。

「お嬢様たちがおいでになりましたよ」

「はい、今迎えに上がります!ソール、一緒に来てよ」

「あ、ああ」

サーシャに連れられて、ソールは孤児院の玄関へと向かって行った。

 

玄関にはマイムたちが立っていた。

マイムたちの服装は、旅を始めるときの服装に戻っていた。

マイムは白いワンピースに青い上着を羽織った、清楚な格好をしていた。

灰色と白銀色の中間点の色あいをしたセミロングの髪が、マイムの美しさを際立たせていた。

ヴェントは白いブラウスに黒の短いプリーツスカートと、どこか学園の制服を思わせるような衣服だった。

ティエラはというと、青いブラウスに紺色のミニスカート姿だ。フードのついた緑色の長いロングコートを羽織っている。

旅の道中で購入した服装から、お嬢様らしい服装に戻していたようだった。

そんな彼女たちを見たソールは、どこか懐かしさを感じていた。

「食事会の招待ありがとう。今夜はよろしくね」

マイムがソールとサーシャに向かって、ウインクをしてそう言った。

ソールの頬が少し赤くなる。

(ふぅ…。やっぱりマイムはこの服がなんやかんや似合うよなあ)

「あ、ああ。今日はこちらこそ…。会場はこちらだ」

そんなことを考えながらも、ソールたちは彼女たちを食堂まで案内した。

緊張気味のソールを見たサーシャ。自分の育った場所に別の女の子たちを誘うのは恐らく人生で初めてなのだろう。

そう考えると、サーシャは少しおかしくなった。

「あははは…」

突然笑い出したサーシャを見て、マイムたちが目を丸くして彼女の方を見た。

「ど、どうしたの?」

そんな彼女たちに、ソールは慌てる。

「気にしないで!さあ、行こう行こう」

「ええ…」

ソールはそう言うと食堂のドアを開けた。

「うわあ…、凄いわね」

マイムが感嘆の声を上げる。

食堂にはたくさんのテーブルとイスがあり、孤児院の子供たちが席に座り集まっていた。

テーブルの上には、孤児院の子供たちや運営する大人たちが作り上げた美味しそうな料理が並べられている。

「うわあ、おいしそう」

ヴェントが料理を見て、目を輝かせている。

「これ、全部子供たちが?」

マイムがソールに尋ねた。

「ああ…、みんなで一緒に作ったんだ」

「そうなの。頑張ったのね」

そう言うとマイムは食堂にいた子供たちに向かって手を振った。

子供たちは嬉しそうに手を振っている。

(ここでは結構馴染んでるんだな)

弟や妹同然の子供たちを見て、ソールは嬉しそうに眺めていた。

ソールやサーシャ以外の年上のお姉さんを見て、子供たちは緊張している子もいれば、テンションが上がっている子もいた。

マイムたちは食堂内の席を見回す。

「ええっと、あたしたちはどこに座ればいいの?」

サーシャがそんなマイムに声をかける。

「あっち側ね。あたしもあなたたちの隣に座るから」

「わかった」

サーシャに指し示された場所へとマイムたちは向かい、そこへ座った。

「ええっと、僕は」

ソールはサーシャに座る席を確認した。

「あんたはねえ、あたしたちの向かい側。あっちよ」

「あ、ああ」

ソールは言われるまま、自分の席へと向かう。

そして、彼は自分の席へと着いた。

そんなソールが座った席の向かい側にはサーシャ、マイム、ヴェント、ティエラの4人が座っていた。

見慣れてはいるが可愛らしい美少女が目の前にいることになる。

(うわあ……)

思わず声を上げそうになったソールであったが、なんとかそれをこらえた。

そんなソールにマイムが話しかける。

「さあ、食事会を始めましょう?」

「あ、ああ…」

そんな会話が終わると同時に子供たちの歓声が聞こえてきた。

ソールが子供たちを一度大人しくさせようと声を上げる。

「よーし、お前たち、一旦黙ろう!今日はな、ここで食事会を行うことになりました。今日はスペシャルゲストを連れてきてます!」

ソールの一言で、子供たちが静かになった。

「じゃあ、紹介するね」

サーシャはそう言うと席から立ち上がった。

そんなサーシャを見て、マイムたちも立ち上がる。

「今日はソールと同じ光の戦士であるこの3人が遊びに来てくれました。みんな拍手!」

サーシャの言葉に子供たちは一斉に手を叩いた。

その拍手を聞いて3人の少女たちはそれぞれお辞儀をする。

そして改めて自己紹介を行うことになった。

「ええっと…。ソールくんと一緒に旅をしているマイムといいます。よろしくね」

マイムが少し恥ずかしそうに自己紹介をした。

「同じくヴェントです」

ヴェントはいつもの調子だ。

「ティエラと申します。今夜は楽しい夜にしましょうね」

そんなティエラの挨拶が終わると、ソールが立ち上がる。

「みんなも知ってると思うけど…、僕が光の戦士となったソールです」

「あはは、みんなあんたを知ってるけど?」

サーシャが笑いながら突っ込みを入れた。

「そ、そうだな…」

ソールが照れくさそうに頭を掻く。

それをみて、みんなが笑い声をあげた。

「じゃあそしたらみんな、乾杯の音頭を上げるわよ。準備はOK?」

サーシャはジュースの入ったグラスを持ち、乾杯の音頭を取ろうとしている。

「はーい」

そんなサーシャに子供たちが返事をした。

「じゃあ、みんなグラスを持って!」

ソールはそんな中でジュースの入ったグラスを手に持った。

みんなが同じようにグラスを持つと、サーシャは声を上げる。

「では、この食事会を開くことになった光の戦士に感謝を込めて!乾杯!」

「かんぱーい!」

子供たちが一斉にグラスを掲げた。

ソールたちもグラスを掲げて、子供たちと乾杯を交わす。

こうして食事会は幕を開けたのであった。

 

食事会は大賑わいとなった。

最初は緊張気味だったマイムたちだったが、ソールの子供たちと一緒に楽しそうに食事をしている姿を見て、自然と笑顔になっていった。

「それにしても…、凄いわね」

マイムが感嘆した表情でソールに声をかける。

「え?」

「こんなにたくさんの子と暮らしてるなんてね」

「まあね…」

ソールはそう答えると軽く頭を下げた。

「ここでどういう生活をしてたの?」

ティエラが質問をしてきた。

「あたしも気になるわ」

ヴェントも興味津々だ。

「ああ…、そうだな。ここで打ち明けておこう。僕はこの子たちと畑仕事をしたり、勉強とかをしたりして暮らしているんだ」

「勉強、ねえ。例えばどんなことを?」

マイムがジュースで口を潤した後にそう言った。

「まあ、言葉とか、計算とか、あとは世の中の情勢とかを勉強したりとかだな」

「なるほどね…」

マイムがうなずく。

「うん、そうなんだよ。僕はここで他の子供たちと色々と勉強していたんだ。文字を読んだり、計算したりね」

ソールはグラスを傾ける。

そんなソールを見てティエラが質問する。

「そうなんだ…。あ、ちなみに先生とかは?」

「孤児院で働いてる大人たちが教えてくれているんだ。農作業とかも」

「農作業かあ…。私もしてみたいわ」

マイムが興味深そうにソールの話を聞いている。

「ああ…、時間があれば一緒にやってみようか?」

「え?ほんと!?」

ソールの言葉にマイムが少し驚く。

そんなマイムにソールはうなずいて見せた。

「ああ、もちろんさ。世界を救ったら一緒にやろう。君たちも」

「ありがとう!それじゃあ約束よ!」

そんな二人を見てティエラが微笑む。

「ふふ…」

そんなやり取りを黙って聞いていたサーシャは、何気にマイムたちと仲がよさそうなソールを見て、なんだか安心をしていた。

(ソールってここまで仲が良くなってるなんてね…)

サーシャがそう思っていると、ちょうど猪の燻製を食べ終えたソールが彼女に声をかけてきた。

食べていた猪は、村の猟師が捕らえた大柄な個体だった。

先日漁師から肉を譲ってもらえたものだ。

「あ、そうだ、サーシャ。せっかくこんな機会だから、マイムたちと仲良くなれるチャンスじゃないか?」

「えっ」

サーシャが唖然とした顔をする。

それを聞いていたマイムが席を立ち、サーシャに話しかけてきた。

「へ~え。あたしもあなたがどんな人なのか気になってたんだ」

「え…、ええ」

思わず返事をしてしまうサーシャ。

そんなサーシャにマイムは少し近寄ってくる。

「あのね?今日ここに来たのはあなたと会うためだったのよ」

「えっ?」

「あたしね…、あなたと会って話をしてみたかったの」

そう言うとマイムはソールの方に顔を向けると声を出した。

「ねえ、ソールくん?」

「あ、ああ…」

ソールが少しぎこちない声で返答した。

気を紛らわせようとジュースを飲む。

「ソールくんってどんな子なの?付き合いの長いあなたなら知ってそう」

「つ、付き合いって…。別にあたしはこの子の彼氏ってわけじゃないけどね…」

サーシャが頬を赤くして言った。

(お、おい…!)

それを聞いていたソールが更に頬を赤くする。

「え?親しいんでしょ?一緒に暮らしてる時期が長いんだったら」

「そ、それは…」

マイムの追撃にたじたじとなるサーシャ。

(おい、あんまり変なこと言うなよ……!)

「う…。うん。彼は少しバカなところもあるけど面倒見がいいっていうか…。率直に言えば面白くて優しい人かな」

「お、面白い…?」

ソールが困惑した表情になる。

「まあ、面白いかは置いといて…。優しいよね。彼」

マイムがいたずらっぽい笑みを浮かべてそう言った。

「う、うん…」

サーシャとソールが照れているのを見て、ヴェントとティエラが笑っていた。

「あはは、2人とも可愛いとこあるじゃない」

「うふふふ…」

そんな3人を見て、ヴェントは笑みを浮かべているのであった。

(な、なんだよこのアットホーム感…、会ったばっかりなのにめちゃめちゃ仲良さそうだ)

ソールは困惑すると共に安心感を覚えていた。

(なんだか気が楽だな…。気のせいかな)

ソールはそんなことを思いながら、ジュースの入ったグラスを口に運んだ。

「あ、そうそう…」

マイムがサーシャに話しかける。

「ん?」

「あなたたちと仲良くなりたいと思って、よかったら今度、少しの間でもいいからあなたたちの旅についてってもいいかな?」

「え?」

ソールがサーシャの突然の発言に驚く。

「ソールから聞いたんだけど、あなたたちが使ってる船を空が飛べるように今改造してるんですって?それを聞いたら、あたしもあなたたちの見てる景色が見てみたいなあって」

サーシャが目を輝かせていた。

「ねえ。飛空艇ができたら、この子をほんの少しだけでいいから、まだ行ってない場所に行ってみるのはどう?」

マイムはそうソールに提案する。

「ね?いいでしょう?」

「うーん」

ソールは少し考える仕草をした。

「安心して。そのままこの子を旅に連れまわすわけじゃないから。ほんの数日だけでいいの。ね?」

マイムが正面のソールに、上目遣いでお願いをした。

「ねえ、ソールくん…?」

そんなマイムのおねだりにソールはマイムから視線をそむけていた。

可愛い顔のマイムにそう言われると、否定をすることができなかった。

「そうだなあ…。確か地図にまだ行ってない村があったと思うから、そこに行こうか」

と、つぶやくように答えた。

「やった!」

マイムはそんなソールの反応を見て嬉しそうにするのだった。

そんな光景をヴェントやティエラたちは微笑ましそうに眺めていた。

そんな折、マイムが思い立ったように立ち上がった。

「よしっ!じゃあ飛空艇が来たら、5人でその村に行ってみましょ」

「賛成!」

ヴェントがマイムに賛同する。

「あ、もちろんあなたも一緒にね。ティエラ」

マイムが隣に座っているティエラに話しかけた。

「あ、あたしも光の戦士だからもちろんついてくるけどね」

ティエラも笑顔でうなずいた。

(5人……か)

ソールは何となく複雑な心境になった。

そんな時だ。

ヴェントが突然こんな提案をしてきた。

「ねえ、よかったら他の子達も誘いましょ?こういうのって人数いたほうが楽しいしね!」

「え?」

ソールは食堂内にいる子供たちを見回した。

しかし、全員を連れていくことは飛空艇の定員の関係でさすがに無理だった。

「う~ん。こいつら全員は連れてけないなあ…。6人までが限界そうだから、あの船」

ソール自身も子供たちに知らない世界を見せてあげたかった。

しかし、ソールたちの旅の目的はあくまで世界を救うという重要なもののため、決して遊びではなかった。

「そうなんだ。残念だけど、仕方ないわね」

ヴェントは少し寂しそうに言った。

「ま、まあ…。でもまたみんなでこうして集まれて楽しいし。これはこれでいいんじゃない?」

そんなソールのつぶやきを聞いて、マイムがソールに顔を近づける。

そして彼の耳に口を寄せた。

(ん…?)

「当然、あなたも来るよね」

「え…」

(そ、それってどういう……)

ドキッとした表情でマイムの顔を見るソール。

「女の子4人で知らない村へ飛空艇に行けなんて言わないよね?」

「あ、ああ…。そのつもりだ。僕も光の戦士だからね」

ソールが観念した表情になる。

それを見てサーシャが笑っていた。

「あはは…。ソールってマイムに弱いのね」

「う、うるさいな…」

ソールが顔を赤くしながらジュースを口にする。

そんなソールにティエラが近づいてきた。

「ふふ、彼ね、意外と可愛いところがあるの」

そう言うとティエラはソールに可愛らしくウインクした。

(ううっ…。だが、こんなティエラちゃんもかわいいなあ…)

ソールはティエラにまでからかわれた気がして少し悔しい気持ちになったが、女の子らしい様子を見てどこかうれしい気分になった。

(まあ…、いいか。これも旅の思い出ってやつだな)

ソールはそんな気持ちでジュースを飲み干したのであった。

そして、まだ手をつけていない魚のムニエルを食べ始める。

ちょうどヴェントが、鶏の照り焼きを食べ終えたようだった。

「ここの料理美味しいわね。ソールくんって毎日こんなものを食べてたなんて」

「みんなでこうして囲んだらなんでもうまいさ」

ソールが満足げな表情でヴェントに返答した。

(そうか…。一人じゃない食事はおいしいんだよな)

だが、今はみんなでこうして食事を摂っている。

それが何より幸せなことに感じられた。

ソールは光の戦士としての使命を、この楽しい食事会のとき、いや、この村にいる間、忘れていた。

それだけ村が恋しかったということだろう…。

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