ファイナルファンタジー3 リブートエディション   作:北村 貴之

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其之35 ウルの村 飛空艇完成!

ウルの村の孤児院にて行われた、光の戦士の一時的な帰郷の際の、子供たちとの交流を兼ねた食事会は幕を閉じた。

光の戦士のひとりであった少年のソールが帰って来たと知ると、慕っていた年下の子供たちは明るく出迎えてくれた。

ソールの幼馴染の少女のサーシャも、一時的とはいえ帰って来てくれたことに喜んでいた。

村の商人の養子として育てられた少女のマイム、ヴェント、ティエラも今回の食事会に誘われ、孤児院の食事を堪能していた。

彼女たちは気になっていたソールのことや孤児院の事を今回の食事会を機に知ることができ、満足そうにしていた。

 

そんな孤児院内の厨房では、子供たちが食器の洗い物に勤しんでいた。

食堂内では片づけが行われており、そこでも子供たちがせっせと動いている。

孤児院には世話をしてくれる大人たちがいるのだが、基本的には子供たちが自主的に動いて行動しているのだ。

普段の畑仕事もそうであるが、大人たちが行っていることは率先してやるのがこの孤児院での暗黙のルールだった。

「いやあ、今日は大成功だったなあ」

綺麗に洗われた食器を一枚一枚丁寧に拭きながら、ソールは満足げに笑みをこぼした。

そんな彼の隣には、食器についている洗剤を水で洗い流すサーシャがいた。

彼女も、久々にソールの隣で仕事ができたので、その表情はどこか嬉しそうだ。

「ソール兄ちゃんが帰ってくるなんて思わなかったよ」

「たまにはお前たちの顔も見たいからな」

食器を洗いながら話しかけてくる子供たちに、ソールは優し気に笑みを浮かべた。

弟や妹のような存在である年下の子供は、ソールにとっては活力でもあった。

「はい、ソール。あとは私がやっておくから、あんたは子供たちを見てあげて」

「ああ、ありがとうサーシャ」

ソールが手にしていた皿を、サーシャが横から掻っ攫う。

普段であれば、自分の仕事だからと自分でやるのだが、今回は子供たちの世話もあるのでサーシャの心遣いに甘えさせてもらうことにした。

そんな彼らのやり取りを見ていたのか、子供たちは楽しそうに笑みを浮かべる。

「やっぱ二人はお似合いだね」

「でもさ、あの3人のお姉ちゃんたちも似合ってそうだけどなあ」

「あのマイムってお姉ちゃん、ソール兄ちゃんが目線をちらちら向けてた気がするけど気のせいかなあ」

そんな会話がソールの耳に聞こえてきたが、あえて無視をして、片付けが終わっているであろう食堂へと足を運んだ。

 

(さて、きれいになってるかな…)

そう思ってソールは食堂内へと入った。

そこには、なんとマイムとヴェントとティエラがいた。

まだ帰っていないことに驚くソール。

「あ、君たちは…」

「ええ。食べただけじゃ悪いかなと思って、手伝わせてもらったの」

マイムが代表してソールに答えると、ソールは安堵した。

「そうか、ありがとう。…子供たちが何か言ってなかった?」

「いえ、特には。ただ…」

「ただ?」

ティエラが何かを言い淀んでいるので、再び聞き返すソール。

しかし、その前にヴェントが口を開く。

「…結構活発なのね。ここにいる子たち」

そう言ったヴェントだが、ソールには少し理解ができなかったようだ。

「ま、まあ普段からあんな調子だから…。あと、君たちのような子が来たからさらに元気になったと思うよ」

ソールは笑いながら答えた。

しかし、自分が厨房内にいる間、子供たちと何かしらの交流をしたのは確かだった。

ティエラが意味深に、豊かに育った胸に隠すように両手を当てていた。

青いブラウスを着ているのだが、胸の形がくっきりとわかる。

普段から来ている緑色のフード付きのコートは食事の邪魔なのか脱いでいた。

まだ性を知らぬ子供たちにとっては、目のやり場に困ったのだろうか。

「っ!? えっと、何かあったの?」

「……ソールくんは気にしなくても大丈夫よ」

マイムはソールが感づいているのを分かったうえで、笑みを浮かべた。

「う、うん…」

ソールは子供たちに何か吹き込まれたのではと思い、いろいろと聞こうとしていたが、サーシャが食堂にやって来たことでその話は一時中断となった。

「あ、あなたたち。片付けありがとうね」

「これくらいのことならいつでも言ってね」

ヴェントがサーシャに笑顔を浮かべる。

そしてサーシャはマイムとヴェントとティエラを見る。

「子供たちも見ながらやってくれたのね?ありがと」

「いえいえ。元気な子たちでうらやましいわ」

ティエラがサーシャにお礼を言った。

ソールもサーシャも、子供たちがみな、ティエラたちと仲良くできたことを喜んでいる様子だった。

 

「それじゃ、あたしたちはこれで」

「ええ。またいつでも来てね」

サーシャがそう答えると、マイムたちは孤児院の外に出た。

彼女たちはもう帰るようだ。

子供のうち一人が見送りで一緒に外に出て来たので、ソールは手を振りながら挨拶をして扉を閉めた。

「ふぅ。旅の仲間と食事するのもなんか体力がいるなあ…」

「緊張してたからじゃない?」

ソールはきれいになった食堂へと戻りながら、サーシャと話していた。

「そりゃそうさ。あんなにかわいい女の子を目の当たりにしながら見慣れた場所で食事なんて結構きついさ」

「へ~え」

「なんだよ、『へ~え』って」

ソールがサーシャの言動に不信感を覚える。

「なんでもないよ」

「…変わらないな、サーシャは」

普段通りのサーシャに、ソールは安心していた。

長い間留守にはしていたが、変わってくれていなくてよかったと思っていた。

「そうそう。お茶を淹れるんだけど飲まない?」

「あ、いいのか?じゃあお言葉に甘えて」

サーシャがお茶を淹れようとするので、ソールは喜んでもらうことにした。

 

 

一方、食事会を終えてひと段落していた、年下の子供たちは会話に花を咲かせていた。

会話の内容は、そう。今日やってきたソールの仲間の3人の女の子たちだった。

「ねえ。ソール兄ちゃんってあんなかわいいお姉ちゃんと旅してたんだね」

「うんうん。サーシャ姉ちゃんに隠れて浮気してたりして」

「それもありえるぞぉ~」

会話をしていたのは、少年2人と少女1人の3人だ。

その会話に割って入ったのは、今年で10歳となる男の子、トニーだった。

「ねえねえ!その人たちってソール兄ちゃんとどんな関係なの?」

トニーは興味津々のようで、年少組が集まっているところに割り込んできた。

「んー?とってもいい仲だと思うよ」

「なんか距離も近そうだし、美男美女だし」

「そういえばティエラってお姉ちゃん。ソール兄ちゃんと歳が近そうなのに、あのおっぱいの膨らみ、すごかったな」

助平そうに話していた男の子の言葉に、トニーは同調するように言葉を発した。

「あのお姉ちゃんってすごかったよね…。ソール兄ちゃん、まさか毎晩あのおっぱいを…」

「あのワイシャツ見た?おっぱいでボタンが弾けそうなくらいだったけど」

ティエラのワイシャツをちらっと見たが、豊かに育ったあの大きな胸で、着用しているワイシャツのボタンが弾けてしまいそうだったのは確かだった。

何を食べてああなったのか、子供たちは気になっていた。

あと、旅の道中で慕っているソールにどうしているのかも気になるところだ。

「でも、マイムとかいうお姉ちゃんもヴェントとかいうお姉ちゃんもなかなかスタイルがいいよね」

女の子が憧れるように話していた。

「3人とも脚がきれいで肉付きもいいし。ああなりたいなあ」

トニーはマイム、ヴェント、ティエラのスタイルが気になっていたようだ。

「あの3人、やっぱりソール兄ちゃんの恋人なのかな?光の戦士といかいいつつも、デート旅行だったりして」

「かもねえ」

男の子と女の子も話題は尽きないようだった。

 

 

「ねえ、ソール」

お茶を飲み終えたサーシャとソール。

サーシャが、食堂を後にしようとしているソールを呼び止めた。

「どうした?」

「ええとね、気になることがあって」

「あ、あの子たちのことね」

ソールはいち早く、旅の仲間のことを当てたのだった。

「そ、そうよ。あんたが旅してる間にあの子たちのどちらかと恋仲にでもなってないかなって気になってたんだけど」

「…はぁ。お前も気になってるのか…」

ソールが顔を赤くしながらため息をついた。

「何年あんたを見てると思ってるのよ」

「そうだよね…。で、じゃあ確かめてみる?」

ソールはいたずらを思いついた子供のような表情だった。

「…な、何をする気よ?本番をやるにしてもまだ歳的に早いと思うよ」

サーシャは訝し気にソールに尋ねる。

「冗談だよ」

「んなああああ~っ!?」

サーシャが顔面を紅潮させ、ソールに吠える。

「何よそれ!まるで私が欲求不満みたいじゃない!」

「悪い悪い!怒らないでくれ」

顔を真っ赤にさせて怒っているサーシャに、ソールは両手を合わせて謝る。

だが、少しサーシャも気になっているところもあった。

(うーん…、こいつは確かにあの3人と一緒にいた時間は長かったからなあ……)

旅の最中のソールの様子を思い浮かべながら、サーシャは少しうらやましく感じた。

(でも、私だって旅をしてた頃はチャンスはあったのよねえ…。女の子4人の旅もよさそうじゃない)

そう思っていた。だが、飛空艇ができたら、一時的とはいえサーシャはソールたちに同行してもらえると聞いている。

まだ行っていない村があるそうで、そこに連れて行ってくれるそうだ。

気を取り直し、サーシャは話を戻す。

「コホン。まあ、飛空艇とやらができたら、連れてってくれるのよね、行ってない村とやらに」

「ああ。だが、またここに帰ってきてもらうよ。これからさらに危険な場所へ行かないとだから」

ソールは、新たな世界へと行こうとしていた。しかし、このままサーシャを連れていってはならない気がしていた。

彼女を危険にさらすわけにはいかないからだ。

「ちょっと残念だけど、私もあの子たちをもっと知れるからいいけど」

サーシャは残念がりながらも、旅に同行することで改めてマイムたちのことを知りたいと思っていた。

ソールは旅でいろいろと勉強できたし、成長できたという実感があった。

「次の世界には一緒に来れないけど、あんたの分もあの子たちを守ってあげるから。安心して世界を救ってきなさい」

「言われなくても」

ソールとサーシャは仲睦まじそうにしていた。

「そういえば、あの子たちの服を買いに行かないとね。あ、あと、ここで使えそうなものとかも買い揃えないと」

サーシャは村についてからのこれからのことを思い浮かべていた。

「はははっ。熱心だなあ」

「気がついたらあんたみたいになっちゃった」

「俺もサーシャみたいに勉強熱心だったらなあ。あの孤児院で何かできたかもな」

「……何言ってるのよ。あんたは私にないいいところがたくさんあったのよ?だからあの村でずっとやってこられたんじゃない」

「ありがとう、サーシャ」

ソールは、彼女の励ましの言葉に感謝した。

 

 

 

そして、翌日…。

ソールは目覚めて、着替えを済ませて外に出て、畑にいた。

光の戦士であった彼だが、なぜか畑仕事の準備をしていたのだった。

孤児院にいたときのルーティンがよみがえったのだろうか。

「あ、ソールくん。おはよう」

ティエラがなぜか孤児院にやって来ていた。そして、いままさに畑仕事をしようとしているソールに挨拶をする。

「やあおはよう、ティエラ」

ソールも挨拶を返すと、その足で畑に向かった。

畑は子供たちが育てているようで、食べごろの野菜が実っていた。

「…手伝ってくれるの?」

ソールは少し驚きながらティエラに聞いた。

ティエラの服装は昨日と同じように、薄青色のブラウスと紺色のミニスカートとニーハイソックス、そして緑色のロングコートを着ていた。

とてもではないが畑仕事をする服には見えない。

「いえ。どんな感じでやってるかなって、見に来ただけ」

「そ、そうなのか」

ソールは緊張していた。

見慣れた女の子とはいえ、いざ自分の仕事を見られるとなると普段の落ち着きがなくなってしまう。

ティエラは近くにあった樽に腰かけ、脚を組んだ。

白いラインが入った紺色のニーハイソックスに包まれたその美脚は、彼女が座ってもなお、形を保っていた。

ソールはつい、視線が彼女の脚に向いてしまう。

(う…、久々にティエラの脚を見てしまったが、目に毒だな)

ティエラがソールの視線に気が付き、足を少し組み替えた。

「どうしたんですか?私の方を見てるけど何かついてる?」

「い、いや……」

ティエラはいたずらな笑みを浮かべていた。どうやら彼女の方は緊張していないようだ。

だがソールは見てしまうと意識してしまうため、あまり見ないようにしたのだった。

「じゃあ集中して」

「あ、ああ」

ティエラに釘を刺されたソールは、畑の手入れを始めた。

「どう?」

ティエラが作業をしているソールを見守りながら話しかけた。

「まあ普段はこんな感じだ。手入れも丹念に行わないと畑に失礼だ」

「子供たちと一緒に大事にしてるんだね」

ティエラがそんな仕事熱心なソールを見てほほ笑んでいた。

どこか嬉しそうな笑顔だった。

「まあね。孤児院だけじゃなくて村の皆さんも口にするものだから」

ソールはそういいながら、畑の手入れを続ける。

「さぼらないでやってるね」

「まあな」

ソールはティエラに褒められると照れてしまう。

すると、ティエラがふいに立ち上がった。

そんな彼女にソールが反応する。

(おや?)

「ソールくんってこういうのを毎日やってるからこういう人になったのね」

「ん?」

ティエラが何かを悟ったかのように、ソールに話しかける。

「ねえ、ソールくん」

「どうした?」

ティエラが振り向きざまに尋ねた。

「もし私が…」

(ん?)

ティエラは何かを言いかけたようだったが、すぐに首を振った。

「ううん、なんでもない」

「…な、なんなんだよ」

ティエラが言葉を濁した。

そんな中、子供たちが畑へとやって来た。

「あ、ティエラお姉ちゃんだ」

年下の男の子が反応する。

「あら。あの子たち」

ティエラ自身も反応し、そちらを見る。

子供たちの中にはサーシャもいた。

「ソール…。ってえ?ティエラさん!?」

「待ってくれサーシャ。これには深い理由が…」

サーシャを目の当たりにして慌てるソール。

「うふふっ」

ティエラがそんなソールを見て笑っている。

「……ええと。話せば長くなるんだけど…」

「ごめんね、ちょっとこちらの仕事が見たいから見学させてもらっています」

ティエラが割って入り、説明した。

「そういうこと」

ソールが冷や汗を流しながら彼女の言葉を肯定した。

(絶対変な関係になってる)

サーシャはソールとティエラを見て謎の警戒をしていた。

平穏そうにしているが、裏で何かがありそうな気配だった。

「…そうなの。ちょうどいいわ。どのように私たちがここで仕事してるか、見ていってください」

サーシャは気を取り直したような顔をして、ティエラにそう言った。

「手伝わなくても大丈夫かしら」

「こんな服を着たお嬢様を土で汚すわけにはいかないからね」

見学しに来たティエラが場の空気を見て手伝おうとしたが、サーシャに阻止された。

「そう、じゃあお言葉に甘えさせて…」

ティエラが軽くお辞儀をしてから、先ほど腰かけていた樽に再び座ってソールたちの仕事を見学することにした。

(ちょっと、何よソール。その目は)

サーシャはソールの視線に何かを感じ取ったようで、彼のことをにらみつけていた。

(ああもう!まだ何もしてないのに疑われてるぞ俺…)

今に始まったことではないのだが、こういう反応をされると自分が何か悪いことをしたような気がしてしまうのだった…。

 

「ふぅ~。これくらいか」

数時間が経過した。

ソールたちは、畑に実った野菜たちを管理・採取したりして、必要な分を収穫して回っていた。

ティエラもいつの間にか、彼らの手伝いをしていた。

座ってみているだけなのも気の毒だったので、簡単な作業を中心に手伝いをしていたのだった。

サーシャからは汚れるからという理由で畑での作業をさせてもらえなかったが、あまり汚れなさそうなものを中心にやっていた。

「ふわぁ~」

ティエラがあくびをしている。

(あくびしてる様子もかわいいな…)

ソールはティエラの表情を見逃さなかった。

(あくびするほど退屈な仕事じゃなかったような…)

ソールはそう思っていたが、サーシャの視線が気になるようで、彼女の様子を見るのを控えめにしていた。

幸い、サーシャにはソールの様子に気づいていないようだ。

「今日もたくさんとれたね~。これだけあれば十分よ」

サーシャはというと、ソールたちが収穫した野菜を見て、満足そうにしていた。

彼女が今見ている籠の中には、とれたてのにんじん、大根、ピーマンといった野菜が詰め込まれている。

どれも孤児院の子供たちが丹精込めて作ったものだ。

「ごめんね、手伝わないつもりが手伝ってしまって」

ティエラがサーシャに謝る。

「いえいえ。あの子たちもあなたたちと仕事ができてうれしそうにしてるし、気にしなくてもいいよ」

サーシャが首を振り、ティエラに感謝の言葉を述べた。

(んっ、この2人仲が良さげな気がするぞ…?)

そんな光景を見てソールは心の中でそう思った。

「そういえばソールくん、この孤児院であんな元気な子たちを育ててきたのね」

「まあ…、みんな素直で心の優しい子ばっかりだったからな。手があまりかからないいい子たちさ」

ティエラの言葉にソールは少し照れながら答えた。

ソールは背伸びをした。

「よ~し。朝飯の時間だな」

ソールは朝食の時間であることを、近くに会った時計で時刻を確認してそう言った。

「ティエラ、もしよかったら…」

「そうね。せっかくだし呼ばれちゃおうかな」

ティエラが快く受け入れたので、ソールたちは孤児院に戻った。

「ふ~。終わった終わった」

「お疲れ様!」

他の子供たちも、片付けを終えて孤児院へと向かっていった。

 

 

「ん~っ、おいしい!」

ティエラが孤児院の食堂内で、孤児院で出されている朝食を堪能していた。

彼女の目の前には、炊き立ての玄米、シイタケの煮物、川魚の塩焼き、ひきわりの納豆がプレートに置かれている。

ソールたちも同様、ティエラと同じものを食べていた。

「気に入ってくれて何よりだ」

そんなティエラの様子を見て、ソールが嬉しそうにほほ笑んでいた。

彼女の隣にはサーシャがいた。正面にいたサーシャが、ソールの方を見て睨みつけていた。

(…ちょっと、何よその目は!)

サーシャには、ティエラがソールにとって特別な存在であるかのように見えていた。

誤解なのかもしれないが、ティエラにソールがとられてしまいそうな不安もあった。

サーシャはソールに恋愛感情を抱いているわけではないが、何年もの付き合いであるソールがどこかに行ってしまいそうな気がしてならなかった。

そんなソールはサーシャとティエラに気が付かれないように平静を装った。

「ん?」

と、不意にティエラの目と合ったので彼はごまかすように顔をそらした。

(やばいっ…!)

ソールは目の前の玄米をがっついた。

ティエラに見とれていたことを悟られたくなかったようだ。

「ごちそうさま」

そんなソールとは対照的に、ティエラはマイペースだった。

彼女は食事の手を止めることなく、プレートを空にした。

(相変わらず食べるのが早いな…)

彼女の様子を見たソールがそう思っていると…。

「じゃあ片づけてこよっと」

ティエラは空いた食器を重ねながら立ち上がった。

(もう食べ終わったのか?)

ソールは驚いてしまった。

そんな彼の様子を見ていたサーシャは、ソールの食器を確認した。

ほとんど食事は残っていないが、いつもより食べるのが遅いように感じていた。

食べるのに集中できなかったのか、食べる速度が落ちたのだろう。

(まあしょうがないわね。女の子を連れて朝食なんてあいつにとって人生初だと思うし)

サーシャは彼の心中を察した。

「ソール珍しいね。いつも食べるのがはやいあんたがこんなに遅いなんて」

サーシャが心配そうな顔をしてソールに話しかけた。

「あ~、悪い。考え事をしてたら食べるのが…。勘違いしないでくれよ、今後の旅の事を考えていただけだからさ」

「そう。じゃ、喉に詰めないように食べてね」

サーシャは少し困り顔で笑い、そのまま流し台へと向かっていった。

(危ない危ない……。これ以上怪しまれるとばれてしまう)

ソールはサーシャが流し台に食器を置いて片付けている様子を横目に、食べながら考え事をしていたことをごまかした。

 

ティエラは片づけを終えた後、子供たちに勉強を教えていた。

孤児院で暮らす子供たちは朝食を終えると、勉強をするのだ。

学校は存在しないが、きちんと学習する時間は設けてある。

孤児院の大人たちが先生となり勉強を教えている。

畑仕事の様子を見に来ただけのティエラだったが、なんと朝食後の勉強にも付き合うこととなったのだった。

ソールもサーシャも驚いたが、元々商人の養子であるお嬢様のティエラに、長老のトパパが、時間があるなら教えてやってほしいと言ったため、引き受けたそうだ。

(意外に教え方もうまいわね)

サーシャが感心しながら彼女の様子を見ていた。

そんな様子を遠くから見ていたソールは……。

(みんな集中してる。ティエラは相変わらず不思議な子だな)

と考えていた。

子供たちがいる勉強部屋は、いつもは少し賑わいがあったが、この日ばかりは静かだった。

そんな静かな勉強部屋に、孤児院で働いている女性のニーナが入ってきた。

「あら、おばさん。どうしたの」

サーシャがニーナに声をかけた。

「あ、ソールもいるのね?孤児院の外に大きな船が停まっててね。なんでも空から降りてきたの。そこに乗ってたおじいさんが、ソールはいないかって…」

「あ。ついに完成したんだな」

シドにお願いしていた飛空艇の改造がついに終わったようだ。

バイキングたちから譲り受けたエンタープライズを、時の歯車を用いて飛空艇へと改造していたのだった。

「あら。そうだったの」

ティエラがキョトンとした顔をして、飛空艇の完成に驚いていた。

「ソール。これは…」

サーシャがソールに確認する。

「よし。僕とサーシャとティエラは外に行ってきます。じゃあ、ふたりとも」

「ええ」

ソールに催促され、サーシャとティエラは外に出て行った。

 

孤児院を出ると、エンタープライズがそこにはあった。

エンタープライズにプロペラらしきものが搭載されていた。

空を飛べるように細工が施されていたようだ。

「これが…。飛空艇か」

ソールは、飛空艇となったエンタープライズを見て唖然としていた。

2人も彼に続いて乗り込んだ。

「へぇ~、これがエンタープライズね」

サーシャが感心している。

3人が飛空艇を見ていると、そこにマイムとヴェントもやって来た。

「あら。外からすごい音がすると思ったらようやく完成したのね」

「待ちわびたわ」

マイムとヴェントも嬉しそうに船を見つめていている。

飛空艇を運んできた、カナーンの町の技師のシドがやって来た。

「はははっ。どうだ、わしの改造したエンタープライズは。歳のせいで完成時間が長引いたが、これくらいわしの手にかかれば朝飯前よ」

シドは笑いながら自慢していた。

「シドさん、ありがとうございます。本当に感謝しています」

ソールはシドに深々と頭を下げた。

「はっはっは!礼などいらない。これで次の新天地に行けるわけだ!気を付けていっておいで」

ソールのお礼の言葉に、シドが照れている。

「よし、これで次の世界にいけるぞ!」

ソールがそう言った。

「あ!ちょっと待って」

サーシャが突然、そう言った。

(そういえば……。忘れてたよ)

ソールが、サーシャが言っていたことを思い出していた。

「ねえ。あの約束、覚えてる?」

「もちろん。地図にない村に行くんでしょ?」

サーシャは光の戦士たちに、少しだけの期間でもいいから旅に同行したいとお願いしていた。

しかし、長い間サーシャを同行させるわけにはいかないため、まだ行っていない浮遊大陸のある村へといくことになっていた。

「調べておいたわ。ギザールの村。まずはそこに5人で行ってみましょ」

ヴェントは事前に、まだ訪れていないその村の事を調べていた。

その村の名前はギザールの村という農村のようだった。

「よし。そうと決まれば、みんな、支度だ!サーシャも!」

「うん、わかった!」

ソールたちは準備を整え、ギザールの村へと出発することになった。

 

 

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