ファイナルファンタジー3 リブートエディション 作:北村 貴之
空を飛ぶ船・飛空艇へと改造してもらっていた船・エンタープライズがシドの手によってついに改造作業が完成した。
飛空艇として新しく機能を搭載したエンタープライズは、光の戦士であるソールたちの故郷であるウルの村へと着地した。
これでソールたちは、浮遊大陸を抜けて新たな世界へと飛び出せることとなった。
同じ孤児院で幼馴染として育った少女のサーシャが、こんなことを言っていた。
少しの間だけでもいいので、ソールたちの旅に同行させてほしいと。
しかし、光の戦士たちの旅は危険であふれていた。
道中、手ごわい魔物たちと何度も戦い、そして危険であふれていたダンジョンの中を探索しなければならなかった。
しかし、サーシャにも一度は自分たちの乗っていたエンタープライズに乗ってもらおうと思い、まだ浮遊大陸で行っていない村「ギザールの村」へと行くことにした。
地図を確認してみると、浮遊大陸の東側の半島に、ポツンと存在する村があった。
地図には確かに「ギザールの村」と記されていた。
ここがどんな場所なのか、ソールたちはまだ知らない。
飛空艇で、ソールたちはその村へと訪れることにした。
「サーシャ!まだ時間がかかるのか?」
ここは孤児院内。
サーシャが支度に時間がかかっているのか、ソールが扉の前で待っていた。
「待って、もう少しで準備が終わるから!」
扉の向こうからサーシャの声が聞こえた。
ソールは待っていると、やがて扉が開き始めた。
サーシャがやっと出てきた。
「あ…」
扉を開けて出てきたサーシャを見て、ソールは言葉を失った。
普段着ない服を、サーシャが着ていたからだ。
「…どうしたのよ?照れちゃって」
サーシャが頬を赤らめながら言った。
「い、いや…」
ソールは頭を横に振りながら、心の中で呟いた。
(だめだ、こんなの反則だ!)
そんなサーシャの姿をまじまじと見つめて、ソールは思わず照れてしまった。
サーシャは、白い長袖の上着に、白のミニスカートを着用していた。
高潔かつ清楚な雰囲気を醸している。
普段の孤児院の仕事で鍛えられて健康的で色気のある生脚を晒しており、足先には黒いハイソックスと革製の紐靴を履いていた。
サーシャがソールに内緒でこっそりと買った服なのだろうか。
「どう?似合ってる?」
「あ、ああ!すごくかわいいよ!」
顔を真っ赤にしながら、ソールは照れながら言った。
そんなソールの言葉に、サーシャはさらに頬を赤く染めた。
「ありがとう、あ、マイムたちを待たせてるから行かなきゃね」
そしてサーシャは満面の笑みを浮かべて喜んでくれた。
そんな彼女の笑顔を見て、ますます顔を赤くするソールであった。
(くそっ、あんなにかわいかったか、あいつ…)
ソールはパタパタと駆けるサーシャを見て、不覚にもそう呟いてしまった。
「ごめんごめん!待たせちゃった」
サーシャが、孤児院前で待っていた光の戦士の少女であるマイム、ヴェント、ティエラに頭を下げた。
彼女たちは、ウルの村の出身だが、商人の養子として育てられた。
家はそれぞれ違うが、同じ学問を学んでいた仲間たちである。
偶然にもソールと同じく光の戦士に選ばれた。
「いいのいいの。それよりもかわいい服ね」
ヴェントが嬉しそうにサーシャに微笑みかけた。
「実はこれ、ソールが選んでくれたの」
「え?」
ソールがきょとんとした。
「おいおい、この服を買うのに僕が立ち会ったっけ…?」
ソールは恥ずかしそうにしながら、サーシャをたしなめた。
そんな様子を見て、マイムは確信した。
(やっぱりこの二人…)
そう思った瞬間だった。
「さ、そんなことよりも行くわよ!」
ティエラの掛け声により、5人はエンタープライズで空を駆け、ギザールの村へと向かったのだった。
「ええっと、事前にシドから操縦方法は聞いているんだ。これをこうして…」
ソールは操縦室にいた。
元々海を駆ける船であったエンタープライズは、ソールが基本的に操縦していた。
飛空艇もこれとは別のものを操縦した経験がある。
もっとも、シドが丁寧に説明した説明書を見ながらではあったが、ソールは何とか操縦することができた。
「おお!これはいけんたんじゃない?」
船がどんどんと浮上しているのがわかった。
それは、控室にいたマイムたちも反応していた。
「すごい!上へと上がってるよ」
マイムが興奮しながら言った。
ソールの操縦でエンタープライズが空を飛んだ。
すると、またも少女たちから歓声が上がった。
5人はしばしの間、空を飛ぶという初めての体験を楽しんでいた。
ソールは地図を確認しながら、前方の景色を見つつ、ギザールの村へと向かっていた。
しかし、意外にもウルの村からギザールの村へはそう遠くはなかったようで、数分でたどり着けた。
シドの腕はまだまだなまってはいなかったようだ。
「すごい…。海の上を進むよりはるかに時間が短縮されてる」
ソールは改めて飛空艇の凄さを実感していた。
しかし、いつまでもそれに酔いしれている余裕はない。
目的地に到着したので、船をゆっくりと着地させていく。
手慣れた手つきで、ソールは操縦レバーを手に、船を安全に着陸させた。
「凄いわね…。本当に空飛ぶ船だわ」
控室にいたサーシャが感心したようにつぶやいた。
彼女にとっては空を飛ぶ飛空艇は本当に初体験だった。
そして5人はエンタープライズから降りたのだった。
「さて、と。ここがギザールの村か」
ソールは辺りを見回した。
空から見た感じでは、小さいながらも栄えていそうな村に見えたのだ。
外から見ると、大きな畑が目立つ割と大きめな村だった。
元々畑仕事をしていたソールにとって、興味深そうな景色がそこにはあった。
「あら、あなたの好きな畑が見えるわね」
サーシャが笑いながらソールに話しかけた。
「ま、まあ好きだけどな…。じゃあ、入ろうか」
ソールは首元を掻きながら、マイムたちを引き連れて中へと入った。
ギザールの村はのどかな雰囲気に包まれた静かな村だった。
ウルの村の孤児院のものよりも大きな畑が所々に存在している。
また、果実が実る樹木も何本か植えられていた。
「すごいな…。ウルの村と比べて割と静かだけど、農業が盛んそうな村だな」
ソールが村一面を見回し、感嘆の声を上げた。
すると、この村の子供たちがソールたちの方へと駆け寄ってきた。
「ねぇねぇ、お兄ちゃんたちはどこから来たの?」
「みんな見たことなーいっ」
4,5歳ぐらいと思われる子供たちは興味津々に話しかけてきた。
そんな子供たちを見て、ソールが笑顔で答えた。
「僕たちはウルの村ってとこから来たんだ」
「え!?ウルの村!?ってことはお客さん!?」
それを聞いた瞬間、子供たちの目がキラキラと輝いた。
そしてさらに興味を持ち始めたのか、今度は背伸びしてソールに話しかけ始めた。
「そうなんだ。観光で来たんだけど、何かここの名産とかないかな?」
ソールは子供たちに質問した。
「そうだなあ…。村で作られた野菜とか果物とか。あとお肉とかが美味しいことかな。あと、あっちの方に温泉があるんだ。よかったら行ってみてよ」
「どうも、ありがとう」
ソールは子供のひとりの頭を撫でてあげた。
その子供からは、
「てへへっ」
という言葉が返ってきた。
ソールたちは子供たちに教えてもらった温泉へと向かった。
村の外れの高台にあり、日当たりもよく静かな場所だった。
そんな場所にポツンと一軒の建物が建っていた。
建物の名前は「ヒミコの湯」と書かれていた。
(ヒミコって珍しい名前だなあ)
ソールはそんなことを思いながらも扉を開けた。
ガラガラと音を立てて、扉が開く音がした。
そしてソールたちが入ると、中には1人の若い女性がいた。
ウルの村では滅多に目にすることのない、和風の出で立ちの服装だった。
「あら、いらっしゃい。この村では見たことのない顔だけど、お客さんかしら」
この温泉施設で働いているであろう、その和風の女性が話しかけてきた。
「ええ。ここの村の子たちに教えられて、ここへ来たんです」
ティエラが答えた。
「そうなのね。じゃあ、お入りください」
ソールたちは女性に招かれるまま、建物内へと入った。
建物の中は落ち着いた雰囲気の作りだった。
温泉特有の木の匂いがする、どこか落ち着く空間であった。
「ここは男湯・女湯に分かれているの。あ、あなたは男湯ね」
5人を見ると、女性は温泉について話してくれた。
唯一男であるソールはひとりだけ男湯に入らねばならないようだ。
ソールはサーシャたちと共に入れないことを一切残念がる様子を見せなかった。
ひとりだけでゆっくりと入れるので、どこか落ち着けそうであった。
そんな様子のソールに、マイムがいきなり話しかけてきた。
「あ。もしかしてあたしたちと入りたかったりと思ってません?」
「えっ!?」
唐突の発言に、ソールは驚愕した。
「うふふ。冗談よ。ゆっくりしてきて」
マイムは笑いながらソールに手を振った。
「ちょ、ちょっと!何言って…!はぁ…」
ソールが顔を赤らめながら声を上げ、その後ため息をついた。
「…覗かないでね」
「わかってるよ」
サーシャがソールを意味深に見つめてそう言ってきたので、ソールはそう答えた。
そうソールは男湯ののれんをくぐって中へと入った。
(ひとりかぁ…。ま、仕方がないよな)
脱衣所に入り、ソールは着ている衣服を脱いでいた。
生まれたままの姿となり、早速浴場へと向かう。
ソールの目の前に、大きな湯船が現れた。
「おおっ!いい臭いだな。これぞ本場の温泉って感じがするな」
そう言った後、かけ湯をして、ソールは湯船に浸かった。
「あ~、気持ちいい」
思わずそんな感想が漏れてしまった。
思えば光の戦士としての旅の最中は忙しかった。
ゆっくりとした時間を過ごすことはあまりなかったかもしれない。
そんなことを考えつつ、湯船に使って旅の疲れを癒やしていた。
5分ほど浸かっていただろうか。
しかし、いくら待っても一向に誰かが入ってくる気配がない。
ソール以外、お客さんはいなかった。
「…貸し切りかあ。ま、誰も邪魔されないからいいか」
ソールは首をかきながら、温泉を漫喫していたのだった。
「ソールはひとりで男湯かぁ…。なんかあいつに悪いことしちゃったかな」
一方、女湯。
サーシャ、マイム、ヴェント、ティエラの4人は、温泉に浸かっていた。
サーシャは、幼馴染であるソールを男湯に1人だけで入らせることに、少し罪悪感を感じていた。
「ま、いいんじゃない?」
ティエラがサーシャをなだめた。
「で、でも…」
「女まみれになって彼も苦労してるし、たまにはひとりにしてあげてもね」
ヴェントがサーシャに言った。
確かにその通りであるとサーシャは思った。
(…って、なんで私ソールと一緒に入ること前提で考えてるの!?)
そんな自分の考えに思わず赤面するサーシャ。
そんな彼女の顔をマイムは見ていた。
そして…。
「どしたの?顔が真っ赤だけど…」
そう言うと、サーシャが慌てて、
「ち、ちょっとのぼせただけ!そう、そうなのよっ」
「ふ〜ん」
マイムは腑に落ちない様子だったが、それ以上は追及しなかった。
「ソールは今頃あっちでどうしてるんだろ」
ヴェントがソールの話題を持ち出してきた。
そしてそれにティエラも加わる。
「まあ、あのソールだから変なことは考えてなさそうだけど…」
「え?そう?」
サーシャは、ティエラの言葉を聞き、少し疑問に思ったようだ。
「まあ…。スケベって奴じゃないんだけどね」
サーシャはソールがそんなことはさないと思いそう言った。
幼い頃から彼を知っているので、彼がスケベなことをしないのは分かっていた。
「ソールはそんなことする奴じゃないと思うけどなぁ…。なんか、ああ見えて、結構硬派なところがあるし」
サーシャの発言を、マイムは黙って聞いていた。
そんな話を共に聞いていたティエラが口を開いた。
「確かに彼は優しくて気の利く人だしね。覗きなんてするはずがないもの」
「あ、あはは…」
サーシャはティエラの言葉を聞き、苦笑いを浮かべていた。
「なるほどなるほど。一緒に旅している女の子が夢に出てくると…」
「ええ。最近は見てないんですが、3回ほど…」
場所は変わり、小さな占いの館。
ソールはそこで、自分が見た夢について相談をしていた。
ソールの相談を聞いていたのは、焦げ茶色のローブを纏った5歳ほどの男の子だった。
なんでも、彼は占い師のようだが…。
テーブルには大きな水晶玉が小さな座布団の上に置かれていた。
「なんかセンシティブな感じがしててですね…」
ソールはありのままを話していた。
白魔道士の姿のマイムで1回目、中華風の服装のティエラで2回目、狩人の姿のヴェントで3回目だ。
ベッドで眠っているところを起こされる夢だが、どれもが印象的だった。
「ふむふむ。では、ちょっとお待ちなさい」
そう言うと男の子は、ソールの夢の内容を紙に記し始めた。
「なるほど…。これは…」
男の子は何やらぶつぶつとつぶやきながらペンを走らせていた。
「何か分かりましたか…?」
ソールが恐る恐る聞いたが、男の子は首を横に振った。
「うむ…。私にも分かりかねるなこれは」
「そ、そうですか…」
ソールは少しがっかりした様子で答えた。
そんなソールに、慰めるように男の子がこう言った。
「君は彼女たちを仲間として、友人として接しようとしすぎて脳に負担をかけているのかもしれないね。もしかすると、それが君の脳内で何かしらの処理をされてこのような夢を見るのかもしれない」
「そ、それはどういう…」
ソールは食い気味に男の子の顔を見る。
「考えすぎはかえって毒ってわけ」
「な、なるほど」
男の子が紙に書いた紙を眺めながら答える。
「まあ、夢は夢だ。あまり気にしすぎない方がいいよ」
「そ、そうですね…」
ソールはそう答えながら、占いの館を後にしたのだった…。
その後。ソールは村のチョコボ牧場のチョコボ達を眺めながら物思いにふけっていた。
牧場の柵に寄りかかり、チョコボたちを見て回っていた。
すると、柵の向こう側から声をかけられた。
「ソール!」
声に反応してソールは声の主の方へと振り返った。
そこには、サーシャたちがいた。
「みんなか」
「早いわね〜…。もう飽きちゃったの?」
サーシャが言った。
「まぁ、他に気になってたところもあったしな」
「それなら私たちも誘ってくれたらいいのに!もうっ」
サーシャが少し膨れた顔をした。
可愛らしい顔だ。
「ははは、ごめんごめん」
ソールは笑ってそう答えた。
「それじゃあ…。これからどこに向かおうか」
「とりあえず…。ブティックに行ってみない?もちろん、あなたも一緒に」
サーシャはそう言うと、ソールの手を握る。
「お、おい」
ソールは思わず生唾を飲んだ。
そんな様子を見て、マイムが意味深に見つめて笑みを浮かべていた。
「…ふふっ」
そんなマイムの顔を、偶然にもソールは見てしまった。
幼馴染のサーシャといい感じなのが少しいけないと思ってしまったようだ。
(マイムさんすまん…)
心の中で謝罪するソール。「?」
一方、マイムはなぜソールが自分を気にしていたのかわからなかったようだ。
「…じゃあ、行こうか」
「ええ」
そんなやりとりをサーシャとしながら、ブティックまでの道を歩いていったのだった…。
ソールたちはブティックへと到着した。
1軒のこじんまりとした店だが、品揃えは豊富でセンスもよかった。
「いらっしゃいませ〜」
3人の女性店員が声をかけてきた。
それぞれ違う色のエプロンを身につけていた。
「あら、見かけない顔。旅の人?」
「ええ。偶然立ち寄ったんだけど、いい村ね」
ヴェントが店員に話しかけた。
「ありがとうございます!ゆっくり見ていってね」
店員の一人が元気よく答えた。
「ええ、そうさせてもらいます」
3人がそんなやりとりをしている中、サーシャは店内を見渡していた。
サーシャの目に、色とりどりの服が陳列されている。
ウルの村でもお目にかかれないデザインのものばかりだ。
(こんなにあるんだ…。いろんな服があるんだね)
陳列されている服を手にとりながら、まじまじと見つめている。
すると…。
「どうしたの?」
そんなサーシャにヴェントが声をかけてきた。
「…え!?な、なにっ?」
突然声をかけられたので、驚いてしまった。
「違う村の服も着てみない?」
「う、うん…」
「どれか気に入ったのあった?」
サーシャは、今手に持っている服を前に突き出した。
「うん…。これ、どうかな?」
「あら、そうなの?可愛いじゃない!」
そんなやりとりをサーシャとヴェントがしている最中、あとの3人は…。
「どれも可愛いわね…。ひとつじゃなくて複数買いたいな」
ティエラがそう呟いていた。
「じゃあ買っちゃおうよ。せっかくサーシャも来たんだし」
マイムは可愛い服を目の前にしてご機嫌のようだった。
そんな2人をよそに、ソールは腕を組みながら明後日の方向を見ていた。
そんな彼に、マイムが話しかけてきた。
「ソールくん。どうしたの?ボーっとして」
マイムに声をかけられ、ハッとするソール。
「あっ!マイムか」
「なんか気になる服ありました?」
「い、いや…」
服を選んでいなかったソール。
「ね。これ、どうかな?」
マイムはある服を手にしていた。
赤い布地の服だった。
そんな2人を見て、ティエラがこう声をかけてきた。
「ね、ねえ!これはどう?ソールくんにもピッタリの服があったけど!」
そう言って見せてきたのは、マイムが手にしているのと同じ赤い服だった。
ティエラは男性用のコーナーからとってきたようだった。
「え…?これは一体…」
戸惑うソールをよそに、ティエラはマイムから持っていた服を奪い取ると、その服をレジまで持っていっあ。
「すみません!これください!」
「まいど、ありがとう!」
ティエラが会計を済ませる。
突然の出来事に目を丸くするソール。
そうこうしているうちに、サーシャとヴェントも服を選んでいた。
2人はそれぞれ気に入った服を見つけたようだ。
ひとつのみならず、複数だった。
サーシャとヴェントはお互い笑顔で服を手にとってレジへと向かっていった。
「さ、ソールくん!早速着てみましょ?」
ティエラにそう言われ、戸惑うソール。
「え、もう!?」
「せっかく来たんだもの!着ようよ!」
「そうよそうよ。ほらっ!試着室はこっち!」
マイムとティエラに引きずられるようにして、ソールは試着室に連れていかれてしまった。
試着室で着替え終わったソール、マイム、ティエラ。
ソールは赤いマントに帽子といった姿だった。
鏡の前に、赤一色の服を纏った自分を写している。
「な、なんか違う自分だな…」
「まあっ。似合ってるじゃない!」
着替えが終わったティエラが嬉しそうに言った。
ティエラも同様に、赤いマントに帽子だった。
女性用らしく、赤いミニスカートに黒いタイツだった。
「そ、そうかな…」
「そうよ!あたしも似合ってると思うわ」
着替え終えたマイムも嬉しそうに言った。
マイムも同様、ティエラと同じ姿だった。
そんな2人の様子を見て、ソールは照れくさそうに頭をかいたのだった…。
(なんか恥ずかしいな…)
「ねっ、どう?あたしの姿」
マイムはソールの前に立っていた。
赤いマントに帽子、黒いタイツがいつもと違う彼女であることを示している。
ティエラも同様だ。
「ソールくんもたまにはこんな格好しなきゃね」
マイムが可愛らしい笑顔でソールを見ていた。
ティエラは腕を組んでウインクしてきた。
そんな彼女らに、ソールが思わず顔を赤らめる。
まるで、今着ている服のように…。
「…」
ソールは黙ってしまった。
彼女たちにかける言葉が見当たらないのだろうか。
そんな彼に、ティエラが寄ってきた。
「どうしたんですか?緊張して、言葉が出なくなったんですか?」
「いや…。まあ、そんなところだけど…」
そんな時、サーシャとヴェントが試着室から出てきた。
「わぁー!みんな似合ってる!」
3人の姿を見て、サーシャが歓声をあげる。
「ありがとう!サーシャも可愛いわよ」
ティエラはそう答えながら、サーシャの姿を称賛した。
そして、ソールの方を見てこう言った。
「ソールくん。ほらっ!」
ティエラに催促され、ソールは視線をサーシャの方に向ける。
ソールは促されるままサーシャの姿を見た。
思わず、息を飲む。
サーシャは青い帽子とミニスカートに、黒いタイツ。
暖かそうな衣装を身にまとっていた。
「…」
そんなサーシャの姿に、ソールは思わず見とれてしまったようだ。
「な、なに?」
そんなソールの視線に気づいたのかサーシャが聞いた。
「…いや、なんでもないよ」
ソールはそう答えたが、その頬は少し赤く染まっていた…。
(なんか…、恥ずかしいな)
そんなソールの姿を見たマイムとヴェントとティエラは…。
「あ、なんか変よ?ソールくん」
ヴェントがソールに話しかけた。
「そんなに幼馴染が気になってるのかしら?」
ティエラが妖艶な笑みを浮かべて、片手でソールの肩に触れた。
肩を触られたソールが思わず身震いする。
「のわっ…」
「なんか感想かけてあげてよ」
マイムが囁くようにソールに言った。
ソールが頬を赤らめながら、
「に、似合ってるよ…。その服」
「ほんと!?ウソじゃないよね?」
サーシャが目を輝かせながらソールの回答を待つ。
「ほ、本当さ」
それを聞いたサーシャが嬉しそうに笑う。
「やった!」
そんなサーシャを見たソールは、苦笑いを浮かべていた…。
店を出たソールたち。
日は暮れており、辺りはすっかり暗くなっていた。
「もうこんな時間かあ…。早いなあ」
ソールは沈んでいく夕陽を見ていた。
太陽が地平線に沈んでいく様子は
どこか神秘的だった。
「みんなありがとう!楽しかったわ、今日は」
サーシャが嬉しそうに礼を言った。
「いえいえ。こちらこそどうも。長旅してたから、いいリフレッシュになったわ」
ティエラが笑顔で答えた。
ヴェントとマイムも頷いている。
そんな4人のやりとりをよそに、ソールが口を開いた。
「うむ…。それじゃあ帰るとするかな」
ソールが背伸びをして、飛空艇へと向かおうとすると…。
肩を掴まれた感触がソールを襲った。
思わず背後を振り向くソール。
そこには、笑顔でマイムが自分を肩を掴んでいた。
「ソールくん…。まだ終わってないんだけど?」
「え、な、なに、なにが?」
慌てるソール。
「旅行って行ってたでしょ?じゃ、次どこへ向かうかわかりますよね」
ヴェントがやってきてそう言った。「つ、次?」
ソールはそう言うが……。
「ひとりで帰るとなんてダメよ」
そんなソールを遮ってサーシャが言った。
「はい、こっち!」
サーシャは満面の笑顔だ。
そんな4人に気圧されたソールが連れて来られた先はというと…。
「いやあ、美味い!宿の飯は流石だ」
ソールはサーシャたちに無理やり宿屋に連れて来られたのだった。
旅行である目的でギザールの村へ来たことを忘れていたソール。
そんな彼は現在、宿屋の食事に舌鼓を打っていた。
村の野菜や畜産物で調理されたその料理は、どれも美味であった。
「ほらほら、ソール。もっと食べていいのよ」
サーシャがソールに料理を進める。
「あ、ありがとう…」
そんなソールの姿を見て、ティエラが呟いた。
「なんか…、子供みたいね」
ヴェントとマイムも同感だったようで、うんうんと頷いていたのだった…。
食事を済ませたその後。
ソールは宿屋の部屋でひとり、ベッドの上に転がってリラックスしていた。
また男ひとりとなったソールだが、落ち着いた顔で天井を眺めている。
そんなソールに、扉をノックする音がした。
「ソール…、いる?」
サーシャの声だった。
「いるよ」
そう答えて起き上がると、部屋の扉をゆっくり開いた。
「な、なんだ?サーシャ」
「あ、あの…」
サーシャはモジモジしながらこう言った。
「ちょっと…、いいかな?」
「…ん?ああ…」
2人きりになったソールの部屋。
サーシャがどこか気になる様子のソール。
ベッドに彼女を腰掛けさせて顔を見た。
「一体どうしたんだい?」
ソールが尋ねると、サーシャはモジモジしながら話し出した。
「あ、あのさ…。最近なんか悩んでない?」
そんなサーシャの一言に、ソールは驚いた。
「え?どうして…」
すると、サーシャがこう答えた。
「ソールが旅の道中でマイムさんたちとうまくやっていないかなって…」
そんなサーシャの言葉に、ソールは思わず吹き出しそうになった。
(な、なんだそれ…)
そんなサーシャに思わず笑みを浮かべたソール。
サーシャの肩に手を置き、こう言った。
「大丈夫だよサーシャ。彼女たちはこんな僕を仲間として受け入れてくれている。最初はあんな感じだったけど、今じゃこんなに仲良しさ」
「なかよし?それってどういう意味?」
「うっ…」
言葉を選び間違えた様子のソール。
上目遣いでサーシャはソールを見つめた。
次に言う言葉が詰まったソール。
そんな時…。
「ふふっ。こういうこと」
ガチャリと扉があき、マイムが入ってきた。
「あ、マイム…」
入ってきたマイムに、ソールは思わず声を上げた。
「サーシャ…。ウフフ」
マイムは微笑みながらそう言うと、サーシャは思わずびくっと震えた。
3人きりになった部屋。
ソールの目線が慌ただしくあちこちに向いている。
「あの…」
ソールがなにか話そうとする前に、マイムは言葉を発した。
「何も言わなくていいの。気を楽にして?」
その問いに、ソールは恐る恐る頷いた。
そんなマイムに、ソールはこう尋ねた。
「な、なにか用かな…」
その問いに、マイムは答えた。
「ふふ…。ソールくんだけ仲間外れなんてひどいじゃない?」
そんなマイムの答えに、サーシャが思わず、
「ね、ねえ!どういうことよ…」
とこう言った。
「一緒にいられるってのどれだけが楽しいか…、証明しとこかなって」
そんなマイムの言葉に、思わず戦慄するソールだった…。