ファイナルファンタジー3 リブートエディション   作:北村 貴之

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其之37 果てしなき大海原

ギザールの村をあとにして、ウルの村へと飛空艇で帰るソールたち。

ソールは飛空艇の舵をとり、自分たちの生まれ育った故郷であるウルの村へ飛空艇を進めていた。

ソールは光の戦士として、現在3人の少女とともに世界を救うための旅をしている。

ソールが操縦しているこの飛空艇は、道中手に入れた「時の歯車」をカナーンの町のシドに渡して、バイキングたちから譲り受けた船「エンタープライズ」を空を飛ぶ船へと改造してもらったものだ。

空を飛ぶ手段を手に入れたことで、今いる浮遊大陸を抜けて新たな世界へと飛び立つことが可能となった。

ソールの幼馴染である少女のサーシャが、ほんの少しでいいので旅行をさせてほしいとお願いされたので、ソールはサーシャと3人の少女たちとともにギザールの村へと向かうこととなった。

 

飛空艇の舵を切るソールの顔をよく見てみると、どこかげっそりとしている様子だ。

旅行の帰りだというのに、あまり元気がないように思われる。

ソールはギザールの村の中にある宿屋で、どうやら何かあったようだ。

そんなソールのもとに、同じく光の戦士である少女のヴェントがやってきた。

ウェーブがかったピンク色のセミロングの毛髪の美少女だ。

ソールは操縦中だったが、やってきたヴェントの気配に気づいたようだ。

「ヴェント、どうした?」

ソールは舵を持ったままヴェントに声をかける。

「なんでもない。ただ、あなたの様子を見にきただけ」

ヴェントがそう答えると、ソールは不思議そうな顔をした。

「それは、わざわざどうも」

ソールはそう言いながらも、舵を操っている。

飛空艇の操縦には慣れてきているはずなので、今は両手が塞がっていても問題ないようだ。

「もうすぐウルの村に着くぞ」

ソールがそう言うと、ヴェントはこくりと頷いた。

「うん…」

そんなヴェントにソールは声をかける。

「なんだ? 何か気になることでもあるのかい?」

「…別に」

ヴェントが意味ありげな声で返答する。

「…別にて。あっ…」

ソールはふと、昨晩のことを思い出したようだ。

顔を赤らめ、はぁ、とため息をつく。

「昨晩はやばかったよ…。サーシャとマイムのみならず、まさか君とティエラまで来るだなんて」

昨晩の宿屋で何が起こったのか。

それに答えるかのようにソールは口を開いた。

「女4人は流石にダメでしょ…」

ソールはそう言うと、再びはぁ、とため息をつく。

「4人同時はちょっと厳しいよ…」

ソールがそう言うと、ヴェントはふふっ、と微笑んだ。

「まあたまにはこういうサプライズもいいでしょ?」

ヴェントはソールに近づいてそう言った。

「あれはサプライズというべきなんだろうか…」

「じゃ、刺激かな?」

そう言ってヴェントは整った顔をソールの顔に近づける。

ヴェントの顔がすぐそこにあったソールはドキッとした表情をする。

ヴェントに好意を寄せている訳ではないのだが、かなりの美少女なので異性慣れしていないソールにとっては心臓が悪かった。

なんとか飛空艇の操縦がブレなかったのは、ソールの操縦技術が優れている証明だろう。

「あ、危ないじゃないか…」

ソールがそう言うと、ヴェントはふふっといたずらっ子のような笑みを浮かべた。

「危なくなんかないよ」

「まあ、そうかもしれないけど…」

ソールは顔を赤らめながらそう答えた。

自分の心臓がバクバクと鼓動する音がソールは聞き取れてしまうほどだった。

ソールはなんとかして飛空艇を着陸させようとしていた。

そんなソールを見たヴェントは、操縦席に座るソールの後ろに回り込んで、その身体を抱きしめる。

「!?」

ソールは驚いてしまうが、そのまま飛空艇を操縦した。

飛空艇の高度がどんどんと下がり、やがて着陸する。

なんとかミスせずに着陸させることができたソールだったが、ハァハァと息切れを起こしていた。

「はぁ…、はぁ…、危ないだろ…!」

ソールはヴェントをしかめた顔で見た。

「ごめんね」

とヴェントは微笑むと、ソールの背中から離れて操縦室を出ていった。

ヴェントがいなくなり、ひとりきりの状態となった操縦室。

ソールは床にへなへなと座り込んでしまった。

そして、心臓に手を当てた。

「ったく、俺の周りの女たちは…」

そんなソールは、床に座り込んだまま、天を仰いでいた。

 

 

「ありがとう、村に連れてってくれて」

場面は変わりウルの村。

サーシャとは一旦ここで別れるようだ。

サーシャは4人に礼を言っていた。

残念そうな顔をしているが、世界を救う4人の足手まといになってしまう上、孤児院の子供たちを取り仕切る最年長の子供がいなくなってしまうため、村に戻ることとなった。

「いえいえ。こちらこそ楽しかったよ」

光の戦士である少女のマイムがそう言った。

灰色と白銀色の中間点の髪色をしており、セミロングでおでこの出た髪形の青色の瞳を持つ女の子だ。

「みんな、ソールをよろしくね」

「ええ。しっかりと支えるから心配しないで」

ティエラがそう言った。

ブロンド色の髪をポニーテールにし、緑色の瞳をしているスタイルの良い少女だ。

「ええ。任せてよ」

そう答えたのはヴェントだ。

スタイルがよく、出るところが出ていた。

「じゃ、ソール、頑張ってね。また会おうね!」

サーシャが笑顔でそう言って、村を後にするソールたちを見送った。

 

飛空艇内の控室にて…。

「ソールくん。一言言ってもよかったんじゃないですか?」

そう言ったマイムがお茶を注いでいた。

彼女は、サーシャとの別れ際にソールが何も喋らなかったのを気になっていたようだ。

「えっ?ああ…」

ソールは、サーシャと別れる際のことを回想した。

「ソール、頑張ってね」

そう言って、サーシャがソールの手を取ったのだ。

ソールはドキッとしてしまったが、平常心を装いながらサーシャの手を握り返した。

そんな対応をしたソールだったが、その時何も喋らなかったのはなぜかはよく覚えていない。

おそらく普通の態度だったとは思うのだが…。

(し、しかし昨晩はすごかったな……)

昨晩のことを思い出して顔を赤らめてしまうソールであった。

そんなソールを見たヴェントは、

「あら、顔が赤いけど熱でもあるの?」

と声をかけた。

ソールは慌てて、

「いや、そ、そうじゃないけど…」

と回答した。

そんな彼の反応を見たマイムが、

「ふふっ」

と微笑んだ。

そんな3人のやり取りを、ティエラが優しげな目で見つめていた。

「ソールくん…」

ティエラのそんなつぶやきは、ソールの耳には届いていなかったようだ。

 

飛空艇の操縦席にて…。

ソールは昨晩のことを思い返していた。

(あのサーシャがあんなに積極的になるだなんて…)

と、ソールは顔を赤くする。

(いやしかし、あれは流石にまずかったな)

そんなことを考えているソール。

そこにティエラが入ってきた。

「どうしたの?まだ動かさないんですか?」

飛空艇が動かないので気になって来たようだ。

「あ、すまん!もう動くぞ!」

我に帰ったソールは、早速飛空艇を稼働させる。

飛空艇は空へと昇っていく。

ソールは飛空艇の操縦に集中すべく、雑念を払い舵を握る。

ソールは神妙な顔で、次に向かう大陸へ飛空艇を向かわせる準備を進めていた。

(浮遊大陸の向こう側にある大陸…。一体何が待ち受けているんだろうか)

 

ソールの操縦する飛空艇は、浮遊大陸の一番端を通り過ぎ去った。

浮遊大陸の周りは雲海に覆われていた。

広大な雲海を渡る飛空艇。ソールが舵を握る飛空艇は、雲海の中へと突っ込んでいく。

「見渡す限り雲、雲、雲…。ここを抜ければきっと何かあるぞ」

ソールがそう言うと、彼は真剣な面持ちを浮かべて前を見た。

やがて、雲海を抜けると…。

 

「なんて広い…。まるで別世界だ」

ソールの目線の先には、大きな海が存在していた。

飛空艇が雲海を抜けると、そこは見渡す限り一面、大海原だった。

飛空艇の控室にいたマイムたちは外に出て雲海を抜けた風景を見た。

一面海のその光景に、思わず言葉を失う。

「す、すごい…。こんな広々とした海、はじめて見たかも…」

ティエラは両手で口を抑えて、その景色をまじまじと見ている。

「なんだか、ワクワクするね」

とマイムがそう言うと、ヴェントは「そうね…」

と呟いた。

 

ソールがいる飛空艇の操縦室に、マイムたちが入ってきた。

「ソールくん、これ…」

ティエラがソールに話しかけた。

「ああ…、答えるまでもないが」

ソールも見渡す限りの海に圧倒されていたようだ。

「とりあえず…。大陸を探すとしよう」

そう言ったソール。

そんな彼にマイムが声をかける。

「お願いしますね」

「ああ、まかせろ」

ソールはそう言って、舵を握り飛空艇を進めた。

「ここから先はまだ行ったことないからな」

そんなソールに、マイムが話しかけた。

「世界を救う旅も始まったばかりですね…」

「…そうだな」

そう言ったソールの表情は期待と不安が混じったようだった。

新たな大陸…、いや、果てしない大海原で、光の戦士を待ち受けるものとは?

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