ファイナルファンタジー3 リブートエディション 作:北村 貴之
浮遊大陸を飛空艇エンタープライズで抜け、新たな世界へとやってきた光の戦士たち。
長い雲海を抜けたその先にあったのは、果てしなく広がる大海原だった。
エンタープライズの舵を切っているソールはその広々とした海に圧倒されていた。
浮遊大陸でも海は存在していたのだが、ここまで島一つ確認できないほどの大海原は見たことがなかった。
「ここが、新たな世界か…」
「…本当に広いですね。これじゃあどこに向かえばいいのか分からないわ」
そう言ったのはソールの仲間にしてソールと同じく光の戦士の少女のティエラだった。
長いブロンドの髪をポニーテールにした美少女だ。
「とりあえず…。大陸か島が見えるまで動かすとするか」
「ええ。お願い」
ティエラはソールに賛同した。
「すごい…。見渡す限り海じゃない」
エンタープライズ内の控室を出て、管板から大海原を眺めている少女のマイム。
彼女の隣には仲間の少女のヴェントがいた。
「こんな広い海…。生まれて初めて見たかも」
マイムもヴェントも、今までこんな風景は見たことがなかった。
空は黒い雲に覆われており、晴れ間が差し込んでいない。
雨は降っていなかったが、どこか不穏な雰囲気だった。
昼間なのは確かだが、黒い雲のせいで夜のようにも感じられてしまう。
「う~ん。どこか島さえあればねえ…」
「そこに人がいればいいんだけど…」
マイムとヴェントが頭を悩ませていると、管板にやってきたソールが二人に声をかけた。
舵の操縦を一時的にティエラに任せているため、離れていても大丈夫だ。
「ひとまず…。何か見つかるまでエンタープライズを進めることにした。君たちもおわかりのとおり海ばかりで大陸や島は見えない。だから空から探すんだ」
ソールはそう断言する。
「こんな広い海の中で見つかるのかしら?」
ヴェントが疑問符を頭に浮かべたような顔をする。
「でも、この海には何かがある気がするんだ」
「何かって…?」
「それは…。見つけてからのお楽しみだ。じゃ、僕は操縦室へ戻る」
ソールはそう言って、操縦室へと戻っていった。
「見つけてからのお楽しみ…。ねえ。ま、まったく知らない状態だし、見つけたらラッキーって感じでいいじゃない」
「そうね」
マイムもヴェントも、ソールが言っていることを信じることにした。
ここは信じるしかないのだ。
とりあえずエンタープライズは飛行を続けた。
大海原を進み続けるエンタープライズ。
空は黒い雲に覆われていて、太陽の日は差し込んでこない。
そろそろ夜を迎えようとしているのか、暗くなり始めていた。
そんな時だった。
「なんだあれは…?」
双眼鏡で大陸か島を探していたソールが驚きの声を上げたのだ。
「どうしたの?」
ティエラが気になった様子で前方を見る。
「あれ、ほら」
ソールが指さした。
ティエラがソールの指の方向を見てみると、そこには…。
「あれ?まさかあれって」
「ビンゴ」
ソールが指をパチンと鳴らす。
「うそ…」
ティエラとヴェントが驚くのも無理はない。
ソールの指さした先には、小さな島が見えていたからだ。
「本当にあったなんて…」
「あそこ…」
「ああ。とにかく調べてみよう」
ソールは確信を持ったような顔をして、エンタープライズを飛空艇の状態から船の状態へと切り替えを行った。
ソールの操作によってエンタープライズは海に着水し、船へと変わる。
プロペラは一旦畳み込まれ、帆が姿を現した。
船となったエンタープライズは発見された小さな島へと近づいて行った。
こうして、エンタープライズは小さな島へと着陸した。
ソールたちは島へと降りて、さっそく調査に赴くこととした。
「う~ん。人はいるかなあ…」
マイムが不安そうな声を漏らす。
「ああ…。でも、何かは見つかるはずだ」
ソールが答えると、ティエラもうなずいた。
「そうね」
小さな島は静寂に包まれており、辺りは草原だった。
草木は生い茂ってはいたものの森となっている箇所は見当たらなかった。
人は見当たらない様子だが、無人島の可能性もあり得そうだった。
「しかし…。暗いな」
ソールは黒雲に包まれた空を眺めた。
足場は幸いゴツゴツとした岩場などはなかったので転ぶ心配はないが、薄暗いため足場に注意しないといけないのは変わらなかった。
「ねえ、あれって…」
マイムがソールに言った。
どうやら何かを見つけた様子だ。
「どうした?」
ソールはそう言った。
「あっちを見て」
マイムに言われるがまま、ソールが彼女の指さす方を見ると…。
「あれは…。船?」
ソールたちが発見したのは、船だった。
木造の大きな船だった。
「しかし、かなりボロボロね。あれもしかして、難破船かしら?」
ヴェントがそう言った。
「なぜあんな場所に船が?」
ティエラがその船を見つめている。
大きな木造の船は穴がところどころ空いており、もう船として機能していなさそうだった。
「どうする?見に行くか?」
ソールがマイムたちに聞く。
「そうね。おそらく人がいるかもしれない」
ヴェントが賛成した。
あとの二人もうなずいた。
彼らは意見が一致し、難破船に行ってみることにしたのだった…。
ソールたちは早速、その難破船へと入った。
内部はかなり荒れていたが、廃材が邪魔をしていたりしている場所はなかったためスムーズに進むことができた。
しかし、床は歩くたびにきしむような音がしており、油断できない状態だった。
内部には樽や壷などが置かれている。
恐らく船の中で何かを保存するために置いていたものなのだろうか。
船内に飾られていたと思われる宝飾品も、ところどころに散乱している。
使われなくなってかなりの年月が経っているようだ。
ソールたちは薄暗い船の中を進んでいくが、人はおろか、よく根城にしている動物のコウモリやネズミなども確認できていない。
「うむ…。誰もいないぞ」
ソールがそう言って、首をかしげる。
「そうね。やはり廃船だったのかしら」
ティエラがそう言った時だった…。
「あ、あれ…」
マイムがある場所を指さした。
そこには、大きな扉があったのだ。
その扉は木製でかなり重厚感があるものだった。
「こんなところに扉?」
ソールが疑問に思うのも当然だった。
こんな場所になぜ扉が?と疑問に思ったのだ。
「開けてみる?」
マイムがそう言った。
「そうだな…」
ソールはうなずくと、扉の取っ手に手をかける。
鍵はかかっていないようで、あっさりと開いてしまった。
「まあ…。廃船だから仕方ないね」
ソールが少し残念そうに言った。
そして、4人は扉の先にあった部屋へと入った。
中には人がいた。
二人いたようで、ベッドの上に寝ている金髪の美少女と、苔色の服を纏った老人がいた。
老人はベッドで眠っている少女を介抱している様子だった。
「おお、こんなところに…」
ソールはこの世界に来て初めて出会った人に少し感動した。
しかし、老人の様子がおかしい。
何やら慌てている様子だが…。
「あわわ!あわわわ!エリア様…。大変ですぞ!あわわわ!このままではわしらの時間も止まってしまうー!」
意味深な発言をしながら、ベッドで横たわっているエリアを心配しながらあたふたとしていた。
そんな様子の老人が気になったので近寄るソールたち。
「ど、どうしたんですか?おじいさん…」
マイムが心配そうに話しかける。
「世界が闇に覆われ、すべてのものを…。時間を止めてしまったのじゃ」
「なるほど、だからあんな空だったわけね…」
ヴェントは納得した顔をしていた。
どうやらそのことが原因であの空になったようだ。
「エリア様はそれを防ごうと…。あわわ…。エリア様!」
ベッドで横たわっている少女の名前はエリアというらしい。
真っ白なワンピースを身に纏った美少女だ。
「この女の子はエリアっていうのね」
ティエラが眠っているエリアの方を見た。
「う…。うぅ…」
エリアはどうやらうなされているらしい。
顔もどこか苦しそうだ。
「あひゃーっ!!エリア様っ!しっかりなされよっ!」
苦し気に喘ぐエリアに反応し、老人が大慌てでエリアの元へと駆け寄った。
エリアの額には汗が流れている。
「随分と弱っているようだ。なんとかしてあげないと…」
ソールが心配そうに老人とエリアを眺めた。
「ちょっと待って。いいものがあるの」
ヴェントがそう言って、ベッドで苦しそうにしているエリアの元へと駆け寄った。
そして、エリアに何やら薬のようなものを飲ませたのだ。
「これで多分、大丈夫なはずよ」
ヴェントがそう言った時だった。
エリアの表情が和らぎ始めたのだ。
「おぉ!これは…。不思議なことじゃ…」
老人は驚いている様子だった。
「この薬は?」
ソールが興味津々に聞く。
「ええ。以前ギザールの村でもらったものなの。かなり苦みがあるけど、効果抜群の漢方薬よ」
「なるほど…」
ヴェントはあの日ギザールの村に行ったとき、村の中の薬局で薬を調達していたらしい。
しかし、いつ手に入れたのか、ソールはわからなかった。
別行動をしていたため、彼女らの行動は把握しきれていなかったので、興味深かった。
「う…。う~ん…」
眠っていたエリアが目を覚ましたのだ。
そして、ゆっくりと体を起こした。
「おお!お目覚めになられたか!」
老人が嬉しそうに言った。
「あなたは…。ここはどこ?」
エリアが不思議そうにソールたちを見ていた。
エメラルド色の瞳が美しい美少女だった。
白身のある腕を晒し、豊かに育った胸の谷間を覗かせるような純白のワンピースを纏っていた。
「えっ!あなたたちの心の中にあるその光…」
エリアが何かに気づいたような顔をする。
「僕はソール。クリスタルに導かれて、この世界へやって来たんだ」
ソールはひとまず自己紹介をする。
「私はティエラよ。エリアさん」
「マイムです」
「ヴェントよ」
ティエラたちも自己紹介をした。
そして、ソールがこれまでの経緯を説明したのだった…。
「…なるほど、そうだったのね…」
エリアはソールたちの説明に納得した様子だった。
「ではあなたたちが光の戦士…。よかった…。クリスタルは戦士を選んでくれたのね」
どこかほっとした様子を浮かべるエリア。
「だけど、時間は止められたままよ」
「やはり、世界は闇に…。世界を…。もとに戻さなきゃ…」
ヴェントの発言に、エリアがどこか深刻そうな顔をして言った。
「私を水の神殿へ連れて行って。そこにある水のクリスタルの欠片を封印されたクリスタルに捧げれば…」
エリアがそう言った。
「水の神殿…?」
ソールが聞いた。
「ゴホッ…!お願い!私を水の神殿に連れて行ってください」
エリアは辛そうに咳き込み、ソールに懇願した。
「わかった…」
エリアの願いにうなずくソール。
「エリア様を頼んだぞ。私はここに残ろう」
老人は光の戦士たちを頼りにしている様子で、頷いて見送った。
こうして、彼ら光の戦士とエリアの冒険が始まったのだった。
【エリアとの会話】
「あなたたちが持つ光の力で私は時間を取り戻せました。水のクリスタルが本来の力を取り戻せれば、闇の力を振り払ってすべての時間を取り戻せるはずです」
エリアはクリスタルと闇の力について説明した。
「気が付かなかったけど…。私たちの中に光の力があるのかしら…?」
ティエラは不思議そうな顔で考えていた。