ファイナルファンタジー3 リブートエディション   作:北村 貴之

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其之5 カズズの町

クリスタルに選ばれた、辺境の村の育ちの4人の男女、ソール、マイム、ヴェント、ティエラの旅が始まった。

彼らの旅の目的は、この世界を闇と混沌に陥れようとしている世界を救うことだ。

彼らは全員孤児で、元の両親はいないのだが、村の長老のトパパによれば、これは偶然ではないかもしれないとのことだった。

最初は実感こそはわかなかったものの、平穏なウルの村の様子を見て、世界を救うということは、自分たちの育った故郷を守るということを意味していた。

決意を固めた4人は住み慣れたこの村に別れを告げ、旅に出たのである。

 

そんな彼らが現在目指しているのは、ウルの村の南部にある「カズズの村」だ。

この村では村の鉱山から魔法の金属「ミスリル」が採れるため鉱山業が盛んだ。

そのミスリルを加工して武具などを製造する職人も数多く住んでおり、彼らの腕もかなりのものらしい。

また、この村は「鍛冶師」と呼ばれる職業の人間が多く住んでいることでも知られている。

ミスリルで作られた武器や防具は一般的な金属よりもかなりの強度を誇る代物であり、優れた鍛冶師の技術でなければ加工は難しいとされている。

しかしながら、普通の金属よりも強い事には変わりないので、今でも需要は十分にある。

剣や鎧だけでなく、ミスリルは船の錨や扉のドアノブの材料としても使われいるので、生活用品に使われる一面も存在している。

しかし、前述のとおり加工の難しさのためか、普通の収入を得ている者ではなかなか手が出しにくい逸品でもあった。

 

ひとまずカナーンの村の方面へと行きたいソールたちであったが、最近の大地震の影響により、ウル地方とカナーン地方を結ぶ道が土砂により埋まってしまい通行止めとなってしまっていたのだ。

そのため、その土砂をなんとかしてどかすための手段を得るために、今回カズズの村へとやってきたわけだ。

しかし、このカズズの村では大地震の直後に村人が神隠しにあったらしく、交友を深めていたウルの村との物流はあの日を境に止まってしまった。

しかも前述の土砂災害でカナーンへの道が塞がれてしまったため、カナーンとの物流も止まってしまっている。

なんとかしないとウルの村は干上がってしまうし、一刻でも早く世界を救いたいソールたちにとってはこの問題は重大な問題だった。

ウルの村の子供たちの話によれば、村人全員が神隠しにあったカズズの村には幽霊が出るとのうわさがある。

しかし、地震直後にその村を訪れたウルの人は現状子供だけであり、その噂も信ぴょう性があまりない。

こんな時期に幽霊なんているはずがない……ソールたちはそう思っていたのだが――

 

 

「……ここがカズズの村か」

ソールたちはカズズの村に到着した。ウルの村よりも近所なので、そこまで遠いというわけではない。

目の前には大きなミスリルの鉱山がある。

村に住む鉱夫たちはあの鉱山を職場として日々ミスリルの採取に励んでいるそうだ。

しかし、神隠しの件でその様子は止まっていそうだ。

村についたのはいいが、村人の姿が見当たらない。

ウルの村であれば明るい時間帯なら入り口からでも十分に村人の姿は目撃できるのだが、この村にはそんな様子はなかった。

「噂は本当みたいね」

ヴェントが顔をしかめながら言う。

彼女の言葉に、他の3人も同意する。

「とりあえず、村の中へ入ってみようよ」

マイムの提案で、4人は村の中を歩き回る。

すると、そこには1人の老人がいた。

その老人は村の森の中で焚火をしていた。

「あの~、すみません」

ソールが声をかけると、その老人はビクッとして、

「ギャ!」

と悲鳴をあげた。

そして、ソールたちを見て腰を抜かしてしまった。

ソールは慌てて、

「落ち着いてください、僕たちはウルの村から来た者です」

と説明した。

ソールのその言葉を聞き、老人は落ち着きを取り戻したようだ。

「すまん…。てっきりあんたたちも幽霊かと思って…」

老人は顔に汗をかいていた。

「あなたはこの村の者ですか?」

ヴェントが彼に質問をした。

「いや。私は西の方から旅してきた者だ」

どうやらこの老人は旅をしているようだ。よくよく見ると、老人の側に大きめの鞄と、護身用の長剣が置かれている。

「それよりもこの町は呪われている。宿屋に幽霊が出るんだ!」

ウルの村の子供たちの噂は本当だったようだ。

神隠しに幽霊…。なにやら不穏な空気が流れ始めた。

「ひとまず、ここに行くのなら用心して行きなさい」

老人はそう言った。

「ありがとうございます」

ティエラが老人にお礼を言った。

こうしてソールたちは、この幽霊が出るというカズズの村へと入っていくととなった。

 

「うーん。やっぱり誰もいない…」

ソールが腕を組み、頭を悩ませていた。

「店の扉も鍵がかかっていてやっていませんね」

マイムも先ほど村の店を訪ねたものの、扉が施錠されているせいか行くことができなかったようだ。

これも地震の影響なのだろうか。

物陰に隠れている子供すら見当たらなかった。

大地震は確かにあったものの、そこまで長く月日はたっていない。

そのためか、村に生えている雑草は伸びていたものの長すぎるということはなかった。

「とりあえず…。あのおじいさんが言っていた宿屋に行ってみましょうか?」

ヴェントが先ほど幽霊が出るとされる宿屋へと行く提案をしてみた。

「え、正気?」

ティエラが少し顔を青ざめてそう言った。

「おそらく…。ひょっとすると誰かいるかもしれないし」

そう返答したヴェントも少し不安そうな表情だった。

しかし、他に手がかりもないため、4人は仕方なくその宿屋へと向かった。

 

 

4人は目的の宿へと到着した。

「うぅ……。ほんとに幽霊なんて出るのかしら」

マイムが泣き出しそうな顔で不安がっていた。

「大丈夫。もし何かあっても、私たちがいるから」

そんなマイムを、ヴェントが励ます。

「じ、じゃあ中に入るぞ」

ソールが宿屋の扉を開けた。

すると…。

 

そこには幽霊といっていいのか不明だが、確かに「人」はいた。

だが、その姿がおかしかった。

その姿はまるで、人の形を一筆書きにしたかのような姿だった。

「きゃああぁ!!」

マイムの悲鳴が響き渡る。

「おい!落ち着けって!」

ソールは慌てながらマイムを落ち着かせる。

怯えたマイムはそのままヴェントの後ろに隠れてしまった。

「あっ…」

マイムが背中にくっつかれたヴェントが少しびくっとする。

「あ、あの落ち着いて!私たちはこの村の人間です」

その人の姿をしたものがソールたちにしゃべってきた。

話している感じからして、敵対心は一切なかった。

「あ、そうでしたか…。すみません」

ソールが頭を下げた。

「えっと、私たちはウルの村から来た者です。ここで一体何があったのですか?」

ティエラが質問をする。

「はい、実は……」

その人は4人に事情を説明してくれた。

「私たちカズズの村の者たちは、この前の大地震の影響で蘇った魔神・ジンの呪いにより、このような姿へと変えられたのです。ジンを再び封じ込めるには、この村でしか作ることのできない『ミスリルの指輪』が必要なのです。それを恐れたのか、ジンはこの村に呪いをかけたのです」

どうやら地震の影響で、封じられていた魔神であるジンが復活してしまい、この村に呪いをかけたそうだ。

その「ジン」という単語を聞き、ヴェントがはっとする。

「ジン…か。確か遠くにあったウルとカズズの共同墓地の奥にあった魔神像ね」

ウルの村とこの村からずっと北にいったところに、大きな共同墓地があり、そこに巨大な石像が安置されていたのだ。

ソールたちもその共同墓地の存在は知っていたが、あの大きな石像が魔人を封じていたものだったとは思いもしなかった。

「はい……。あの石像はただの石像ではなかったのです」

その言葉を聞き、ソールたちは驚いた。

「あの石像にそんな秘密が……」

「でも、とにかくミスリルの指輪を手に入れてジンを封じるのが先決ね」

ティエラが言った。

「そうね」

ヴェントもうなずく。

「お願いします。どうかこの村を救ってくれませんか?」

その人はそう言って、4人に懇願してきた。

「わかりました。僕たちに任せてください」

こうして、4人はジンの討伐のため、まずはミスリルの指輪を探すことになった。

 

宿屋内の酒場には、ジンの呪いの影響を受けて子供が書いたような人型の一筆書きのような姿に変えられた人々がいた。

そんな人たちの中に、カナーンから来たという人がいたので、その人から話を聞くことができた。

「わしはシド。カナーンから来たんじゃが、ネルブの谷が大地震の影響で起きた大岩の落下で塞がれてしまい帰れなくなってのぅ…」

その声からして、話し主は老人だった。

 

ネルブの谷とは、ウルの村からカナーンの町へ行くことができる唯一の道だ。

地震によって土砂災害が起き、今はその谷を通ることができないようだ。

その原因が、地震の際に落ちてきた大岩だ。

この問題はウルの村にとっても深刻な問題となっていて、カナーンへの商品の輸出はおろか、輸入もできなくなっている。

マイム、ティエラ、ヴェントの家は商人の家なのだが、今はその大岩のせいで頭を悩ませていた。

復旧作業はウルの村の方で行われようとしていたのだが、土砂をどかすための機械の開発は未だにされていない状況だった。

 

「そこでこの町に一晩宿を求めたのじゃが、このざまじゃ。ふぉふぉふぉ」

シドというその老人は、こんな姿にされた上に家に帰れないという状況に陥ってしまったものの、どこか元気であった。

「ソールくん!なんとかこの町の人たちを助けてあげましょう」

マイムがソールの手を握った。

「あぁ、もちろんだ」

ソールも力強くうなずいた。

「じゃあ決まりね」

ヴェントも納得したようにうなずく。

「そうじゃ、それならわしの飛空艇を貸してやろう」

シドが、空を飛ぶ船「飛空艇」を貸してくれるそうだ。

ジンの封じ込められていた共同墓地へは徒歩でも行けなくはないのだが、かなりの距離がある。

しかし、この飛空艇であれば短時間でたどり着けそうだ。

「ミスリルの指輪があれば呪いが解けるのじゃが、残念ながらこの町にはないそうじゃ。新しく作ってもらうにしても鍛冶師のタカまでもが呪いにかかってしまって製造ができなくなってしまってな…」

タカという鍛冶師がこの村にいるそうだ。しかし、今のままの姿では作業をすることができないそうだ。

「飛空艇は西の砂漠にある。頼む、なんとかしてくれ」

シドはそう懇願しながら、飛空艇の場所を教えた。

「しかし、新しく作れないなら、どうすれば…」

ソールが頭を悩ませていた。

「いえ。サスーンの城になら何かあるかもしれない」

ヴェントがそんな彼にそう提案した。

そう。カズズへはたどりついたものの、まだサスーンの方面へとは向かっていなかった。

「確かに、あそこなら何かありそうね」

「行ってみよう!」

4人は、とりあえず飛空艇を手に入れ、そしてその城へと向かうことにした。

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