海の都、リムサ・ロミンサ。バイルブランド島南部のラノシア地方を領土とする都市国家だ。白亜の塔が幾本も林立し、それぞれを白橋で繋いだ美しい街並みは「
主な産業は海運業、造船業、漁業。
この国の首長は「提督」と呼ばれ、現提督は女性であるという。
現在3つの公認海賊団がありそれ以外には略奪行為等を認めていないが、元々海賊業で栄えた町だったため非公認の海賊たちが今もたびたび悪さをしている。
この世界には冒険者と呼ばれる人たちがいて、雑用からモンスター退治まで幅広く仕事を請け負っている。
「みんなが集めた情報をざっとまとめるとこんなところなのかな?」
「うん、特に間違ったことはないと思う」
藤丸たちはビアホール「溺れた
「いやあ、しかし海賊か。私の船があるわけではないけど少し浮かれてしまうな」
「攻め難く、守りやすい。いい港町だ」
「なんというかすごい街だね。活気に溢れてるなあ」
「拙僧には少し煩わしく感じますが、まあそこはそれ。今回はおとなしくしておきますぞ」
「で、本題だ。どうやらここ最近になって今までに見たことのない生き物を見かけた、と言う人が増えたようだ」
「具体的な情報はある?」
「うん、だいたい膝くらいまでの大きさで、二足歩行をしていて鳴き声がノブーという感じだそうだ」
「そっかぁ……」
「そうやって逃げたところでちびノブという名の現実が襲い掛かってきますぞマスター」
道満からのぐうの音も出ないほどの正論に藤丸はテーブルに突っ伏した。
「それで、カルデアとの連絡はどうかな」
「全然ダメ。まあこれは予想してたから
「そこはカルデアに任せておこう。差し当たっての問題は金銭だろう。最悪野営をすればいいがマスターにはまともな食事と睡眠をとってもらわなくてはね」
この世界ではギルと呼ばれる共通貨幣がある。が、藤丸たちは異世界人。そんなものを持っているはずもなく、さてどうするかといったところだ。
「私の船があるなら海賊を襲ってもいいんだが」
「まとめて捕まるだけじゃないかなあ……」
「ンンン、ではそこらの凡夫から少しばかり拝借をおお!? 大振りのみかんが顔にぃー!?」
どこからともなく現れたみかんが道満の顔に直撃していた。
カルデアに所属している清少納言の仕業だ。天狗式の封印術の前段階。道満への警告のための嫌がらせである。
「道化はさておき、金銭もそうだが最終的な目標への情報も皆無と言っていい」
「今のところチビのぶの目撃情報だけだもんね」
「幸いなことにここは港町だ。人も物も情報も集まりやすい」
「とはいえ、ただ普通に仕事をするのも味気ない」
「冒険者になってみようじゃないか」
「うーん……」
「ノッブ……」
目の前で赤毛の
黒い軍服のような外套と、太陽のような飾りがついた帽子を被った女性のようなナマモノだ。
たまたま別の用事でグリダニアに寄っていたラハを見つけ、これ幸いとあなたはこのナマモノについて尋ねたのだが、どうにも芳しくない。
「ダメだ、さっぱりわからない。少なくとも俺からは普通の生き物じゃなくて使い魔とか魔法生物に近い、としか言えないな」
ラハがそう言うのであればそうなのだろう。学術都市『シャーレアン』の賢人とはいえ、生物学は専門でもないのによくやってくれた。
「あんたが困ってるみたいだったしな。俺でよければいくらでも手を貸すよ」
とはいえ、この推定魔法生物のナマモノはどうしてくれようか。試しにパンを与えてやればしっかり食べるし、人のベッドで睡眠もする。しかし排泄はしているのを見たことがないので不思議である。
「これが魔法生物だとしたら作った人のところに返すのが一番なんじゃないか?」
その通りだ。だがグリダニアにはこんなものを作れるような人物はいないはずだ。
「そうか……。じゃあまずは町の人に話を聞きに回ろう。俺が旧市街に行くからあんたは新市街を頼む」
ただでさえ世界を救ったり自称友と殴り合ったりなんだかんだと忙しかったのだ。たまにはこれくらいのんびりしてても罰は当たらないだろう。
というわけで町の人に話を聞いて回ったのだが、どうにもこのナマモノは町の外でちょくちょく見つかっているようだった。とはいえ襲い掛かってくるわけでもなく、手を振って挨拶してくるような個体もいるらしく、あまり問題視されていないようだ。
と、思っていたのだが。
「ああ、そいつらなら木材をどこかに運んでいるみたいだよ」
ラハと合流し、話を纏めていたところ通りがかった男が新しい情報をくれた。
「詳しいことはわからないけれど、どうにも南……、ザナラーンの方へ持って行ってるみたいだ」
砂漠地帯に木材を持って行ってなにをするつもりなのだろうか。
「もしかしたらこいつらの家でも建てているのかもしれないな」
「ノブ?」
冗談交じりにラハが笑う。
なんて言ってたらこれだ。
目の前にはひんがしの国にあるような立派な城があった。所々建築中ではあるがもう大部分が完成している。
南ザナラーンの砂漠地帯のその一角。見慣れない大きな蟻地獄のようになっていた場所にナマモノたちが飛び込むのを見て後から飛び込んでみると、地下のはずなのに青空が広がっており、地面も砂ではなく土だ。
そこで作業を行っているのは例のナマモノたちで、大きいものやら機械っぽいものやら、なんだかバリエーションが豊かである。そこかしこでノブノブノブノブ言っている。クポクポ言ってるモーグリの里とどっちがやかましいだろうか。
「どうなってるんだここは……」
ラハが本気で困惑している。とりあえずいろいろなことを横に置いておいて、このナマモノをここのコミュニティに帰してやればいいのではなかろうか。
と思ったら足にしがみついて離れない。なつかれてしまったのだろうか。
「はーっはっはっはっは、よく来たのう冒険者とやら! でもまだ準備中だからまた後日来てくれると嬉しいんじゃが!」
大きな高笑いがあたりに響き渡る。
城の屋根の上、一番高い所にナマモノがそのまま人のサイズに大きくなったような女が仁王立ちで笑っていた。