FGO×FF14~幻想世界エオルゼア~   作:ズック

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3.出会いと手がかり

 

「わしこそが! 大六天魔王、織田信長じゃ!」

 

 城の屋根にいる少女が吠える。

 あなたには大六天魔王とやらは理解できなかったが、名乗りをあげていることはわかったので名乗り返した。

 

「バルデシオン委員会のグ・ラハ・ティアだ。単刀直入に聞くが、あんたはここで何をしてるんだ?」

「うーん……。別に言ってもいいんじゃが、言わない方が面白そうなので言わん! だがこのままではお前たちは帰りそうにないから者ども出合え出合えー!」

「「「ノブノブー!」」」

 

 信長の声に様々な姿のナマモノ達がそれぞれの作業を止めてあなた達の前に立ちはだかった。

 あなたは足にしがみついているナマモノをラハに渡し、背負っている大剣を構える。

 

「やっぱりこうなるのか……」

 

 ラハも杖を構える。

 グ・ラハ・ティアはあなたと同じく、攻めも守りも支援も出来るオールラウンダーだ。今のような人数が少ない時はとてもありがたい相棒である。

 

「撃てー!」

「「「ノッブー!」」」

 

 ──シャドウウォール。

 影があなたの全身を薄く覆い、防御壁となる。

 前方から無数のスタンダードな姿のナマモノたちがふらふらと銃を構え、撃ち始めた。

 バラバラに放たれた弾丸が次々にあなたの鎧に当たり、音を立てる。しかし、それだけだ。全く問題ない。

 ──プランジカット。

 真っ正面にいた一体に飛びかかり大剣を振り下ろす。

 ──アンリーシュ。漆黒の波動。

 あなたの影が地面に広がり巨大な円を作り出し、影が刃となって敵を襲い、突き出した大剣からは漆黒の波動が一直線に敵をなぎ払う。

 息を吐き切って一呼吸。すべての敵の視線を一身に集めている感覚。高揚感。前へ前へと駆け出したくなる気持ちを抑え、一歩後ろへ。

 

「始源の炎蘇らん! フレア!」

 

 ラハの力強い言葉でナマモノたちの集団の真ん中に小さな火球が現れる。数瞬。凝縮されていた炎があふれ出し、巨大な爆発となってナマモノたちを飲み込んだ。

 

「なかなかやるではないか。ちびノブたち雑兵ではいくらやっても倒せそうにないのう」

「そうだな。だからあんたも素直にいろいろと喋ってくれるとありがたいんだが」

「ふっ、そうやっていい気になっていられるのも今のうちよ。行けい、第一のしもべよ!」

「あなたの家来になったつもりはないのですけれど」

 

 青白い長髪を頭の後ろでひとつにまとめた、凛とした佇まいの女武者がナマモノ──ちびノブと呼ばれていた──の人垣を跳び越えてあなたとラハの前に降り立った。

 

「『アーチャー』巴御前(ともえごぜん)です。よろしくお願いします」

弓術士(アーチャー)?」

 

 ラハが首をかしげるのも無理はない。

 確かに弓を背負っているが、今手に持っているのは長柄の先に刃が付いた、薙刀(なぎなた)や長槍と呼ばれる武器である。名乗りを上げるのであれば槍術士か竜騎士だろう。

 

「いや、そういう話じゃなくて……」

「どちらも(たしな)む程度に扱えるというだけですよ。では、いざ──」

 

 巴御前が構える。それだけで周囲の空気が熱を帯び、少し緩んでいたあなたの気持ちを戦士のそれへと一瞬で引き戻す。

 

「参ります!」

 

 言うや否や、あなたが咄嗟に盾のように構えた大剣と巴が振り下ろした薙刀が火花を散らす。あなたの脚で10歩はあろうかという彼我の距離を、巴は瞬きよりも早く0にしたのだ。

 突き。払い。柄による打ち。そのどれもが速く、鋭く、重く。打ち合うあなたの手を微かに痺れさせる。

 強い。

 その上おそらく本気ではないと、あなたは肌で感じていた。

 

「燃えろっ!」

 ──ランパート。

 

 巴が振りかぶった薙刀に炎が走る。あなたは燃え上がるそれを見てすぐさま守りを固める。

 あなたが盾のように構えた大剣に薙刀が振り下ろされる。激突。炎が吹き上がり、あなたの体力を奪っていく。

 炎の嵐が止んだ。あなたは大剣を地面に突き立て膝を着くことを防ぐ。

 

「……ここまでにしましょうか」

 

 先程までの苛烈な雰囲気はどこへやら。巴は構えを解き、あなたに穏やかに話しかける。

 

「間合いの取り方、攻めに転じる際の動き、視線の配り方。おそらくですが、人よりも大きな化生を相手に複数人で戦うことの方が多いのではありませんか? そう、それこそ"もんすたあはんたあ"のように!」

 

 確かに、4人、8人、多ければ24人でパーティを組んで戦うこともあるが、それがどうしたとあなたは尋ねる。

 

「巴は本気の、全力のあなたと戦いたいと、そう思いました。ですので今回はここまでです」

 

 その言葉を聞き、少しばかりの悔しさを飲み込んで、あなたは構えを解き、大剣を背に戻した。

 あなたがここで言葉を尽くしても彼女は動きはしないだろう、という予感があった。であれば向こうの望み通りにするのが一番だろう。

 ラハにもそう伝え、巴御前に必ずまた来ると約束する。

 

「はい。それはそうと巴も連れていってくれませんか!」

 

 えぇ……?

 あなたとラハは困惑し、顔を見合わせた。

 

「え、ワシってばもしかして忘れられてない?」

 

 

 信長の声は地下の青空に消えていった。

 

 

**

 

 

「おう、兄ちゃんたち! 今日もご苦労さん!」

「お疲れ様です!」

 

 リムサ・ロミンサの上甲板層にある溺れた海豚亭。その店主であるバデロンが藤丸たちを出迎え、布袋を手渡される。そこそこの重さがあるそれは、仕事──リムサ・ロミンサの街道に出る魔物退治──の報酬である。

 エオルゼアに来てから2日目、藤丸たちは冒険者としてしっかりと働いていた。

 

「でも手掛かりはないんだよねえ」

「ちびノブたちの目撃情報はあるけれど、私たちは見たことがないし、人に聞いても動きがバラバラで掴めないね」

「錆びた鉄材を運ぶ、農民の手伝いをして作物を貰っていく、釣りをしていたなどの証言はあれど、その後の動きがさっぱりですな。拙僧の式神でも追いきれぬとは……。本当にちびノブなのかも怪しいところですぞ」

「……面倒だな。聖剣で山を薙ぐか」

「お願いしますからやめてくださいね!?」

 

 しかし聖杯へ続くような情報はなく、これでは異世界に職業体験をしに来ただけである。

 

「そういえば、こちらの世界でも『英雄』と呼ばれるような人物がいるらしいよ」

「ほう……?」

「ンンンンン、拙僧の時代に勝るとも劣らない数の魑魅魍魎。これでは民も安心して眠れぬというもの。であれば音に聞こえし頼光四天王のような者がいるのが道理でございますな」

「英雄かー……。どんな人なんだろう」

 

 英雄、と一言で表してもその実態は様々だ。

 カルデアで大勢の英雄、英傑と出会った藤丸であるが、現代日本でおおよそ誰もが知るような戦国武将が実は女性であったり、誰もが知るような発明王はなぜか頭がライオンであったりする。

 目の前の黒い騎士王もそうだ。

 アルトリア・ペンドラゴン。

 アーサー王伝説における主役、ブリテンの王であるアーサー・ペンドラゴンが実は女性で、更にはその別の可能性の姿というややこしい存在である。

 

「出来れば会ってみたいけど……、あくまでも目的は聖杯の回収だもんね」

「勿論だとも」

「なんだ兄ちゃんたち、英雄様の話か?」

 

 と、別の席に座っていた冒険者の一人が話しかけてきた。

 

「ああ、あんたら遠くから来たって言ってたもんなあ。知らねえのも無理はないか」

「こっちにいれば大抵のやつは話したことあるか、頼み事してるもんな」

「俺……、ずいぶん前にくだらない頼み事しちゃったんだよな……」

「あの人ならちゃんと報酬渡せば問題ねえさ!」

 

 藤丸たちはあっという間に酒で出来上がった男たち(何人か女性も混じっているが)に囲まれて、ああだこうだと英雄の昔話と笑い声に埋もれてしまった。

 藤丸が理解できるのは、話をしている皆の顔がとても明るく、朗らかであるということ。そうやって話題の中心になるような人物はきっと悪い人ではないだろう、ということだ。

 

「いい人なんですね」

 

 藤丸がそう言うと囲んでいた男たちは一瞬きょとんとした顔をし、困ったように笑い始めた。

 

「いい人、ではあるな。うん」

「変な人でもあるし、困った人でもあるけどな」

「英雄様だってのに一人で気軽に買い物に来たりするからびっくりするんだよなあ」

「今もただの冒険者のつもりでいるから心臓に悪いんだ。あの人はもうちょっと自覚を持ってほしいよ」

「そこがあの人のいい所じゃねえか。気取ったりしねえで俺たちと話してくれるぜ」

「へへ、違いないな」

 

 どうやら随分とフットワークが軽い人のようだ。が、藤丸も拠点にいる面々を思い浮かべて、そういうこともよくあるな、と納得した。

 

「その英雄様はどこに行けば会えるとかあるかな?」

「ん? あの人はエーテライトがあるところならテレポ*1でどこにでも行けちまうからなあ……」

「エーテライト広場にいればいつかは会えるかもしれないけど、兄ちゃんたちは顔を知らねえんだよな?」

「知らないです……」

「急ぎで会いたいってんなら他の国に連絡を取ることもできるが、どうする?」

「いやいや、ただの興味本位だからそこまでしてもらう必要はないよミスター。それと、話を聞かせてくれたお礼だ。みんなに一杯奢ろう」

 

 バーソロミューがそうやって声をかけ、輪の中に入っていく。

 

「あっちの情報収集は海賊に任せるとしよう」

「ンンンン、それでは拙僧から。この世界は魔力、こちらの呼び名では"えぇてる"が濃いためサーヴァントの活動にはほぼ問題がありませぬ」

「マスターも見ていただろうが、このあたりの魔物は私たちの敵ではないな。戦闘が苦手な作家などでも余裕で倒せるだろう」

「なるほど。つまり……、カルデアのうちの誰が来てても好き放題できる環境ってことだね?」

「残念ながらそのようで。魔術を扱うサーヴァントからしてみればやりたい放題の夢のような場所にございますな。……そのような目で見られても、拙僧は何もいたしませぬぞ?」

 

 全く信用出来ないんだよなあ、と思いつつも藤丸は追及しなかった。どうせ無駄である。

 

「ひとまずはこのまま仕事をつづけながら町の人たちに聞き込みを行う、でいいかな?」

「異論はない」

「拙僧も問題ありませぬ」

「おや、そちらの話もひと段落かな?」

 

 バーソロミューが(タル)ジョッキを片手に上機嫌で戻ってきた。

 先ほど藤丸たちを囲んだ男たちは別のテーブルについて、賑やかに笑っている。

 

「海の男は気前がいいねえ。酒1杯でいろいろなことを教えてくれたよ」

「なにか目新しい情報はあったか?」

「ほとんどは既知のものだが、1つ。ここからそう遠くないところでこの辺りでは見知らぬ男が倒れていたそうで、ここに運び込まれたらしい」

「カルデアやはぐれのサーヴァントかな?」

「その線は薄いと思いますぞ。先にも言いました通り大気中の魔力が潤沢ですので」

「この地でサーヴァントが召喚されるかというのも怪しいものだ」

 

 特異点となった土地で、世界はその対抗策としてサーヴァントを召喚することがある。そういった、マスターを持たないサーヴァントのことをはぐれと呼ぶ。

 しかし、特異点になっているとはいえ、この世界は自分たちの世界とは違う、文字通り異世界である。そんな場所で果たして同じような現象が起こるのか。

 

「とはいえ、確認しないわけにもいかないしね」

「マスターの言うとおりだ。少しばかり雑用も頼まれてしまったが、部屋の場所は聞いているから行ってみようじゃないか」

 

 

 

 

*1
エオルゼアの冒険者は一度触れたことがあるエーテライトと呼ばれる巨大なクリスタルに自由に瞬間移動ができる。

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