前に一度行ったことのある、あのゴミの山は
わたしの生まれたフーシャ村も属するゴア王国は進○の巨人の世界のように大きな石の壁があって、
わたしはゴア王国の壁の中には入ったことはない。物を売りたい時は度々フーシャ村の方に降りて村の人たちに買って貰い、そのついでに調味料を買ったりしている。ぶっちゃけ今の生活の方がたくさん食べられるので、お金はフーシャ村で暮らしていた時のものと合わせてもかなり貯まっていた。
それはそうと、エースくんたちと一緒に行動するようになってから、
そして今日も街に鰐皮を売りに出て、そのままラーメンを食べに行ったのだけど、案の定窓硝子を割って逃げ出した。いつも通り「申し訳ありません」という書置きと共に食事代を置いて、二人と共に駆け抜ける。いつもと違ったのは、ここでサボくんに話しかける人物がいたことだった。
「サボ?サボじゃないか!!待ちなさい!!お前、生きてたのか!!」
その人は身なりから察するに、恐らく貴族の男性だろう。そんな人がサボくんを呼び止めるということは、サボくんが元いた家の家族か何かだろうか。
「うちへ帰るんだ!!」
「…!!」
「おいサボ、お前のこと呼んでるぞ」
「…知り合い?」
「…人違いだろ。行くぞ!!」
「あっ…ま、待ちなさい!!」
サボくんがそういうので、一先ずわたしたちはその場から走り去った。
*
*
*
「…何だよ。何も隠してねェよ」
あれからコルボ山に戻って来たわたしたち。
エースくんはサボくんにさっきのはどういうことだと詰め寄っていた。
「そっか」
「そうなわけねェだろ!!話せサボ!!おれたちの間に秘密があっていいのか!?」
「まあまあエースくん…話したくないことのひとつやふたつ、誰にだってあるよ。ね?だから落ち着こう?」
わたしが宥めても特に意味はなく、
「話せ!!」
とサボくんに説明を促すエースくん。まぁ、エースくんだし…仕方ないのかなぁ…
「だから、おれは何も…うぐッ!?」
頑なに話そうとしないサボくんに痺れを切らしたエースくんは、ついにサボくんに掴みかかった。
「話せよてめェ!!ぶっ飛ばすぞ!!」
「ちょ、え、エースくん!?締まってる締まってる!!サボくんの首締まってるから!!」
「ぐッ…は、話す!!話すよ!!」
苦しそうに「話す」と言ったサボくんに、エースくんは掴んでいた手を離した。解放されたサボくんは苦しそうに咳き込んでいる。それもそうだ。
そしてサボくんは、少しずつ自らの出自を話し始めた。
「…あぁ」
「貴族の息子?」
やはりサボくんは貴族の出だったようだ。薄々察していたので、驚きはない。
「…誰が?」
「ええっ!?」
嘘でしょうエースくん!?この話の流れで「誰が?」って!!サボくんしかいないじゃん!!
サボくんも同じように思ったのか、
「おれだよ!!」
と思わずツッコミを入れていた。
そしてエースくんは小指を鼻に突っ込んでほじり始め、
「…で?」
と然も興味なさげに言った。
え、君が質問したんだよね??
「お前が質問したんだろ!!」
今日のサボくんのツッコミはキレッキレだね…そりゃあキレッキレにもなるよね…
「…本当は親、二人共いるし…孤児でもなければ、
「!!」
「お前らには嘘を吐いてた。ごめんな」
申し訳なさそうな表情で謝るサボくん。
「何となくそうじゃないかなぁとは思ってたよ」
「えっ」
「は?」
わたしの言葉に、サボくんだけでなくエースくんも驚きの声を上げ、こちらに顔を向ける。
「サボくん、身なりがよかったから。それでもあの場所にいたから、きっと事情があるんだろうなって。サボくんが自分から話してくれるまで、わたしは何も訊かないつもりだったの」
訊かれたくないことは誰にだってあるし、訊かれたくないならわざわざ訊く必要もない。だって、相手が嫌な思いをするだけだからね。
「…ルフィがサボの出自を知ってたことについては置いておく。だがサボ、貴族の家に生まれてなんでわざわざあんなところに…」
「…おれが家を飛び出したのは」
サボくんは
王族の女の子と結婚すれば幸せであると押し付けられ、初めに危害を加えたのは王族の子だというのにサボくんが悪いかのように言う。そんな両親だったらしい。
「アイツらが好きなのは地位と財産を守っていく誰かで、おれじゃない。王族の女と結婚できなきゃ俺はクズ。その為に毎日勉強と習い事。おれの出来の悪さに両親は毎日喧嘩。あの家にはおれは邪魔なんだ。…お前らには悪いけど、おれは親がいても独りだった。貴族の奴らは
「…そうだったのか」
サボくんは凄いな、とわたしは思った。わたしは身体こそ7歳児だけれど、中身は成人済みだ。でも、サボくんは違う。10歳の子どもがこうやって自分のやりたいことを決めて、それに向かって歩いて行くというのは、本当に凄いことだ。
「エース、ルフィ!おれたちは、必ず海に出よう!この国を飛び出して、自由になろう!広い世界を見て、おれはそれを伝える本を書きたい!航海の勉強なら何の苦でもないんだ。もっと強くなって、海賊になろう!」
そう力強く言うサボくんが、わたしには眩しく見えた。
「ふふ」
「そんなモン、お前に言われなくてもなるさ!」
エースくんが崖の向こうを見据えながら言う。
「おれは海賊になって、勝って勝って勝ちまくって…最高の名声を手に入れる!!それだけが、おれの生きた証になる!!世界中の奴らがおれの存在を認めなくても、どれほど嫌われても、大海賊になって見返してやんのさ!!」
エースくんの存在を認めない。見返す。そんな言葉が出てくるあたり、やはりエースくんにも何かがあるのだろう。前にも言ったように、わたしは自分から話したいと思って話してくれるのを待つだけだが。
「おれは誰からも逃げねェ!!誰にも負けねェ!!恐怖でも何でもいい、おれの名を世界に知らしめてやるんだ!!」
「…そっか」
「ルフィは?」
「え、わたし?」
「お前も海賊になりたいって言ってたろ?」
わたしも言う流れか。そうだよな、この流れはそうなんだろうな…
「わたし…わたしはね…
*******」
わたしの言葉を聞いた二人は、あんぐりと大きな口を開けていた。
「お前は…何を言い出すかと思えば」
「ははははは!!!面白ェなルフィは!!おれ、お前の未来が楽しみだ!!」
エースくんは呆れたような表情を浮かべ、サボくんは愉快そうに笑っている。
「ただでさえ海賊になるってだけでも意外性の塊だってのに」
「…ん?でも、海賊になるのはいいけど、三人とも船長になりてェって不味くねェか?」
「あっ…思わぬ落とし穴だ…サボ、お前はてっきりうちの航海士かと…」
「別に同じ船じゃなくてもいいんじゃない?それぞれの道を進めばいいと思うよ」
三人一緒っていうのも楽しそうだけどね。
「…ま、それもそうか」
結論、将来のことは将来決めようという話になった。
「三人バラバラの船出になりそうだな」
エースくんは盃を用意して、ダダンさんから盗んできたのであろう酒瓶を手に持つ。
「ダダンさんが怒るよエースくん」
「お前ら知ってるか?盃を交わすと兄弟になれるんだ」
そう言いながら、エースくんは盃に酒を注いでいく。
「そうなの?」
「海賊になる時、同じ船の仲間にはなれねェかも知れねェけど…おれたちの絆は、兄妹として繋ぐ!どこで何をやろうと、この絆は切れねェ!」
エースくんとサボくんのことは、ダダンさんたちや村の人たちも含め皆家族のようなものだと思っていたけど…また違った感じなのかな。ダダンさんたちや村の人たちとはまた少し違う、家族の絆なのかも知れない。お酒を盗んだこと、飲んだことはダダンさんに叱られるかも知れないけれど…まぁ、今日は一緒に叱られてもいいかもな。
「これで今日からおれたちは、兄妹だ!」
サボとエースのすれ違いが辛すぎて、盃兄弟見てると何とも言えない気持ちになります。