「ルフィ!一緒に歌おう!」
「えっ?」
ウタちゃんの唐突な誘いに、わたしは思わず間の抜けた声を出してしまう。
赤髪海賊団の人たちはよく歌うし、踊る。上手い下手は関係なく、陽気に、それはもう楽しそうに。そんな雰囲気が、わたしは好きだった。
ウタちゃんは赤髪海賊団の音楽家である。だから将来有望な、それはもう素晴らしい歌声を今の時点で持っている。才能の塊だ。才能もだけど、単純に歌うのが好きなのだろう。だからこそ、彼女の歌声は万人を惹きつけるのだとわたしは思う。
そんなウタちゃんが、わたしを歌に誘ってきた。
正直歌うことは嫌いではない。ただ、人前で顔を出して歌うのは苦手だ。だから彼らが『ビンクスの酒』を歌っている時も、わたしはハミングするのみで、極力目立たないように歌っている。歌っているのかどうかすらわからないレベルだが。だが何度でも言うが、歌うことは嫌いじゃないのである。
「え、っと。どうしたの?急に」
「私、いつも皆で歌うときに鼻歌で歌ってるルフィの声聴いて思ってたんだけど。ルフィって絶対に歌、上手いと思うの。それに、凄く綺麗な声だから、一緒に歌ってみたくて」
「えー…」
あんなワイワイガヤガヤ、喧騒な中でわたしの小さな鼻歌を拾うなんて、ウタちゃん恐るべし…
「ね、ルフィ!一緒に歌おう!」
「う、うーん…」
キラキラとした笑顔を向けられると、断りづらい。誰が相手でもそうだけど、特に小さな子どもからそんな目線を向けられれば、折れてしまうのが大人の
「…うん、わかった。いいよ」
「やったー!じゃあやっぱり、まずはビンクスの酒ね!」
《ビンクスの酒を 届けにゆくよ
海風 気まかせ 波まかせ
潮の向こうで 夕日も騒ぐ
空にゃ 輪をかく鳥の唄》
この歌は、楽しい歌だけど、どこか淋しい歌だと私は思う。後半になるにつれて、哀愁が漂ってくる感じがあるから。
あと、ウタちゃんの歌声ってなんか若干幼いけどAd○さんっぽいような。歌っている時と話している時で声の印象が違う…のは現実でもあるけど、なんか…話してる時の声帯は名○さんじゃない?なんか…バ○ラとかミ○ーヌちゃんとかシェ○ルさんとか○雲さんみたいだな…
そういう私の声帯は、幼さは残るもののみ○りんごっぽい。いよいよマク○ス。
「やっぱり!ルフィの声、凄く綺麗!これは将来が楽しみだな~!」
「ふふふ、ウタちゃん大人みたいなこと言うね」
「ルフィの真似!」
「えっ、今のわたしの真似なの??」
「いつも大人ぶってるから!真似してみたの!」
「そ、そっかぁ」
わたしって周りからこんな風に見られてるのかな?まぁ、いいか。わたしはわたしらしく過ごしてるだけだしね。それが少し大人びて見えるのかもしれないけれど、元来わたしは子どもっぽいと言われていた人間なのだ。成長するうちに子どもっぽく見えてくるだろう。多分。あれ、成長するにつれて子どもっぽくなるって何だろう??
あ、そう言えばビンクスの酒の歌詞にある『鳥の唄』で思い出した。前世にそんな曲名の歌があったなぁ。確か…
《消える飛行機雲
僕たちは見送った
眩しくて逃げた
いつだって弱くて
あの日から 変わらず
いつまでも変わらずに
いられなかったこと
悔しくて指を離す》
「…ルフィ、その歌何?初めて聴いた…」
「あっ…」
しまった、つい歌ってしまった。この世界にはない歌なのに。しかも飛行機すらないのに飛行機雲なんて、絶対わからないよなぁ…
「えっと。夢の中で、こんな歌を聴いたな~…て。『鳥の唄』って歌詞で思い出したの。これ、『鳥の詩』っていう歌だから…あはは」
…我ながら下手くそな誤魔化し方だ。でも、これしか言えない。頼む、上手く誤魔化されてくれ、ウタちゃん。
「へぇ、そうなんだ!でもひこうき雲ってどんな雲なんだろ??」
「んー…空を飛ぶ乗り物が通り過ぎたあとにできる雲…かな?うん」
「空飛ぶ乗り物!乗ってみたいね!」
「ウン、ソウダネ」
何とか誤魔化されてくれた。よかった…
鳥の詩、いいですよね。
まぁアニメは見たことないんですけど…