「ね、ルフィ。ルフィには夢ってある?」
見渡しのいい崖の上で海を眺めていたら、ウタちゃんからそう訊ねられた。
「うーん、そうだな。今はまだ…はっきりとした夢はないよ。ただ、いつかはこの島を出て色んな場所を旅して廻りたいかなって、ぼんやりと考えてる」
この世界はあまりにも海の面積が広くて、島と島の距離が離れ過ぎている上に空の航路もなく、気軽に他の島へも行けやしない。だから、もう少しこの身体が成熟した時にこの島を出たいと考えていた。
「私もね、シャンクスと一緒に世界を廻って、たくさんの曲を作って、最高のステージと私の歌で、世界を幸せにするって夢があるんだ。私は、新しい時代を作るの!」
堂々たる出立ちで、ウタちゃんが夢を語る。その表情は、何とも生き生きとしていた。
「そっか。ウタちゃんらしいね。…うん、ウタちゃんなら出来るよ。楽しそうに歌ってるウタちゃんの姿を見たら、皆笑顔になるし、楽しくなれるから」
「ふふん。…ルフィも世界を廻りたいってところは私と同じだね。私たちと一緒に来る?」
「うーん、確かに楽しそうではあるけど…いいかな。旅をするなら、もっと大きくなった時に自分の足でしたいから」
ウタちゃんのお誘いはとても嬉しいけれど、そこは何となくわたしの居場所ではない気がしている。別に疎外感とかそういうのではなく、何というか……自分に向いた職業じゃない、みたいな。そういう感覚と似ている。
「ふーん。あ、じゃあ、もしルフィが旅の途中で偶然出会うことがあったらさ、その時はデュエットしようよ!」
「えっ」
「ルフィと二人で歌うの、すっごく楽しいの!一人で歌ってるのを皆に聴いてもらうのも、大人数で歌うのも楽しいけど、この前初めてしたルフィとのデュエットが今まで歌った中で一番楽しかったんだ!」
だからデュエットしようよ、と顔を輝かせながら言うウタちゃん。わたしが弱い、無邪気な顔である。
「そうだね…もし、その機会があれば」
「ホント!?約束!!」
そう言いながらウタちゃんは小指を差し出した。指切り、と言うことだろうか。本当に、ウタちゃんには敵わない。
「うん、約束」
わたしも小指を差し出して、指切りの歌を歌う。
約束、守らないとなぁ。
「…ウタちゃん」
「ん?」
「海賊の音楽家として世界を廻るなら、大きくなるにつれて大変なことも…時には辛いこともたくさんあるかも知れないけど。わたしはウタちゃんのこと応援してるからね。辛い時は辛いって言って、泣きたい時はちゃんと
泣くんだよ」
この世界は前世の世界よりもずっと治安が悪い。世界の言語が凡そ統一されているのにも関わらず、言語の種類の多かった前世よりもずっと争いが多いと言うか、世界の全てを世界政府が統治しているような……そんな世の中で、自由が少ない。前世でも自由が少ない国はあったし、戦争をしている国もあったけど……この世界は全体的にそんな感じだな、と平和で割と自由な国に暮らしていた身として思うのだ。だから、ウタちゃんにもこれから様々な困難が降りかかるのはまず間違いないだろうと思う。
それでも……この子が夢見る新時代が訪れることを、切に願う。
誰よりも目の前のこの子が、自由に音楽を奏でられる世界になるといいな。
次で挿入投稿は終わりです。